ウォズ(と鳴滝)のRoad to vassal! 作:すごい時代、現代。
――――私がこの世界に来てから、既に3日が経過していた。
今回の異界渡航において、「仮面ライダー」を知らない世界に初めて渡ると言うこともあり、鳴滝氏にはあまり危険の無い世界を見繕うように頼んでいた。
その甲斐あってか、どうやらこのせかいでは怪人や化け物が存在すると言う話は眉唾物程度にしか語られないものらしく、私もやや変わった格好の旅行者としてすんなりと溶け込んでいた。
しかしここで誤算となったのが、魔王の存在について全く情報を得られなかった事だ。そもそも、魔王というのは魔性を宿す王と書く。それが示すのは、種族的あるいは性質的に魔とされるものを含み、なおかつ他者に王と言わしめるだけの要素を兼ね備えるものだ。その存在には他者とは隔絶された領域にあり、故にそれらの者達は実在非実在を問わず広く名が知れ渡る。伝説、奇跡、絶対、それらが高らかに謳われるところに必ず魔王の名は存在する。接触することは困難であっても、噂や都市伝説は簡単にみつかるはず。
そう思っていた時期が、私にもあった。
だがこの世界は私の知る世界と比べて、あまりにも平和だった。国家間の対立が存在しないわけではないが、世界規模の年少スポーツ大会を実現できる程度には均衡が保たれている。
当然、鳴滝氏には絶対条件として「魔王が存在すること」を言付けてある。彼が私を嵌めて何か得することもない以上、嘘をつかれたとも考えにくい。そればかりか、彼は助言までしてきた。
「最後に一応いっておくが、この世界で魔王と呼ばれる人物は今現在日本にいる。くれぐれも見逃さないよう」
あのときはずいぶんと親切だと感謝の念を抱いたものだが、今考えるとあの含み笑いの裏に何か別の意図があったように思えてならない。
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三日目。昼食を取り終えた私は気分転換でもと町を散策していた。
――――ここまで、この世界の魔王に関して何のヒントも得られていない。これは調査方針が間違っていたのか?
初めに調べたのは近年の戦争や紛争についての記録。そこから破壊的な技術や発明を漁り、念のため昔の歴史や世界各地の伝説なども調べ上げた。
だが、平和な世界ということなのかそれらの中に魔王の名は存在せず、いたとしても全く関係のない子孫であったり、ただの枯れ果てた伝承であるだけであった。魔王の伝承の類も、元居た世界とそれほど変わりないため、あまり参考にならなかった。
――――ここまで不測の事態を考え温存していた滞在資金をもっとつかうべきか?
決断を迫られているうちに、その歩みはいつの間にか街頭の広告用画面の前にあった。どこかのテレビ番組を映した画面に、いくらかの人だかりができている。せっかくの気分転換であるからと、足を止め目を向ける。
画面に映し出されていたのはスポーツ中継。折よく「世界サッカー」のテロップが画面をよぎり、この試合のハイライトらしき映像が流れる。
熱気に満ちたフィールドの中、ボールを受け取ったエースと思しき選手がフィールドを駆け上がる。そして、
ゴールへと迫った彼は、突如ボールとともに跳躍。
「うむ?」
片足を天に掲げると、その先端に剣を思わせる幻が生まれる。
「……は?」
掲げた足がボールにたたきつけられると、剣の幻影はボールとともにゴールへ飛んで行った。
「」
応じるようにキーパーが手に生じさせた巨大なドリルと激突。
「えっ」
火花を散らし、それを打ち破ってゴールへ突き刺さる。
「…………」
「――――必殺シュート、エクスカリバーがドリルクラッシャーを粉砕!このゴールが――――」
実況の中からその単語だけを何とか拾い上げるが、めまいを感じて手近な壁にもたれかかる。
なんというか、想定外すぎてついて行けなかった。
魔王の手がかりをつかめたという希望が、私の足取りを何とか支えていた。
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魔王はすぐに見つかった。そして、
「私に、君の『魔王・ザ・ハンド』を見せてほしい」
夕日が差し込む応接間で、私は彼に頭を下げていた。
――――この世界のサッカーには必殺技が存在する。
それを知った後は早かった。サッカーのファンサイトに魔王という選手や技はないか投稿すると、あっけないほどにすぐ見つかった。立向居勇気。元日本代表である彼は『魔王・ザ・ハンド』という技をもっていた。
翌日、私は彼がいる学校に出向き、面会を申し込んだ。本来通るはずのない急すぎる来訪であったが、この世界に来た際どこからか現れた私の身分証が意外なほどの力を発揮し、練習後の彼と会う約束を取り付けた。
「えっと、何か問題でもあったんですか?」
挨拶もそこそこに、ド直球で要件を切り出された彼は困惑した。
これではいけない。すぐに自分は何らかの組織の派遣員などではないこと、どちらかというといちファンとしての希望であることを伝え、権力の横暴のように見えた部分については謝罪した。
まだ完全に信用されたようではなかったが、話が彼のファンについての部分に差し掛かると、いくらか顔をほころばせてくれた。
「もしかして、あなたもサッカーをやられるんですか?」
「ああ、いくらか心得はあるつもりだ。(普通のサッカーなら)ストライカーを任されたこともある」
「そうなんですか!もしよかったら、あなたのシュートも見せてもらえませんか?」
「あっああ、かまわないとも」
つまり、必殺シュートを見せてほしいということか。盛り上がる雑談の熱に反して、内心冷や汗が止まらない。考えようによっては彼の力を引き出すともとれるが。
二日後の練習終わりに再び訪れることを取り決め、その場を辞したあと、降ってわいた難題に頭を悩ませつつ帰路についた。
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二日後の夕刻。彼に余計な気を遣わせないように、一般的な動きやすい服装に着替えた私はサッカーコートに足を踏み入れた。西日に染まるフィールドには立向居君の他にも彼のチームメイトらしき人影が練習を続けていたが、私に気づいた一人が立向居君に声をかけ、数分後にはすっかりPK戦の様相に切り替わっていた。
どうやらギャラリーとなるらしい彼らの一人から、礼を言ってボールを受け取りポジションにつく。
「では僭越ながら、この私がキッカーを務めさせてもらおう。よろしく頼むよ」
「はい!こっちも準備は出来ています!」
――――異界とはいえ相手は魔王、相応の礼儀を持って臨ませていただく
目を閉じ、静かに息を吐き出す。つられるように体中の闘気が勢いを増していく。
「……何だ、この気配は?」
あふれ出る闘気は、キーパー以外の観客にも感じ取れるほどその濃密さを増していく。
――――さすがに、たった一日で習得するのには骨を折ったが、
見る間にウォズの背後から黒い渦となって顕現した闘気が、ウォズの背丈を超える守護霊とでも言うべき巨像を形作る。上半身だけで現れた銀色の光沢をきらめかせる虚像はしかし、「ライダー」と書かれた二本の触角つきの奇妙な仮面から、正面に立っているだけで気圧されるような視線を確かに放っていた。
――――我が魔王のためならば、この程度苦でもない!
「なっ、何なんだあれはっ!」
「解らん。だが、初めて見る必殺技である事は確かだ」
にわかにギャラリーが騒然とし始める。しかし、この技はここで終わりではない。
「未来の導き手ウォズ……アームドッ!」
その名を宣言すると同時に巨影が形を崩し、いくつかのパーツに分解されると同時に飛翔。舞い戻るように再びウォズのもとに集まった光弾は、再形成され今度は等身大の、だが先程の巨影と同じ形相を持つ鎧を作り出す。
直ちにギャラリーは混沌のるつぼと化した。唖然とする者。感嘆する者。模倣を考える者。陰謀を疑う者。記憶をたぐる者。何処かへ駆け出す者。etc…… いずれにせよ、彼らはまた遙かな高みへ食らいつくための切っ掛けを得たことになるだろう。
しかし、そんな些細なことは今のウォズの知ったことではない。
「では行くぞ、立向居君!」
「っ、はい!」
声をかけると、呆然としていた立向居君の目に闘志が戻る。そうだ、それでこそ魔王の名を担う者だ!
<ビヨンド ザ タイム!>
解放されたレバーを押し込み、構えを取る。するとどこからか放たれたいくつもの光帯が、ボールとゴールの間で折り重なって立方体をかたどり、同時に鎧の周囲を旋回するように「キック」という文字が躍る。
「タイム……エクスプロージョン!」
猛然と踏み込んだウォズの蹴撃、そして旋回するように躍る「キック」という文字がボールに重なり合い、放たれたシュートはまず空中に浮かぶ立方体に突き刺さり、その中に侵入する。
そしてそのまま立方体を押し込むように直進した。なおもランダムな回転を続ける立方体の内部では、ボールに込められたエネルギーが今にも爆発せんとその光量を増していく。
騒然とするフィールドの中、必殺の一撃が向かう先にいる少年は揺らがず足を踏みしめ、こちらも絶対の気合いを自らに纏う。
紫闇色の闘気が背後に立ち上がり、魔神を超えた魔王の姿を作り出す。
「おお、これが、」
「魔王!」
咆哮とともに覇者の気配が吹き荒れ、周囲に漂っていた気配を塗り替える。
「ザ・ハンド!」
飛来した立方体に両の掌を叩きつけ、その暴威を無に帰そうと拮抗する。周囲に荒れ狂う暴雨の中、魔王の拳と膨張したエネルギーの猛威に耐えきれなくなった立方体が、突如として爆散する。
白煙に包まれるゴール前。ギャラリーが固唾を呑んで見守る中、私は確信していた。
魔王を試すため放った一撃が、本気の魔王に届くはずが無い。
やがて煙が晴れたゴール前。そこには息を切らしながらも、確かにボールも受け止めた立向居君が立っていた。
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ややしばらくたった後。
「急なお願いを聞いてくれてありがとう。君の『魔王・ザ・ハンド』、素晴らしい気迫だった」
「こちらこそ、すごいシュートでした!あんなシュート、見たこと無いです!」
まあ、そうだろう。このシュートは昨日生まれたのだから。
「そうか、この技は遠い所にいる私の特別な人から教えてもらったものだ。この世には、君たちの知らない世界がある。そんな世界での君たちのの大いなる挑戦を、私も応援させてもらおう」
怪しまれないよう、事前に考えておいた文句を並べ立てていく。嘘は言っていない。
「申し訳ないが、次の予定が押しているので失礼する。最後にもう一度、立向居君、君に大いなる感謝を」
「はい、ありがとうございました!」
見送りを受けながら、そそくさとその場を去った。
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日も落ち始めた頃。私はとある裏路地で立ち止まる。
「ここならいいだろう、出てくると良い」
声を上げながら振り返ると、一つ先の角から苦々しげな表情をした少年が姿を現す。
「何のご用かな?私は早急に帰らなくてはならないのだが」
「お前は何者だ?化身アームドはこの時代には存在しない、身分証も不自然だ。何が目的だ?」
お前を逃がさないと、暗に告げる少年を前に私は首元を緩める。
「私はウォズ。今は魔王を学ぶ者。君の心配してるようなことにはならないよ、フェイ君」
「ッ!?」
一瞬、彼の体がこわばると同時に解かれた帯が、私を包み込みその場から姿を消した。
もう1話だけつづくんじゃ。(最終回に間に合わなそうなのでこっち先に投稿した。)
次回、「新銀河帝国の魔王」。
これ以降ネタ切れとか言うひどいオチを見届けろ!