ジョジョの世界に転生しました。   作:鏡華

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通勤ルート途中に「汐屋」って居酒屋を見つけてちょっとニコニコしちゃった。


前・遊郭潜入大作戦

「あ、天元。おかえり」

 

「綾鼓さん動かないで」

 

「はい」

 

 

柱の宇髄天元さんに連れられてやって来た藤の家紋の家。

 

通された部屋に入ると、綾鼓さんが出迎えてくれた。

 

 

「綾鼓さん!?」

 

「襟巻女、生きてたのか!」

 

「勝手に殺すんじゃないよアホンダラ!」

 

 

後ろで賑やかな善逸と伊之助と共に、声を上げる。

 

無限列車での一件以来の再会だ。

 

元気そうな姿に、胸が詰まる。

 

 

「おお、炭治郎に善逸に伊之助かー。久しぶり──んん?あれ、天元、女子の隊士連れてくるって言ってなかったけか?」

 

「あっ、綾鼓さん!ちょっと!」

 

 

くるり、とこちらに向き直った綾鼓さんの目元には、薄く紅が引かれていた。

 

普段の溌溂とした印象とはまた異なる雰囲気に、妙に緊張してしまう。

 

 

「あー、ちょっと予定が狂っちまってな。まあ、こいつらみたいな下っ端でも問題はないだろう。今回派手に動くのはアンタだし」

 

 

ぐりぐりと、遠慮なしに頭を掻き混ぜられた。

 

ちょっと痛い。

 

 

「ふうん?場所が場所だし、若い女の子連れていくのは少し気が引けるから別に構わないけど──うお」

 

 

小首を傾げる綾鼓さんの頬に手が添えられ、視線が戻される。

 

 

「綾鼓さん、動かないで」

 

「ごめんて真菰……なんかちょっと怖いぞ今日」

 

 

真菰さんが据わった目で綾鼓さんをたしなめる。

 

あんな真剣な顔、修行を見てもらった時以来かもしれない。

 

何事か──と見ると、真菰さんの手元には紅の入った小さい皿と、筆。

 

 

「なあなあ天元。やっぱりここから化粧していく必要なくないか?お前と真菰がやけに主張してくるからされるがままになってるけどさ。というか真菰は何でそんなやる気に満ち満ちてるんだ」

 

「だって、綾鼓さんに化粧できる機会なんて滅多にないんですもん!隊服以外の着物を着せるのだって苦労しますし」

 

「そうそう。アンタ俺には劣るが素材は地味に良いんだから、もっとド派手に着飾らねえと勿体ないぞ。俺には劣るが」

 

「2回言ったな派手好きめ」

 

 

妙にキラキラした目で綾鼓さんに詰め寄る真菰さんを見ながら、腰を落ち着ける。

 

お茶を出してくれた家の方にお礼を言って、受け取った。

 

 

「もう色気づいた格好する年でもないってのに……物好きだなあお前らも」

 

「女の子は!何歳になっても!お洒落とか好きなものなんです!綾鼓さん何のために若々しい姿してるんですか!」

 

「鬼を狩るためだけど?」

 

「綾鼓さんの方がよっぽど物好きです!!」

 

 

軽妙なやり取りの合間にも、綾鼓さんのお顔がどんどん華やかになっていく。

 

すす、と宇髄さんに近づき、こそこそ話。

 

 

「前から気になっていたんですが、綾鼓さんって今おいくつなんですか?」

 

「あぁ?あー……俺も詳しくは知らねぇが、そろそろ還暦らしい」

 

「還っ……!?」

 

「はっ……え、はあ!?嘘でしょ嘘でしょ嘘ですよね!?だってあんな綺麗なお姉さん、どう見ても20代──」

 

「うるせえ!耳元で喚くな!!」

 

 

耳をそばだてていた善逸が、小声で騒ぐという器用なことをしている。

 

それを宇髄さんが大きい掌で叩いてすぐに黙らせる。

 

本人の耳には入っていないようだ。

 

でも、善逸の反応も仕方ないと思う。俺も善逸がいなければ大声を出していたかもしれない。

 

嘘でないことが匂いで──おそらく善逸は音で──わかるのだから、余計に。

 

伊之助も耳には入っているのだろうが、茶菓子の煎餅に夢中で反応を示さない。

 

 

「ったく……。おい波柱、作戦の最終確認だ。身支度しながらでいいから聞いといてくれ」

 

「おー、わかった」

 

 

顔に白粉を塗られながら、綾鼓さんが応える。

 

 

「──よし、お前ら。遊郭に潜入したらまず俺の嫁を探せ」

 

 

善逸が再び騒ぎ出すまで、あと数秒。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「ときと屋、荻本屋、京極屋……」

 

 

宇髄さんの言葉を反復して、口の中で転がす。

 

俺たちが潜入する、店の名前。

 

 

「波柱──綾鼓の婆さんが花魁として、この中のどこか1つに潜入する。お前らはそれぞれ分かれて女郎見習い──”新造(しんぞう)”として入り込むから、誰か1人は婆さんの付き人になるな」

 

「え、女装させるのか?私がいるんだから、奉公人とかでいいだろう?」

 

 

きょとり、と目を瞬かせる綾鼓さん。

 

化粧が終わり、髪に(かんざし)を挿した姿は艶やかで、善逸の視線が釘付けになっている。

 

 

「男は女郎と関係を持たないように2人組を組まされたり、店の奥まで入れなかったりと何かと制限があるからな。俺の女房と行動可能範囲は同じ方がいい。元々そのつもりで女の隊士を連れていく予定だったろう」

 

「んー……ちょっと可哀想な気がするが、まあ仕方ないか。宇髄家(お前たち)がここまでやって尻尾が掴めていないんだ。相当な相手だと考えて動いた方がいいのは確かだし、な」

 

 

相当な相手──十二鬼月、だろうか。

 

知らず知らずのうちに、手に力が籠る。

 

 

「ああ……で、だ。話を戻すぞ。婆さんがどこの店に潜入するか、って話になるんだが──鱗滝」

 

「はい」

 

 

宇髄さんに名前を呼ばれた真菰さんが、畳の上に紙を広げる。

 

地図だ。

 

 

「吉原の街を写したものです。宇髄さんの奥方3人からの情報と、それが途絶えてから私が外で集めた情報を踏まえると、さっき挙げた三店の中で、一番不審なのは“京極屋”ですね」

 

「2日前に女将が転落死したんだっけか」

 

「はい。その現場も探ってきました。砂で消されてはいましたが、血痕の広がり方から見るに、どう考えても()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「──よし、じゃあ私はその“京極屋”だな」

 

 

地図を覗き込んで、綾鼓さんが言う。

 

 

「私が初日で“京極屋”に鬼がいないか探る。いなければ“ときと屋”、そして“荻本屋”だ。お前たちは、天元の嫁と鬼はもちろんのことだが、()()()()がないかも探してくれ」

 

「通路?」「ですか?」

 

 

猪頭を被り直した伊之助と共に、首を傾げる。

 

善逸は綾鼓さんの話に真剣に聞き入って──いや、これは顔に見入っているだけか。

 

 

禿(かむろ)や新造みたいな子供ならまだしも、花魁を店から連れ出したなら、それだけで誰かの目に留まって、噂になっているはずだ。天元と真菰の耳に入っていないことを考えると、店同士を行き来できる方法があると考えた方がいい。店ごとに鬼がいる可能性もなくはないが、そんなに大勢いるならとっくに天元に尻尾を掴まれているだろう。

 ──それに、隠し通路があれば、私も店を行き来できる。それぞれの店で鬼を探すのが多少楽になる」

 

 

なくても無理矢理忍び込むけどな、と胸を張る綾鼓さん。

 

この人の頼もしさは健在だ。

 

 

「わかりました。宇髄さんの奥さんと、鬼、そして通路ですね。必ず探し出します!」

 

「俺、俺!俺が“京極屋”に行きます!綾鼓さんのお役に立ちますようへへへへ」

 

「嫁もう死んでるんじゃねえの?」

 

 

気持ち悪い笑い方をする善逸と、歯に衣着せなさすぎな伊之助に宇髄さんの拳骨が落ちた。

 

痛そう。

 

 

「さーて、そうと決まれば、皆、着替えとお化粧するよ!まずは炭治郎からね」

 

 

真菰さんに手を引かれ、女性ものの着物を渡される。

 

着付けはともかく、長襦袢だけは自分でするようにと別室に連れていかれる前に、ふと気になったことを口に出す。

 

 

「あの、綾鼓さんのさっきの言い方だと、1日で店を全部探るようなんですが……そんなこと、できるんですか?」

 

「ああ、そのこと?それなら大丈夫大丈夫」

 

 

にこり、と自信に満ちた笑みを、真菰さんから返された。

 

 

 

「閉じられた空間で鬼を炙り出すのは、あの人の得意中の得意だから」

 

 

 

 




綾鼓 汐
花魁として遊郭に潜入。
腕の痣は白粉を塗りたくって何とか隠した。
宇髄の嫁3人は顔見知りなので、早く助けてあげたい。
けど急いたら事を仕損じるからな。冷静に落ち着いて行こう。
ちなみに真菰の潜入は「左近次から預かっている嫁入り前の娘にそんなことさせられるか!」と綾鼓が却下。
玄弥に関しては”遊郭”のワードを聞いただけで真っ赤になって固まっちゃったので不参加。
普段は寝間着以外隊服しか着ない。

宇髄 天元
音柱。今回の遊郭潜入の指揮を執る。
柱たちの士気が上がったことで外をうろつく鬼たちはある程度片付けられ、隠れ潜む鬼たちの調査にまで手が回るようになった。
綾鼓のことは、任務中は「波柱」、任務外では「綾鼓の婆さん」と呼ぶことが多い。
お互いの気持ちのいい性格を気に入っており、よく意気投合する様が見られる。

鱗滝 真菰
柱である宇髄が多忙で動きづらい中、物資調達と情報収集を手伝った。有能。
でも店の中にまでは入り込めなかったので、街中でしか情報を得られなかった。
今まで綾鼓に断られ続けてきた化粧や着付けができてテンション高め。
4人が店に潜入後は、宇髄と共に店を渡った情報収集や外部からの偵察に務める予定。

かまぼこ隊
還暦ショックは強かったけど、任務に集中しなきゃなのでそこまで引きずっていない。
匂い・音・気配が鬼ではないので、”波柱鬼説”を聞いたら3人揃って首を傾げることになる。
え、あの人が鬼?どういう発想でそんなことになるの?
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