八雲紫 彼の地にて、斯く戦えり   作:片腕仙人

10 / 13
6話です


戦闘シーンを書き直しました


6話

煙を確認してからすぐにイタリカに到着した。パッと見ただけでも戦闘があったということがわかる。

こちらは車両三台で門から少し離れた場所に止まっている。

城壁の兵士たちは見たことないものに警戒度MAXといったところだろうか。

 

いつまでもこうして止まっている訳にはいかないのでこちらからレレイ、テュカ、ロゥリィ、私そして伊丹が門まで向かうことになった。伊丹は随分と渋っていたがなにかを決心したように気合いを入れ自分も行くといい同行することになった。

 

私たちは何故か横一列になって門に近づいていった。ここだけ見ると映画のワンシーンのようにも見えるだろう。でも絶対に低予算のB級映画ね。鮫が地面泳いでそう。

 

それはさておき門に大分近いところまで来た。伊丹が門についている扉をノックしようと近づいた瞬間かなりの勢いでその扉が開き伊丹に激突。伊丹最近ついてないわね。

 

そう思っていると私の方に向かって一本の矢が飛んできた。それを難なく片手で掴みとる。掴んだはいいけどこれどうしようかしら。

 

そんな風に思い伊丹の方に視線を向けると呆然と立ち尽くしている赤毛の騎士のような格好をした女性がいた。

 

どうやら彼女が扉をあんなに勢いをつけて開けた人物のようだ。

元気がいいのはいいことだけどもっと前に誰かいるかもとか考えるようにしようね。

 

それと怪しいからって矢を撃たないように、私の方に来たからいいもののレレイたちに飛んでいっていたら大変だ。ロゥリィは別に問題ないだろうが。

ただ一度は許すけど二度目はないからな。

 

ふむ、それにしても彼女、どこかで見たことがあるような……

今はとりあえず延びてしまっている伊丹を運ぶのを手伝いましょう。

 

 

 

さて色々あったが無事にイタリカには入ることができた。伊丹は延びたままだが。

 

伊丹はテュカに水筒の水をかけられ今はロゥリィに膝枕されている。伊丹のことだしすぐに気がつくでしょう。

 

さっきの赤毛の彼女はテュカに咎められている。まあ確かにヘルメットがなかったら大ケガしていただろうし仕方がないだろう。

そうこうしていると伊丹が気がついたようだ。とりあえずこの矢はその辺に刺しておこう。

 

「あれ、ここは…門のなか、なのか。で、誰が今どうなってるか説明してくれるの?」

 

周りの人たちは次々に眼を逸らし最終的には赤毛の彼女に行き着くことになった。まあそれぐらいはしてもらわないと困る。なんといっても彼女のせいでこんなことになっているのだから。

 

「え……妾?」

 

そう、わらわわらわ。貴方がやらなきゃ誰もやらないでしょ。でもやっぱりどこかで会っている気がしてならない。何処だっけな。

 

「お前たち!帝国第三皇女ピニャ・コ・ラーダ殿下に対し無礼であろう!」

 

さっきの赤毛、ピニャ・コ・ラーダと呼ばれた彼女の横にいた女性がそういう。

そう、皇女ね。皇女……ああ!思い出した。帝国にいたおてんばお姫様か。随分と大きくなったわね。あの頃は騎士団を作ると必死に訓練しているところを見つけて少しだけからかったんだった。

 

「あら、貴方あのおてんばお姫様だったのね。大きくなってもおてんばは変わってないようね。騎士団作れた?」

 

「ハミルトン!わざわざいうことではない!折角気づいていなかったようだというのに!」

 

「す、すみません!」

 

遅かれ早かれ私は気づいたと思うけどね。伊丹たちはまさか皇女だとは思っていなかったらしく驚いている。無理もないでしょう、皇女様は普通こんなところにはいないし。

 

現状を説明するためにここではなんなので当主の屋敷で説明するらしい。

屋敷につき当主の元に向かう最中、ある程度は状況を知ることができた。

 

要約すると、前当主が急死、後継者争いが姉妹で行われていたがその姉妹の両家の当主が出兵。

 

帰ってきたものはいなくイタリカの治安が悪化、現当主は11歳のミュイ。流石に兵を任せることはできずピニャが代わりに率いると。

 

 

伊丹はそれを聞き竜の鱗を売れる状況じゃないと判断し加勢することにしたらしい。それよりも私が気になったのは伊丹がいつの間にかこっちの言葉を理解しているということ。私は特に境界を弄ったわけではない。

本人は頭を打ったせいかといっていたが、どうやら私の境界よりも境界(物理)のほうが効いたらしい。

 

 

場所はさらに移動し南門。あの姫様は自衛隊に南門の守備を任せたようだ。

 

伊丹たちは南門の守備を固めてはいるが全員がとあることに気づいている。一度攻められた南門を守らせている人数は自衛隊の12人、手薄に見せて奥の第二次防衛ラインで決着をつけるきらしい。

ぶっちゃけ私たちはオトリみたいなもの、捨て駒ってわけだ。

 

12人でもかなりの戦力があるんだがあの姫様は知るよしもない。

伊丹も指揮官は姫様だということで従ってはいる。

 

「伊丹、やりたくなければやらなくてもいいんじゃない?わざわざ捨て駒になるくらいならね」

 

「そうはいかないでしょ、それにここの住民を守るためってのもあるし。それに俺たちと喧嘩するよりも仲良くしたほうが得だって理解してもらいたいしね」

 

そう、でもそれには賛成ね。あの姫様には自衛隊の力ってものを見せてあげるのが一番いいはず。

伊丹と話をしているとロゥリィが突然声をあげる。

 

「気に入った、気に入ったわぁそれ。恐怖、全身を貫く恐怖をあのお姫様の魂魄に刻み込むのねぇ!そういくことならぜひ協力させていただくわ。私も久々に狂えそうだし楽しみ」

 

伊丹は違うんだけどといっているがロゥリィは聞いていない。伊丹、諦めなさいソイツはそういう奴だから。これは荒れそうね、ロゥリィがやる気になったようだし。

 

 

 

 

◆◆◆

 

夜も更け辺りがめっきり暗くなった頃、東門側が盗賊に襲撃された。どうやら姫様の予想は外れたらしい。応援要請もなし元々捨て駒だしそんなもの用意してもいなかったんだろう。

 

「なんでぇ、こっちに攻めてくるんじゃなかったのぉ」

 

「そんな駄々をこねてると本当の子供みたいねロゥリィ。腐っても元は正規兵よ、そこまで安直じゃあないでしょうね」

 

さて、姫様はこの局面どう乗りきる気かしら、見ものね。

 

そう思っているとロゥリィがいきなり悶えだした。しかも結構激しく。その場で地面を蹴ったりハルバードを振ったりとかなり危ない。伊丹が驚き近づこうとしたのをレレイが止める。

 

レレイがいうにはロゥリィは使徒だから戦場で倒れていく兵士たちの魂が彼女の体を通してエムロイの元に召されていくらしい。

 

それが亜神で使徒であるロゥリィには媚薬のような効果をもたらしているらしい。解決法はただ身を委ねること、つまりは戦場で鬱憤はらしてこいってことらしい。

 

それはいいがいまはこの状況をどうにかしなければ隊員たちやテュカは頬を赤らめなんともいえぬ雰囲気になっている。レレイは……いまいち分かってない様子ね。

 

ようは戦場にさっさと連れていけばいい訳だし私が何とかしよう。

ロゥリィに一瞬で近づき手足が動かないように拘束する。なんだか私がいけないことをしているようで複雑だなこれ。

 

「伊丹、ちょっと!暴れないで!伊丹先にこいつと行ってるわよ。来るんでしょどうせ」

 

そういってロゥリィを拘束したまま自分ごとスキマに落ちていく。

 

繋げる先は勿論東門、ちょうど住民と盗賊たちの真ん中あたり。

 

ただしここに下ろすのはロゥリィだけ。私は門の外にまだ大勢いるであろう盗賊たちを相手にする。

 

「さあ、好き勝手に暴れてきなさい!」

 

そういい盗賊たちにとっての悪夢であろう死神ロゥリィを投下する。

 

そして私は開け放たれた門の真ん前にスキマを広げ姿を現す。

盗賊たちは突然目の前が裂け私が現れたことに警戒し距離を取っている。できればそのまま距離をとって帰ってくれると楽でいいんだけどそうはいかないか。

 

盗賊達が合流できないように開け放たれた門に標識を網目状に張り巡らせ分断する。

これで合流はできない。外に出たかったら大量の標識を剣や槍でどうにかするか、城壁を登ってそこから飛び降りるくらいしかない。

飛び降りたら間違いなく足の骨折れるだろうけど。

 

さて、まずは挨拶でもしますかね。

 

「どうも、盗賊の皆様。私、八雲紫と申します。あなた方は私が相手をしてあげましょう」

 

そういうと盗賊たちは笑みを浮かべる。彼らから見ればただの女が一人だけそう思っているんだろう。その余裕がいつまでも続けばいいけどね。

 

スキマを自分から少し離れた両脇に展開する。あんまり近すぎるとうるさいしね。

展開されたスキマからは両方に二つずつ高速で回転する銃身が出ている。これは日本国外に行って拝借してきたM134ミニガン大勢を制圧するにはぴったりだ。

 

「警告は一度だけよ。今なら見逃してあげてもいいわ」

 

「おいおい、あんたも死ぬ準備はいいか。いくら魔法を使えたってこの数を相手にできるわけない」

 

一人がそういい手で合図をするとボウガンや弓を持った連中が現れ私に狙いを定める。そして再度合図が出され一斉に矢を放ってきた。

 

だがすべての矢が私に当たることなくすり抜け後ろに刺さる。前にもこんなことがあったような気がするが弓矢の精度は比べ物にならない。勿論悪い意味で。流石に一発も当たらずましてやすり抜けられると思っていなかった盗賊たちは再度撃つためにすぐに準備している。まったく、エルフ達なら効かないとわかったらすぐに別の手段で来たというのに。

 

扇子で口元を隠すポーズをとる。

 

「それだけみたいね。なら今度はこっちの番ね」

 

そういい扇子をバッと振るう。

 

それと同時に高速で回転している銃身から轟音と共に銃弾の嵐が盗賊たちに降り注ぐ。盾を瞬時に破壊し後ろにいる盗賊を蜂の巣にする。怯えて逃げ出そうとする連中にも容赦せず撃ち吹き飛ばし、物言わぬ肉塊に変えていく。

銃弾が地面に当たり土埃を巻き上げ辺りを覆う。

 

このまま殲滅できると思ったが銃身がゴトッという音をたて落下する。どうしたのかと見てみると何か鋭利なもので切られたような切り口。

 

そう思っていると急に風が吹き地面を裂きながらこっちに飛んで来る。それを扇子使い軌道を反らして防ぐ。風が来た方向を見てみると緑の羽根の生えた女性がいた。あの姿にこの風は精霊魔法、どうやらセイレーンが居るらしい。

 

あの風は厄介ね。主に土埃が目に入りそうで。すぐなんとかしましょう、でも今はこっちが先ね。目の前を見るとミニガンが壊れたことを好機と見た盗賊たちが剣を持ちこちらに突撃してきた。流石は元正規兵チャンスは逃さないと。

 

避けることは簡単でもここは敢えてなにもしない。ザクザクと私の体に刃が深く突き刺さる。

 

「ははは!どうだ獲ったぞ!」

 

私を突き刺した連中は口々にそういっている。そうね確かに獲った。私の方がね。

 

突き刺された私のスカートの中から地面に丸い球状のものや縦長の楕円形をしたものが転がり落ちる。

私は正面の盗賊に満面の笑みを浮かべる。

そして次の瞬間爆音と共に周りの盗賊たちは私ごとバラバラに吹き飛んだ。

 

ただ安心してほしい吹き飛んだのは確かに私だがあれは境界を操る能力を応用して作り出したリアルな分身、そっちが爆発しただけ。

分身だから残骸を残すことなく消える。流石にバラバラの自分を見たくはないからね。

 

肝心の本体はどこなのかというと、

 

「はぁい、セイレーンちゃん元気かしら?」

 

セイレーンのすぐ後ろ。セイレーンはすぐにこちらを攻撃しようとするがその前に標識で手足を拘束し動けなくする。ただこの子精霊魔法があるのよね。

 

そうだ、猿轡をはめてしまおう。はいお口塞ぎましょうね。

んー、んーいっているが猿轡のせいで何をいってるかわからない。ただ何故か涙目になっている。

 

こうしている間に近づいてきた盗賊を振り向き様に扇子で首をはねる。そのまま弾幕をを盗賊に向かって放っていく。

しばらく放ち続けているともう立っているものはいなくなった。

弾幕に当たり気を失ったり、完全に戦意喪失して城壁にもたれ掛かっている盗賊もいるがこれはほうっておいて平気だろう。

 

ふと空を見上げると特地には似合わないものの影が見えた。戦闘ヘリ部隊。

伊丹随分ととんでもない増援を呼んだらしい。これで門内はすぐに静かになるだろう。

 

そう思った通りそこからはすぐにこの騒ぎは終息していった。

イタリカの防衛戦は自衛隊の圧倒的勝利で終わった。

 

あとは瓦礫の撤去などの後処理をするくらいね。そう思わないかしら、セイレーンちゃん。

セイレーンに視線を向けると大粒の涙を流し鼻水まで垂らして大号泣していた。どしたのそんなに泣いて。

 

ヘリから応援の部隊が降下し怪我人を直ぐに運び治療、運良く生き残った連中は迅速に捕らえ一ヶ所に集めている。

 

 

瓦礫の撤去などは自衛隊が手伝っているのでそれなりに早く復興できることだろう。

 

伊丹は感謝され交易特権など資金の調達は難なくできるようだ。こちらからの条件は捕虜数名のアルヌスに連れて行くことと残りの捕虜は人道的に扱うということ。

 

この条件を聞いたときハミルトンは大分驚いていたようだ。何度も書類を確認し不備がないかをあらゆる角度から見ていたようだがそんなことしてもなにも変わらないと思うけど。

 

レレイたちの資金調達は交易特権もありすんなりいったようだ。

 

 

そしてイタリカからのアルヌス丘に戻る途中。

レレイたちは随分と疲れたらしく車内で眠っている。伊丹たちも眠そうにしている。あとはこのまま戻るだけ誰しもそう思っていると突然倉田が急ブレーキを踏んだ。何事かと思えばどうやらまた前方に煙らしい。

 

伊丹、倉田は双眼鏡を使いその煙に注目する。すると急に二人のテンションが上がった。

倉田は金髪縦ロールなんて初めて見たなどと真剣にいっている。もっと別のことでそうなれないものか。

 

どうやら姫様がいっていた薔薇騎士団らしい。

騎士団は車両の周り囲みどこにいくのかを聞いてきた。というよりも尋問に近い感じではあったが。

 

富田がアルヌスの丘といいかけると胸ぐらを捕まれたがすかさず伊丹が出ていき場を納めようよしたが平手打ちをされてしまう。

これ、完璧な協定違反。

 

このままでは不味いと思った伊丹は直ぐに逃げろと指示をだし自分だけを残し撤退させた。伊丹…あなたの犠牲は無駄にはしない。

といっても私もスキマのなかから伊丹の様子を見ているから車両には乗っていないのだけど。

 

伊丹が殺されそうになったら助けに入るとしましょう。それまではここから見ていることにしましょう。私が出ていってもややこしくなりそうだし。伊丹、丈夫だし平気でしょう。

 

 

 

ピニャ殿下、今そっちに戻りますよ。厄介事を持ってね。

 

 

 

 

 

 

 




お気に入りしてくださると嬉しいです。

誤字、アドバイスありましたらよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。