防御寄りな個性の少年の話   作:リリィ・ロストマン

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 やっっっっっと高校入学です!

 所々原作と時系列が違います なるべく不自然にならないようにしたつもりです
 ちなみに大河は、心操くんのことを家族のように思っているっていう設定です(今作った)
 


事後報告と雄英入学初日

 

 「てなことが今日あったわけだよ」

 

 帰宅後、おれは真っ先に人使に電話をかけた。

 

 『で?なんで親より先に俺に報告したんだ?』

 

 「母さんは仕事中電話に出ないからな」

 

 『それなら昼に電話してから俺にとか、帰ってきてから報告して明日とかでもいいだろ』

 

 「人使の声が聞きたかった」

 

 『・・・変態か?』

 

 「化け物よりはましかな」

 

 『そうかよ』

 

 

 

 

 

 

 

 その後、家が近いのに電話はおかしいという話になり、人使が俺の家に来た。

 

 「しかしレスキューポイントか・・・」

 

 「人使はどうだったんだ?」

 

 「2人だけだな。瓦礫に足挟まれてたから救けた」

 

 「そんなもんだよな。正直あの説明じゃ気付かないもんな」

 

 「仮に気付いたとして、それを信じきれるかどうかってのもあるだろ」

 

 「俺は信じたぞ?」

 

 「お前は化け物だから」

 

 「それ雄英の教師まで届いてたぞ。そろそろ控えようぜ?」

 

 「事実だろ?」

 

 「チョットナニイッテルカワカンナイ」

 

 2人で縁側に座り、今日あったことや実技試験のことなどを止めどなく話す。

 

 「にしても、苦渋の決断だったんじゃないか?」

 

 「ん?なにが?」

 

 「トラウマのことだよ。家族以外だと俺にしか話したことなかっただろ」

 

 人使が言った通り、俺のこの話は母さん以外だと人使しか知らない。

 

 「なんか話さなきゃいけない気がしたんだよ」

 

 「そんなに追い詰められたのか?」

 

 「逆だよ。すごく穏やかだった。けど・・・たぶん校長は始めから、俺のその話を聞きたかったんだと思う」

 

 おそらく、試験中の俺が突然微動だにしなくなったことに違和感を覚えたんだろう。そしてそれの原因を聞き出すために、わざわざ面談なんて形式で俺を呼び出したんだと思う。

 

 「誘導尋問か」

 

 「今日のお前発想が敵寄りになってないか?」

 

 「冗談だよ」

 

 「勘違いを生みそうな冗談だな」

 

 「大河なら大丈夫だろ?」

 

 親友からの厚い信頼。たまにあらぬ方向を向くが、それでも心地いいものだ。

 

 「にしても大丈夫そうで安心したよ」

 

 「もしかして心配してくれてたのか?」

 

 「当たり前だろ。俺に打ち明けたときの顔まだ忘れてないからな」

 

 その時の顔は俺も覚えている。人使に「鏡見てみろ」と言われて見た俺の顔は、今すぐ自殺してもおかしくないレベルで死にそうな顔をしていた。

 あの日人使は、母さんが帰ってくるまでずっとそばにいてくれた。帰り際、「話してくれてありがとう」って言ってくれたことを、俺は生涯忘れないだろう。

 

 「あの時と比べて強くなってたんだろうな。あとは相手が年上だから話しやすかったのもある」

 

 受け入れてくれる。直感でそう思ったのかもしれない。

 

 「あとそうだ大河。1発殴っていいか?」

 

 「人使さん?いきなりどうしたんですか?」

 

 「お前ならそうするってのは理解できたけど、それでもヒーロー科を蹴ったのは気に入らない」

 

 「よしわかった全力で来い!!」

 

 「冗談なの分かってて受け入れるとかやっぱ変態だな」

 

 「言い出しっぺコラァ」

 

 どんなにシリアスな話をしていても、最終的にはいつもの日常に戻る。これからもずっと、この関係を続けていきたいと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 「パンフレットなかったら絶対迷ってるな・・・」

 

 3度目の雄英高校。今回からは客としてでなく生徒としてこの高校に通う。

 隣には、ヒーロー科は落ちたものの無事普通科に合格した人使の姿がある。

 

 「次はあそこを左か」

 

 「そのあとは1個スルーしてその次を右だな」

 

 晴れて同じクラスになったので、2人で目的地である1ーCの教室を目指す。

 

 ようやく見えてきた教室。その少し先、1ーAの教室に入っていく、緑の髪のモジャモジャ頭が見えた。

 

 (あいつは・・・合格したのか。良かったな)

 

 「知り合いでもいたのか?」

 

 「ああ。入試で巨大ロボぶっとばしたやつ。今教室に入っていくのが見えた」

 

 「確かヴィランポイント0だったんだよな?」

 

 「聞いた限りだとな」

 

 「それでもヒーロー科に入れたってことは・・・」

 

 「そういうことだな」

 

 あのモジャモジャ頭はそれまで0ポイントだった。ってことは、あの1レスキューで莫大なポイントが入ったってことだ。

 

 「負けてられないな」

 

 「そうだな」

 

 

 

 

 

 

 

 入学初日のHR中、外から爆発音が聞こえた。

 

 (あれは・・・どこのクラスだ?)

 

 おそらく個性使用アリの体力測定。担任の話そっちのけで見ていると、特徴的な緑のモジャモジャが見えた。

 

 (あいつがいるってことは、A組か)

 

 もっと見ていたかったが、初日から担任に目をつけられるのは嫌なので、早々に切り上げだ。

 

 

 

 

 

 

 

 「人使も食堂か?」

 

 「ああ」

 

 2つ返事で、2人で食堂に向かう。中学3年間で積み上げた友情の賜物だ。

 

 

 

 

 

 「うわぁ、えげつないな」

 

 「こんなに混むんだな」

 

 食堂は、有名アーティストのドームライブばりに席が埋まっていた。どうにか席を確保しようと歩き回り、やっと2人分のスペースを見つけ近づく。

 

 「あれ?麗日さん?」

 

 「うん?あ、大河くんだ!実技試験ぶりだね!」

 

 「知り合いか?」

 

 「ああ。入試の時同じ会場だったんだ。隣座るぞ」

 

 俺は彼女の隣に、人使が緑のモジャモジャの隣に座った。

 

 「おう、モジャモジャもいたのか」

 

 「モジャモジャ!?麗日さん、あの、この人は?」

 

 「畑中大河くん!さっき大河くんも言ってたんだけど、入試の時に知り合ったのです!そっちの人は大河くんの知り合い?」

 

 「こいつは俺の親友の心操人使だ!」

 

 「他人に自己紹介されるって新鮮だな。心操だ、よろしく」

 

 「2人はどのクラスなん?」

 

 あれ、この人もしかして天然さんなのか?

 

 「麗日さん?彼らの紹介は?」

 

 「あっ、そうだね!えっと、心操くんの隣に座ってるのが緑谷デクくんで「ちょっと待って!?」へ?」

 

 「僕の名前は緑谷出久です。デクは、渾名みたいなもので・・・」

 

 なるほど。それで慌てて遮ったのか。

 

 「俺は飯田天哉だ。よろしく」

 

 「2人ともよろしく!」

 

 「よ、よろしく・・・」

 

 「よろしく。ところで大河、そろそろ突っ込んでもいいか?」

 

 突然、人使から突っ込み承認申請がくる。

 

 「どうした?」

 

 「俺まだ麗日の紹介聞いてないぞ」

 

 しまった。人に指摘しといて自分も同じ失敗したパターンか。

 

 「今紹介するところだったのさ!彼女は麗日お茶子さんだ!!」

 

 「口調変えて凛々しい声出したって誤魔化されないぞ。それで、3人は同じクラスなのか?」

 

 「あっ、うん。クラスは1年A組だよ」

 

 「ヒーロー科か。てことは実技試験合格したんだな」

 

 「そうなるな。君達は違うのか?」

 

 「俺は落ちた」

 

 「俺は蹴った」

 

 「「「蹴った!?!?」」」

 

 あれ。短く簡潔に纏めれば流してもらえるかと思ったが甘かったか。

 

 「この話は長くなっちゃうから、今度機会があったら話すよ」

 

 「えー!?めっっちゃ気になる!!」

 

 「はは、ごめんな。それより、時間大丈夫か?」

 

 「あと10分ないくらいか、もう少し話せるぞ」

 

 「いや!ヒーロー候補生たるもの、5分前行動が基本だ!さぁ2人とも、片付けて教室に戻ろう!!」

 

 飯田の一声を受け、3人は一足先に教室へ向かった。

 

 

 

 「お前が言ってた堅物そうなメガネって、もしかしてあいつの事か?」

 

 「ああ。印象に違わず、真面目そうな奴だったな」

 

 「そうだな。さて、俺達も行くか」

 

 やや遅れて俺達も立ち上がり、教室へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 「あっ、大河くんきたよ!おーい!!」

 

 放課後、門の前で屯していた3人に捕まる。

 

 「もしかして待ってたのか?」

 

 「うん!ここにいれば、会えると思って!」

 

 「昼の話が、どうしても気になっちゃって・・・」

 

 口を滑らせた訳じゃないが、もう少しオブラートに包むべきだったか?でも事実だしな。

 無事ヒーロー科に入れたこいつらにしてみれば、それを蹴ったってのは相当な衝撃だったんだろう。

 

 「俺はそれとは別に聞きたいことがあってな。君は、あの試験の隠されたシステムに、気が付いていたのか?」

 

 「途中で気付いた。ちなみに、お前に救けられたのがきっかけだ」

 

 「救けられた?」

 

 麗日が不思議そうに首を傾げる。

 

 「彼が仰向けに倒れているのが見えてな。すぐそばに仮想敵もいたから、危ないと思って倒しに向かった」

 

 「結果的に俺は救けられた。その時に、救けるって行為に目をつけたわけだ」

 

 「なるほど・・・」

 

 飯田は、自分が気付けなかったことを悔やんでいるように見えた。

 

 「そう考え込むなよ。気付かなかった上で人助けをしたんだから、飯田は、立派な奴だよ」

 

 「む、そう言って貰えるとありがたいな」

 

 「それで?なんでヒーロー科を蹴ったん?」

 

 再び麗日が首を傾げる。あっ待ってその角度ヤバい可愛・・・ゲフンゲフン。

 全部を話すと長くなるので、かいつまんで話す。

 

 「すごい大雑把に言うと、ヒーローを目指してなかったから」

 

 「・・・君はヒーローが嫌いなのか?」

 

 飯田が真剣な眼差しで問いかけてくる。

 

 「いや、ヒーローは好きだし憧れてる。けど俺は、自分はヒーローになれない、なっちゃいけないと思ってたんだ」

 

 「・・・思ってた、ってことは、今は違うの?」

 

 緑谷は何かを察したんだろう。あまり深くは聞いてこなかった。

 

 「ああ。ある人から、お前のそれは勘違いだって、ヒーローになれるって、言ってもらえたんだ」

 

 緑谷に応える。

 

 「今はヒーローを目指してる。けど、実技試験の時はそんな気持ちなかったから、素直に受け取るのは違う気がしてな。だから、ヒーロー科への入学は断ったんだ」

 

 「ほぇ~、すごいや」

 

 「君の方がよっぽど立派じゃないか」

 

 「・・・君も、僕と同じだったんだね」

 

 分かってもらえてよかった。理由はどうあれ、ヒーロー志望がヒーロー科を蹴るとか馬鹿のやることだからな。こいつらは、いい奴だ。

 ただ、緑谷の発言が少し気になった。

 

 「同じって?緑谷はヒーロー科だろ?」

 

 「あっいやそこじゃなくて!・・・僕にも、『ヒーローになれる』って、言ってくれた人がいたんだ」

 

 緑谷は、少し俯きがちながらも、確固たる意思を乗せて、言葉を紡ぐ。

 

 「僕、いろんな人から、ヒーローになるのは諦めろって言われてて。憧れてたヒーローからも1度はそう言われて。でも、そのヒーローが再会したときに言ってくれたんだ。君は、ヒーローになれるって」

 

 「その言葉が、僕を救ってくれた。その人の言葉が、諦めかけてた僕の心に、火を灯してくれたんだ」

 

 曇りなき純粋な瞳。その姿を見て、こいつは立派なヒーローになれると、根拠もないのに確信している自分がいた。

 

 「・・・いい人に、出会えたんだな」

 

 「・・・うん。僕は、人に恵まれた」

 

 「けど今のままじゃ、立派なヒーローには程遠いな」

 

 ずっと黙っていた人使が、いきなり否定的な言葉を発した。

 

 「君、失礼じゃないか!」

 

 「そうだよ!なんてこと言うんだ!」

 

 「事実だろ。人を救ける為とはいえ、動けなくなるほど体ぶっ壊してるようじゃな」

 

 憤る飯田と麗日を気にも留めず、人使は、試験の時の緑谷のあれを指摘した。

 

 「そのままにしとくつもりはないんだろうけど、敢えて言わせてもらう。そんなんじゃ、俺達に足元掬われるぞ」

 

 親友である俺には分かる。これは、『未来のライバル』への宣戦布告だ。

 

 「ヒーロー科への編入制度は知ってるだろ?俺はヒーロー科の実技試験は落ちたけど、ヒーローへの道は諦めてない」

 

 「俺もだ。1度蹴ったとはいえ、まだチャンスは残ってるからな」

 

 敵向きの個性だと言われ続け、それでもヒーローに憧れ、諦めずに追い続けた人使。

 ヒーローになれると言われ、ずっと諦めていた道を再び歩みだした俺。

 境遇は違えど、折れかけた心を持ち直し立ち上がった目の前の男に、俺達は自分を重ねていた。

 そして、自分を奮い立たせるように、俺達は緑谷に発破をかける。

 

 「「油断してたら、すぐ追い付いちまうぞ」」

 

 「・・・うん。ありがとう!」

 

 言葉に込めた意味が伝わったのか、ただ応援として受け取ったかはわからないが、感謝を述べた緑谷は、真っ直ぐに俺達を見て笑っていた。

 

 「俺達も、負けてはいられないな!」

 

 「うん!」

 

 2人にも、ちゃんと伝わったみたいだ。ほっと胸を撫で下ろす。

 

 「さて、綺麗に話がまとまったところで、麗日さん!呼び捨てにしてもいいか!?」

 

 そして俺は、敢えて空気をぶち壊しにかかる。

 

 「どしたん急に!?別にかまへんよ!?」

 

 「大河は特殊な性癖があるんだ」

 

 「流れるように誤解を生もうとするな!いきなり呼び方を変えたら変かと思って確認しただけだ!」

 

 「あはは、そんなん気にせんでもええよ!」

 

 「ありがとう。麗日はいい人だな!」

 

 「言えたじゃねえか」

 

 気持ちを切り替えるのは簡単じゃないからな。とりあえずシリアスから日常に戻すのは成功した。

 

 「そういえば、2人は仲が良さそうだが、付き合いは長いのか?」

 

 「中学からだな。同じクラスになって仲良くなった」

 

 「初対面は斬新だったけどな」

 

 「「「斬新???」」」

 

 疑問符が実体化しそうな表情を浮かべる3人。この話は、後に取っておこう。

 

 「話したくない訳じゃないけど明日も学校だ。そろそろ帰った方がよくないか?」

 

 「む、そうだな。気にはなるが、また今度にしよう!」

 

 俺の提案に飯田が乗る形でまとまり、俺達はそれぞれの家路を辿った。

 

 

 

 

 

 「にしても唐突だったぞ人使」

 

 「否定はしない」

 

 中学の時より距離が増えた帰り道を2人で歩く。

 

 「似てるって思ったんだ。純粋に。でも、あいつは俺と違って戦う力を持ってる。羨ましかったんだ。だから、ちょっと意地悪な言い方になっちまった」

 

 「分かってるよ。俺も、たぶんあいつも」

 

 絶望から立ち上がった人間は強い。人使と緑谷は、俺の1歩先を進んでいる。

 

 (俺も、頑張らないとな)

 

 いつか、真の意味で肩を並べられるように。俺の決意は、より強固なものになった。

 

 

 

 

 




 はい絡みました 緑谷派閥とでも言いましょうか

 ぶっちゃけ緑谷と心操を体育祭前に絡ませたかっただけです 他の部分はほぼ成り行きです
 食堂のシーンは、誰が喋ったか分かりにくいですが、言い回しで判別出来るようにしたつもりです(爆)

 次は、体育祭前の小話を入れる予定です

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