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sideヴィルヘルム
「永遠に明けない夜を望んでいるのか。浅い男だ。」
誰だ、コイツは?急に背後に現れやがった。
さっきまで男のいる所には誰もいないのは間違いなかった。
なら、影が薄い奴なんだな、って笑い話にする所なんだが、このピリつく氷の様に冷たく肌を突き刺す巨大な存在感を見逃す訳がない。
なら、考えられることはただ一つ。
急にその場に現れたということだ。
「クラウディア下がってろ。、、、、テメェは何者だ?」
クラウディアを後ろに下がる様に言いながら前に出て、彼女を庇う位置に立つ。
「、、、、、、、、、、」
「何か言ったらどうだ?さっきは人の願望を盗み聞きしておきながら浅いとか何とか馬鹿にしてくれやがって、殺すぞ?」
「、、、、、、、、、、」
殺気を放ちながら殺す宣言をするがそれでも無言を貫く男。
「ハッ。なんだよ。ただの根暗野郎かよ。人を馬鹿にする前に自分の対話能力を磨いてから出直すんだなぁ。」
身を翻し帰ろうとすると、遂に男が口を開いた。
「き、、、ち、う。」
「あぁん?」
小さい声で呟くように放たれた言葉は聞き取れなかった。
言いたいことがあんならデカイ声で話せと怒鳴ろうとしたら、その必要は無くなった。
男が聞こえる大きさの声で同じ内容をもう一度繰り返して放たれた。
「貴様は違う。」
ハッ?意味不明な言葉の所為で頭が真っ白になった。
聞き返そうとしようとしたが、突然男の姿がその場から消えた。
何処に行ったは直ぐに分かった。
これ程までの強く、大きな魔力と存在感を持つ者を一度認識したのだ、嫌でも感じ取れる。
その存在感の圧力の発信点は俺の直ぐ真横。
首を回して見渡すよりも早く、目だけが反応して、横目でそいつの姿を見ることができた。
「故に邪魔だ。道を開けよ。」
男が無造作に振るった腕は、鞭のように早く俺の腹に叩き込まれた。
「ガッ!?」
ドンッ!?と皮膚と皮膚がぶつかり合ったかとは思えない鈍い音を響かせ、次の瞬間には俺の脚は地面から離れ背後の樹の幹に身体を叩きつけられていた。
身体が、予想していた以上のダメージに悲鳴を上げ、上手く動かすことができない。
そんな俺を、もう興味を無くしたのか、無視して男はクラウディアの元にゆっくり歩いて近づいている。
「我が名は、ルートヴィヒ・ヴァン・ローゼンクランツ。愛しい我が白銀の天使よ。」
「あ、あぁ。」
クラウディアは近づいて来るルートヴィヒから逃げようともしない。
俺が容易く無力化された事から逃げても無駄だと諦めているのか、それとも違う理由なのかは分からないが、今のクラウディアに抗う事は不可能であろう。
力を身体に巡らせようとすると、身体の彼方此方からズキッと鋭い痛みが走る。
まるで刃物のような鋭いもので斬られた時のような痛みだ。
エイヴィヒカイトは人を魔人に変化させ、人外の力を得ることができるが、格上には絶対に勝てないと思わせる程、力に差が出るものだ。
そして、詳しくは分からないがルートヴィヒをエイヴィヒカイトの位階は恐らく創造だ。それも上位の大隊長クラス、いやもしかしたらラインハルトクラスに届くほどかもしれない。
そう考えているうちにルートヴィヒはクラウディアの前に辿り着き、膝ま付いて、話を続ける。
「クラウディア、君は私の光だ。故に共に生きて欲しい。君を死なせたくは無いのだよ。だから、私の手を取ってくれ。君を私と同じ存在と化し、君が見たがっていた光景を見に行こう。そこで私と永遠に、世界が終わるまで、生きて、生きて、生き続けよう。さぁ。」
「、、、、、、、、」
コイツ、なんだ?
クラウディアに惚れたからずっと一緒にいて欲しい。って感じてプロポーズしてやがんのか?
身勝手な想いをクラウディアに押し付けるルートヴィヒに対して虫唾が走る様な不快感を、怒りを抱いた。
コイツはクラウディアを好きだと、大切にすると言っているのに、クラウディア自身の気持ちを聞こうともせず、自分の考えが正しい、最善だと押し付けている。
クラウディアの考えなど考慮していない、自分勝手だ。
だから、こんな奴にクラウディアを渡すわけにはいかない。
身体中に力を巡らせる。
痛みが全身に鋭く走るが、まだ動く。つうか、動かなくても動け。
「どうした?クラウディア、私の手を取れ、取るのだ。」
ルートヴィヒの手がクラウディアに近づいていき、触れる瞬間。
「 形成、ーー闇の賜物!
(クリフォト・バチカル!)」
俺の言葉に反応して、心臓に宿る聖遺物がドクン!と鼓動を上げ、身体中の血が流れ出している傷から、血の色の杭が全身に生える。
そして、右腕から生えている杭の一本を、クラウディアに触れようとしているルートヴィヒの汚ねぇ腕に向かって、銃弾のごとく放った。
ライフル弾には及ばないが、リボルバー程度の速さと貫通力を持ったこの杭を奴は絶対に躱す事はない。いや、躱せないと言った方が正しい。
俺はこの杭の投擲を拳銃以上の精度で放つ事ができるため、クラウディアに当たることは絶対にない。
だが、ルートヴィヒは俺を知らない。むしろ、自分の邪魔をする物が放った攻撃だ。クラウディアを大切にしているなら絶対に防ぐ筈、俺ならそうする。
「フッ、」
ルートヴィヒは腕を軽く振るい、杭をバキリ!と砕いた。
だが、それは予定通りだ。これで一瞬、ルートヴィヒの動きに間が空く。
その間を使ってクラウディアとルートヴィヒの間に入り、クラウディアを抱え背後に飛び退く。
「ヴ、ヴィルヘルム?」
クラウディアが何故?と言わんばかりの表情で名前を呼んでくる。
もしかして、コイツは俺があの一撃で死んだとでも思ったのか?
「ハッ!この俺があんなへなちょこの一撃で死ぬ訳ねぇだろうがよ、馬鹿野郎。下がってろ。今、あの気持ち悪りぃ奴ぶっ潰してくるからよぉ!」
クラウディアを降ろして、再びルートヴィヒと対峙する。
今度は油断はしない。これでも創造階位の奴らと同等の魂を喰らった魔人だ、隙を着けば十分にやれるはずだ。
両腕の掌から杭を生やし、二刀流の構えを取る。
こちらから、動くような事はしない。格上相手に先読み負けをしたらそこで待つのは死のみだ。
だから、自ら動きはしない。ルートヴィヒの動きを観察し、次の手を予想して次の手を打つのだ。
「、、、我が愛しの天使を迎え入れる前に、鬱陶しい蝿を潰すとしよう。」
「誰が蝿だ。俺には恥ずかしくねぇ名がある。
ヴィルヘルム・エーレ」
俺が名乗りを上げ終わる前に奴の姿が消えた。
直ぐに右に向き、杭を交差させて防御体制をとった。
ギリギリのところで間に合ったようで直ぐに強い衝撃がドォン!杭から伝わってくる。
ズルズル!とブーツと地面が擦れる音を出しながら背後に下がる。
交差した杭は先程とは違い運良く持ち堪えてくれたようでギチギチ!と突然現れたルートヴィヒの拳と拮抗している。
「ほう、反応したか。先程とは違うようだ。」
「当たり前だ。さっきは少し油断してただけだ。それにテメェ、名乗りの途中で遮りやがって、戦いの作法もしらねぇのか?」
「作法?そんなものに興味などない。ただ、蝿が野良犬だったというだけで貴様は取るに足らない存在だ。興味もない。」
「俺もテメェになんて興味なんて持たれたくはねぇよ。ただ、よかったぜ。テメェは強いが、俺でも殺せそうだ。」
「、、、なに?」
急にルートヴィヒの力が上がり、杭がバリン!バリン!とガラスが砕けた様に壊された。
俺は杭が壊された勢いで後退し、再び杭を生み出す。
「分からんな。貴様はボロボロ、それに対して私は無傷。この状況で何故その考えに至る?分からん、分からない。どうしてだ?」
本当に分からないと言わんばかりの表情で聞いてくるルートヴィヒ。
「そうか、わからねぇか。なら、教えてやるよ。」
俺は上から目線で堂々と言い放つ。
「テメェより速い奴を知っている。一撃でも喰らってはならない拳を持つ奴を知っている。お前より強い奴を知っている、だから」
シュライバーとか蓮炭とか、マキナとかザミエル。さらに、ラインハルトとかあのクソ野郎もそうだ。
「お前に俺は負けない!」
「そうかならば、見せてやろう。私の力をっ!?」
急にルートヴィヒが話すのをやめ、背後に飛び退いた。
すると、ルートヴィヒのいた場所を光の熱線が焼き貫いた。
この攻撃は、見覚えがある。これは、
「チッ!メルクリウス!テメェ!今回は俺に任された任務のはずだろうが!?何故、ハイドリヒ卿が!黒円卓全員が此処にいやがる!?」
聖槍による聖なる一撃。並大抵の奴なら触れるだけで蒸発する神殺しの光だ。
そして、その光の放たれた方向には風になびくライオンの様な長髪に黄金の槍を持ったラインハルト。
その傍に立つ影の様な男。メルクリウス。
その二人の背後に並び立つ、俺と同じ黒円卓の魔人達。
「控えよカズィクル・ベイ。貴様ではあれには勝てぬよ。それに、あれはハイドリヒ卿が求める強者。貴様に独占などさせぬよ。」
ザミエルがタバコをふかしながら、ラインハルトの代わりに答える。
「貴様らにつきやってやる必要は私には無い。」
「ヴィルヘルム!?」
ルートヴィヒがクラウディアを強く後ろから抱きしめている。
すると、クラウディアの身体がルートヴィヒの中に取り込まれていき、遂には完全に取り込まれた。
「テメェ!クラウディアを出しやがれ!」
「私は彼女が求める場所へ行く。来るなら来るがいい。全霊で相手をしよう。」
そう答えると闇に紛れて消え去った。
〈此処で物語の場面は切り替わる〉
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あれから俺達はルートヴィヒを追い、ヴェヴェブルスブルグ城(骸骨巨人モード)に乗り、北極へ進軍を始め、遂にルートヴィヒに追いついた。
しかし、そこにいたのは、読み取る事のできない言葉を呟きながら宙に浮かび、生気の感じられなかった白い肌を炭のような黒色に染め、紅い魔力を纏い、ラインハルトと同等のプレッシャーを放つ異常な状態であった。
そんな中、ラインハルトは冷静に言い放つ。
「私が求めるのは、完全勝利だ。受けるがいい。」
「 形成ーー聖約・運命の神槍
(ロンギヌスランゼ・テスタメント)」
その言葉と同時にラインハルトの手には黄金の槍が現れる。
そして、ラインハルトはヴェヴェブルスブルグ城の骸骨の口から、森で放った光線と同種類のものだが、威力が桁違いの物をルートヴィヒに放った。
その姿や攻撃手段は、どこかの谷のナントカに出てくる半熟巨人の様だとは口には出さない。
しかし、ルートヴィッヒは俺が信じることができない行動をとった。
「Gloria virtutem tamquam umbra sequitur. (栄光は影のように美徳に従う)」
ルートヴィッヒは、本来回避するであろう熱線が迫りくる中、回避行動をとらず理解不明な言語で詠唱をした。
すると、ルートヴィッヒの身体が揺らぎ黒い影大きく広がり瞬時にルートヴィッヒの身体を覆いつくす大きさとなり、盾となった。
熱線は影の盾と衝突した、、、ということはなく、影の中に全て音もなく吸い込まれていった。
「な、んだと!?」
俺が喰らえば一瞬で蒸発待ったなしの一撃を、俺たちが使う創造の詠唱より明らかに短い詠唱で防いだことに俺は驚きを隠せなっかた。
しかし、次の瞬間もっと俺を驚かす出来事が起きた。
ヴェヴェブルスブルグ城(骸骨形態)の影から上に昇るように吸い込まれた熱線放たれ、ヴェヴェブルスブルグ城を襲う。
ものすごい衝撃がヴェヴェブルスブルグ城に搭乗している俺たちを襲うが、自らの攻撃を返されただけでどうにかなるヴェヴェブルスブルグ城とラインハルトではない。
そんな中、小手調べはもう終わりだと言わんばかりに冷静に、そして冷たくただ一言命じる。
「総員出撃。」
その言葉を待っていました言うかのように一番槍をかって出たのはこいつ。
「 さらばヴァルハラ 光輝に満ちた世界 」
「 聳え立つその城も 微塵となって砕けるがいい 」
「 神々の一族も 歓びのうちに滅ぶがいい 」
「 創造ーー死世界・凶獣変生!
(ニブルヘイム・フェンリスヴォルフ!)」
絶対回避の理を纏い、俺と似たような容姿の子供(詐欺)、ウォルフガング・シュライバーが天を駆け、神殺しの獣となりてルートヴィッヒの喉元めがけて突き進む。
それに続くのは、金髪の長髪をポニーテールにまとめ、葵雷を纏う剣を構える少女、ベアトリス・ヴァルトルート・フォン・キルヒアイゼン。またの名をヴァルキュリア。
「 私が犯した罪は 」
「 心からの信頼において あなたの命に反したこと 」
「 私は愚かで あなたのお役に立てなかった 」
「 だからあなたの炎で包んでほしい 」
「 我が槍を恐れるならば この炎を越すこと許さぬ! 」
「 創造ーー 雷速剣舞・戦姫変生!
(トール・トーテンタンツ・ヴァルキュリア!)」
詠唱を終えると、少女はその身体を閃雷と変え仲間に道を示すべく獣と共に駆ける。
二人とも普通の相手であれば触れさせることも無く、一方的にに蹂躙することが出来るが、ルートヴィッヒはそう容易くはいかない。
二人の攻撃はルートヴィッヒを捉えることができてはいるが、煙を掴もうとしているかのようにすり抜けていく。
二人の魂の総量が足りていないのか、それとも一方は速度特化、もう一方は攻防一体に速度も上がる器用貧乏な創造の性質がルートヴィッヒ相手には分が悪いようだ。
それでも二人はルートヴィッヒの影を飛ばす攻撃を躱しながら攻撃を続けていく。
「鬱陶しい、蝿どもが。影よ、咢となりて噛み砕け。」
傷つく事はないが、目障りに思えたのか行動に移すルートヴィッヒ。
ルートヴィッヒの言葉に反応し、影が集まり獣の頭を形どる。
それも一つではなく、大型犬、獅子、虎、狼、様々な肉食獣の形となり頭一つで天を駆け、シュライバーとヴェアトリスへと襲い掛かる。
「ハッ!遅いんだよぉ!このノロマ!止まって見えるよ!」
迫る頭の大群に余裕だと言わんばかりに啖呵を切り、絶対回避の理を纏い圧倒的速度で頭たちを引き離す。
しかし、今までどうりルートヴィッヒへ攻撃を加えるのは難しくなった。
一方のヴェアトリスは、無数の頭をギリギリのところで躱し続けていたが、物量に押され遂に左手に喰らいつかれ、その勢いのまま捥ぎ取られた。
それでもヴェアトリスは動きを止めない。
止まれば最後、一瞬で喰らいつくされてしまうと分かっているからだろう。
このようにして身動きを止められた二人の次に前へ歩み出たの巌のような大男。
小さくだが、よく響き渡る力強い声で詠唱を始める。
「 死よ、死の幕引きこそ唯一の救い 」
彼の名は、ゲッツ・フォン・ベルリッヒンゲン。
「 この毒に穢れ、蝕まれた心臓が動きを止め 」
自身の肉体と魂自体が機神・鋼化英雄(デウス・エクス・マキナ)という聖遺物である者。
「 忌まわしき毒も、傷も、跡形もなく消え去るように 」
そして、メルクリウスに命を弄ばれた男であり、自身の名前すら覚えていない悲しい男でもある。
「 この開いた傷口 癒えぬ病巣を見るがいい 」
故に、聖遺物の名前からとり団員はマキナと呼んでいる。
「 滴り落ちる血の雫を 全身に巡る呪詛の毒を 」
「 武器を執れ。剣を突き刺せ。深く、深く、柄まで通れと 」
「 さあ 騎士達よ 」
「 罪人に、その苦悩もろとも止めを刺せば 」
「 至高の光はおのずから、その上に照り輝いて降りるだろう 」
「 創造ーー人世界・終焉変生
(ミズガルズ・ヴォルスング・サガ)」
マキナの繰り出した拳が魔獣の一体に命中し、本来触ることもできない非物質の影を跡形も無く消し去る。
『む?』
次々と自らの生み出した魔獣が消滅していくのにルートヴィヒは気づきマキナへ視線を向ける。
『幕引きの一撃、終わりの理か。つまり貴様は死にたいのか?しかし、自分では自分に巻き引きを下すことはできない、だからこそまだ見ぬ誰かに終わらせてほしいと願っているのか。』
「黙れ。貴様と話す事など無い。」
重戦車の様にゆっくりだが全てを踏み潰しながらルートヴィヒへ近づくマキナ。
そんなマキナに対し、ルートヴィヒももう何も言うことはせずに更に詠唱が始まる。
「Nihili est qui nihil amat. (何も愛さない者は、何の値打ちも無い)」
ルートヴィヒの詠唱により、影が動き、集まる。
影は銃身のように突き出し、マキナに標準を定めている。
銃身から影の塊が放たれ、マキナに凄まじい速度で向かう。
マキナの創造の能力は幕引きの一撃。
強靭な身体から放たれる拳の一撃一撃が文字通り必殺となる。
しかし、その速度は黒円卓の中でかなり遅い部類に入る。
マキナに躱すという選択肢は無い。
影が自身に当たる前に拳を迎撃のために放つ。
この必殺の拳は、最強の矛であり、盾にもなる。
影は拳に触れた瞬間にこの世から消滅するだろうと思っていたが、影は空中で形を変え、マキナを覆い、包み込んだ。
影の中から、ドン!ドン!と大きな音が聞こえてくる。
マキナが影の中で拳を打ち付けている音であると予想できる。
しかし、影の牢獄は崩れ去る気配は微塵も無い。
このことから、あの影の牢獄は一個体ではなく、複数の影が集まりあった集合体であるとわかる。
これで、マキナを含めて創造階位の者が3人無力化された。
ラインハルトとメルクリウスの2人を抜いた、黒円卓総勢11人の内3人、約3割が無力化された。
本来であれば撤退すべき被害だが、俺たちにその選択肢は無い。
ラインハルトが撤退の指示を出していないし、ルートヴィヒを倒すことを望んでいたからだ。
だから、俺を含めた8人はそれぞれ形成、創造を発動させルートヴィヒに迫ろうとするが、またもやルートヴィヒの詠唱が響き渡る。
「Initium sapientiae cognitio sui ipsius. (自分自身を知る事が知恵の始まりである)
Nihil difficile amanti. (恋する者には何事も困難ではない)」
影が、地面を這い、空中へ広がり俺を、他の黒円卓の連中を飲み込む。
気づくと俺は地に伏していた。
いや、俺だけじゃない。エレオノーレやルサルカといった俺とともに突撃した奴らや先ほどまで天を駆けていたヴェアトリスも伏していた。
無事なのはシュライバーや影の牢獄に捕らわれているマキナにラインハルト、メルクリウスだけだろう。
しかし、何が起きたというんだ?
身体に目立った外傷があるわけではないというのに身体に力が入らない。
そんな中パキパキ、パキン!と硬い何かがひび割れていく音が響く。
その音が、どこから聞こえてきたのは即座に分かった。
「ククッ!カァッハッハハハハハハハハ!!!」
ラインハルトが狂ったかのように笑い狂っていた。
しかし、注目すべき場所は違う。笑い狂うラインハルトの右頬が壁に穴が開く様に崩れ、黒い無の空間がのぞいていた。
「ハハハッハハ、ハハ。これが、痛み。痛みか?いいぞ!この感覚!久しい感覚だ!もっと私に痛みを!未知を教えてくれぇぇーー!!」
ラインハルトは何かを噛み締めるかのように喜び、更に何かを求めて叫ぶ。
そして、ロンギヌスを手に自らルートヴィヒに向かおうとするラインハルトだが、それを止める者が現れる。
「待たれよ獣殿。」
そう、主人公である蓮炭以外にラインハルトと渡り合えるこの物語の黒幕にて監督者。メルクリウスである。
「なんだカールか。止めるなよ。久々の心踊る戦いなのだ。」
「否。止めさせてもらうよ獣殿。流石の獣殿も時の経過にもたらせられる劣化には耐えれなかった様ですな。このまま本気を出せば我等の計画に支障が出るやも知れませぬ。それに、」
「今の主役は獣殿でも、私でも無い。此処は譲るべきでしょう。そうでなくては物語は盛り上がりませぬ。」
「、、、、、、、、、、よかろう。譲ろうではないか。」
「あぁ、承知した。それでは許可が出たぞカズィクル・ベイ。早く立ち上がれ。」
何?メルクリウスの野郎は何言ってやがる。
時すら操れるルートヴィヒ相手に俺が闘うだと?馬鹿な。勝てるわけが無い。
それに俺が主役だと?意味わかんねぇことを。
「どうした早く立ち上がれ。彼女を助けたいのでは無いのか?譲れぬのだろう?折角獣殿が譲ってくれたのだ、立て。」
「 Fortes fortuna adjuvat. (運命は、強い者を助ける)
Magna voluisse magnum. (偉大なことを欲したことが偉大である)」
こうしている間にルートヴィヒが新たに詠唱を始める。
今まで以上に濃く強大な闇を束ね放とうとしている。
ぶっちゃけ勝ち目は一つしか思いつかない。
それも、かなり賭け要素が強すぎることだ。
だが、此処でラインハルトに任せるのは簡単だが、それではクラウディアがラインハルトのレギオンに、優しいアイツが永遠に闘い続けさせられる奴隷になってしまう。
あぁ、そんなの認められるか!
アイツは俺の物だ!誰にも渡さねぇ!
そう思い、全身から杭を生やし眼球の白目を紅色に染めて立ち上がった。
オリ主といえばオリジナルの創造というイメージがあるんですが、必要ですか?
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いる!
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いらない!
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作者の厨二力に期待!