ジョジョの世界に転生しました。   作:鏡華

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満を持してオリ主登場!
……久しぶりの登場がこれでいいんですか?


波瀾霹靂

上弦の肆と伍の撃破。

 

そして禰豆子の太陽の克服。

 

戦局が大きく動く2つの報に、産屋敷邸にて緊急柱合会議が開かれた。

 

 

「何っで俺は上弦に悉く遭遇しねェんだよ……刀鍛冶の里から出た直後だったんだぞ……」

「こればかりは仕方ないだろう。甘露寺と時透、体の方はどうだ」

 

 

憤りなのか消沈なのかよくわからない言葉を溢す風柱・不死川実弥に、それを宥めつつ戦地から帰還した柱2名を気にかける蛇柱・伊黒小芭内。

 

 

「ありがとう伊黒さん!随分よくなったわ」

「僕も……まだ本調子じゃないけど……」

 

 

頬を赤らめながらそれに答える恋柱・甘露寺蜜璃に、それとは対照的に朴訥とした振る舞い──けれども、瞳には以前とは異なる強い光が宿っている──を崩さない霞柱・時透無一郎。

 

 

「後から合流した甘露寺隊と時透隊の隊士たちの連携のおかげで、刀鍛冶の里全体の被害も派手に抑えられたらしいじゃねえか」

「部隊の編成がさっそく功を奏したということだな!やはりお館様の采配は見事だ!」

「南無……犠牲少なく上弦2体を倒したとは……尊いことだ……」

 

 

戦闘での損耗の少なさを冷静に分析するのは、音柱・宇髄天元と炎柱・煉獄杏寿郎。

岩柱・悲鳴嶼行冥は涙を流してそれを言祝ぐ。

 

 

「今回のお二人ですが、傷の治りが異常に早い。何があったんですか?」

「その件も含めて、お館様からお話があるだろう」

 

 

己の精通する医学的視点から異変を指摘する蟲柱・胡蝶しのぶに、それをたしなめているようにも聞こえる声音で返す水柱・冨岡義勇。

 

 

鬼殺隊の”柱”総勢9名。揃い踏みである。

 

──1人を除いて。

 

 

「……失礼します」

 

 

わいわいと会議前の雑談に賑わう部屋に、1つの澄んだ声が響く。

 

お館様──産屋敷耀哉とも、そのご内儀──産屋敷あまねとも異なる声に、一瞬、困惑を滲ませた静寂が下りる。

 

その沈黙を破ったのは、その声に特段馴染みのある義勇だった。

 

 

「──真菰?」

 

 

その言葉を返事と受け取ったのか、声の主は襖を開けて、姿を現す。

 

隊服に身を包んだ女性隊士──その顔を見て、ようやっと幾人かはその素性に思い当たった。

 

 

「鱗滝じゃねえか。どうした?綾鼓の婆さんは一緒じゃねえのか?」

 

 

遊郭の作戦を共にした宇髄が、いの一番に声を掛けた。

 

彼女の強張った顔つきに剣呑な雰囲気を察知して、その声色にも緊張が混ざる。

 

彼女──鱗滝真菰は、その言葉には答えず──否、これこそが答えだと言わんばかりに、床に手をつき、頭を下げた。

 

 

「柱の皆々様におかれましては、ご壮健のこととお慶び申し上げます。波柱・綾鼓の名代として参りました、階級・甲の鱗滝と申します。

 ……本日の柱合会議には、綾鼓に代わり私が出席いたします」

「はァ?」

 

 

ざわっ、と空気が揺れる。

 

それは驚愕であったり、混乱であったり、不安であったり、様々な感情を内包したものだった。

 

 

上弦を撃退した矢先の、今後の戦いの趨勢すら決めかねないこの状況の会議を、柱が欠席?

 

職務放棄と見なされても仕方のない暴挙だ。

 

この場に出向くこともできないほどの負傷?あるいは、会議よりも優先するような特命の任務?

 

納得に足る理由を想定しながら、答え合わせを期待する柱たちの視線が真菰に集中する。

 

 

「──その件については、(わたくし)よりご説明いたします」

 

 

その後ろから、声がした。

 

気づけば、真菰の背後に産屋敷あまねが立っている。

 

当主奥方の登場に、柱たちは一も二もなく頭を下げた。

 

 

「……綾鼓様は、無抵抗の一般隊士への暴行の末、全治数ヶ月の重傷を負わせたとして現在謹慎中であり、他隊士への接触を禁じられております。

 加えて、本日の議題を鑑み、綾鼓様の会議への参加は不穏当であるという耀哉の判断でございます」

 

 

どうか、平にご容赦願います。

 

そう言って頭を下げるあまねと真菰の姿に、誰も何も言えなかった。

 

己が内に湧き上がる疑問や感情を飲み込み、思考を切り替える。

 

けれど、会議の後に真菰への質問責めが待ち受けているのは、誰の目にも明らかだった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

生きてさえいれば、負けじゃない。

 

 

地面に頭をこすりつけようが、

 

家が無かろうが、泥水を啜ろうが、

 

──圧倒的強者に跪こうが、死ぬまでは、負けじゃない。

 

 

生きてさえいれば、いつか勝てる。勝ってみせる。

 

 

そうだ。この体中の細胞が絶叫して泣き出すような恐怖も、耐え過ごせば生き延びられる。

 

この掌に汲まれた血を飲み干して、鬼になれば、特別な強者になれる。

 

そうだ、そうだ。人間には辿り着けない高みの存在になれる。特別になれる。

 

死ぬこともない、圧倒的な勝者に。

 

死ぬ──ことも──ない──

 

死ぬ────ことも────

 

 

唇が血に触れる直前、脳裏に浮かぶのは、灰となって散っていった鬼たちの姿。

 

あの、化物のように強い女に蹴散らされる、(じゃくしゃ)の姿。

 

 

手が止まる。

 

 

──鬼になって、あの婆に追われる身になって、俺は生き延びることができるか?

 

──怯え、隠れ、逃げ続けて、その先に「勝ち」はあるのか?

 

 

想像する。想像する。

 

あの婆から逃げ切る鬼の己を。あるいは、あの婆を殺す己の姿を。

 

──できない。

 

どんなに強大な膂力を得て、どんなに出鱈目な異能を得たとしても、“鬼”だ。

 

日の光に晒されれば、骨も残らず消える存在で──あの婆の、絶好のカモだ。

 

 

体が灰になり、この世から消え失せる感覚を想像する。

 

それだけで指先は冷たく白み、震えが止まらない。

 

 

だめだ、だめだ。

 

鬼には、なれない。

 

鬼になったら、遠からず俺は死ぬ。

 

でも、鬼にならなければ、ここで死ぬ。

 

どうする。どうすれば──。

 

 

息が切れる。視界が狭まる。

 

行き止まりの二択を突きつけられて、判断ができない。

 

どうしようもない恐怖に歯噛みして、目を強く瞑って──

 

 

ダン、と目の前に何かが着地する音。

 

地面越しに伝わる衝撃に思わず顔を上げると、既に鬼の姿は無く、代わりに見知った背中が目に映る。

 

ヒュ、と喉が鳴った。

 

それは、まさに今、想像の中で己を殺し尽くした存在。

 

 

こちらを振り向く。目が合う。

 

──かつてなく冷ややかで、怒りに満ちた眼差し。

 

 

手のひらの血は、全て指の隙間からこぼれ落ちていた。

 

 

 

胸ぐらを掴まれて、上体を引っ張りあげられる。

 

その瞬間に見た、それこそ鬼のような形相と、迫り来る拳。

 

この光景は、この世で最も恐ろしいものとして、魂の奥底に刻まれることになる。

 

 

 

 

***

 

 

 

ゼイ、ハアと喘鳴を上げる自分の喉がうるさい。

 

兄弟子──獪岳の重傷の報を聞き、じいちゃんの家へと走る。

 

いつ死ぬとも知れない鬼殺隊だ。こんな日が来るかもと、覚悟はしていた。

 

でも、それと死んでほしくないと願う気持ちは矛盾しない。

 

顔を合わせれば喧嘩ばかりで、あいつは俺のことが嫌いで、俺もあいつのことが嫌いだ。

 

でも、それでも──家族だ。

 

死んでほしくはないし、辛い思いもできるだけしてほしくない。

 

酷い怪我を負ったのなら、痛みに苦しんでいるのなら、それに寄り添うくらいのことは、俺にだってできる。

 

 

──あぁ、じいちゃんに会うの自体も久しぶりだ。

 

帰ったら、なんて言われるだろうか。

 

大怪我をしてまで鬼殺に徹した獪岳を見習えと、また檄を飛ばされるかな。

 

それとも、二人揃って鍛え直しだと雷を落とされるかも。

 

 

 

そんなことを考えながら駆けて、見知った大木の麓にたどり着く。

 

山の中にあるじいちゃんの家の手前にあるそれは、修行で放り出された時に遭難して死なないようにと目印として頭に叩き込んだから、幹の傷から枝の生え方まで、よく覚えている。

 

ここを一息で駆け上がれば、じいちゃんの家だ。

 

息を大きく吸って、脚に意識を向ける。

 

筋肉に力を込めて、速度を上げよう──と、したところで。

 

 

 

「──待たんか、馬鹿者!!」

「ひぇ、っぇええああああ!?」

 

 

 

突然降ってきた怒鳴り声に身がすくみ、そのまま木の根に足を引っ掛けて盛大に転けた。

 

顔面から思いっきり地面に行った。めちゃくちゃ痛い。

 

頭上でチュン太郎が心配そうに鳴いている。

 

 

「いってて……なんだよもう……」

 

 

聞き馴染みのあるその声は間違いなくじいちゃんだ。

 

俺に早々と気づいてさっそく一喝されたのかとも思ったが、どうにも様子がおかしい。

 

 

「いきなり押しかけて来たかと思えば、何の説明もなしに帰るつもりか!」

「説明はしただろ。あと三ヶ月は目覚めないだろうから、面倒見てやってくれって」

「そういうことではない!隊律違反をしてまで儂の弟子に手を上げた理由をまだ聴いとらん!」

 

 

木の陰に身を隠して、耳をすませる。

 

じいちゃんと言い合っているのは、どうやら波柱の綾鼓さんだ。

 

あの綾鼓さんが、隊律違反?

 

獪岳が倒れたのは鬼のせいだとばかり思っていたけど、違うのか?

 

 

 

「……は、別に大した理由なんてねえよ」

 

 

違う。

 

 

「そもそも獪岳(あいつ)のことは、ここで修行してた頃から気に食わなかったんだ。生意気なガキだってな」

 

 

嘘だ。

 

 

「だから殴った。目覚めた頃には体も鈍りまくって鬼殺隊ではやっていけないだろうな。せいせいするぜ」

 

 

そんなこと、思ってもいない。

 

懸命に悪ぶっているけれど、獪岳と、じいちゃんを慮っているのが、声色でわかる。

 

 

 

「……そんな下手な嘘で、泥を被ったつもりか」

 

 

 

何年の付き合いだと思っておる、と呆れたように嘆息するじいちゃん。

 

 

「鬼殺隊でどんなに後ろ指を指されようと、それを理由に暴れることなぞなかったお前が、今更そんな愚を犯すわけがなかろう」

「……私情で隊士を再起不能にしたのは事実だ。行いに相応の報いがあった。それだけのことだ」

「……そうか」

 

 

じいちゃんも、綾鼓さんも、黙り込む。

 

──詳しい事情はわからないけれど、きっと、綾鼓さんは、じいちゃんと獪岳を守ろうとしている。

 

事情も言えない何かがあって──それが公にされると、じいちゃんにも獪岳にも、きっとよくないことが起こる。

 

だから、言えない。

 

綾鼓さんは、全て自分の非として罰を受けて、墓場まで持って行こうとしている。

 

その、頑ななまでの覚悟を、じいちゃんも察している。

 

 

「……慈悟郎、雷の呼吸の継承は、悪いが諦めてくれ。あいつは──獪岳は、もう、鬼殺隊には……」

「まだじゃ」

 

 

綾鼓さんの言葉を遮るように、じいちゃんの力強い言葉が響く。

 

 

「儂は諦めん。善逸が居る」

 

 

突然出された自分の名前に、息が詰まる。

 

 

「あいつなら、雷の呼吸を極めることができる」

 

 

嘘のない言葉。偽りのない言葉。

 

──底抜けに、俺を信じている言葉。

 

 

「……そうか。後継に恵まれたな。お互いに」

 

 

そう、静かに笑う綾鼓さんの声が聞こえる。

 

 

 

──善逸、極めろ。

 

──泣いてもいい。逃げてもいい。ただ、諦めるな。

 

──信じるんだ。地獄のような鍛錬に耐えた日々を。

 

──極限まで叩き上げ、誰よりも強靭な刃になれ。

 

 

 

木の陰から、立ち上がる。

 

そのまま、じいちゃんの家に背を向けて、反対方向に歩き出す。

 

チュン太郎が、不思議そうにこちらを見上げた。

 

 

 

変わらなきゃ。

 

もっと、強くならなきゃ。

 

じいちゃんに応えるために。

 

兄貴の分まで、戦えるように。

 

 

 

湧き上がる感情に突き動かされるように、歩速はどんどん速まって、いつの間にか駆け出していた。

 

 

──柱稽古の報せが届いたのは、それから数日後のことだった。




綾鼓 汐
鬼の出現情報に駆け付けたら見知った顔が鬼になる数秒前だったのでブチギレ。
ジョジョ2部の若かりしシーザーがしていたような波紋を込めた素拳で昏睡状態にした。鬼に振るうべき力を隊士に向けたとして謹慎処分中。
未遂で済んだとはいえ、慈悟郎の性格ならそれすらも知ってしまうと何らかの形で責任を取りかねないと事実を秘した。
ちなみにすぐに現場に駆け付けられたのは、炭治郎と同様に獪岳の鎹烏に十二鬼月の出現情報をいち早く知らせるように言い含めていたため。

真菰&柱
綾鼓の謹慎はともかく、不穏当とは……?と疑問に思いながら会議に参加したが、痣の仔細(特に寿命の件)を聞くと、あぁこれはあの人が聞いたらとんでもないことになるわ、と納得。
当の本人たちは覚悟ガン決まりのため痣を出すことに躊躇はないが、綾鼓の心労を考えて、あまり不用意に伝えるのはやめとこうか……と取り計らいがなされた。

獪岳
鬼殺隊士であり善逸の兄弟子。
この後、三か月に渡る昏睡状態に陥るため、柱稽古にも無限城にも不参加。
目覚めた時には全てが終わっている。
幼少期から自己中心的に振舞い、それを咎められないまま歪んだ成功体験を積み上げてしまったが、今回の件がトラウマとして脳裏に焼き付き、己の行いが誰かの逆鱗に触れないかを恐れながら生きることになる。(いわゆる、『お天道様は見ている』の状態)
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