八雲紫 彼の地にて、斯く戦えり   作:片腕仙人

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お気に入りが増えて驚きを隠せない作者です

次もせっせと執筆中

3話目です


3話

「おい!ロープ持ってきてくれ」

 

伊丹はどうやらロープを使って井戸を降りて助けるつもりのようだ

それなら私がやったほうが早い。

 

「ちょっとそこ空けておいてくれるかしら、そこにいられると危ないだろうから」

 

「えっ、いったい何を」

 

伊丹が言い切る前にフワッと飛び上がりそのまま井戸のなかに自由落下していく。上から倉田らしき声で「なにやってんすか!」など他にもいろいろと叫ばれているが問題はない。井戸水に落ちてしまう少し手前で一度止まり、水面の境界を変化させ水面に降り立つ。これで濡れることも沈むこともない。井戸の底にいた生存者はやはりエルフの女の子だった。性別まではわからなかったがエルフだとは思っていた。

女の子をお姫様抱っこの形で水中から持ち上げスキマを地上に繋げそこに飛び込む。

 

伊丹は何度か見ているがやはりいい反応をしてくれる。他の隊員たちも何が起こっているのかが理解できないといった様子、ふふ。なかなかにいいリアクションね。

 

いつまでも呆けられてても困ってしまうからいい加減こっちに戻ってきてもらおう。

 

「ちょっといつまでもそんな顔してないでこの子ことお願いしてもいいかしら」

 

「!、ええすぐに容態確認します!」

 

黒川がすぐに正気に戻り作業に取りかかる。栗林も直ぐに濡れた服を取り除くためにハサミを取り出す。

それはいいのだけど……

 

「そんなにエルフの身体を見てみたいかしら伊丹さん、倉田さん」

 

そういってあげると直ぐに向きを変え離れていった。女性陣からはなかなかの目で見られているが気になるのは仕方のないことよ、わかってあげて金髪の美人のエルフよ。

 

服を切り取り払ったのを見てスキマを開き大きめのバスタオルとTシャツを出して渡す。栗林は再度目を見開いている。

黒川はすぐに私が出した二つを受け取って身体を拭きはじめた。なかなかに適応能力高めねこの子。

 

こっちは平気そうだし伊丹さんたちの方にいくとしましょう。

 

 

伊丹たちの方に向かうとあちらも私に気づいたらしくこちらをみてくる。ただ倉田の目がやけに輝いて見えるのは気のせいだろうか。

これは絶対に質問攻めの流れね。

 

「紫さん!さっきのは何ですか!魔法とかですか!」

 

「おいおい倉田、まずはあのエルフっ子が無事か聞くのが先だろ。そっから聞けよ」

 

伊丹さんあなたもやっぱり気になっているようね。無理もないか私が向こうの立場だったら気になることだし。

 

「あのエルフは多分平気よ。まあ誰かさんのせいで気を失っているけど」

 

「うっ、それは……」

 

「それは隊長のせいなんでほっといて、あの突然現れた裂け目?はいったいなんなんですか!」

 

何処から説明したものか、とりあえずは種族からかしらね。

 

「そうねまず私は人間じゃないわ、それはいいかしら?」

 

「あ、ああ。まあ何となくはそんな気がしてた」

 

「じゃあやっぱり魔女。あっ、でも違うっていってたしエルフでもないしケモ耳とかもないし妖精って感じでもないような」

 

「意外に妖怪だったりしてな!」

 

へえ、意外と鋭いじゃない。まさか当てられるとは思っていなかった。流石はオタクといったところか。そのてのことにはやはり詳しいらしい。

 

「ふふ、よくわかったわね流石はそっち方面に詳しい人ね。偶然とはいえ当てられてしまうなんて」

 

「え…マジかよ。この世界には妖怪もいるのか、じゃああれは妖術とかそういう」

 

 

「残念なことに妖怪はいないわよ。いるのは私が最初で最後」

 

「……あっと、それは、すまんそんなつもりじゃなかったんだが」

 

おやどうやら心配してくれているようだ、別に妖怪が他に存在していて私だけが生き残ったなんてことでもないしそんなに気を使わないでもいいのに。

 

それよりも妖術か、妖術とは少し違う。あれは学んだり教わったりすれば使うことが出来るようになる。私のこれは生まれもっての能力どうしようとも他の誰かに教えたりすれば使えるようになるなどということはない。

 

「そんなに気にする必要ないわよ。それよりも妖術っていったわね。でもこれは妖術とは違うものね、これは━━━」

 

伊丹、倉田の二人にスキマを開きどういったことができるかを大まかに教える。伊丹は何度か見たことがあるがどうやらここまで近くでは見たことがないようでスキマのなかの目玉の模様を見て顔をひきつらせている。

 

伊丹達が裂け目といっている物を私がどう呼んでいるか、収納や移動に使うことができること勿論攻撃することも教えた。

 

そして本来の私の能力についても少しだけいっておく。

 

「そして私の本来の能力は境界を操る程度の能力というものよ。さっきのスキマもこの能力の応用したもの。」

 

「境界?」

 

まあ、ただ境界を操れるといってもピンとこないだろう。どう言えばいいか。自分の能力を説明するってなかなかに難しい。

 

「そうね、境界というものはありとあらゆるものに存在しているの。例えばその水筒のなかの水、今はただの水でしかないけど境界を少しだけ弄ってあげると。手にかけて確かめてみるといいわ」

 

伊丹はおそるおそる水筒の水を手にかける。

 

「熱っ!?」

 

すると水筒から出てきた水そこから湯気がたちのぼっている。伊丹は水筒にはお湯などはいれておらず暖めたりなどもしていない。だが一瞬にして中身がお湯に変わっていた。

 

「これはせいぜい悪戯くらいでしょうけど、あなたたち二人にも境界は存在しているのよ。もしそこを変えてしまったらどうなるかわかるかしら?」

 

伊丹、倉田はお互いに顔を見合わせ冷や汗を流している。

 

「でも平気よ、そんな事はしないから安心なさい。そうそうその水筒だけどもし飲みたいんだったらお湯として飲むか頑張って冷ますのね」

 

「ちょっと!それはあんまりじゃあ……」

 

さてと私はひとまず先に車のなかで待っているとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫が去ってからすぐ伊丹と倉田は説明してもらったことについて話し始めた。

 

「隊長、紫さんのいってることわかりましたか?俺いまいちわかんなかったんですけど。なんというか凄いってのはわかったんですけど」

 

「あー、俺も境界ってのについてはよくわからなかったけど、あのスキマってのだけでも十分にヤバいと思うんだが。あれじゃあどれだけ守りを固めようとも意味ないし、やろうと思えば一人で自衛隊全員相手でも出来そうだよな。もうチートだよ、チート」

 

 

「ですね、ほんとこっちに協力してくれて助かりましたね」

 

もしも紫が敵に回ったらと考えるとどうやっても勝てないだろうと思い本当に味方で良かったと思う伊丹と倉田であった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

私がしばらく伊丹たちを待っていると井戸のなかにいた金髪のエルフを数人で抱え運んできた。どうやら体調には問題ないらしい、だがほっておく訳にはいかないので本部があるアルヌスの丘までコダ村を経由して連れていくらしい。

 

エルフの子は私がスキマから出したTシャツを着てタオルを巻き身体が冷えないようにしている、まあ未だに気を失ってはいるけど。

 

それと出発してすぐに倉田が猫耳より早くドラゴンに会ったりしないだろうかとなにやらフラグくさいことをいっていたがまあそんなに都合よく会うわけないだろうし平気だろう。

 

そして現在はコダ村に到着した。伊丹がドラゴン、こっちでは炎龍たしかにそんな名前だったような気もする。

近くに炎龍が現れてしまったためコダ村の住民は村を捨てて新たな場所に移るらしくそれぞれ荷造りを始めていた。

 

その様子をスキマから覗き見ていると見知った顔を見つけた。ここで待つのもいいけど会いに行って少し驚かしてあげましょ。

 

 

 

 

場所はコダ村の外れ大きな滝の前にある一軒の建物。

そこに一人の老人がいた。マントを身に付けとんがり帽を被った見た目魔法使いのような感じの老人。

彼もせっせと家から本などを運んで荷造りをしている。

 

荷物を乗せている傍らには水色の綺麗な髪をした少女が荷造りを手伝っている。

 

「お師匠、これ以上荷物を乗せるのは無理。のせるのであれば貴重な書物を優先すべき」

 

「なんじゃと、そうか確かに書物は大切じゃ。流石はレレイじゃ、賢いのぉ」

 

少女、レレイと呼ばれた彼女はどうやら老人の弟子らしい。

少しして荷造りが粗方終わりレレイは馬車に乗り込む。

 

「準備が終わった、お師匠も早く乗ってほしい」

 

「なに!儂はお前なんぞに乗っかるような少女趣味はないわ!どうせならお前の姉のようなボン、キュッ、ボーンの……」

 

レレイは老人に向かいそっと魔法を使い水の球をぶつける、ただそのなかにひとつだけ光弾が混じって飛んでいった。

 

「ゴハッ!レレイ!魔法は神聖なものじゃ、乱用するものではないのじゃぞ!それと手加減をせんかっ!」

 

「今のはわたしじゃない」

 

レレイはふと後ろを向き光弾が飛んできた方向を見るするとそこにはいつの間にか一人の女性が何かを手に持って立っていた。

 

 

 

「相変わらずねカトー、あっちだったらそれ完全にセクハラになってるわよ」

 

このなかなかボケないアホ老人の名前はカトー、これでもそれなりの魔法使い。彼とはそれなりに長い付き合いだったりする。

魔法のアドバイスや研究にちょっかいを出したりといろいろしていたが最近はあっていなかった。

 

「ん?誰じゃ……てっ、ぎょええええ!お主、な、なんでこんなとこにおるんじゃ!」

 

ぎょええええって、人の顔見てそのリアクションはないんじゃないの?ぎょええええはないでしょ。

 

「お師匠この人は誰?」

 

師匠ね、あのカトー坊やが随分と偉くなったわね。それでこの子は弟子って訳か。カトーよりも賢そうだ。

 

「こんにちはレレイであってるかしら。カトーの弟子のようだけど何かされたりしなかった?」

 

レレイはこちらを見て頷いている。

 

「レレイ!早くそいつから離れるんじゃ!何をされるかわかったものではないぞ!」

 

なにもしたりしないっての、そこまでいうのならしてあげてもいいわよ。カトーにだけど。

私はカトーがまばたきをする一瞬を狙ってスキマを開きカトーのすぐ後ろに移動する。

 

そして後ろから覆い被さるようにして両肩にてを回し抱きつくようにして耳元に口を近づける。レレイは顔にはあまり出ていないが驚いているようだ。

 

「ねえ、カトー。そんなに嫌うことないじゃない、私とあなたの仲でしょ」

 

カトーは一瞬ビクッとして固まり頬は少し赤みを帯びてわなわなと震えている。これって誰得?

 

「それにそんなに警戒されると逆に何かしたくなってしまうわよ。例えばスキマに落とす、とかね」

 

それを聞いたカトーの顔はさっきまで赤かったが今は青くなってこの世に終わりのような顔をしている。随分と効いたようだ。

 

「嫌じゃぁー!儂はまだ死にたくないんじゃぁ!死ぬときは美人ちゃんたちに囲まれてと決めてるんじゃ!レレイ助けてくれ!」

 

弟子に泣きながら助けを求める師匠がいるらしい。しかもその最後は無理があると思うけど。サッと拘束をといてあげるとレレイと呼ばれた弟子の後ろに隠れてしまった。あれでも師匠ですって。

 

「お師匠、情けないやめて。それとこの人は」

 

そういえばカトーをからかうのに忙しくて名のってなかった。

 

「わたしの名前は八雲紫よ、カトーから一度は聞いたりしてないかしら」

 

「ヤクモユカリ、聞いたことがある。突然現れたと思えば一瞬にして消えてしまったり不思議な力をもちヨーカイの賢者と呼ばれる神出鬼没の人物。さっきの光弾も見たことがない、でもお師匠は知り合いだとは教えてくれなかった」

 

所々ニュアンスが違うが大体はあっている。でも私妖怪っていったかしら?まあそういう風に広まってるってことは何時だったかの時にいったのね。

それよりもカトーは弟子に私のことを教えていなかったのか。

これは本格的にスキマに送るべきだろうか。

 

「当たり前じゃろ!お前さんのことを教えたりしたらレレイに悪影響でも出たらどうするんじゃ!それにお主は儂のことをからかっていただけではないか!」

 

そんなことはないはず、9:1でからかいが勝っている。一割はてを貸していた。だから別にからかっていただけ、ではない。

 

「さてとカトーの坊やはほっといて荷造りは終わったのかしら」

 

「終わっている、あとはお師匠を乗せるだけ」

 

そうか、お師匠を乗せるだけか。じゃあさっさと乗せましょう。カトーの足元にスキマを開き荷台に乗せる。またわめいているが無視だ無視。

 

「さあ、いきましょうレレイ。急ぐんでしょ」

 

レレイは頷き馬車に乗る。私もレレイの隣に乗りこむ。ただここで問題が起こった。どうやら荷物が多過ぎて馬が荷台を運ぶことができないようだ。

 

だがレレイは「問題ない」と一言いい杖を振り上げる。すると荷台が少しだけ浮き上がり馬は問題なく進んで行けるようになった。

カトーを師匠に持っているから、というよりはこの子自身の力に思えてしまうのは何故だろう。まあ気にしないのが吉だと思いなにも言わないでおこう。

 

しばらく進んでいると先の方で何かあったらしく他の村人の馬車が立ち往生している。よく見ると自衛隊の姿も近くに見える。

レレイは様子を見てくると言い残し先にいってしまった。

 

「カトー、随分といい子を弟子にしたわね」

 

カトーは荷台から顔を覗かせ。

 

「当たり前じゃろ。それにレレイは優秀じゃ、お主とは違って優しいしのぉ。お前さんも見習ったらどうじゃ」

 

「随分というようになったわね。それでこの先いく場所に宛はあるの」

 

「そこが問題なんじゃ、なんせ炎龍なんぞあと50年は眠ってるはずじゃったから急には用意できんよ」

 

50年、大分早起きな龍だこと。でもそれだけ早く出てきたってことは明らかに何かがあったはずまさか本当に早起きって訳はないだろうし。

 

それにカトー達だけじゃない、他のコダ村の住民のなかにもいく宛が存在しないなんていう人達がいるはず多分自衛隊が何とかしてはくれそうだけどもし無理だったら私が少しだけてを貸すとしよう。

それとカトーにあるものを渡す。

 

「カトー、はいこれあげるわ」

 

「ん、なんじゃこれ?本か?それにしては表紙がやけに固いというかツルツルしているんじゃが……これは!?こんな本は見たことがないぞ!なんじゃこれは絵画か何かか!?」

 

驚くのも無理はないだろう、こっちじゃ写真なんてものないし本のなかにある絵も文字も手書きという鬼畜仕様である。

写真なんて見たことないだろうからとてつもなく興奮しているところ悪いんだけとその題名「たのしい物理図鑑」で全年齢対象の本なのよね。

 

「すごいんじゃがこれ読めんぞ、何語じゃこれは」

 

あちゃー、カトーには日本語は難しかったか残念。

 

「あらあら、読めないんじゃダメね。折角私からの優しさの贈り物なのに」

 

「お主!わかってやったんじゃろ!こんなもん要らんわ!」

 

「ならレレイにでもあげればいいじゃない」

 

この本なかなか見つけるの苦労したのよ。そういえばレレイはどこまでいったのかしらね。

 

そう思っていると前方から破裂音の様なものが数回聞こえた。あれは明らかに銃声。

私は急いでスキマを伊丹達の元に繋げる。

 

「伊丹、何かあったの」

 

「うわぁ!急に出てこないでくれよ、驚くだろ。さっきのは何でもないよ。馬が暴れてその子が危なかったから咄嗟におやっさんが撃ったんだ」

 

成る程そういうことだったのいきなり銃声がしたからかなり焦ってしまった。その危なかった子ってレレイじゃない。見た感じ怪我はないようね、良かった良かった。

 

「それよりもいつまでその格好でいるんだ、紫さん」

 

その格好?ふむ、確かに何故か伊丹達が逆さに見える。何故?

 

「あなたたち逆立ちなんかしてなにやってるの」

 

「いやいや逆さなのはそっちだっての!……それ逆さであってるんだよな」

 

どうやら逆さなのは私のようだ。急いでスキマを繋げてしまったばかりに逆になってしまったようだ。今の騒ぎで住人たちも集まってしまい今は私が注目されてしまっている。なんとも居づらい。

因みにスキマからは上半身だけだしている。

 

「私はそっちの車の方に戻ってるからなにか手伝ってほしいことがあったら呼びなさい、それじゃ」

 

 

紫が消えたあとはなんとも言えぬ雰囲気だったと後に伊丹は語っていた。

 

 




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