炎龍騒動から一晩たち私たちはアルヌスの丘に戻ってきた。
ただ流石に無理をしすぎたのか身体中がめちゃくちゃ痛い。というかロゥリィ、あんた私の上に乗ってたわね。怪我人になんて事してんのよ。
それはそうとして横になった状態でアルヌスの丘をちらりと見てみると出発当初は簡易的なテントのようなものしかなかったが今はかなり発展し車両用の倉庫、外観は簡素だがしっかりとした住居スペース、地面は岩などが取り除かれ平坦に整地されていた。
これはもうアルヌスの丘跡地ね、さしずめ特地自衛隊本部アルヌスといったところ。
コダ村から来た人たちにはそれぞれ簡易テントが用意された。住人たちはまさか自分達が寝泊まりできる場所が与えられるとは思っていなかったようで最悪野宿を覚悟していたのが大半だったためとても驚いていた。
伊丹は戻ってすぐに調査の報告をするため本部と思わしき建物に向かっていった。他の隊員は残りのテントを建てたり食料を取りにいったようだ。食料は日本から持ってきた缶詰や保存食。数日はこれになるだろう。
こっちの世界ではまず見ることのない缶詰に全員興味津々なよう。中でもレレイが人一倍興味を示していたようだ。
アルヌスに到着してからさらに数日が経った。
現在は自衛隊が避難してきた人達のためにしっかりとした家、といってもプレハブ小屋のようではあるがそれを設置するための場所を整地している。設置されればテントよりは快適になるだろう、一人ひとつのベッドも用意してあるとか。
もうしばらくすれば整地も終わり運び込まれてくるだろう。それまではそれぞれ皆自由行動の時間、邪魔にならなければ問題はない。それぞれ興味のあるものを見たりしている。
中でもやはりレレイが一番興味深く見ている。レレイは気になったらとことん調べたりするタイプのようで料理中の場所に行き食材を見てみたり、整地しているところに近づきその様子を興味深そうに見ていた。ただ重機の近くに行こうとしたときは危ないと注意されていた。
レレイはカトーの弟子、まだまだではあるが賢者なようだ。ただ常に疑問を追い求め続ける探求心、貪欲なまでに知識を求めるその姿は賢者というよりは魔女に近いのかもしれない。ふむ、レレイが将来引きこもりの紫もやしにならないことを祈るばかりだ。
そうこうしていると整地が終わり、伊丹達がやって来た。
どうやら年齢や性別、子供が何人いるかなど他には名前にそれぞれの顔写真を撮りに来たらしい。
それぞれが自己紹介をしていく。聞き取れないところは私が通訳をする。
まずは賢者カトー・エル・アルテスタンからかいがいのある老人ね、そしてその弟子のレレイ・ラ・レレーナ、歳は15歳こちらでは15歳はもう大人という扱いだ。実のところカトーよりも優秀なのではと私は思っている。
次はコアンの森のホドリューの娘、テュカ・ルナ・マルソー。
そう……やっぱりホドリューの…。
あの金髪エルフの子の名前はテュカね。コアンの森は炎龍に焼かれたあの森のことあそこの集落のエルフたちは私を厄介者扱いしてはいたがちょっかいをかけたあとでは意外と良くしてもらったことを覚えている。
あの集落が消え私が見る世界は少しだけ輝きを失ったように感じるがいつまでも悔やんでいても仕方がない。
ただ出来ることならこの子は守ってあげられればいいとは思っている。
因みに歳は165歳、流石はエルフ長命ね。
これを聞いたときは伊丹は改めてエルフだな、と実感し近くで聞いていた黒川もこれには驚いたようだ。
そして次はゴスロリ。暗黒の神エムロイに仕えているロゥリィ・マーキュリー、これについては特になし。ひとついえることは見た目イコール年齢ではないということ。ただ他の子供達と手を繋ぎ輪を作って遊んでいると見た目通り子供。
ただレレイいわく年上、年上の年上のもっと年上らしい。ただそのあとのそれよりも年上がとか小声でいってこっちをチラ見したことはしっかり覚えてるからな。
伊丹は何歳なのかとレレイに聞いたら恐くて聞けないですって、でも多分あいつなら問題なく教えてえくれるでしょう。最悪こっちを煽ってくるまであり得るし。
あとは子供がそれなりの人数いる。子供はどこでも元気ね、良いことだ。
ようやく住民の登録が終わって早めの夕食。
パンに味噌汁、サラダといたってシンプルだが皆とても美味しそうに食べていた。中でもパンに驚いたようだ。此方にもパンはあることはあるだが柔らかくはなくむしろ硬いほうだ。こんなパンは食べたことがないとはしゃいでいた、特にカトーが。
対してレレイは食べる前に手を合わせいただきますと一言いってから食べ始めた。これには私が驚かされた、覚えるのがかなり早いようだ。
それからさらに数日後、レレイたちはあることで悩んでいた。
自衛隊には住む場所に食料まで何から何まで良くしてもらっている。
ただここまでされ生活費まで負担されては流石に申し訳ないということで生活費くらいは自分達でどうにかしたいらしい。ただ多くは年寄りに怪我人、子供ばかり。
テュカや数人の女性陣は丘の兵に身売りするしかないかなどといっている。こちらでは最悪それでもいいかもしれないが自衛隊にそれをやろうとしてもむしろ心配されるか逆に設備が良くなったりかなり親身になってしまうのではないかと思うけど。
レレイは仕事がなにかないかなど聞いてみるといい、カトーは翼竜の死骸に眼をつけその鱗や爪をどうにかできないか考えているよううだ。
私から伊丹に聞いてみるとしましょうか。
今、伊丹は書類作成に追われているようだ。それもそのはず黙ってこちらの住民を連れてきてしまったのだから。
なぜ連絡しなかったかと聞かれれば特地だから電波障害でも起きたとのこともしくは炎龍のせい、成る程炎龍はEMPまで使えるわけだ初耳ね。
まあ流石にそんなことはなく単に連絡してしまっては連れていくのを却下されるだろうと思った伊丹が気を利かせてのことだろうけどそのお陰で等の本人は書類作業で大変そうにしている。自業自得といったところだ。
忙しそうだけど声をかけるとしよう、早くしないと誰かに身売りでもされたらいろいろ不味いし。
「伊丹、忙しそうなだけど少しいいかしら?」
「あ、ああいいけど…なんでそんな器用な出方を」
今私は伊丹が使っている机の少し上に小さめのスキマを作りそこから顔を覗かせている。
「そんなことはどうでもいいのよ。それよりも外に転がってる翼竜だけどこちらで回収してもいいかしら」
「ん~、まあ問題ないんじゃないかな。こっちも的にするぐらいしかないみたいだし」
どうやら問題ないようだ。あとはこの事を伝えれば誰も身売りなんて考えないだろう。
レレイたちにこの事を伝えると流石に全て取ってもいいといわれるとは思っていなかったようで驚いてはいたが次の日からせっせと鱗や爪を集める作業を続けていた。
◆◆◆
さらに数日が経ち、自衛隊本部には簡易浴場、アンテナなどが設置された。アンテナの設置でスマホなどが使えるようになり伊丹はとてつもなく喜んでいた。ただどこでも使えるわけではなくあくまで電波の届く範囲でのこと。
なんだろうここ本部のはずだけどだんだん娯楽施設感が出てきているような気がする。
そして今日は集めた翼竜の鱗を売りにイタリカという場所に向かう。そこにはどうやらカトーの知り合いがいるらしく買い取ってくれるようだ。
イタリカに向かうメンバーは伊丹が指揮する隊とレレイ、テュカ、ロゥリィ、私で向かうことになった。出発の際にテュカが少し不安がっていたがレレイの言葉で大分気が楽になったらしく特に問題などは起きたりしなかった。
本部を出発し大分イタリカに近づいてきているがテュカがなにやら気になっているらしく視線の先を見てみるとそこには黒川がいた。
黒川が視線に気付きテュカを見るとテュカは視線をそらすそんなことが数回、どうやらロゥリィも気がついたらしくああいう娘がタイプなのかとからかっている。
あら~、これはぁキマシってやつかしらね。お姉さんはいっこうに構いませんどうぞ続けて。
そんなふうにとある花が咲きそうな話をしていると倉田が前方に煙を発見した。また煙なのね、この部隊トラブルに会いすぎではないだろうか。
「倉田、この道あの煙の場所の近くとおると思うか」
「通るというよりも向かっている先のような気がしますよ」
「その通りよ、あそこが目的地のイタリカ。伊丹またトラブル発生ね。あなた最近ついてないんじゃない?」
伊丹はなんともいえぬ表情をして煙の方向を見ている。後ろにいたレレイも私の隣に身を乗り出し双眼鏡で見ている。ただそれ向きが反対になってる。それじゃあ見ようと思っても見れない。
「レレイ、逆よ。こっちから見てみなさい」
「ありがとう、紫はいろんなことを知っている」
そうそう、紫と名前で呼んでもらうことにお願いしたわ。さん付けでも賢者でも好きに呼んでもらっても良かったが気楽に呼んでもらったほうがお互いにいいだろうと思いそうしてもらった。
それはいいとして、一体イタリカでは何が起こっているのか何が待っているのかなんてことを考えながら私たちはイタリカへと向かっていった。
◆◆◆
紫達がイタリカに到着する少し前
イタリカ フォルマル伯爵領
テッサリア街道とアッピア街道の交点に発展した交易都市、それがイタリカ。
現在の当主はミュイという11歳の少女。
実のところ他の領主候補が存在していた。だが互いに後継人を巡って争っていたところその両家の当主が出兵に参加し戦死したことでフォルマル家に構っていられる余裕がなくなり両家は兵を引き上げさせた。
結果、フォルマル領はミュイが納めるとになったがまだ幼いために不正などがはびこり治安が悪化。
そして今は盗賊の集団にイタリカは攻められていた。
そこで指揮をとり率先して戦うものが数人いた。
その甲斐あってひとまずは盗賊たちを撃退することができたようだ。
妾の名はピニャ・コ・ラーダ。たった今イタリカを攻めていた盗賊を撃退したところだ。
イタリカにはアルヌスの丘へ向かう途中でたちより状況を聞き加勢することにした。私の他にも一緒に同行している者が3人ほどいる。一人はハミルトン、彼女は妾の騎士団の一人だ。二人目はグレイ。彼は騎士団を作ったときに色々教えてもらった教官のような存在だ。そして最後はノーマ、彼は少し前から妾の護衛の一人を勤めている。
「ノーマ、ハミルトン無事か!」
「なんとか生きてま~す!」
良かった、どうやら無事なようだ。かなり激しい戦闘だったが生き残ったようだ。
「薄情ですなぁ、小官の心配はしてもらえんのですかな?姫様」
「貴様は無事に決まっているだろう。グレイ」
それを聞きグレイは豪快に笑っている。彼とはかなり古い付き合いで腕もかなりのものだ。彼に関しては心配する必要もないだろう。
それに古い付き合いということもありお互いに遠慮などはない。妾にこんな風な口の聞き方をする人物は少ない。グレイが姫様といった通り妾は皇帝の娘、だが妾も悪い気は全くしないむしろ変に気を遣われたほうが嫌になる。
「姫様、なんで私たちはなんでこんなところで盗賊の相手をしているんですか」
うっ、それをいわれると痛いな。別に妾だって好きでやっているわけではないのだ。
「仕方ないだろ!フォルマル伯爵領に大規模な武装集団が侵入したからてっきり異世界の軍隊かと思ったんだから……」
そうなのだ、異世界の軍隊が攻めてきたとばかり思っていた。でも違った。いざ迎え撃ってみればその正体はアルヌスの丘奪還に向かった連合諸王国軍の敗残兵達だったのだ。諸王国軍が盗賊に成り下がるとは思っても見なかった。
だが撃退することができた今のうちに皆には休息をとってもらわなければならないまたいつ攻めてくるかわかったものではない。
そうグレイたちとイタリカの住民に伝え、妾も休息を取りに当主であるミュイ殿の屋敷に向かった。
「お帰りなさいませ、皇女殿下」
屋敷に着くとメイドと執事が出迎えてくれた。二人とも古くからこの屋敷に仕えているらしい。
妾は食事を済ませ奥のベッドで少しだけ横になると伝えて向かった。その際にメイドにもし妾が起きなければどうする?と聞けば水を頭からぶっかけてたたき起こすとなかなかに肝の据わったメイドだということがわかった。
ベッドに入りこれまでのことを考える。正規兵は少数、民兵は勇敢な者から死んでいる。おまけに士気は最低だ、こんなものが妾の初陣になるとは……
その他にも自分の騎士団のことなどを考え物思いに耽っていた。どれだけ時間が過ぎただろう急に体に冷たいものがかけられ飛び起きる。本当に水をかけられたようだ。
「何があった!敵か!」
「ふーむ、果たして敵か味方か。とにかくおいでくだされ」
そうグレイに促され準備をして東門に向かった。
東門に到着し門の覗き穴から外を見てみると見たこともないものが三台あった。ハミルトンは木甲車だろうかといっていたがそれは違う。あれは明らかに鉄でできている。
城壁からノーマが姿を見せろと呼び掛けると数人が姿を表した。
一人は持っている杖から見るにリンドン派の正魔導師だろう、さらにエルフまでこれだけでもかなり面倒だ。聖霊魔法と正魔導師の組み合わせは普通の魔法よりも厄介だ。
!?、ロゥリィ・マーキュリーなぜあんな者まで!?
「あれが噂の死神ロゥリィですか」
「ああ、以前一度だけ国の祭祀で見たことがある」
グレイはエムロイの使徒であるロゥリィが盗賊に加わるだろうかといっているがあの方達だったらはっきり言ってやりかねない。神の行いはただの気まぐれ、それに神の御心なぞありはしない。
そういうとグレイは小官はなにも聞いていませんといっていたが誰も咎める者などここにはいたりしないから平気だというのに。
そしてさらにもう一人とんでもない人物が現れた。
!?、なぜ、なぜだ!なぜここにあの者が幼い頃にあって以来一度もあっていなかったというのに!
「ん?姫様どうかされましたか」
「あ、ああ。グレイ、ハミルトンよく聞けあそこに見える紫色のドレスのような服装の女性だがあれはとんでもない人物だ」
グレイ、ハミルトンは外を見て確認してはいるがことの重大さが分かっていないようだ。
「あれはお前たちも一度は聞いたことがあるだろうと思うが妖怪の賢者と呼ぶ者もいれば厄介者だという者もいるあの者の名は八雲紫だ。ハミルトンお前も妾も幼少の時に会っているぞ」
「なっ!?あれがそうなのですか!」
「あぁ!?思い出しました!確かに会ってます」
ハミルトンも思い出したらしく苦い顔をしている。それもそのはず妾達がまだ幼い頃騎士団を作り訓練をしているところに突然現れかなり弄ばれたのだ。しかも教官をしていたグレイがいなくなる頃を見計らったかのように現れる、グレイが見たことがないのはそのせいだろう。
「どうします、姫様?」
決断しなければ、時間はない。どうするピニャ今この街のすべてが妾の決断にかかっている。もしあの者達が盗賊に与していたのであればここは一瞬で落とされているはずだ。どうするにしろこのままでは盗賊に負ける、ならば彼女達が何をしに来たかは知らないが強引に仲間にすればいい!!。
「よく来てくれた!!」
勢いよく扉を開け彼女等を迎え入れる。開けると同時にガンっという音が響く。さらに城壁の兵の手が滑ったのか八雲紫に放たれる一本の矢。それを紫は片手で掴み取り此方を見てくる、というよりも視線は少しだけ下の方。
妾もそちらを見ると緑色の服を着た人物が倒れている。
「…………これ、妾の…せい?」
イタリカの市民、グレイ、ハミルトン、ノーマそして我が命、すまぬ。終わったかも……
ピニャ殿下可愛いですよね
若干空回りしている感じが
誤字報告してくださった方々ありがとうございます。
アドバイス、誤字などありましたら報告お願いします。
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