防御寄りな個性の少年の話   作:リリィ・ロストマン

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 怒られるはずだったんだよ(泣)
 自分が思うヒロアカの世界観だと、人を救けたことに対してはそんなに怒らないはずだという考えです
 あとは大河を見すぎたせいでイレイザーが軟化していると思ってもらえればいいかなと思います



決戦後日談

 

 

 

 メイデンにオールフォーワンが収容される中、俺は警察の塚内さんという人から聴取を受けていた。

 

 「まず、君はどうやってここに辿り着いた?」

 

 「八百万に受信機を作らせて、それを辿りました」

 

 「八百万少女が・・・そうか・・・」

 

 「一応聞いておくが、他に来ていたのは?」

 

 「緑谷、轟、切島、八百万、飯田の5人です。前3人は爆豪を救けたい一心、後の2人はその3人が無茶をしそうだから歯止め役、って感じです」

 

 あまりあいつらを巻き込みたくはないが、警察の捜査力ならいずればれることだ。なら、全て正直に話した方がいいだろう。

 

 「全員ヒーロー科の生徒だな。君はヒーロー科ではないようだが、なぜ彼らと一緒に行動を?」

 

 「切島と轟に声を掛けられました。行動を共にしたのは、八百万や飯田と同じような理由からです」

 

 「ふむ、その辺りは後で詳しく聞こう。では最後に、君が戦場に赴いた理由を教えてくれ」

 

 「逃げ遅れた女性に気付いたからです。何というか、反射的に体が動きました」

 

 「なるほどね。とりあえず、今日のところは帰って休んでいいよ。色々あって疲れただろうからね。後で連絡するから、その時に改めて話を聞こう」

 

 もう明け方で日が上ってきていたので、その日は帰っていいことになった。

 

 

 

 

 

 「とりあえず自殺志願者には帰って欲しいんだけど」

 

 「ヤクソクハハタシタゾ」

 

 「・・・ったく」

 

 寝て起きた昼過ぎ。俺は警察からの連絡がなかったので、人使の所に来ていた。

 

 「まぁ、こうして生きて帰ってきたんだからよしとするか。にしても、あの状況でよく生きてたな」

 

 「ほとんどオールマイトのおかげだよ。まぁ、最後そのオールマイトに殺されかけたけど」

 

 俺は、最後の一撃の風圧で吹き飛ばされたことを伝えた。

 

 「あの人も大概化け物だよな」

 

 「暗に俺も化け物だって言ってるか?」

 

 「敵も規格外の化け物だったんだろ?ならそれと渡り合ったお前はもれなく化け物だろ」

 

 「否定できない・・・でも渡り合ってはいないぞ。がむしゃらに防御してただけだ」

 

 「防御できるとかやっぱ化け物だろ」

 

 駄目だ。どうあがいても化け物に帰結する。

 

 「ところで、オールマイトのことはどう思った?」

 

 「単純にショックだよ。でも、それ以上にすごい人だなとも思った。あんな体になってでも、ヒーローとして活動してたんだもんな」

 

 「戦いの最中に言ってたよ。『どんな姿になっても、心は平和の象徴だ』って」

 

 「心、か・・・俺が言うのもなんだけど、格が違うな」

 

 「だな。でも、聞いた話だと事実上の引退らしい。惜しい人をなくしたよ」

 

 「なんで上から目線なんだ?」

 

 「たまにはこういうのもいいだろ?」

 

 「随分と調子に乗っているようだな?」

 

      ビキッ

 

 い、いや、きききっと、ききき気のせせせいだ・・・。

 硬直した体。気のせいだと思いたい。だがドアを開けて入ってきたその人の次の一言が、有無を言わさず俺に現実を突きつける。

 

 「編入初日に除籍処分にして、後進の反面教師にしてやろうか?」

 

 「誠に申し訳ございませんでした」

 

 誠意を示すため、椅子から降りて土下座する。それを見た相澤先生は、ため息をついていた。

 

 「お前がやると馬鹿にしているように感じるんだが」

 

 「今回は本気で謝ってますよ。今回は」

 

 「待て人使。その言い方は勘違いを生むからやめてくれ」

 

 「事実だろ?」

 

 やめろぉ!先生の前ではなるべくいい子にしてるんだからぁ!!

 

 「冗談だ。と言いたいが、今後のお前の態度次第では本気で除籍を検討する」

 

 「すみませんでした」

 

 立ち上がり、深々と頭を下げる。

 今回俺は、法律を無視して爆豪の救出に赴いた。合宿の時と違い、先生には一言も相談せずに。

 

 「俺は、どんな処分であっても、受けるつもりです」

 

 「非常に残念ではあるが、俺はお前の処分を直接下す立場にない。お前はまだ、書類上は普通科だからな」

 

 そんな俺の覚悟をよそに、先生は自分の想いを告げてきた。

 

 「オールマイトが、お前のお陰で勝てたと言っていた。免許を持たないお前があの場に行ったことは誉められることじゃないが、結果として、お前はオールマイトを、ひいてはあの敵がもたらすであろう被害から人々を救けた。それは、紛れのない事実だ」

 

 「あんまり誉めると、のぼせ上がりますよ」

 

 「手放しで誉めてもいいくらいだ。のぼせるのも今のうちなら構わないよ。だが」

 

 ああ、うん。そこは雄英の先生だからね。いい話だけで終わるわけがないよ。

 

 「夏休み明けまで引きずるようなら、容赦はしない」

 

 「分かってます。たまたま上手く行っただけですから。ちゃんと力をつけて免許を取って、胸を張って人を救けられるようになります!」

 

 「あんなことがあっても、志は変わってないようで何よりだ。ああそれと」

 

 先生は一呼吸おき、俺達の予想の斜め上を行く発言をした。

 

 「雄英が全寮制になったから、引っ越しの準備をしておけ」

 

 

 

 

 「入る前提なんですね」

 

 「親御さんの話も聞く必要はあるがな。お前らのことだ、反対されようと押し切るだろう?」

 

 「確かに雄英をやめるっていう選択はないですね」

 

 「というか俺は退学にはならないんですか?」

 

 「今のところ、むしろお前はヒーローとしての教育を早急に施すべきという方針だ。今後ルールを破ることがないようにな」

 

 「肝に命じておきます」

 

 「具体的な日取りとかは決まってるんですか?」

 

 「それについては追って説明する。なんせ、施設の建設すら始まっていないからな」

 

 「それにしても、なんでわざわざ直接言いに来たんですか?」

 

 「俺がここに来たのはただの見舞いだ。あんなことがあった後だからな。心操の様子が気になった」

 

 「いっそ1発くらい殴られとけばよかったのにと、今は思ってます」

 

 「ちょ」

 

 「でもそれは、大河がこうして生きてここにいるからです。正直、テレビでこいつの姿を見たときは気が気じゃありませんでした」

 

 今はなんともなさそうにしてるが、そうか。あれと戦ってるのを見て、心配しないわけないよな。

 

 「俺もだ。より長く一緒に過ごしている以上、その心労は俺の比じゃないだろう。だが大丈夫そうで安心したよ」

 

 「わかってたつもりでしたけど、俺は色んな人に心配掛けてたんですね」

 

 「当たり前だろ。止めても無駄だと思ったから送り出したけど、あの時だってめちゃくちゃ心配したんだぞ」

 

 「ん?その口ぶりだと心操も爆豪救出の件は知っていたのか?」

 

 「言質取った訳じゃないですけど、こいつがそういう顔してたんで気付いてはいました」

 

 「・・・そうか。2人共、2学期は覚悟しておけよ?」

 

 うわぁすごい圧力。知らない人が見たら脅迫現場に見えるのかな。

 でも、この言葉が期待の裏返しなのを俺達は知っている。

 

 「望むところです!」

 

 「他の人に負けないように、追い越せるように尽力します!」

 

 俺達がそう言うと、相澤先生は満足したように微笑み、「お大事に」とお決まりの台詞を残して去っていった。

 

 「寮かぁ・・・たぶん女子も一緒だよなぁ・・・」

 

 「お前は色んな意味で危なそうだな」

 

 「理性って鍛えられるか?」

 

 「お前は鍛えても無駄だろ変態」

 

 「そろそろ新たなトラウマになるぞ?」

 

 「プルスウルトラだろ?乗り越えればいいんだよ」

 

 「一線をか?」

 

 「窓から投げ捨ててやろうか?」

 

 「冗談にしても過激すぎて怖いわ」

 

 色々あったけど、やっと冗談を言い合える日常に帰ってこれた。これからも困難や壁にぶつかるだろうけど、この日常だけは絶対になくさないようにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 次の日、警察からの詳しい事情聴取を受けた後、オールマイトと相澤先生が俺の家に来た。

 

 「電話でお伝えした雄英の全寮制の件ですが・・・本当によろしいのですか?」

 

 俺の母は、全寮制になるという話を聞いた直後に、詳しい話も聞かずOKを出していた。

 

 「ええ。私の方針は大河にやりたいことをやらせることですから」

 

 「恐縮ですが、雄英のヒーロー科は既に2度の敵の襲撃に遭っています。もちろん我々も全力で防衛、対策はしますが、お子さんが危険に晒される可能性は十二分に有り得ます」

 

 「これまでに何があったかは、粗方は知っています。それでも、私の決意が揺らぐことはありませんよ?」

 

 「・・・失礼かもしれませんが、心配は、していないのですか?」

 

 金髪の骸骨、もといオールマイトが質問する。人によっては激昂しそうなその問いに、母はあっけらかんと答える。

 

 「もちろんしています。ですが、ヒーローを目指す以上、危険が付きまとうのは避けられないことです。ならば、私が心配しなくても済むように、強く逞しくなって欲しいと、私は考えています」

 

 プロヒーローの妻として、今は亡き父を精神的に支えていただけあり、母は確固たる意思を貫く姿勢だ。

 

 「・・・我々の総力を以て、必ず息子さんを立派なヒーローにしてみせます。これからも、よろしくお願いします!」

 

 深々と頭を下げて、2人は帰っていった。

 

 「母さん、ありがとう」

 

 「お礼は要らないわ。あなたが言っても聞かないのは知ってるから。救ける為に動いたことも、知ってるから」

 

 「・・・体が、勝手に動いたんだ」

 

 「分かってるわ。あの人も、困っている人がいたら、迷わずに動き出す人だったから」

 

 今は亡き俺の父さん。聞いた話では、敵に襲われているところを救けられたことが、父さんと母さんの馴れ初めだったらしい。それも、まだ仮免すら取っていない時期だったそうだ。

 

 「あなたには、あの人と同じ血が流れている。だから口うるさいことは言わないわ。そのかわり、私に心配されないくらい強くなりなさい」

 

 「・・・ありがとう、母さん」

 

 要らないと言われたが、それでも礼を言わずにはいられない。

 母さんは、親は俺の無茶を叱ることなく、むしろ肯定してくれている。その上で、俺がヒーローになることを応援してくれている。もはや感謝以外の言葉が浮かんでこない。

 

 「強くなって、母さんが自慢できるような、立派なヒーローになるよ!」

 

 

 

 

 

 

 時は過ぎ、完成した雄英の寮ーハイツ・アライアンス。その入口の前で、21人の雄英生が一堂に会している。俺を含めた、1ーAの生徒だ。

 

 「さて、これから寮について軽く説明するが、その前に1つ。当面は合宿でとる予定だった仮免の取得に向けて動いていく」

 

 (仮免!?全く聞いてなかったんですけど!?)

 

 普通科の俺は知らなかったが、ヒーロー科であるA組の面々はどうやら知っていたらしい。だが敵の襲撃やらオールマイトの引退やらで、すっかり忘れていたのが大半のようだ。

 しかし、次の言葉で生徒達のざわつきは静まり返る。

 

 「神野で事件があったあの晩。爆豪救出に赴いた奴がいる」

 

 テレビで主に映っていたのは俺だけだが、周りの様子を見るに、俺以外の5人が救出に行くことをみんなは知っていたようだ。それに相澤先生も気付いたらしい。

 

 「色々棚上げした上で言わせてもらう。オールマイトの引退がなけりゃ俺は、耳郎、爆豪、畑中以外全員除籍処分にしてる」

 

 重くなる空気。俺からの報告で、先生は飯田と八百万が止めるために同行したことを知っている。それでも、先生は除籍という言葉を使った。それは、ギリギリ法に触れていないとはいえ、やってはいけないことをしたという事実への戒めなのだろう。

 ・・・ん?なんで俺の名前があるんだ?

 

 「先生。俺への処分はないんですか?」

 

 「前に言ったはずだ。お前は書類上はまだ普通科。俺に処分を決める権限はない」

 

 「そうでしたね。なら、もし自分の生徒だったらどうしていたかを教えて下さい」

 

 先生は少し考えた後、重そうな口を開いた。

 

 「俺がお前の担任なら、事実が発覚した時点で除籍処分だ。どんな理由であれ、法を犯した事に変わりはない」

 

 「そう言うと思ってました。けど、それは『教師』としての意見ですよね?」

 

 「・・・何が言いたい?」

 

 俺は『先生個人』としての意見を知っている。けど、先生は心を鬼にして、自分の受け持つ生徒へ向けて『教師』としての意見を述べている。そんな先生が、俺には少し苦しそうに見えた。

 

 「教師としては立派だと思います。けど、それだと一個人としての『相澤消太』が報われません。俺は、一人の人間としての、先生の意見も聞きたいです」

 

 その心が、少しでも救われればいいと思いながら、俺は自分の考えを告げる。

 

 「・・・お前にとっては、俺も救うべき対象になる、ということか・・・」

 

 先生は、観念したように、一個人としての意見を述べ始めた。

 

 「クラスメイトを救けたい。その気持ちは俺にも分かる。俺も、高校時代に経験があるからな」

 

 みんなが真剣に耳を傾ける。きっと、先生がこんなことを話すのは初めてなんだろう。

 

 「ヒーローとしては何も間違ってない。むしろ肯定してもいいくらいだ。だが俺はお前達の教師。だから、ルールをないがしろにしたお前達を叱らないといけない」

 

 おそらく、言わなくても伝わることだろう。でも時として、言葉にすることが必要なこともある。伝えるためだけじゃない。思っていることを口に出すのは、自分が思っている以上に心を軽くするものだから。

 

 「理由はどうあれ、お前達が俺達の信頼を裏切ったことに変わりはない。正規の手続きを踏み、正規の活躍をして、信頼を取り戻してくれ。俺は、お前達ならそれができると信じている」

 

 信じている。その言葉に、みんなの心が救われたように感じた。

 先生を裏切ってしまったこと。行った俺達も止められなかった他の人達も、その事は後悔していただろう。それを受け入れて前に進むことは並大抵のことじゃないし、最悪それに押し潰されることもある。

 でも、今先生が言ってくれた言葉のおかげで、みんなが立ち直ったように思う。言葉には、力がある。

 

 「先生。わがままを聞いてくれてありがとうございます」

 

 俺は深く頭を下げた。精一杯の、感謝を込めて。

 

 「礼はいらん。おかげで、肩の荷が少し下りた。さぁ、中に入るぞ」

 

 何やらスッキリした表情の先生に促され、俺達は寮の説明を受けるため中に入った。

 

 

 

 

 

 

 「学生寮は1棟1クラス。右が女子、左が男子と分かれてる。で、1階は共同スペースだ。食事や風呂、洗濯などはここで行う」

 

 さすが雄英というべきか、寮はとても豪華な作りだった。共同スペースは20人程で使うにしてはとても広く、広大な中庭も完備していた。

 

 「豪邸やないかーい!!」

 

 麗日がそのあまりの豪華さに倒れ込む。前に家が貧乏だと言っていたから、ギャップに負けたのかもしれない。

 

 「・・・聞き間違いかなぁ?風呂、洗濯が共同スペース・・・?」

 

 「男女別だ。お前いいかげんにしとけよ?」

 

 峰田は持ち前の煩悩でなにやらエロスな妄想をしているようだったが、先生に威圧され縮こまってしまった。つか先生にバレるほど大っぴらにしてたのかあいつ。

 

 「2階から上はフロア毎に男女各4部屋の5階建て。1人1部屋で、エアコン、トイレ、冷蔵庫、クローゼットが付いている」

 

 ふむ。今の俺の部屋より広いし充実してるな。八百万が「我が家のクローゼットと同じくらいの広さ」とか言ってたが気にしないでおこう。庶民と富豪では比べても意味がない。

 部屋割りは予め雄英の方で決めていたらしく、俺は2階だった。同じ階なのは緑谷、常闇、峰田の3人。

 この階には女子はいない。峰田がいるからだろう。ちっ、これで湯上がり女子にばったりフラグは消えたか。

 

 「やはり、畑中をこの階にしたのは正解のようだな」

 

 ・・・あれ?思考を読まれた?それとも女子からクレームでもあったか?

 

 「心操の言っていたことが段々分かるようになってきた。お前は、顔に出るんだな」

 

 「・・・そんなに分かりやすいですか?」

 

 「教師として、生徒の様子や調子を窺うのは当然だろう?」

 

 なるほど。裏を返せば、1人1人のことをちゃんと見てるってことか。

 じゃねえわ。状況次第で俺が妄想癖のある変態だってことがバレるってことだろ?神野ばりに大事件だわ。

 

 「とりあえず今日は部屋作ってろ。明日また、今後の動きを説明する」

 

 俺の特殊性癖の一端が割れた後、説明会はお開きになり、部屋作りが始まった。俺は最低限必要なもの以外は運んでいなかった為、1時間かからずに荷ほどきを終えた。

 

 (暇だ・・・寝るか・・・)

 

 他にすることもないので、俺は昼寝することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 どのくらい寝ていたのか。時計はタイミングがいいのか悪いのか電池が切れ、3時25分で止まっている。

 

 (外が暗くなってるからもう夜か)

 

 布団から起き出すとほぼ同時に、部屋をノックする音が響いた。

 

 「緑谷?てかみんなもいるな?どうした?」

 

 「布団だぁー!」

 

 「大河くん布団派なんやね!」

 

 「・・・誰か説明を頼む」

 

 「えっと、今みんなの部屋の披露大会をやってて、もし起きてるなら畑中くんも、って話でまとまって」

 

 「なるほどな。でも最低限しか持ち込んでないから俺の部屋は特に何もないぞ?」

 

 「ふっふっふ。こういうなんでもない部屋こそ、エロ本が隠されているのだぁー!」

 

 「残念だけど、俺の部屋にそんな幼稚なもんねえぞ。あんな巨乳が全てみたいなもん中学校で卒業したわ」

 

 「「「えぇ・・・」」」

 

 ほぼ全員からドン引きされた。まだ買える年齢じゃないからか?

 

 「さも当たり前のようにレジに持ってけば買えるだろ?」

 

 「そういう問題じゃないと思うけど・・・」

 

 「まぁいいだろ。それより、早く次の部屋行こうぜ。時間も遅いみたいだしな」

 

 そう言って部屋を出るよう促す。この話を続けてると、耳郎のイヤホンジャックが飛んでくる気がする。てかもう構えてるな。

 なんとか危機?を回避し、お部屋披露大会に参加する。まずは隣の常闇の部屋だ。個性の影響か本人の趣味なのか部屋はダークな感じにまとまっている。

 そのまま3階の男子の部屋へ。尾白は『普通』を、飯田は『真面目』を、上鳴は『チャラい』を体現したような部屋だった。実際女子からそれに近い言葉ないし罵倒があった。

 ウサギを飼っている口田の部屋まで見終わった後、自分の部屋を無視された(そりゃそうだ)峰田が、反逆の狼煙を上げる。

 

 「お部屋、披露『大会』っつったよなぁ?なら当然、女子の部屋も見て決めるべきじゃねえのかぁ?誰がクラス1のインテリアセンスの持ち主か、全員で決めるべきなんじゃねえのかぁ!?」

 

 (うわぁ、ここぞとばかりに言いやがった。お前は女子の部屋が見たいだけだろ?)

 

 相澤先生に打ち込まれた釘をものともせず、あるいはきっちり受け取った上で、峰田が意見を述べる。

 おそらく峰田1人の意見であれば通らない。が、先程女子に馬鹿にされた男子の、「釈然としない」という意見を味方につけている。

 

 「あ、悪いけど俺パス」

 

 「はぁぁ!?なに言ってんだよ畑中!!合法的に女子の部屋を見るチャンスだぞ!?」

 

 やっぱりだよ。ただ煩悩に従っただけだよ。いっそ清々しいまである。

 

 「だからこそだ。今見たら、後で個人的に呼ばれた時のドキドキが減るだろうが!!」

 

 「うわ出た別路線の変態」

 

 「耳郎さん。自覚はあるけどいざ言われると僕も傷付くんですよ?」

 

 こういうとき本当に容赦がない。人使以外でここまではっきり言うのは今のところ耳郎だけだ。

 

 「悪いけど、ウチの中でアンタと峰田は同列だから」

 

 「さすがにそれは酷くないか?」

 

 「あぁでも一線越えてるって意味ならちょっと分かるわ」

 

 「上鳴くん!後で話をしよう!!」

 

 「いい人ぶった誘拐犯みてぇな笑顔でこっち見んな!!」

 

 「あはは・・・でもそれっぽく見えるね・・・」

 

 ふむ、後で緑谷ともハナシアイをする必要がありそうだな!

 

 「とにかく、俺は参加しない。だからその部屋王、っていうのか?それはお前らで決めてくれ」

 

 芦戸がごねたが切島がそれを宥め、みんなは俺を残して部屋王決定戦を始めた。

 することがないので部屋に戻り、新しい生活に思いを馳せる。

 

 (・・・あれだけのことがあった後でも、先生は俺を信じてくれてた。その期待を裏切らないために、まずは皆に追い付かないとな)

 

 正規の手続きを踏み、正規の活躍をする。相澤先生が言っていた言葉を思い出しながら、俺は眠りについた。

 

 ・・・女子の部屋に招かれる夢を見て興奮し、その途中で目覚めてなかなか眠れなかったのはまた別の話。

 

 

 





 寮、入りました
 原作だと、梅雨ちゃんが話をするシーンがありますが、大河は何も言われてないのでスルーされるという結論が出ました
 あとファンの方には申し訳ないんですが、耳郎のポジションに関しては今後もこんな感じです 大河に対して認めてる部分もあるけど、受け入れられない部分もある、といった感じです
 次回は必殺技からなんですが、大河はもう持ってるようなものなので、今必死にその名前を考えてます(爆)

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