ポケデレ〜不思議な生物とシンデレラガールズの日常〜 作:葉隠 紅葉
リングマの咆哮が轟き渡る。それはおぞましいほどの恐怖であった。全身がゾワリと総毛立つ。みくは無我夢中で逃げ出した。キャンプ場から離れようと死に物狂いで逃走するみくを追いかける一匹のリングマ。
どうやら事件当時にそばにいた人間に対して復讐をはじめたらしい。確かにその時撮影の為にとヒメグマの最も近くにいたのはみくである。けれどもこれはあんまりではないか。
キャンプ場は悲惨な事態になっていた。暴れ出すリングマの集団になすすべもない人間達。リングマのひっかく攻撃をうけて腹からおびただしい血を流す人間。こわいかおや咆哮によって絶望しパニックを引き起こす子供達。きりさく攻撃によってエンジンが破壊され爆発していく車達。
メラメラと火が燃え上がる。きっと車のガソリンに引火したのだろう。キャンプ場の中で巨大な火事が発生した。キャンプ場に常駐していたスタッフたちも自身のポケモンで応戦しようとするが芳しくないようだ。
血だらけで倒れ臥す撮影スタッフ。リングマの暴力的な攻撃によってボロボロになった車やキャンプ用具。恐怖で悲鳴をあげながらにげまどうキャンプ客。キャンプ場はいまや地獄のような光景となっていた。
「うぅ…」
生涯最大の恐怖と絶望を味わいながら涙をこぼすみく。そのまま彼女は夢中で足をかけた。スタッフから離れるべきではない。そんな正論は恐怖と混乱を引き起こした人間には無意味である。ましてや彼女に取っては二度目の災害である。かつて自身の目の前で引き起こされたポケモンによる無情な暴力。
かつてのトラウマを思い出したみくは悲鳴をあげながら夢中で駆け出してしまったのだ。そのまま彼女は逃れようともがくうちに、森のふかくの方まできて逃げてしまったのだ。
そこは深い森林であった。人間が普段立ち入らないような木々が生い茂る場所であった。太いカシの幹に手をつきながらみくは過呼吸を抑えようと努力する。キャンプ場から離れたこの場所では最早助けを呼ぶこともできない。
撮影のためにと貴重品をバッグの中に置いてきてしまったみく。当然スマートフォンといった連絡手段もキャンプ場に置いてきてしまった。彼女は着の身着のままの状態で夢中で逃げてきたのだ。そんな彼女に対して一匹のリングマは岩をなげつけてきた。
みくの体を狙ったその一撃。その恐ろしいまでの速度と威力にぞっと顔を青ざめる。もしも岩に当たってしまっては体がぐちゃぐちゃになってしまうだろう。その恐ろしい前足で器用に岩や木を引き抜くリングマ。そのまま手にした凶器をこれでもかと彼女の方へと投げつけてくる。
みくの足に巨大な木片がぶつかった。勢いそのままに地面へと転げてしまうみく。そうしてリングマは静かに彼女に近寄った。彼女を追い詰めるようにのしのしと歩みを進めてくる。それはまるで死神の鎌のような恐怖であった。
「あぁ…ぁ」
みくは尻餅をついたままリングマをそっと見上げた。恐ろしいほどの怒りと殺意にみちた表情。みくは呆然とそのポケモンを見つめるのであった。
人は本当に恐怖すると思考をやめてしまうものらしい。彼女はただ呆然とそれを見つめた。血管をブチ切らんばかりに怒髪するリングマはそのまま彼女に近寄った。きっとスタッフの内臓を引き裂いた時についたのだろう。そのリングマの前足からはぼたぼたと鮮血が垂れていた。
死
考えた事すらなかったそれを実感するみく。生涯味わったことのない恐怖。いいや違う、生涯で二度目の恐怖であった。みっともなく涙をながす少女。みくは思わずぎゅっと硬く瞳をつぶった。
助けてと、小さくつぶやいた。そんな彼女の声に見向きもしないリングマ。そうしてリングマはその片腕を突き刺そうと振り上げる。そんな彼女達の間にーー
「ピィイイイイ!!!!!」
キャタピーが
飛び出してきた