防御寄りな個性の少年の話   作:リリィ・ロストマン

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 しばらくぶりです
 質の悪い風邪をこじらせてました
 とりあえず前回の続きとその後の話になります 大河が明らかに高校生離れした思考と行動ですが、思い付きで書いてるのでご了承ください



林間合宿4 その後

 

 

 「畑中!無事か!?」

 

 「俺は無事です!でも耳朗が毒ガスを吸ってしまって意識がありません!」

 

 施設にある部屋の1つ、補習を行っていたと思われる部屋に入り、ブラド先生に状況を報告する。補習を受けていた同じクラスの5人が、心配そうに耳朗に声を掛けている。

 

 「俺は引き続き毒ガスで動けない人の救助に当たります!」

 

 「待て!生徒を危険に晒すわけには」「相澤先生から許可を貰いました!」

 

 その言葉に室内が驚愕の空気に染まる。庇護対象であるはずの生徒に先生が許可を出したのだから無理もないだろう。

 

 「・・・イレイザーは何と言っていた?」

 

 「俺のエネルギー残量の確認と、敵との交戦は極力避けろと言われました」

 

 「・・・分かった」

 

 「先生!何でですか!?」

 

 いの1番に口を開いたのは切島。こいつの性格なら真っ先に救けに行こうとするはずだ。それでもここにいるのは、先生に止められたからだろう。

 そんな状況で、1人だけ行動を許可される生徒。納得できるはずがない。けど。

 

 「機動力の問題だ。お前らは知らないかもしれないが、畑中は今A組の飯田よりも速く走れる。つまり、たとえ会敵しても逃げるという選択が取れる」

 

 押し黙る切島。理解は出来たようだ。他の奴等も納得は出来ずとも理解は出来ただろう。

 

 「エネルギー切れの問題はあるが、それを確認した上でイレイザーが許可を出したのなら俺が止める理由はない。頼んだぞ、畑中!」

 

 「全力を尽くします!」

 

 そうして、俺はガス発生地点まで走った。

 

 

 

 「拳藤!状況は!?」

 

 「っ!アンタなんで!?」

 

 施設に向かう途中だったであろう拳藤は驚きを隠せないでいる。俺が施設の方から走ってきたのだから当然の反応だ。

 

 「相澤先生の許可を得て救助に向かってる。それより状況は!?」

 

 「小大と骨抜がガスにやられた!!あと鉄哲が動けない人を探してる!!」

 

 「分かった!その2人は任せても大丈夫か!?」

 

 「大丈夫!絶対施設まで連れてく!!」

 

 「任せた!」

 

 状況確認を終え再度走り出す。しばらくして、塊で動く集団を見つけた。

 

 「B組か!?状況を教えてくれ!!」

 

 「鉄哲が泡瀬を探しに行ってる!!後は心操がまだ見つかってない!!」

 

 「分かった!!気を付けろよ!!」

 

 「待って!アンタはどこに行くの!?」

 

 「救けに行く!相澤先生から許可は貰った!!」

 

 「・・・っ!分かった!!気を付けなよ!!」

 

 取蔭の心配を心に留めつつ、俺は更に走る。

 

 (人使がいたのはスタート地点の辺りだ。とりあえずスタート地点に行って戻ってるか確かめる!!)

 

 

 

 肝試しのスタート地点。そこには、拘束された敵2名と、プッシーキャッツの3人、そして出発前だったと思われるA組の面々がいた。人使の姿はない。

 

 「畑中くん!!イレイザーから伝言は聞いてるわ!」

 

 「マンダレイ!状況は!?」

 

 「ここにいた人は全員無事だよ!洸太も保護された!そっちは!?」

 

 「B組は鉄哲泡瀬を除く全員が施設へ移動中!A組は補習5人と耳朗が施設でブラド先生と待機!相澤先生は生徒の安否確認の為周辺の捜索中!他の人の行方はまだ分かりません!」

 

 「あと11人・・・!!君のエネルギー残量は!?」

 

 「あと982です!!」

 

 「まだ大丈夫そうね・・・引き続き救助をお願い!でも、自分の身が危険にさらされたらすぐ戻ってきなさい!!」

 

 「分かってます!!」

 

 「待ってください!!1人では危険なのでは!!」

 

 「彼に限っては、1人じゃない方が危険なのよ!」

 

 飯田の心配をマンダレイが切り伏せる。それに虎さんが補足を加えた。

 

 「彼奴の力は、その気になればここら一帯を更地に出来る。交戦許可が出ていないとはいえ、いざ巻き込まれれば、我らプロヒーローでさえ無事では済まないだろう。なればこそ、イレイザーも我らも彼奴を1人で行動させているのだ!」

 

 激震。そう言って差し支えないほどの衝撃が走ったように感じた。

 だが今は緊急事態。それを説明する余裕はない。俺は、まだ行方の分からぬ人を探すため走り出した。

 

 

 

 

 

 どのくらい走り続けただろうか。ようやく見つけた4つの人影は、うち3人が動けなくなるほどの重傷を負っていた。

 

 「状況を説明できるか?」

 

 重傷ではあるがまだ動けている1人ー泡瀬に訊ねる。

 

 「化け物に襲われた・・・逃げられなくて、戦って、みんなやられた・・・!!」

 

 「その化け物はどこに?」

 

 「いきなり攻撃をやめて、どっかに行っちまった・・・まるで、目的を達成したみたいな動きだった・・・」

 

 「分かった。俺は1人ずつしか運べないから、心細いかもしれないけど、ここで待っててくれ」

 

 そう言って、俺はおそらく1番重傷であろう人使を抱え上げ、その体をエネルギーで包んだ。少しでも体への負担を和らげるためだ。

 そして、施設へ向かって走り出した。

 

 

 

 走っている途中で、麗日、梅雨ちゃん、相澤先生の3人に行き会った。重傷を負っている人使を見て血相が変わった。

 

 「畑中!行方不明者はあと3人だ!そっちの状況は!?」

 

 「その3人がこの先で待機中!3人共に重傷、うち2人行動不能です!!」

 

 「麗日、蛙吹!心操を施設へ!俺と畑中は3人の救助に向かう!!」

 

 指示を受け、2人に人使を預ける。

 

 「・・・頼んだぞ!」

 

 2人が頷くのを見るが早いか、俺は先生と泡瀬達の元へ向かう。

 

 「敵は去っていったと聞いている。だが油断はするなよ!」

 

 「みんなの被害状況はどうなってますか?」

 

 「緑谷、耳朗、骨抜、小大が意識不明の重体。心操が重傷。他はほぼ軽傷で済んでる。後はお前が見つけた残りの3人だな」

 

 緑谷!?あいつは肝試し出発前だったはずだ!

 

 「緑谷が重体!?何があったんですか!?」

 

 「詳しい説明は後だ。まず3人を救ける!」

 

 「っ!はい!」

 

 その後3人の元に着き、俺は鉄哲を、先生は泡瀬と八百万を抱え、施設へと走った。

 

 

 

 

 「イレイザー!それに畑中も!?」

 

 「途中で合流した。これで全員だが3人とも重傷だ。医務室へ運ぶ!」

 

 相澤先生に続く形で、医務室へ向かい鉄哲をベッドに寝かせる。既に応急処置を終えたらしい人使もそこにいた。

 

 「・・・うん、命に別状はなさそうだね」

 

 「良かった・・・間に合った・・・」

 

 「間に合った、か・・・」

 

 ほっと安堵のため息をつく俺とは裏腹に、相澤先生は神妙な面持ちのままだった。

 言い知れぬ不安が、俺の頭を過る。

 

 「・・・相澤先生?」

 

 「・・・爆豪が、敵に連れ去られた。おそらくはラグドールもだ」

 

 「・・・・・・」

 

 何も、言えなかった。

 間に合ってなんかいなかった。守るために、救けるために全力で動いたのは間違いない。それでも、救けることが出来なかった。

 

 「気に病むなとは言わん。今は、自分が救けた人がいることを誇れ。お前が動いていなければ、被害はもっと拡大していたかもしれない」

 

 そんな俺を見かねてか、先生は俺に慰めの言葉をかけてくれた。目の前に、自分が救けた人達がいる。その事実が、俺の沈んだ心を少しだけ引き上げてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 合宿所の最寄りの病院。治療を終えた面々が帰る中、俺は1人病院に残っていた。命に別状はないとマンダレイは言っていたが、それでも重傷者の容態が心配だった。

 

 「お前なら、残っているだろうと思った」

 

 そこへ、俺が居残っていることを半ば確信していた相澤先生がやってくる。

 

 「彼らの状態はどうですか?」

 

 「全員命に別状はない。傷は深いが、緑谷以外は痕が残るような事はないそうだ。ただ、いつ意識が戻るかは分からないと聞いた」

 

 「そうですか・・・一先ず、救かったってことでいいんですかね」

 

 「そうだな。特に心操、八百万、鉄哲の3人は、処置が遅れていたら最悪の結果もあり得たと言っていた。お前が、救助に奔走してくれたお陰だ」

 

 「でも、救けられなかった人もいます」

 

 「ああ。その事実は受け止めなければならない」

 

 淡々と話している先生だが、その言葉の端々から悔しさが滲み出ている。

 

 「だが、後悔ばかりしていても先には進めない。俺達がやるべき事は、この事実を受け止め、これからどうするかを考えることだ」

 

 「・・・先生は、強いんですね」

 

 「強くなった、が正解だ。実力不足や判断の遅れ、様々な要因で救けられなかった命があった。それを糧とし、乗り越えたからこそ今の俺がある」

 

 「・・・俺も、強くなれますか?」

 

 「なれるさ。お前は、救けられなかった事を悔やめる人間だ。仕方なかったと切り捨てることなく、それと向き合う事ができている。時間はかかるかもしれないが、お前なら乗り越えられると、俺は信じている」

 

 先生は、ソファに座っている俺にしゃがみこんで目線を合わせ、信じていると言ってくれた。

 溢れそうになる涙を堪える。言いたいことがあるのに、声にならない。俺は、ただ頷くことしか出来なかった。

 その後、迎えに来た母さんの車に乗り、本来あと4日は空ける予定だった家へと帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 林間合宿への敵襲撃から3日後、俺は人使達が入院している病院で、切島、轟の2人と行き会った。俺と同じく、2人も毎日見舞いに来ていたらしい。

 

 「言いそびれてたけど、あの時はありがとな。俺は、何も出来なかった・・・」

 

 「止められたからだろ?悔しいだろうけど、先生達から見たら俺達は守るべき存在だからな」

 

 「けど、お前は動いてただろ!」

 

 「俺もそう聞いた」

 

 「俺が無理言ったんだ。正直、許可が出るとは思ってなかった」

 

 俺の安全と他の生徒の安全。譲れないもの同士を天秤にかけ、相澤先生は他の生徒の安全を選んだ。先生からしたら、苦渋の決断だったんだろうな。

 

 「・・・お前がそこまでして、俺達を救けようとしたのはなんでだ?」

 

 轟から思いがけない質問が飛んできた。

 

 「困ってる人がいたら出来る範囲で救ける。それが、俺の信念だからだ」

 

 「・・・そうか」

 

 「・・・畑中。お前に、聞いてほしいことがある」

 

 不意に、切島が神妙な面持ちで口を開いた。その目には、並々ならぬ決意が宿っていた。

 

 「爆豪の救出にでも行くつもりか?」

 

 「・・・っ!なんで、聞いてたのか!?」

 

 「お前の視線に、「今度こそ絶対に」って思いを感じた。推測でしかなかったが、当たりか」

 

 「・・・相変わらず、探偵みたいな推理力だな」

 

 真面目に天然をかます轟をスルーして、切島は話を続けた。

 

 「八百万が、敵の1人に発信器をつけたってのを聞いたんだ。それと、警察の人に受信機を渡してた。それを作って貰えば、俺達も爆豪を救けに行ける」

 

 「お前が八百万を救けてくれたお陰だ。だから、お前には言っておかなきゃいけないと思った」

 

 「・・・決行はいつだ?」

 

 「緑谷が目を覚ましてからだ。あいつが、1番悔しいだろうからな」

 

 「・・・分かった。俺はまだ決められない。考えさせてくれ」

 

 そう言って、俺は2人と別れ、自宅へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 次の日も、俺は早めに病院に来た。八百万と話すためだ。

 

 「失礼するぞ」

 

 病室のドアを開けると、驚いた顔の八百万と目が合う。

 

 「畑中さん!?どうしてここに?」

 

 「目を覚ましたって聞いたから。体、大丈夫か?」

 

 「後遺症や傷痕は残らないと聞きました。少し、体が気だるい程度ですわ」

 

 医者から聞いた通り、大事には至らなかったようだ。

 

 「良かった。大丈夫とは聞いてたんだけど気が気じゃなくてな」

 

 「救助が遅れていたら危険だったと聞きました。救けてくれた方に感謝ですわ!」

 

 「あ、それ俺だぞ」

 

 俺が入ってきたとき以上の驚愕の表情を浮かべながら、八百万は早口で捲し立てた。

 

 「わ、私は命の恩人になんて粗相な振る舞いを!!申し訳ございません!!」

 

 「粗相はしてないから気にするなよ。それに、とても救けたとは言えない状況だったしな」

 

 「それでも、貴方は私の命の恩人です!それにこうしてお見舞いまで・・・わ、私でよければ、貴方のお好きになさってください!!」

 

 「よし分かった八百万。まずは深呼吸しよう。一緒にな」

 

 トンデモ発言は聞かなかったことにしよう。まずは八百万の心を落ち着けるのが先決だ。

 

 「すぅーーー、ふぅーーー。どうだ、少し落ち着いたか?」

 

 「は、はい。・・・あの、さ、先程の発言は、その・・・」

 

 「分かってるよ。あれを真に受けるほど俺は落ちぶれてないぞ」

 

 「あ、ありが、とうございます・・・」

 

 顔を赤らめて目をそらす八百万。あの、襲われたいんですか?我輩はいつでもケダモノになれますぞ?

 冗談はさておき、俺は本題をぶつけることにした。

 

 「切島と轟から、なんか話はあったか?」

 

 瞬時に真剣な表情になる八百万。これは、話を聞いたと見て間違いないだろう。

 

 「昨日、受信機を作って欲しいと話がありました」

 

 「・・・そうか。八百万はどう思う?」

 

 「プロに任せるべき案件だと思っております。ですが、轟さんは目の前で爆豪さんが連れ去られたと仰っていました」

 

 その話は俺も知っている。接戦の末、常闇は取り戻したが、爆豪は連れ去られてしまったと聞いた。

 

 「私としては、その気持ちを無下にしたくありません。ですから、折衷案という形を取ろうと考えています」

 

 「折衷案・・・要は、あいつらについていって、やばそうなら止める、ってことか?」

 

 「その通りですわ。・・・何故、分かったのですか?」

 

 「切島達の性格と、今の八百万の発言を踏まえたただの推論だよ」

 

 思考を読み取られたことに八百万は驚いた様子だ。だが、すぐに表情を戻し、話を続けた。

 

 「畑中さんは、どうなさるおつもりですか?」

 

 「八百万の意見を聞いて、やっと決められたよ。俺も救出に同行する」

 

 「それは、いざという時に止める為、ですか?」

 

 「少し違うな。俺が行くのは守る為だ」

 

 少し考えた後、八百万は真っ直ぐに俺の目を見つめた。

 

 「そうならない様尽力は致しますが、もしもの時はよろしくお願いいたしますわ」

 

 「俺もそうならない事を祈ってるよ。それじゃ」

 

 

 

 

 八百万の病室を出て、人使の病室へ向かう。受付の人から、昨日の夜に目を覚ましたと聞いていた。

 

 「よっ。4日ぶりか?」

 

 「そうなるな」

 

 人使は3日間も意識がなかった人間とは思えないほど元気そうだった。

 

 「主治医から粗方は聞いた。お前が救けてくれたんだろ?」

 

 「そうだけど、よく分かったな?」

 

 「あの時、ギリギリ声が聞こえてたんだ。大河の声は流石に聞き間違えない」

 

 「なるほどな」

 

 既に意識がなかったとばかり思っていたが、そういうことなら納得だ。

 

 「しかし、洗脳が効かない敵とはな」

 

 「あいつ、というかあれは、言語機能を失ってたんだろうな。いくら呼び掛けても喋ることすらしなかった」

 

 「どんな奴だったんだ?」

 

 「脳ミソがむき出しの、明らかに人間じゃない何か、だな。桁違いのパワーとスピードに飛行能力、ついでに攻撃を受けても回復してる感じがした」

 

 「飛行に回復・・・個性が2つあるのか?てかよくそこまで覚えてるな」

 

 「勝つためには分析が必要だからな。まぁ、分析したら勝てないって結果が出ちまったけどな」

 

 痛いところを突くという相澤先生の教え。それを忠実に実践出来たのは、ひとえに成長の証だろうな。

 

 「まぁ、実力が足りなかったんだから負けたのはしょうがない。それよりも気になることがある」

 

 人使は、俺の瞳を真っ直ぐに見つめた。

 

 「万策尽きて死を覚悟した後、あの脳ミソ敵は急に攻撃をやめたんだ。まるで、誰かに戻ってこいって言われたみたいにな」

 

 「つまり、命令で動く人形ってとこか。人使の洗脳に似てるな」

 

 「加えて、俺達と戦ってたのに殺さずに帰ったってことは、別の目的があってそれを達成した、ってことだと思うんだ」

 

 「てことは、最初から爆豪誘拐が目的だった、ってことか・・・」

 

 「かっちゃんって呼ばれてたのは、やっぱり爆豪のことだったのか」

 

 「かっちゃん?何のことだ?」

 

 俺は個性の影響で聞こえていなかったが、マンダレイのテレパスで新たな連絡が届いていたらしい。爆豪のことをかっちゃんと呼ぶ奴を、俺は1人しか知らない。

 

 「緑谷か・・・あいつ、敵倒してボロボロの体だったのに、たいした奴だよ」

 

 「あいつは真のヒーローだからな」

 

 「随分買ってるんだな。人使にしては珍しい」

 

 「体育祭で戦ったときに、色々話したんだよ」

 

 そういえば、体育祭での緑谷は、条件を知っていたはずの人使の洗脳にかかっていた。

 聞けば、俺の過去を掘り返そうとしたことについて、「俺はまだ許せてない」という主旨の話を持ちかけ、それに謝ろうとしたら洗脳にかかった、ということらしい。

 

 「大河の過去話した時、緑谷が泣いてたろ?なんで泣いてたのか、試合の後に聞いたんだ。そしたらあいつ、「救けられなかった自分が情けない」って言ったんだよ」

 

 「俺はてっきり、悲しい過去を思い出させてしまったことを嘆いてるんだと思ってた。けど、あいつは違った。それ以上に、何も出来なかった自分の無力さを呪ってたんだ。同い年で、その時は救ける力なんてなかったはずなのにな」

 

 人の悲しい過去を聞いて、同情する人間はいくらでもいる。でも、救けに行けなかったこと、救けられなかったことを悔やめる人間は、おそらくプロヒーローの中でもそういないだろう。

 

 「それを聞いて思ったんだ。こいつは、俺と大河が目指してる「真のヒーロー」の心を持ってるんだなって」

 

 「あいつはそういう奴だよ。なんつーか、「体が勝手に動く」とかそういう感じなんだろうな」

 

 「ただ、話を聞く限りだと自分の事は二の次なんだよな。だから、しっかり守ってやれよ」

 

 「守る?何の話してんだ?」

 

 「いくら3日も意識がなかったからって、大河の考えてることが分からないほど耄碌はしてないぞ。行くんだろ、爆豪の救出に」

 

 言わずとも伝わる。俺が口にするのを躊躇っていたことを、人使はさも当たり前のように告げた。

 

 「・・・さすがに分かるか」

 

 「あんまり言いたくないってことも含めてな。俺を巻き込みたくなかった、ってとこだろ?」

 

 「・・・敵わねぇな、その通りだよ。今回のこれは、俺達のことを必死で守ってくれた先生方に対する裏切りだからな・・・」

 

 「そこまで分かってて行くことを決めたんだから俺は止めないよ。ただ1つだけ約束しろ。・・・絶対に、生きて帰ってこいよ」

 

 「・・・その約束破ったら、冗談抜きで殴られそうだな」

 

 苦笑を浮かべつつ、人使と拳を合わせる。

 

 正直、無事に帰ってこれる保証はどこにもない。それでも、約束を違えない為に、自分がやれることを精一杯考えて行動しようと、改めて心に誓った。

 

 

 





 イレイザー・・・大河に甘すぎないか・・・?
 一応、トラウマ克服のために出来ることはなるべくやらせたいという心情からの言動なのですが、それにしてもらしくないような・・・まぁ今更変えるようなことはないのですが(爆)
 ブラド先生については、A組のことはイレイザーに任せるべき、というスタンスです

 次回、やっっと神野編になります
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