始まりました林間合宿
正直峰田との掛け合いを書きたかっただけですね 半分以上が初日の夜の話になってます
相変わらず人が多いと誰の台詞か分かりづらいですが、誰の台詞か考えるのも楽しみの1つと作者は思っているので、このままのスタイルでごり押します
「・・・というわけだ。2人とも、挨拶しろ」
林間合宿当日の朝。俺と人使は、ヒーロー科の面々の前に立たされていた。たった今、ヒーロー科編入の説明を終えたばかりだ。
「畑中大河です。個性は吸収。相手の個性による攻撃などを吸収してエネルギーに変換、それを使って攻撃とか防御が出来ます」
「俺は心操人使。個性は洗脳。条件を満たした相手を洗脳する。洗脳中は記憶は残らないのと、ある程度の衝撃で解ける」
「畑中はA組、心操はB組のバスに乗っていく。じゃ、バスに乗れ」
相変わらず最低限の説明しかしないな。さすが合理性の鬼だ。
質問攻めになりそうな流れを飯田がぶったぎってくれたお陰で、わりとスムーズにバスに乗れた。席は相澤先生の隣だ。
先生の隣だからか、あまり話しかけられることはなかった。でも後ろのやつらは一部を除きやたら騒いでいる。高校生らしい行事にわくわくしているようだ。
「で、合宿はどこから始まるんですか?」
黙っていてもよかったのだが敢えて先生に話しかけてみる。
「どういう意味だ?」
「俺が知ってる先生の性格だと、後ろの騒がしいやつらにお叱りの1つもないのはおかしいかなと。なので、合宿所に着く前に何かあるんじゃないかと思いまして」
「・・・察しが良すぎるのも困りものだな」
ああ絶対なんかやるなこの人。まぁ別に人に教えたりはしないけどな。
俺含むA組のバスが着いたのはやたらと見晴らしのいい高台だった。
(あー、合宿所まで自力でたどり着けとか言うのかな)
そんなことを考えていると、バスとは別の車から女性が2人出てきた。
「煌めく眼で、ロックオン!」
「キュートにキャットに、スティンガー!」
「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!」」
華麗にポージングを決めた彼女達は、猫がモチーフと思われる色違いのコスチュームを身に纏っている。
可愛いとは思ったが、彼女達はミッドナイト先生と同じく堂々としているのでそれ以上の感情は沸いてこない。すごくぶっちゃけて言うと、萌えない。
やたらと緑谷が興奮しているのでヒーローなのだろうが、顔面を掴みながら「心は18」とか言われても困る。
「「必死かよ・・・」」
声が聞こえた。どうやらそう思ったのは俺だけじゃないらしい。
「あんたらの宿泊施設は、あの山の麓よ!」
挨拶の後、赤いほうの女性がそう説明した。
なるほど、ここからあそこまでを自力で行けということか。何人かは気付いてバスに戻ろうとしているが、それを青いほうの女性が止めた。
そして女性が地面に手をつけると、突然地面が盛り上がり、みんなが崖下に放り出された。
「で、俺はどうすればいいんですか?」
相澤先生のそばにいることで落下を回避した俺は、先生にそう聞いた。
「お前は俺と合宿所に行って座学だ。しかし、察していたとはいえ予め避けているとはな」
「俺から見て彼等は遥か先にいます。まだ隣に立てる実力はありません」
「話が早くて助かる。じゃ、行くぞ」
そうして俺は合宿所へ向かい、人使と共に座学を行った。
A組が合宿所に着いたのは、夕方の5時過ぎだった。ピクシーボブの個性によって作られた土偶とひたすら戦わされていたらしい。名前は座学の合間に聞いた。
全員が揃ったところで、A組が昼抜きだったこともあり、早めの夕食となった。
「がっついてんなぁ」
「そりゃそうだろ」
ひたすら座学だった俺達と違い、みんな箸の進みが早かった。特にA組は、余程腹が減っていたのか一心不乱に掻き込んでいる奴もいる。
「土鍋ですかぁ!?」
ご飯が食べられる嬉しさで頭のネジが緩んでる奴までいる。いやまぁすごい美味しいんだけど。
「まぁ色々世話焼くのは今日だけだし、食べれるだけ食べな!」
ん?今日だけ?
「明日から自炊か?」
「みたいだな。まぁ明日にならないと分からないけど」
「それもそうだな」
ちなみに仲の良い人で席が埋まるので、俺達は端の方で向かい合って食べている。ぶっちゃけ座学だけで体力をろくに使っていないので肩身が狭い。
風呂。俺はA組と、人使はB組と入ることになった。
なんとなくだが、それぞれの編入先な気がしてならない。
「しっかし2学期から同じクラスかぁ」
「まだどっちとかは言われてねえぞ」
上鳴に指摘しておくが、バスに風呂、寝床まで一緒となっているのでほぼ確定ではある。
「それでもどっちかには入るんだろ?同じヒーロー科の仲間として、これからよろしくな!」
「ケッ」
仲間が増えたことを喜ぶ切島と、そっぽを向く爆豪。そしてそれを見て苦笑する緑谷。
「爆豪君!これから苦楽を共にする仲間にその態度はなんだ!?」
飯田は委員長節全開で注意しにかかっている。轟は特に何も思ってなさそうだ。
「るせえクソメガネ。俺は馴れ合うつもりはねぇ」
「お前はホントとんがってるよなぁ」
「うるせぇぞしょうゆ顔!」
しょうゆ顔と呼ばれた瀬呂の隣で尾白が乾いた笑いを浮かべ、常闇と障子は我関せずといった態度。青山に至ってはおそらく自分の眩さに酔いしれている。
口田と砂藤は会話に参加したくないようだ。まぁ爆豪あんなだしな。
ここまで見て俺はあることに気付く。
「あれ、峰田は?」
峰田は、男湯と女湯を仕切る木造の壁の前に立っていた。
「求められてるのは、この壁の向こうなんすよ」
「やっぱその程度か」
大多数が壁の向こうの女子のあられもない姿を想像しているであろう中、峰田の行動を違う方向からぶったぎる。
「なんだよ畑中。俺のエロ道に文句でもあんのか?」
「「「エロ道って・・・」」」
あまりの清々しさに若干引く奴等を尻目に、俺は峰田とのバトルを始めた。
「可哀想だと思っただけだ。お前はまだ真のエロに辿り着いていない」
「真のエロ?女性の麗しい裸を拝む以上のエロがどこに存在するってんだ!?」
「そこで思考が止まってる時点で、お前は真のエロには届かないぜ!」
「なら言ってみろよ!その真のエロってやつをよぉ!!」
誰も何も突っ込まない。そりゃそうだ。今俺達の声はおそらく女子に筒抜けになっている。ここで参加しようものなら、最悪同列に見られる恐れがあるのだ。
「教えてやるよ・・・真のエロってのは、相手から提供されるエロのことだ!!」
「っ!!」
「想像してみろ。バスタオル一枚で「あんまり見られると恥ずかしい」と言っている姿を!恥ずかしそうにもじもじしている女の子の姿を!!」
「ぐっ!ぐぅぅ!!」
「それは、心を許した者にしか見せない姿。自分のすべてをさらけ出しても良い、そう思える相手にしか見せない真の姿!それが、俺の求める真のエロだ!!」
「がぁぁぁぁぁ!!」
「お前のやろうとしてることは、女性の心を遠ざける。つまり真のエロから遠ざかる行為だ。それでもやるのか!?目先のエロに囚われて、真のエロを棒に振っても良いのか!?」
「ふっ、ふっ・・・俺は、俺はァァァァ!!」
峰田は俺の言葉を理解し、葛藤している。そして、出した答えは。
「諦めきれねぇぇぇぇ!!」
覗きを敢行することだった。
「女子ー。峰田が行ったぞー」
一応女子に注意喚起しておく。が、その必要はなかったらしい。
突然ニュッと顔を出した子供が、峰田を叩き落とした。
峰田を救ける奴はいない。と思いきや、止めるために動いていた飯田に綺麗にぶつかった。
そして今度は子供ー洸太が落ちてきた。こっちはいち早く動いた緑谷が救けた。少し鼻血が出ているのを見るに、おそらく感謝を述べられた際に彼女達のあられもない姿を見てしまったのだろう。罪はない。
風呂を出た俺は今、女湯入り口の前で土下座をしている。
「大河くん!?なにしとん!?」
「先程の不貞を謝罪したく馳せ参じました」
「とりあえず顔上げな。なんかウチらがやらせてるみたいになってるから」
促され、立ち上がる。
「それで、謝罪とは一体・・・」
「さっきの風呂場での話だ。不快な思いさせちまったかと思って」
「うーん、でも、嫌な感じはあんまりしなかったよ?」
「びっくりはしたけど、なんてゆーか、男の子だ!って感じ」
「そうね。男の子なら女の人に興味を持つのは仕方のない事だもの。でも、大河ちゃんは峰田ちゃんとは違うわ」
「そうや!大河くんはそーゆうことせえへんもん!」
なんだろう。ヒーローを目指す女の子はみんな天使か何かなのかな?
「えええ。何でみんな許す流れなの?こいつはウチらの体で変なこと考えてんだよ?」
あっ現実見えてるやついたわ。
「待て耳朗。それだと俺がいつもエロいこと考えてるみたいじゃねーか」
ブスッ
「いたいです耳朗さん」
「・・・あんたがエロいとか言うからでしょーが」
「耳朗ちゃん。暴力は良くないわ」
「あれ?てか大河くん大丈夫なん?」
「ん?音の事か?大きくなった分は吸収してる」
そういや実際どういうものかって見たことないのか。
「そういえば私の酸も効かなかった!」
「ってことは、私の顔も見えるの!?」
「見えないぞ?」
話も逸れたしちょうどいいから説明するか。
「俺の個性は吸収できる範囲がわりと狭くてな。轟とか芦戸とかの直接個性で攻撃するタイプと、相澤先生みたいな直接体に作用するタイプ位しか吸収できないんだ」
「そうなんや」
「でもでも、触っちゃったら見えちゃうんじゃないの?」
「それも実証済みだ。身体機能に直結してる個性は、例え触っても吸収できない。試しに触ってみるか?」
徐に手を出し握手を求める。その手をがしっと掴む感触があった。度胸と好奇心がすげぇな。
「みんな、見えてる?」
葉隠以外が首を横に振った。
「そういうことだ。あとは、こっちの説明もしとくか」
握手を終えた掌の上に200でエネルギーの塊を作り出す。
「うわっ。なんか、歪んでる?」
「これはどういった現象なのでしょうか?」
「これが吸収したエネルギーの塊だ。何もないように見えるだろうけどちゃんとここにある。触ってみると分かるぞ」
恐る恐る触る女性陣。瞬時に驚きと喜びが沸き上がる。
「すごーい!どうなってるの!?」
「何もないのに何かあるよ!!」
「ホントだ・・・何これ・・・」
「本当にどうなっているのでしょう・・・?」
「不思議な感じだわ」
「ところでこれどうするん?」
「こうする」
胸から体へ戻していく。
「なんでか胸からだけなんだが、こうやって体に戻せる」
「「「へぇ~」」」
「さて、長くなっちまったけどこんな感じだ。明日早いらしいし、今日はもう寝ようぜ」
「それもそうやね」
おやすみ~、と去っていく女性陣を見送り、トイレに行ってから男子部屋へ戻る。
(問題はここからなんだろうなぁ)
案の定、俺は問いただされた。主に女子に興味のある奴等に。
「うぉぉい!耳朗にドックンされなかったのか!?」
「されたぞ。効かなかっただけだ」
ドックンって単語が出てくるってことはお前ははしょっちゅうやられてるのか。上鳴よ。
「にしても五体満足っておかしくねぇ!?」
「なんか、俺は峰田とは違うからって言ってたな」
「オイラとお前の何が違うんだよぉぉ!!」
峰田は簀巻きにされている。当然の措置だと思ってしまう俺がいた。
「俺は畑中の言葉に漢を感じたぜ!」
「あの言葉のどこにそんなもの感じたの・・・」
「まぁまぁ、感じ方は人それぞれだよ」
切島の言葉に尾白と瀬呂は呆れている。
「俺は、自分からは絶対にそういうことはしないという意思を感じた。その誠実さが、女子の面々にも伝わったのではないだろうか?」
「ケッ、くだんねぇ」
飯田はこんな話でも真面目だ。爆豪は興味無さげにしている。
他の面子は黙っている。ほぼ初対面の人間が赤裸々な告白をしたのだから無理もない。
そんな中、こういう話に無頓着そうな意外な奴が口を開いた。
「畑中。お前は、女体に興味があるのか?」
ボフォッ!
だから真顔は卑怯だぞ轟ぃ!あの爆豪ですら吹き出してんじゃねーか!
「逆に聞くけど轟はないのか?」
「・・・・・・分からねぇ」
静寂。轟の言葉の意味は、おそらく全員に伝わっただろう。
分からない。言い替えれば、これまで考えたことがないということ。爆豪のように興味がないでもなく、峰田のようにそれ一辺倒でもなく、純粋に分からないのだろう。
「なら、これから知ってけばいいだろ」
はっとした顔の轟に俺は続けた。
「考えたことないなら、これから考えてけばいい。知らないなら、これから知っていけばいい。そうすりゃ、答えは勝手に出てくるもんだ」
「・・・そういうもんなのか?」
「そういうもんだよ」
「・・・そうか」
轟は納得したようだった。
「・・・何の話だったっけ?」
「轟君が女性に興味があるかという話だ」
「なぁ畑中。そこまで言うなら、好みのタイプとか教えてくれよ!」
丸く収まったかと思ったが、この程度では上鳴は止まらないようだ。
「このクラスで言うなら耳朗だな」
「耳朗ー?あんな女っ気のない奴が好みなのか?」
「分かった。じゃあ普段さばさばしてて男っぽい耳朗が、急に汐らしくなって自分と手を繋ごうとしてる姿を想像してみろ」
「・・・・・・はぅっ!」
「今お前が感じたそれが俺の答えだ」
上鳴が悶えている。あいつチャラいように見えて恋愛初心者だな。
上鳴以外も一部悶えている。思い浮かべたのが耳朗なのかどうかは分からないが。
「さて、寝るか」
「そうだな。明日からは朝が早い。みんな、そろそろ就寝しよう!」
飯田の一声でみんなが就寝の準備にかかる。何人か寝付けない奴もいそうだが、俺は眠れるので気にしない。
もし寝坊しそうな奴がいても飯田なら起こしてくれるだろうしな。
思った以上に大河が変態になった 崇高な理想の持ち主(笑)です
同じ変態でも大河くんはレディーファースト勢だから許されてることにします
耳朗が露骨な反応を示すのは、作者の中で彼女が一番乙女だからです
はてさて合宿編はまだまだ続きます