ポケデレ〜不思議な生物とシンデレラガールズの日常〜   作:葉隠 紅葉

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【大原みちるとゴクリン2】

 親族も交えた長きに渡る家族会議。それによってかの生物はひとまずはここおおはらベーカリーで保護する事になったのである。とはいえペットのように、ではなく住居と食事を提供する半分野良犬状態でだが。

 

生態がわからない

食事の嗜好がわからない

そもそも何者なのかもわからない

 

 とまぁ分からない事尽くしで途方にくれたとも言える。しかし誰かが発した「彼がいれば売れ残りの処分の手間が省けるのでは?」という言葉がつるの一声となった事は確かであろう。こうして彼はパン屋にて市民権を獲得することになったのである。

 

 ちなみに名前はペロリンと名付けられた。なんでもかんでもペロンと食べてしまう底なしの食欲からいつしかそう呼ぶようになったのである。ちなみに第一発見者であるおじさんに飼わないんですか?と聞いて見たところ全力で拒否されたみちる。普通の人間にとっては確かに恐ろしい存在なのだろう。主に食費的な意味で。

 

 

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 与えられた犬用ハウスでぐっすりと眠るペロリン。彼は昼過ぎに起きると店に顔を出し売れ残りや常連からの差し入れを食すのである。午後は散歩に出かけ、夕方にハウスに戻ってはまたぐっすりと眠る毎日。悠々自適にもほどがある暮らしだろう。

 

 彼の世話は主にみちるが行なっていた。といってもパンを与えたりハウスに水を用意してやる程度だが。どうやら彼はその名の通り好き嫌いもしないようであった。肉や魚も勿論食べたしどんぐりやら生野菜やらももしゃもしゃと好んで食べるのである。世話のしがいが有るのか無いのかよく分からない生物であった。

 

「ベロンチョちゃんは良い子だねぇ〜」

 

「おばあちゃん、その子の名前はペロリンです」

 

 店に来た老婆が震える手でペロリンを撫でる。そんな老婆に対してみちるは静かに訂正をする。老婆はカートに載せたバッグから飴を取り出すと彼に対してたべさせるのであった。飴玉をコロコロと美味しそうに舐めるペロリンを見ながらみちるは掃除する手を止めて思考にふける。

 

 

改めて観察してみる

ペロリンは何者なのだろうと

 

 第一発見者であるおじさんは差し入れをしながら「こいつはUMAに違いない、それか宇宙からの侵略者だ」と今でも強く主張している。それに頷く人間もいるが多くは否定的であった。みちる自身もまた懐疑的な目を向けざるをえなかった。こんなのほほんとした軟体生物が侵略者なのだろうかと。

 

 近所の野良猫に返り討ちにあう彼が宇宙生物であるとは到底思えないみちるなのであった。というか弱過ぎやしないだろうか。メスのミケ猫に泣かされて自身の胸元でわんわん泣いていたペロリンのことを思い出す。うん、宇宙生物ではなさそうだ。

 

 とはいえ新種である可能性はありそうだ。彼女自身もネットやら図書館やらで散々探したが類似した生物すら見いだすことはできなかったのだ。ペロリンはなんらかの新生物である可能性は大いにある。もしもそうなら見つけた自身は有名人になれるのでは?いや見つけたのは常連のおじさんだが。

 

 ちなみに一度だけ魔がさした事がある。この未確認生物をマスコミに報せれば有名になれるかもと考えたのだ。テレビに映ってレポーターにちやほやされる想像をしながら悦にひたるみちる。小学生特有の甘い思考であったと言えるだろう。

 

 その為にはこの生物について動物医に相談してみなければ!医者から新種であるとの太鼓判を押して貰うべきだと考えた彼女は一度遠縁の叔父が経営している動物病院に電話で聞いてみた事があったのである。興奮しながらダイヤルを押したみちる。その時の動物病院の回答が以下の通りであった。

 

 

Q.歯も肺も心臓もない、ボール型スライムって診てもらえますか?

A.そんな生物は存在しません

 

 なんという事だろう。有名な医大学を出た動物医に名指しで存在を拒否されるペロリン。寝言は寝て言えとまで言われた時には泣きたくなってしまった。本当にいるのだと、今自身の膝上でぐーすーと惰眠を貪ってる緑まんじゅうの写真をとって送りつけてやろうかと考えるみちる。結局は途中でやめたが。

 

 

 このように混乱しつつも何だかんだ言って平和な毎日。商店街の住民と家族からの愛を一心に受けペロリンは健やかに育つのであった。

 

 なんだかんだ言ってみちる自身もペロリンのことを気に入っているのであった。彼の世話をすることに嫌な気分はしなかったのだ。食事の度に自身にぽよんぽよんと駆け寄る姿が可愛いと言えないこともなかったし。

 

 彼自身もまたみちるのことを気に入っているようだった。数日にいっぺんは寝室に来ては同じベッドで眠るのが習慣となっていた。また、お風呂にだって一緒に入る程度には仲がよくなった。彼もまたみちるの事を気に入っているのだろう。

 

 

 とまぁこんな具合になんだかんだ言って穏やかに暮らし始めたみちるとゴクリンなのであった。まさか彼女自身も、数年後に彼と共にアイドルになるとは夢にも思わなかった事であろう。

 

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