ジョジョの世界に転生しました。   作:鏡華

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裁判編。割とダイジェスト気味。

単行本未収録の設定に言及しているので注意。


柱合裁判

柱合会議。

 

各地に散らばる“柱”が本部に集結する、半年に一度の機会。

 

その議題は、現状における問題点や課題点、その解決案に今後の展望と、多岐に渡る。

 

限られた時間の中でつつがなく議論を進行させるため、事前の議題通達は必須だ。

 

いつも通り、鎹烏によって柱たちの持つ情報と意見が共有される。

 

しかし、その文には、あまりにも異質な言葉が綴られていた。

 

 

 

──曰く、『鬼を連れた鬼殺隊士がいる』。

 

 

 

***

 

 

「……と、いうわけで、しのぶと義勇が那田蜘蛛山からその隊士と鬼を連れてくる予定だ。()()()もこの件は把握している。間違っても独断専行はするなよ」

 

 

産屋敷邸の中庭。

 

敷き詰められた砂利を踏み鳴らしながら、話す影が複数。

 

 

「よもやよもや!師匠(せんせい)からそんなお言葉を聞くことになろうとは!驚天動地の極みだ!!」

 

「私は、綾鼓先生とお館様が仰るのであれば従いますけれど……。鬼、なんでしょう?大丈夫なんですか?」

 

 

炎柱・煉獄杏寿郎。

 

恋柱・甘露寺蜜璃。

 

 

真っ先に、波柱・綾鼓汐の言葉に応えたのは、この2人だった。

 

 

「少なくとも私と義勇は大丈夫だと判断した。お館様のご意思は私よりご本人から聞いた方がいいだろう」

 

「その鬼が人を殺しては取り返しがつかない!被害が出ないうちに隊士共々斬首するのが最善だと思いますが如何か!」

 

「南無阿弥陀仏……可哀想に……綾鼓殿、貴方は鬼に誑かされているのです……どうか目を覚まされますよう。南無阿弥陀仏……」

 

「僕は、お館様がいいならそれで……駄目ならすぐ斬りますし……」

 

 

煉獄の抗議に続いて、声を発するのは、岩柱・悲鳴嶼行冥と霞柱・時透無一郎。

 

 

「そうだよなあ。ここで『はいそうですか』なんて言えないよなあ」

 

「はい!そう教わってきましたから!」

 

「うんうん。素直に育ってくれて嬉しいよ。

……ただ、今回ばかりは少し待ってくれ。何、私も無条件で認めろなんて言わないさ。ちょっと話を聞いてくれるだけでいい。私の友人と教え子が命を賭けてるんだ。それくらいの譲歩はあってもいいだろう」

 

 

 

「──おいおい、いよいよ派手にボケちまったのかよ。まさか()()()()()()()()()()()()()()()()アンタからそんな日和った言葉が聞けるとはな」

 

 

 

「……天元」

 

 

しゃらり、と飾りを揺らしながら現れたるは、音柱・宇髄天元。

 

よく見ると、木の上には蛇柱・伊黒小芭内も控えている。

 

 

「鬼を庇うなんざ言うまでもなくド派手に隊律違反。“波柱”の名が泣くぜ」

 

「聞けばその隊士の育手、貴方の旧友だそうじゃないか。友誼(ゆうぎ)に絆されでもしたか?そんな調子だから()()()()()で揶揄される。俺は承諾しない。俺は鬼など信用しない」

 

 

双方は険のある顔つきで綾鼓を睨め付けた。

 

対して、綾鼓の表情は至って穏やか。

 

焦りや、後ろめたさは無い。

 

 

「──そうだな。お前たちが正しい。私たちがやっていることがとんでもない横紙破りなのは事実だ」

 

「ならば」

 

 

己が刀に手を掛ける2人を、手で制する。

 

 

「それでも、私はあの日、確かに人と鬼が手を取って抱き合う姿を見た。お互いの無事を言祝(ことほ)ぐ姿を見た。

──この奇跡が、鬼舞辻までの道を繋ぐかもしれない。私が40年、越えられなかった壁を打ち壊すかもしれない。その可能性を、信じてみたくなった」

 

「……やっぱり、老いたぜ。アンタ」

 

 

宇髄の声には、憤りも、呆れもない。

 

ただ、嘆くもの。

 

 

「アンタのことは派手に尊敬してる。誰よりも長く戦場に立ち、多くの鬼を屠ってきた文字通りの鬼殺の“柱”。なら──鬼の狡猾さも知ってるはずだ。救いようのなさも知ってるはずだ。誰よりも、ずっと。

 そのアンタが、“鬼”と罵られようと決して折れなかった他でもない“波柱”が、鬼を信じる?それは、隊律違反なんてものじゃ済まない。散っていった者を含めた、全隊士への裏切りだ。アンタだけは、言っちゃあいけない言葉だ」

 

「…………」

 

「──引退しろ、波柱。アンタは、身体はともかく、精神が隊士のそれじゃなくなっている。

……そこまで、鬼に縋りつきたくなる程に追い詰めてしまったのは、他でもない俺たちだ。不甲斐なさは認めよう。だからこそ、これ以上無理はさせたくない。後のことは俺たちに派手に任せて、ゆっくり余生を過ごしてくれ」

 

 

反論は出ない。

 

とりわけ綾鼓を慕っている煉獄からも、甘露寺からも。

 

その沈黙こそが、満場一致の同意を示していた。

 

 

「……は。色々言われる覚悟はしていたが、そんなことを言われるとはな。心を砕いてくれるお前たちに喜ぶべきか、砕かせてしまう己を悲しむべきか」

 

 

眉根を寄せて、悲し気に笑う綾鼓。

 

 

「まあ、そう結論を急ぐな。まだ柱も全員揃ってない段階で決める話でもないだろう。私の進退も含めて、な」

 

 

 

「──あらあら、何のお話ですか?」

 

 

鈴を転がすような声が、不意に届く。

 

 

「お待たせしました、皆さん。例の鬼を連れている坊やと、それを庇った冨岡さんを連れてきましたよ」

 

 

にこやかに笑う蟲柱・胡蝶しのぶ。

 

その数歩後ろに立つ、水柱・冨岡義勇。

 

その更に背後には、後ろ手に拘束されて隠に担がれている鬼殺隊士の姿が確認できた。

 

 

「ああ、しのぶに義勇。任務お疲れ様。炭治郎は……あーあー、傷だらけじゃあないか。こりゃひどい。顎に至っては骨が割れている」

 

 

綾鼓は砂利の上に転がされた隊士──竈門炭治郎の顎に手を添えて、陸の型・琥珀で応急処置を施す。

 

それを尻目に、伊黒がしのぶへと視線を向けた。

 

 

「待て胡蝶。冨岡が鬼を庇っただと?任務中にか?」

 

「はい。それはもう思い切り妨害されてしまいました。いやぁ、伝令がなければどうなっていたことやら」

 

「……柱から隊律違反が2人も出るとは。前代未聞だ。眩暈がしてくる。こんなことにかかずらっている場合ではないというのに」

 

「おや?冨岡さん以外にも鬼を庇われている方が?」

 

「あ、しのぶちゃん。それがね、綾鼓先生が……」

 

「──え?」

 

 

おずおずと切り出した甘露寺の言葉に、しのぶは目を丸くして綾鼓へと視線を移した。

 

確かに、彼女は今この隊士を名前で呼んだ。随分と親し気に。

 

説明を求める視線を背中に受けながら、最低限の治療を終えた綾鼓は立ち上がり、隊士から離れる。

 

それと入れ替わりに、隠が隊士を起こすため慌てて駆け寄るのを視界に捉えながら、しかししのぶの視線は、困ったように笑う綾鼓に釘付けにされていた。

 

 

 

***

 

 

 

木箱に刀を突き立てた実弥を諌めるより先に、炭治郎が飛び出していった。

 

やっぱり実弥には事前に話をしておくべきだったか……いや、そうしたら単独で狩りに行ってただろうからやっぱり言わなくて正解。

 

というか炭治郎、お前そんなズケズケ物を言うタイプだったんだな。ちょっとビックリしたぞ私。

 

一触即発。あわや軒先で刃傷沙汰かというところで、若様が姿を見せた。

 

助かった。ここで2人を気絶させると話がいつまで経っても進まないから。

 

若様の前に全員で膝をつき、お言葉を聞く。

 

柱からは反対意見が続々と。当然だろう。私だってそうだったんだから。

 

あのブラフォードでも為しえなかった、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という偉業。

 

手放しで信じるには、あまりにも荒唐無稽だ。

 

それに対する答えとして、ご息女が左近次の手紙を読み上げる。

 

水の呼吸一門の名前がつらつらと述べられていくのを、聞く。

 

 

──私も命を賭けよう、と言ったら一蹴された。

 

自分たちの死後、禰豆子によって殺された者の遺族の世話や、水の呼吸の継承を任せると、そう言われた。

 

 

「──これらの言葉が血鬼術による精神操作の類でないことは、波柱である綾鼓様から保証されております」

 

 

ご息女の言葉に、視線が集まるのを感じる。

 

何も言わない。言葉で取り繕う必要がないから。

 

尚も鎮まらない反対の声に、若様が考えを述べられる。

 

曰く、反対意見を同じ壇上に乗せるには、相応の対価が必要だと。

 

 

「それに炭治郎は、鬼舞辻と遭遇している」

 

 

 

────え。

 

待って若様。私それ初耳。

 

鬼舞辻と鬼殺隊が接触?私が鬼殺隊に入って以来、どころか、ここ数百年で初めてではなかろうか。

 

何にせよ、この情報はでかい。

 

柱たちにとっての竈門兄妹の存在価値が跳ね上がった。

 

異を唱えていた柱たちも、口を閉ざしていく。

 

ただ1人、実弥を除いて。

 

 

おもむろに、自らの腕を刀で傷つける。

 

垂れる血を、禰豆子の入っている木箱へと振りかけた。

 

また自分の身体をあんな使い方して!

 

確かに禰豆子が稀血に耐えればこの上ない証明にはなるが、実弥自身はそんなこと微塵も考えていない。

 

自分を襲わせて、返り討ちにしようという魂胆だ。

 

傷も痛みも、恐怖すらも度外視した捨て身の戦法。

 

こちとら危ないからやめろって口酸っぱくして言ってるんだぞ。

 

会議の前に説教と治療だな。

 

 

「禰豆子!!」

 

 

炭治郎の声。

 

そして、滴る血を拒絶する禰豆子。

 

──これで、禰豆子が人を襲わないという証明が出来た。

 

誰よりも己の血の効用を知っている実弥だ。心情はともかく、これで納得せざるを得ないだろう。

 

他の柱も同様だ。

 

ひとまず安心と、そっと息を吐く。

 

鬼舞辻を倒すと豪語する炭治郎を諭す若様の言葉で、裁判は締めくくられた。

 

 

この後、炭治郎は治療のために蝶屋敷に預けられるようだ。

 

先程の治療はあくまでも応急処置だし、その方がいいだろう。

 

 

「綾鼓さんも、会議が終わったらうちにいらして下さいね。隊士たちの治療に協力していただきたいですし、積もる話もありますから」

 

 

ニッコリと、圧のある笑顔を向けられる。

 

はいはい。わかったよ。

 

 

蝶屋敷かあ。久しぶりだ。

 

カナエ、元気かな。




綾鼓 汐
あくまでも裁判中は口出しせず。こればっかりは本人たちが証明するしかない。
鬼舞辻に逢ったってマ?言ってよ若様!
公の場ではちゃんとお館様呼び。立場の認識大事。
禰豆子が鬼殺隊公認になったので、引退の話もお流れ。まだ居座るぞ私は。
お説教と治療はきっちりしました。


最年長の先輩が鬼の肩持っててビックリ。とうとうメンタルやってしまいました?
色々無理をさせてしまっている自覚はあるので、それもピリピリしている要因。
早く楽させてあげたいけれどそんな余裕ないんです。不甲斐ない後輩でごめんなさい。
隊士どもは何でこんなに質が悪いんだ。そんなんだからいつまで経ってもこの人隠居できないんだよ!とおこ状態。そりゃ継子の教育も厳しくなるよね。

竈門 炭治郎
柱合裁判を何とか妹と生還。
お世話になった4人が自分たちに命を賭けてくれていたと知って号泣。
あれ、前にも泣いてる時にこの匂い嗅いだことあるな。この人……綾鼓さんっていうのか。会ったことあったっけ?
ともかく、味方してくれた人だ。後でお礼言わなきゃ。
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