防御寄りな個性の少年の話   作:リリィ・ロストマン

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 書けるときに書く!
 実際はアニメとかSSとか見てて放置してただけです
 最近雄英白書も読んだのでその話もそれなりに書きます それなりに(爆)
 きりのいいとこまで書いたら見事に2日目だけで終わりました



林間合宿2

 

 

 朝の五時半。今日からA組の本格的な訓練が始まる。

 

 「とりあえず爆豪。これ投げてみろ」

 

 爆豪が渡されたのは、個性把握テストで使われたというボールだった。当時の記録は705,2メートルらしい。

 瀬呂が1キロくらい行くんじゃないかと言っている中で、爆豪がくたばれと叫びながら投げた。性格って言葉に出るんだな。

 記録は709,6メートル。この結果を受けて、成長はしていても個性そのものはあまり伸びていないことを先生が説明した。

 

 「最後に、畑中。お前試しにやってみろ」

 

 「俺がですか?」

 

 「今のお前とこいつらの差ってのを明確にしたいんでな」

 

 差って。これじゃ差どころかぶっちぎりになるぞ。

 言われるがままボールを受け取り、隙間がないようにエネルギーで包み込んで力なく投げる。すると、ボールは一直線に飛んでいき、放物線を描くことなく視界から消えていった。

 

 「・・・何をした」

 

 「エネルギーで包んで投げました。あのボールは今自重が消えてるので何かにぶつからない限りは無限に飛びます」

 

 俺のエネルギーはそれ単体だと何かにぶつかるまで真っ直ぐ飛んでいくのだが、何かを包んだ場合も同様に飛んでいく。だが、ほんの少しでも隙間があると中で物体が動き衝撃としてカウントされるため、完全な真空にする必要がある。

 

 「・・・そうか」

 

 おそらく相澤先生のイメージとは違ったのだろう。だが、先生はすぐさま軌道を修正した。

 

 「一部分とはいえ、お前らは編入生である畑中に遅れを取っている。個性訓練は死ぬほどきついが、ヒーロー科の先輩として、プルスウルトラの精神で乗り越えろ」

 

 そうして、それぞれの個性訓練が始まった。

 

 

 

 訓練内容は様々だが、主に限度の底上げと基礎体力の底上げ、一部が個性のコントロールといった感じだった。

 

 「それで、俺は何をすればいいんですか?」

 

 「まず、お前の限界値についてだ。吸収しながら体より外に出し続けた場合に限界が来るかどうかを確かめる」

 

 「なるほど。考えたことなかったですね」

 

 言われた通り、轟が風呂釜の温度調整のために出している個性を吸収しながら掌にエネルギーを集める。時間はかかったが、掌のエネルギーが1000を超えた。

 

 「超えましたね」

 

 「意識が飛びそうな感覚はあるか?」

 

 「全くないです。この状態ならリミッターは越えないみたいですね」

 

 「よし。じゃあそれを自分に戻せ」

 

 「え・・・?リミッター超えますけど」

 

 「プルスウルトラだ。限界に慣れることで限界を伸ばせ」

 

 「意識が無くなるのは折り込み済みなんですね?」

 

 「そうだ。あとは意識が無くても吸収する可能性があるから戻すときは轟から離れろ」

 

 「分かりました」

 

 そこから俺は、吸収気絶の無限ループを繰り返した。4回目の気絶から意識を取り戻した時、自分のリミッターが伸びたことを感じた。

 

 「限界が1200に伸びました」

 

 「気絶時間も1時間から50分に減ってる。この調子で続けろ」

 

 「はい」

 

 半信半疑ではあったが確実に限界値が伸びたことを実感し、俺は気絶ループを続けた。その日のうちに2度目の限界突破が訪れ、俺のリミッターは1400になった。

 

 

 

 「で、人使は何してたんだ?」

 

 「虎さん考案の身体強化の訓練」

 

 夕飯のカレー作りの最中。昼休みよりは元気そうな人使に聞いたのは、我ーズブートキャンプという全身をいじめ抜くトレーニングの全容である。

 

 「それで昼あんななってたのか・・・」

 

 「今動けてるのが自分でも不思議だよ」

 

 そんな人使が今やっているのは野菜の皮剥き。剥いた野菜は俺が切っている。本来A組とB組で作るはずのものを、「俺達はまだヒーロー科じゃないから」という理由で、2人で作ることを決めた。

 そもそもは全員で協力すればいい話なのだが、B組の物間って奴がやたらとA組を煽った為、そのルートは瓦解した。

 

 「さて、さすがに火を起こしてたら時間かかりすぎるな。ちょっと轟借りてくるわ」

 

 「おう」

 

 昔取った杵柄で、土鍋での米炊きも火起こしも出来るが、薪に火をつけるのは簡単じゃない。

 

 「轟!こっちの薪にも火付けてくれるか?」

 

 「ああ」

 

 「あれぇ~!?君達は2人だけで作るんじゃなかったのかなぁ~!?」

 

 「無視していいぞ」

 

 「いいのか?」

 

 「無視かい!?それがヒーロー志望のすることかなぁ!?」

 

 「人を困らせるのはヒーロー志望のすることなのか?」

 

 「だれが!?誰を困らせてるってぇ!?」

 

 「お前さぁ。仮に災害救助の現場でも同じこと言うのか?」

 

 「そんな訳ないじゃないか!君は僕を馬鹿にしているのかい!?」

 

 「大いに馬鹿にしてるぞ。今作ってる食事を、自分達の為としか考えてないんだろ?」

 

 図星、なんだろうな。今まで捲し立てるように喋ってた口が止まった。

 

 「なら、君は誰のために作っていると言うんだい?」

 

 「救助現場でお腹を空かせてる子供達の為だ」

 

 「そんな人ここにはいないじゃないか!」

 

 「じゃあ聞くけど、俺達が自炊してるのは何でだ?」

 

 「それは、自分達の食事くらい自分達で」「そこで思考が止まってるから俺に馬鹿にされるんだよ」

 

 対抗心を燃やすのは悪いことじゃないけど、今この場においてはそれより大事なことがある。

 

 「これはただの林間合宿じゃない。雄英高校ヒーロー科の林間合宿だ。つまり、立派なヒーローになるための訓練だろ。なら、ただの自炊と侮らず、将来どう活かすかの想定、さらにその想定から今自分がどう動くべきかの逆算。やれることはいくらでもある」

 

 「・・・こじつけじゃないか」

 

 「何とでも言えよ。ヒーロー志望ならそのくらい出来て当然だと、俺が思ってるだけだ」

 

 「・・・・・・」

 

 黙ったな。何も言い返せないってことはよほど効いたのか。

 そして物間は無言のまま去っていった。

 

 「・・・すげぇな、お前」

 

 「そうか?」

 

 「・・・俺は、そんな風に考えてなかった」

 

 「人それぞれだろ。少なくとも俺は、与えられた時間をなるべく無駄にしたくない。それだけだよ」

 

 そう言って立ち去ろうとする俺を、轟が呼び止めた。

 

 「・・・火はいいのか?」

 

 「すまん、完全に忘れてたわ」

 

 周囲からちらほら吹き出す音が聞こえる。近くにいた人は聞こえていたようだが、聞かれて困ることでもないので気にはしなかった。

 

 

 

 轟に火を付けてもらい、ようやく次の作業に進むことができた。

 

 「待ってろよ、まだ見ぬ子供達!」

 

 「俺まで変な人だと思われるからやめろ」

 

 「お前には聞こえないのか!腹を空かせた子供達の声が!」

 

 「みんなカレー作ってるぞ」

 

 「知ってる」

 

 「ならなんで言った」

 

 「思いついたから」

 

 「殴ってもいいか?」

 

 「勘弁してください」

 

 設定に入り込みすぎたか。人使は設定には乗ったがちゃんと現実も見えている。というか俺がふざけるとほぼ条件反射で突っ込みが入る。まぁ分かっててふざけてるんだけどね。

 

 

 

 

 

 「何でお前らは立ち食いなんだ」

 

 無事カレーを作り終わり、A組B組の面々が座って食べている中、相澤先生に突っ込まれた。

 

 「設定に入り込んだ結果です」

 

 「あえて聞くが、どういう設定だ?」

 

 「災害地でお腹を空かせている子供達に、作ったカレーを分け与えるって設定です」

 

 「子供って設定にしたのは、大人ならある程度の空腹は耐えられるからです」

 

 「それだとお前らがそれを食べてるのはおかしいと思うんだが」

 

 もっともな質問だが、回答は用意してある。

 

 「子供達に、「お兄さんたちも食べて」って言われたことにしました」

 

 「さすがに食べないとまずいんで」

 

 「なるほどな。じゃあ立ってるのは何でだ?」

 

 「相手が子供なので、自由に取らせたらすぐなくなっちゃうかなと思いまして」

 

 「食べられない人が出ないように、見張ってるイメージです」

 

 「分かった。なら俺の回答も出してやろう」

 

 そう言って八百万の方へ向かった先生が、作ってもらった簡素な椅子を持って帰ってきた。

 

 「お前らが考えた設定とそれに応じた行動は立派だが、それでお前ら自身が倒れたら本末転倒だ。ヒーローであっても休息は必要だぞ」

 

 「確かに、救けに来たヒーローが倒れたら元も子もないですね」

 

 「頭から抜けてました」

 

 「まぁ、ただの自炊でそこまで明確なイメージを持てるのは大したもんだ。だが、明日からも訓練は続く。気張りすぎて日中の訓練が疎かにならないよう気を付けろ」

 

 「「はい」」

 

 相澤先生が去っていく。

 A組の生徒にはどうか分からないが、先生は基本的に俺達のやることに文句を言わない。それが単に甘やかされているだけなのか、先生が言うところの見込みがあるからなのかは分からないが。

 

 「ところでこれどうする気だ?」

 

 「食べ足りない奴が取りに来るだろ」

 

 救護食という設定の為、俺達は2人前を雄に超える量を作っていた。人数にして10人前以上はあるであろうそれは、俺の予想通りおかわりをしたいやつらの腹の中におさまった。

 にしても八百万がおかわりに来たのは予想外だった。なんでも個性に脂質を使うから蓄える為にたくさん食べるらしい。いっぱい食べればいっぱい出せるってことか。

 

 「う○こみてえ」

 

 瀬呂も疲れてるな。そんなこと言ったら・・・うん、耳郎に殴られてるわ。

 耳郎は八百万のことになるとわりと本気になる節がある。まぁ俺も人のことは言えないが。なんというか、彼女は穢してはいけないと思える何かがある。

 

 

 

 

 

 峰田のいないA組男子の寝室に、B組男子の面々が訪れている。峰田がいないのは・・・あいつだからとしか言いようがないな。

 B組が訪れた理由は至極単純。明日の夕飯である肉じゃがの具材である肉、牛か豚かを決める戦いの為だ。

 事の発端はB組物間。どこからその飽くなき対抗心が生まれるのかは分からないが、A組を煽りに煽り、勝負して決めるという構図が出来上がった。

 

 「どっちでもいいんだけどな」

 

 「最悪なくてもいい」

 

 俺と人使は、まだヒーロー科じゃないからという理由で勝負を避けた。ぶっちゃけ明日も訓練だから余計な労力は使いたくない。

 勝負は腕相撲。物間と切島が補習の為開始早々いなくなる。切島は5本勝負の副将だが大丈夫なのか?

 

 「ワリィ、隙見て戻ってくる!!」

 

 「いや補習に集中しろ」

 

 突っ込む前に切島は飛び出していった。仲間思いのいい奴だとは思うがもう少し自分の事を考えてもいいんじゃないだろうか。

 

 「こいつらヒーロー科だよな?」

 

 「男子高校生でもある、ってとこか」

 

 俺が思う一般の男子高校生は、「てめぇじゃ話になんねぇよ」と言われれば「調子のってんじゃねーぞ」と返すイメージがある。人使がヒーロー科であることを指摘した気持ちもよく分かるが、目の前のこいつらはまだ15、6のガキなのだ。

 

 「教科書持ってきてるか?」

 

 「当たり前だろ」

 

 俺達はそんな青春の一ページに1ミリも興味がないので自主勉を始める。補習への参加も申し出たが、「内容についてこれないだろう」ということで却下された。

 腕相撲はなんやかんや引き分けに終わり、枕投げが始まった。が、途中で個性を使い始めたので、俺達はそっと部屋から出て先生方の部屋へ向かう。先生も気付いていたらしく、こちらに向かっていた。

 

 「止めるのも馬鹿らしいんで放っておきました」

 

 「発端が肉じゃがの肉の種類なんで救いようがありません」

 

 「分かった」

 

 相澤先生が本気の目をしていた。そりゃそうだ。端から見てた同年代の俺達すら救いようがないと思ったのだから、先生の怒りは相当なものだろう。「お前らはおかずなしで白米でも食べていろ」とか言いそうな気がする。

 

 「ヒーローって、なんだろうな」

 

 「あいつらはまだ卵だからな。けど、あれ見ちゃうと俺達が落とされたの納得いかないよな」

 

 「大河は受かっただろ」

 

 「運が良かっただけだ」

 

 「そうかよ」

 

 俺への皮肉にも聞こえる人使の台詞は、その実「お前より実力の低い奴がのさばってるのが気にくわない」というものだ。事実、俺は実技試験のみで考えれば2位という好成績を残している。

 

 「けど置いてかれてるのも事実。夏休みのうちに、出来るだけ取り返さないとな」

 

 「当たり前だ」

 

 編入が決まったとはいえ俺達はまだヒーロー科じゃない。この三ヶ月で広がった差は大きいはずだ。決意を再確認し、俺達はそれぞれの寝床へと戻った。

 

 

 





 自分で書いてて、なぜ大河と心操が2人でカレーを作ってるのかがよく分かりません
 補足ですが、大河の昔取った杵柄とは、初めて友達らしい友達が出来たことに大河母が暴走し、心操家を巻き込んでキャンプに連れていかれたという経験によるものです

 あああついに敵連合との鉢合わせだああ 大河がどう動くのか分からねええ

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