ーーsideヴィルヘルム
「死に晒せや!ゴラァッ!」
杭をルートヴィヒに対して狙うということはせず、無差別に放てるだけ放つ。
形成状態の俺は身体から杭を一度生やしてからでないと投擲できない。
つまり、地面から突然巨大な杭を生やすことはできず、慢心王のゲートオブバビロンの様に空中から放つすることはできないのだ。
つまり、敵に杭を投擲する為には自前の腕力で投げつけるか、体内の血液の流れや血圧をコントロールして放つしか無く、その分速度や威力が劣る。
何よりワンテンポ投擲の時間が空いてしまう為、狙うにも時間がかかってしまう上に、今回の様な格上相手には時間がワンテンポでも惜しい為、数撃てば当たる戦法で広範囲攻撃を行う。
『・・・・・』
俺の放った杭に目もくれず影のコントロールを続けるルートヴィヒ。
俺の杭は影の魔獣達の頭に防がれて一本たりともルートヴィヒに届いていない。
ルートヴィヒと俺にはまだかなりの距離がある。
距離を詰めてさえ仕舞えば、空中で衰える杭の威力を抑えることができ、魔獣達を貫通できる筈だ。
周囲を警戒しながら走れる限界の速度でルートヴィヒに近づきながら杭を牽制目的で放ち続ける。
ある程度近づいていくとルートヴィヒが反応を示す。
『・・・煩い蝿が、、、、また貴様か。殺せ、一片の肉片すら残すな。』
ルートヴィヒの言葉に、先ほどの攻撃を回避していたシュライバーに向かっていた魔獣達の半数が俺の方へ差し向けられた。
それも今までの様に野生の獣がバラバラに向かってくるのでは無く、タイミングを揃え、隊列を整えてまるで調教された軍用犬の様に喰らい付いて来た。
「飼い犬が!大人しく飼い主の元に帰りやガレェ!」
兎に角、俺の最後の手段を行うにはルートヴィヒに近づく必要がある。
だから、横、背後から近づいてくる魔獣は後回しだ!
前方から迫る魔獣達へ杭を放つ。
今までなら、ほとんど横並びになって向かってきた魔獣達だったのだが、今回は違う。
魔獣が数匹ずつの纏まりとなって、一番前の集団が壁になる様に展開し、他の集団がその背後に連なる様に向かってくる。
放った杭は先頭集団の魔獣全てに命中し全滅させることができ、一部の杭は背後の集団に命中したが、あまり減らせなかった。
「チッ!少しは頭を使ってるみてェだが、俺の杭に耐えれネェ時点で、意味はネェんだヨォ!」
再び杭を放つが、また先頭集団が壁になり背後の集団にまで杭が届かない。
少しずつ俺とルートヴィヒの距離が縮んで行く。
しかし、共に魔獣達との距離も縮んで行く。
このまま進めばルートヴィヒに辿り着く前に魔獣達に接敵してしまう。
魔獣の数は無限に近い。幾ら杭を放って吸収しても得られる力精々杭を一本作れる程度だ。
つまり魔獣を幾ら殺しても力を得られず、状態維持にしかならない。
接近戦になれば魔獣達の数に押され、死ぬ未来は容易に想像できる。
だが、まぁ。
「やるしかネェよな。」
ルートヴィヒの元に集まりし影の大きさからそろそろ放たれると想像できる。つまり、時間がない。
覚悟は決めた。後は真っ直ぐ槍の様に突き進むだけだ。
「行くぜ糞ったれの吸血鬼野郎!」
壁となる様に杭を斉射し、目眩しと少しの間の時間稼ぎをする。
全身に動きに支障が出ない程度に杭を生やし鎧代わりとする。
そこからは泥臭い闘いだった。
目の前に立ち塞がる魔獣へ腕に生やした杭を突き刺し、背後に投げ捨てる様に振り回しながら杭を抜く。
横から近づく魔獣は無視する。噛みつかれる寸前に身体を僅かに逸らし杭に当たる様にしたり、致命傷や関節、骨を食われない様にする。
砕かれたり、折られた杭は新しく生やし、傷ついた身体の再生を待たずに前に進む。
自分が流した血の匂いで強化された嗅覚が上手く効かない。
身体の彼方此方を噛みつかれ痛みが走っている筈だが、脳内物質の過剰分泌のお陰か余り痛みはない。
むしろ、興奮し、嗅覚以外の感覚が普段より鋭くなっている様に感じる。
しかし、頭は冷静に状況を判断している。
このままいけば、満身創痍ではあるがルートヴィヒの元へ辿り着くことができるはずだ。
今までより魔獣達の勢いは凄いがそれでも、今前方に展開している集団を突破すればもう目の前だ!
『甘いのだよ。』
ルートヴィヒの低い声が響く。
今突破した魔獣達を尻目に目の前の光景に一瞬思考が停止してしまう。
それは今まで人集団で襲ってきた数の数倍の魔獣達が俺の目の前に立ち塞がっていたのだ。
「テメェ、手加減してやがったなぁ?性格悪すぎんだろ?」
『奥の手とは最後に取っておく物なのだろう?では死ね。』
魔獣達が一斉に向かってくる。俺が突破してきた魔獣達も背後から迫る。
もうダメかと諦めかけ、目を閉じかけた時、
「この程度で諦めるのですか?チンピラ」
青白い閃光が魔獣達を切り裂き俺の背後に背中合わせになる様に降り立った。
「チッ、またテメェか。ヴァルキュリア。」
片腕が無いままボロボロの姿で片手剣を構えたベアトリス・キルヒアイゼンが俺を助けてくれた様だ。
「何ですか?痛む身体に鞭打って助けてあげたこの可愛い可愛い美少女、ベアトリスちゃんに御礼の一つもないんですか?チンピラ。」
「チッ!どこに美少女がいるんだか!?此処にいんのは中身おっさんで彼氏いない歴=年齢のその内上司のお堅いあの女にガチでプロポーズしそうな可哀想な行き遅れ女しか居ないだろうが?」
「なっ!?な、何てこと言うですかこのチンピラは!?あの冗談通じない冷徹上司にもし聞かれたら、殺されますよ!主に私が!?」
「事実だろうが!!」
俺と話すことで隙が生まれたキルヒアイゼンをカバーする様に杭を放ち魔獣を殺す。
「あっ、そういえば話してる暇なんてありませんでしたね!」
背中合わせで向かい合い魔獣達を殺し続けながら、会話を続ける。
「それで?テメェはどうして此処まできやがった?俺とお前はネズミとネコの様な関係だった筈だろ?俺を殺すまではしねぇが、死にかけてたら即見捨てる感じだろうが?一体どういう訳だ?」
「別に貴方のためじゃないですよ!」
(いや、そんな事は分かってんだよ!テメェには最強の自虐お兄様が居るのがわかってるし、そんな事より背中から刺されないか心配だから聴いてんだよ!?)
この作品の第1話で目的のためとはいえ思いっ切りボコった事に罪悪感を未だに抱いている小心者のヴィルヘルムである。
「あの子のためですよ。貴方が諦めたら誰があの子を助けるんですか?」
「アァ?」
ヴァルキュリアの言葉に首を傾げてしまう俺。
この作品では出ていないがヴァルキュリアは俺とクラウディアがイチャつ、、、、、、、、
いてねぇな。一緒に行動する事に大反対していた筈だ。
こんなチンピラにこんないい娘は勿体ないです!というか一緒にいたら遊びに遊ばれ、挙句には捨てられますよ!って勝手な想像をクラウディアに吹き込んでくれた奴なんだが、何で助けたんだ?
お前の考えだと俺を助けるんじゃなくて斬り殺すべきなのでは?
いや、死にたくはねぇけどよ、、、、、、、
「ぶっちゃけ、貴方があの娘と一緒にいるのは反対の大反対ですよ。でも、あの娘が貴方と一緒にいた時のあの幸せそうな笑顔。あれを見たら貴方と共にいることがあの娘の幸せなんだってわかったんですよ。というか、あの甘ったるい空気を漂わせる貴方達に独り身の私は近づきたくないんですよ、本当に、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、何ですか?あてつけですか?羨ましいんですよっ!あーあぁ!早く私の王子様現れませんかねぇ〜!あっ!あの娘を泣かせるようなことをしたら地獄まで追いかけてぶっ殺しますからね! 」
「いや、長いし!というか心の声ダダ漏れだし!色々ツッコミどころ豊富だがまず言わせろ!戦場でいうことじゃねぇだろ!?誰視点からの発言だァ!?嫉妬に狂う童貞男性か!?それともお父さん視点かゴラァッ!?何でお前女やってんだよ!?お前考え方とかその他諸々オヤジなんだよ!?もうあの吸血鬼野郎に向かって突っ込むからな!?此処は任せて良いんだよなぁ!?てか、任せるからなぁ!?」
もうキャラ崩壊が酷いヴァルキュリアに魔獣を押し付け更に前進する。
邪魔が入ってしまったが、既にルートヴィヒの元まではあと僅か。
そう、今ここに、
俺は、俺の物を簒奪した本物の吸血鬼と再び対面した。
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ーー続けてsideヴィルヘルム
「ヨォ。辿り着いたぞ糞吸血鬼。早く出すもん出しやがれ。そしたら見逃してやってもいいぜ?」
『 辿り着いたからどうだと言うのだ?貴様では私に傷をつけることは出来ぬ。そして、此処に貴様に渡す必要があるものなど1つたりとありはしない。失せろ蝿が。』
歩みを止めずルートヴィヒに話しかける。
口調から余裕がある様に見えるが、真実は反対にコンディションは最悪だ。
身体中の肉は魔獣共に噛みちぎられ絶えず血が流れ出している。
エイヴィヒカイトの恩恵である再生が常時傷を癒そうとして身体から水蒸気が発せられている。
「アン?あるだろうが、テメェが御大層に腹の中に取り込んだ、、、、俺の女がよ!」
感じる。しっかりと感じ取れる。
クラウディアが身につけているロザリオにはめ込んだ闇の賜物の一部の気配が弱くだが感じられる。
これにより、クラウディアの生死ははっきりした。
俺の策が実行可能かどうかも大体分かった。
ルートヴィヒの奴は相変わらず俺を脅威の対象捉えてはいない、隙だらけだ。いつでも出来る。
『貴様の女だと?笑わせるなよ蝿風情が!貴様と彼女が釣り合うと思っているのか!?否!断じて違う!彼女を幸せにできるのは私だけだ!つまり、彼女の隣は私の物だ!失せろ!死ね!蝿は蝿らしく死体に集っていろ! 』
今までは変化を見せなかったルートヴィヒの鉄面皮は激しく歪み、無機質に感じていた声には感情が乗り冷静を失っているのは明らかだ。
どうやら俺はアイツの禁句を上手く踏み抜き、理性を奪うことに成功した。
まぁ、産み出された魔獣共はヴァルキュリアが抑えている、ルートヴィヒ自身は大技の溜めの所為で動けない。
これで作戦の成功条件は達成した。
「ハッ!クラウディアはテメェの物じゃねぇよ馬鹿が!なんだか勘違いしているみてぇだからはっきり言わせてもらうぜ!お、れ、が、クラウディアに付き纏っているんじゃねぇ!アイツが!俺の隣居ることを選んで!俺に付き纏ってんだよ!」
『なっ!?ば、馬鹿な!彼女が貴様を選んだだと!?あ、ありえない、ありえないありえないありえないありえないああああああああああ!!!』
「何だコイツ?バグったか?まぁ、いいややり易い。クラウディア!聴こえてんかわからねぇが言っておくぞ!今からちょっくら痛い目に合うかもしれねぇが我慢しろよ!?」
再び走り出し、上空に浮遊するルートヴィヒまで脚力を全力で使用して同じ位置まで飛び上がる。
「喰らいやがれ吸血鬼!これが、テメェが虫けらと侮った俺の、力ダァァァァァァーーーー!!!」
杭を生やした右腕を奴の心臓へと突き立てた。
皮膚を突き破る柔らかい感触の次は骨を断つ無機質にして硬い感触がすると思えたが、杭と右腕は泥に突こっんだかの様な感触共に沈んで行った。
この事からやはりコイツの創造は求道型、覇道型のどちらでもない。
コイツは自分の中に、自分だけの世界を創造して自らの身体へ法則を付与して居るだけではなく、外にまで漏れ出して世界を歪めている。
故に完全に万能。原作前においてコイツは1番流出階位に近いと言える。
しかし、コイツは間違えを犯した。
それは、自分の力の源である内の世界に、異物(クラウディア)を取り込んだ事だ!
「漆黒たる影の世界に華やかな血の花を咲かセェ!闇の賜物!」
俺の聖遺物は遠隔操作可能であり、それは他人の法則に支配された世界でも変わりはない。
『ガッ!?ガグッ!ガッガァァァァァァーーーー!!!? 』
ルートヴィヒが苦しみの悲鳴を挙げ出した次の瞬間、血の様な槍、
いや杭がルートヴィヒの世界を内から突き破り出した。
これはクラウディアのロザリオに付けた闇の賜物の欠片が膨張した物だ。
そして、突き出てきた杭のうちの2本を両手で1本ずつ掴み、引っ張り上げる。
ある程度引き上げてくると、身に覚えがある気配が感じられる。
そして、長い間離れてたわけではないのだが、胸に暖かい感情が込み上げで来る。
「やっとお目覚めかよ?クラウディア。」
直後、白いシルクの様な髪が影から出始め、段々その人物の姿が見えてくる。
両腕が出てくると、その人物いやクラウディアは
「ヴィルヘルム!」
満面の笑みで抱き着いてきた。
完全にクラウディアが出てくると、ルートヴィヒの力が急激に高まってくるのを感じた。
直ぐにクラウディアを庇う様に抱え、ハリネズミの様に杭を背中に生やした。
直後、ルートヴィヒが溜めていた影が暴発した。
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「糞が!溜めた力は最後までコントロールしやがれってンダ!」
痛む身体を起こし、文句を盛大にぶち撒けながら抱き締めていたクラウディアを解放する。
「大丈夫ですか!?ヴィルヘルム!?」
「当たり前だ!俺を誰だと思ってやがんだ!?」
身体のあちこちにをペタペタと触ってアタフタしているクラウディア。
そうしていると嫌な気配が再び現れ、アイツの声が聞こえてきた。
「屈辱だ。貴様などに我が此処までの痛手を受けるとは、、、」
俺と同じくらい身体中傷と血だらけのルートヴィヒ。
あの様子ではもう大技どころか、魔獣すら生み出せないだろう。
しかし、その目は諦めを感じない。それどころか俺を見下すのをやめ、対等の敵として睨みつけている。
「この身はもう消え去る寸前。もう彼女の願いを叶える事はできん。あぁ、認めよう。私の負けだ小僧。」
「ハンッ!なら、大人しくくたばりやがれ糞吸血鬼。未練がましいのは見っともないぜ?」
「そうであろうな。わかってはいる。だが、1つだけ認められないことがある。貴様だ小僧!あぁ、死せるのは構わん!消え去るのも覚悟の上!しかし、貴様に負け、潔く彼女を諦めることだけはできん!」
拳を構えて今にも殴り掛かって来そうなルートヴィヒ。
「下がってろクラウディア。」
クラウディアを下がらせ、同じく拳を構える。
俺も消耗が激しく杭を生み出せるか不明な状態であるからだ。
決して、コイツの覚悟に答えたわけじゃない。
「行くぞ!小僧!」
「返り討ちだゴラァッ!」
拳と拳。ノーガードによる殴り合い。
血肉が飛び散り、吹雪く白い世界の一部を赤く染め上げる。
俺とルートヴィヒが真っ向から殴り合えば、俺は叶うわけは無いのだが、やはり自分の世界をズタズタに裂かれた事によりかなり弱体化している様だ。
ほんの数分殴り合っているだけなのに、もう何時間も殴って、殴り返され、また殴るという行為を繰り返している疲労と感覚がする。
ドーン!!!と互いに殴り合い、その衝撃で距離を取る俺とルートヴィヒ。
互いにもう自分と相手は限界であり、これが正真正銘の最後の一撃となると言葉を交わさずとも理解していた。
ギィギギ!!!
出来るだけの力を込め握り締めている拳から、自らの力で歪み軋む骨の音が聞こえる。
この一撃を相手より先に喰らわせた方が勝者となり、どちらが勝者となろうとも相手と会う事は無いだろう。
それを理解しているからこそか、今まで自発的に話そうとはしなかったルートヴィヒの固く閉ざされた口が開かれる。
「、、、、、、、小僧。」
「アァ?なんだよ糞吸血鬼。」
「貴様は永遠に明けることの無い夜の世界を望んでいると言ったな。」
それはクラウディアと自分の願いを話し合った時に俺が言った、原作のヴィルヘルムの渇望だ。
「チッ、盗み聞かよ糞吸血鬼。趣味悪りィなテメェ。糞吸血鬼の字の通り性根も腐ってるみテェだなぁ!?」
「愚かな事だ。この世に永遠など無い。命あるもの全てに平等に死が、破滅が与えられる。彼女も小僧貴様も例外では無い。ただ、早いか遅いかの違いだけだ。貴様はまた置いて行かれ、1人になる運命なのだよ。どんなに願ったとしても変わらない。貴様は「黙れぇ!?」、」
コイツがこれから言う事を聞きたく無い、考えるより先に本能的に叫んだ。
「また、1人になるのだよ。大切な物を失ってな。」
「チッ!言わせておけばァァ!!!」
俺は走り出した。少し遅れてルートヴィヒも走り出す。
「真に不滅の物など無いのだよ、小僧!」
その言葉はルートヴィヒがかつて自ら願い、諦めたからこそ出た言葉の様に思えた。
「テメェが無理だっからって!俺も無理かどうか分からねェだろうがァァ!?俺は諦めネェ!俺を光と呼んでくれたアイツが俺と共に生きる事を選んでくれた!俺が命はる理由はこれで十分!これ以上失ってたまるかヨォ!」
「黄金の獣が死に、宇宙がぶっ壊れようと、俺は!俺達は!生きて生きて!生き続けるんだよォ!神が認めネェッて言うんなら神だろうが!世界だろうがぶち殺す!」
「「オォォオォォォォーーーー!!!」」
獣様な雄叫びを上げ、互いの信念を込めた拳を放つ。
ほぼ同じ速度で振るわれた互いの拳は、、、、、、、
俺の拳が先にルートヴィヒを捉え、奴の胸を貫き身体を砕いた。
力を使い果たした俺は背後に倒れ、その反動でルートヴィヒの身体から俺の腕が抜ける。
ルートヴィヒの身体に空いた傷からは血どころか、何も流れ出していない。
だが、確かに感じる。コイツはもうすぐこの世から消え去ることを。
証拠に奴の身体から灰が天に飛び散り始めている。
「小僧、貴様の勝ちだ。精々足掻くといい。貴様は私に勝った、だから彼女を幸せにする責任がある、、、、、、」
そう俺に言い放つと、奴はトボ、トボ、とクラウディアに向かって歩き出し、少し距離を開けて止まる。
クラウディアに何かする訳では無い様であるし、恋敵の様な奴の最後だ、自由にさせてやろうと思い俺は黙って見守る。
「愛しい君よ。私は貴方を愛している。だから、共に世界が終わるまで生きていたかった。しかし、私は貴方を幸せにしようとは思っていなかった様だ。自分の幸せを貴方の幸せだと勘違いしていた。すまない。」
「貴方が私を大切にしたいという思いは何となくわかってはいました。でも、私はヴィルヘルムが大切に思えて、、、、、いえ正直に言うとヴィルヘルムが好きです。だから、貴方の思いに応えられなかった。もう少し早く、この思いを貴方に教えていれば貴方は死ななくても良かったかもしれません。ごめんなさい。」
「フッ」とルートヴィヒの顔に笑みが浮かぶ。
「まさか、死する直前に振られるとは、貴方は厳しいな、、、、」
そう呟くと、
「幸あれかし、愛しい君よ、、、、、、、、、 」
そう言い残すと、ルートヴィヒは全身を灰に変え、空へ散った。
直後、膨大な魂が俺の身体に流れ込んできてドクン、ドクンと心臓の闇の賜物が強い鼓動を発生させる。
ルートヴィヒとの戦いで消費した魂の量を補填し、身体の傷をほぼ完治までに回復させた、ルートヴィヒの魂は俺を更なる高みに導くと思っていたが、やはり創造には至れていない。
ルートヴィヒとの最後の会話を終えたクラウディアはいつのまにか、寝転がって居る状態の俺を見下げる体勢でいつも通り笑っていた。
そして、、、
「貴方が好きです、ヴィルヘルム。」
微笑みながら、俺に
「私にこの気持ちを与えるため、戦ってくれた天使(貴方)をクラウディアは愛しています。」
大切な物として、自身を与える覚悟と言葉を伝える。
「もう決して、軽くない、半分じゃない。」
それは中途半端であった恋が完全に熟した証拠。
「死にたくないと思います。」
俺と共に生きることへの誓いであった。
ここまで幸福であっていいのだろうかと、、、心の底からこの女と生きたいと、切に願う。
だが、次の一言で幸せな気分から現実に戻される。
「そして、貴方を死なせたくないと思います。」
はぁ?
「だから、今度は私が貴方を守ります。お互いが足りないところを補い、共に守る。これは両立する気持ちなんです。」
「私の一方通行でないのなら、、、、、、、、」
そう言い残すとクラウディアは、ハイドリヒ卿を睨みつけるかのように目線を飛ばす!?
「貴方達がいると、絶対ヴィルヘルムは幸せになれない。いえ、いつの日にか死んでしまうでしょう。一杯傷つき、一杯悲しむ事になるでしょう。」
クラウディアの首に下がるロザリオが神々しく輝いている。
「私はヴィルヘルムと共に行きたい。彼を守りたい。だから、貴方達は邪魔です。消えて下さい。、、、、、、力を借りますルートヴィヒ。」
この力の源はあの糞吸血鬼か!?余計なことを!?いや、それよりもクラウディアを止めないと!ハイドリヒ卿には絶対勝てない!
「クソガァ!」
手を伸ばす。このままではさっきまで隣にいた愛しい人が、大切な人がまた遠くに行ってしまう。それだけは嫌だ。
しかし、俺の手が届く前にクラウディアは光を纏った。
オリ主といえばオリジナルの創造というイメージがあるんですが、必要ですか?
-
いる!
-
いらない!
-
作者の厨二力に期待!