防御寄りな個性の少年の話   作:リリィ・ロストマン

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 かきおわってしまった

 1日2話投稿が出来るとは思わいませんでした
 大河の個性が実は違った!っていう話になります この設定に関しては構想の段階で既にありました

 心操くんの出番が少ないため、今回はおちゃらけ成分が控えめです



本当の個性

 

 

 

 入学から3日後、俺は担任から連絡を受けて、放課後職員室に来ていた。

 

 「俺に話って、なんでしょうか?」

 

 呼び出したのは、相澤先生だ。

 

 「お前、個性の上限は把握してるのか?」

 

 「上限・・・ですか?」

 

 「ああ。個性には必ず、限界やデメリットが存在する。その様子だと、確かめたことは無さそうだな」

 

 「そうですね」

 

 そもそも人に向けて個性使うのは禁止されてるし。

 

 「そこで、特別に訓練場を使って、個性把握テストを行う。ちなみに校長からの指示だから拒否権はない」

 

 ひどい。まぁ断るつもりもないけど。

 

 「それと、今回手伝ってくれる生徒だ。轟」

 

 「轟焦凍だ。よろしく」

 

 「畑中大河だ。よろしく」

 

 顔に大きな火傷の跡がある紅白頭の男。なんか炎とか氷とか出しそう。

 

 「時間がもったいないからあとは歩きながら説明する」

 

 立ち上がる相澤先生。歩き出す前に聞いておかないといけないことがある。

 

 「あの、友人が待ってるんですけど連れていっても大丈夫ですか?」

 

 「許可は2人分しか取ってないから訓練場には入れないが、外で待ってる分には構わん」

 

 許可を得て、職員室の前で待っていた人使に事情を説明し、4人で歩き出す。

 

 「テストと言っても内容は単純だ。畑中に向かって轟が個性を使うだけだからな」

 

 「それだけですか?」

 

 「ああ。消せる範囲は資料である程度把握出来てるからな。今回調べるのは消せる量だけだ」

 

 テストと聞いて身構えていたが拍子抜けした。

 

 「途中で畑中に異変があったらすぐに中止する。轟頼みではあるがこいつは状況判断に長けているから大事には至らないはずだ。何か質問は?」

 

 「特にないです」

 

 「俺もです」

 

 せいぜいあるのは個性を向けられることの恐怖くらいだ。

 

 「心操はどうだ?」

 

 相澤先生に名前を呼ばれ、人使が驚き目を見開く。

 

 「なんで名前知ってるんですか?」

 

 「知る機会があったからだ。詳しくは俺からは言えん。それで、何か気になったことはあるか?」

 

 「・・・何かあった場合に、俺に出来ることはありますか?」

 

 「万が一、こいつが動けなくなった場合は手を借りる」

 

 「分かりました」

 

 人使は俺を心配している。親友が個性で攻撃されるって聞いたんだから無理もないか。

 にしても、相澤先生が人使の名前を知ってたのは俺も驚いた。人に言えない事情で知る機会ってなんだ?・・・あれ、もしかして。

 

 「相澤先生。さっきの知る機会に、俺は関わってますか?」

 

 「・・・察しが良くて困ったのは、初めてだな」

 

 困ったように頭を掻く相澤先生。その姿を見て、さらに追い討ちをかける。

 

 「もしかして、根津校長も関わってますか?」

 

 「・・・・・・」

 

 黙ってしまった。どうやら図星だったようだ。

 何も知らない轟はぽかんとしているが、人使は気付いていた。

 

 「先生。俺はあの日の話を大河から聞いてます」

 

 「・・・そうか。なら話は早い。俺が心操のことを知ったのはその時だ。仲が良いと聞いたから資料を見させてもらった」

 

 ヒーロー科実技試験2位の男の親友。俺がその立場だったら、嫌でも気になる存在だ。

 

 それから、先生は喋らなくなったので、轟を交え生徒同士で話しながら訓練場へ向かう。途中、ヒーロー科入学を蹴ったことに対して「そうか」としか返さなかった轟が印象的だった。

 

 

 

 

 「じゃあ始めるぞ。轟、地面に氷を出してくれ。まずは消せるかどうか確認する」

 

 轟が返事をして、地面に薄く氷の膜を張る。俺がその氷を踏む。俺の足が地面につく。足をあげると、そこだけクレーターのように地面が見えている。

 

 「こうなるのか・・・」

 

 「畑中、横になってみろ」

 

 興味深そうに見つめる轟をよそに、指示通り氷の上に寝転ぶ。綺麗な大の字が出来上がった。

 

 「よし、次だ。畑中は掌を轟に向けるようにして左手を突き出せ。轟はそこを狙って氷を出し続けろ。時間はこっちで計るから、準備が出来次第始めていい」

 

 「改めてよろしくな!」

 

 「よろしく」

 

 地面から俺の掌目掛けて氷が伸びてくる。氷は俺の掌に触れる直前に消えていく。

 なんか、力を吸収してるみたいだな。

 

 合図があり、氷の生成が止まる。轟は、心なしか寒そうにしている。

 

 「どうだ畑中?」

 

 「手がひんやりしたくらいですね。今のところそれ以外に気になることはないです」

 

 「氷から出てる冷気だな。少し休憩したら、さっきの要領でもう一度行う」

 

 「その前にちょっといいですか」

 

 轟が俺に近づき、左の掌を俺の掌に合わせる。

 

 「・・・思った通りだ」

 

 「なんか気付いたのか?」

 

 「手そのものは冷たくなってない。普通あれだけの冷気に晒されたら、冷たくなるはずだ」

 

 「なるほどな。畑中、さっき寝転んだとき、寒さは感じたか?」

 

 「いえ、全く」

 

 言われてみれば、氷の上に寝転んで寒くないのはおかしい。冷気は出ていたはずだ。

 

 「つまり、畑中は冷気の影響も受けていないわけだ」

 

 「でもひんやりした感覚はありましたよ?」

 

 「それはおそらく、冷気によって元からあった空気が冷えたのが原因だろう」

 

 なるほど。それなら辻褄が合うな。

 

 「んじゃ、続きやるぞ。さっきと同じだ」

 

 「先生、手を突き出すのはなんでですか?」

 

 「何かあった時に被害が手だけで済むようにだ。仮の話だが、上限を超える分は消せない可能性もある」

 

 「分かりました」

 

 再び構え、氷を受ける。やはり体に異変はない。

 轟は氷を出しすぎると体が凍えるらしく、何回か炎を出して自分の体を温めていた。てかやっぱり炎出せるのか。

 どのくらい繰り返しただろうか。もしや上限などないのではないか。そんな考えが頭を過ってから数秒後、俺に、異変が起きた。

 

 (いっ!!?)

 

 一瞬の頭痛。思わず頭を押さえるが、既に痛みは消えていた。

 驚いた様子の先生と轟が駆け寄ってくる。

 

 「どうした!?何があった!?」

 

 「大丈夫か!?」

 

 心配そうに見つめる2人。でも俺はそれどころじゃなかった。

 

 (な・・・っんだ、これ・・・!!)

 

 頭にイメージが流れ込んでくる。突如自覚した膨大なエネルギーと、その使い方。

 

 「・・・一瞬だけ、電気が走ったような頭痛がしました。それと、今まで落ちてたブレーカーのスイッチが入ったような感じがします」

 

 「・・・体は?」

 

 「大丈夫です。ただ、試したいことができました。手伝ってもらってもいいですか?」

 

 口で伝えるより見せた方が早いと判断し、俺は轟に頼んで氷の壁を出してもらう。

 

 「・・・何をするつもりだ?」

 

 「見ててください」

 

 右手を伸ばしデコピンの構えをとる。2人は怪訝そうな顔だが気にしない。

 

 (出力は・・・とりあえず10にするか)

 

 指先にエネルギーを集めて、デコピンを放つ。すると、氷の壁に、音もなく小さな穴が出来た。

 

 「「っ!!!」」

 

 2人の驚愕が伝わってくる。俺はといえば、答え合わせが済んで1人スッキリしていた。

 

 「なるほど・・・これが俺の本当の個性か」

 

 「本当の個性?どういうことだ?」

 

 不思議そうな相澤先生。轟に至っては、驚き目を見開いている。

 

 「さっきの頭痛の後に頭のなかにイメージが流れ込んできたんです。そして今の試し打ちで確信しました」

 

 

 

 「俺の個性は、『他人の個性をエネルギーに変換して吸収する個性』です」

 

 

 

 俺は、個性を消していたのではなく、吸収していたのだ。

 

 「つまりさっきのは、お前が言うところのエネルギーとやらを飛ばした、ということか?」

 

 「そうです」

 

 相澤先生は多少動揺したものの今は冷静だ。轟はまだ理解が追い付いていないように見える。

 

 「イメージでしかないんですけど、俺の体に常にエネルギーの膜が張られていて、その内側にエネルギーが溜まります。それで、そのエネルギーの一部を集めて飛ばしました。デコピンにしたのは、より飛ばしたってイメージが沸くかなと思ったからです」

 

 突拍子もない話だが、相澤先生は信じてくれた。

 

 「分かった。あと個性について分かることは?」

 

 「下限と上限、それと上限を超えた場合のリスクですね。下限が100で上限が1000。それを超えると意識が飛びます」

 

 「数値化してるのか」

 

 「頭のなかでですけどね。俺が数学脳なのが関係してるかもしれません」

 

 「そうか。上限は分かったんだが下限は何の為にあるんだ?」

 

 「体の膜に使ってる分です。最低限その分を残すようにリミッターがかかってます。ちなみに、轟のおかげで今のエネルギーは728あります」

 

 「なるほどな」

 

 とりあえず新たな力の説明が終わると、やっと思考がまとまったらしい轟から質問があった。

 

 「出力の調整は出来るのか?」

 

 「出来る。さっきのデコピンは10で飛ばした」

 

 「そこまで細かい調整が利くのか」

 

 「イメージが10×10×10の立方体の容れ物なので。使いたい分だけ取り出す感じです」

 

 「威力はどうなんだ?」

 

 「そこはこれから確認する。どこまで飛ぶのかも気になるしな。それでいいですか?」

 

 「大丈夫だ。残された時間は短いが、出来る限り試していけ」

 

 それから数分間、俺は威力の他に、轟の協力を得て人体への衝撃の有無を確認した。飛距離は何かにぶつかるまでだった。

 

 

 

 

 

 

 

 「念のためだ。行くぞ」

 

 相澤先生引率のもと、轟がリカバリーガールの所へ連れていかれた。俺もと言ったが「友人の待ち時間を徒に増やすのは合理的じゃない」と押し留められ、俺達は先に帰ることになった。

 

 「ついに本物の化け物になったんだな」

 

 「化け物ってよりは変人じゃないか?目に見えないエネルギーとか自分でも何言ってるか分かんねーし」

 

 「空気に例えればいいんじゃないか?」

 

 「その手があったか」

 

 訓練場で知った本当の個性、吸収《アブソプション》については、ほぼ全部聞こえていたらしい。人使の第一声は「とりあえず打ってみろ」だった。

 

 「本当に見えないとは思わなかった」

 

 「出力上げると空間が歪むから分かりやすくなるぞ」

 

 言うが早いか、掌に100のエネルギーを集める。

 

 「こうなるのか。四角いのはなんでだ?」

 

 「俺の持ってるイメージの影響だな」

 

 「なるほどな。で、それはどうするんだ?」

 

 「取り込む」

 

 歪みを胸に近付けていくと、自然と歪みが消えていく。

 

 「それも吸収できるのか」

 

 「俺から出てるエネルギーだからな。なぜか胸からしか吸収出来ないけど」

 

 「動きだけ見ると頭おかしい人だな」

 

 「前半の言葉がなかったらメンタルブレイクしそうだ」

 

 今日は冗談が少なめだ。俺の心が不安定なのを見越してのことだろう。

 

 「ありがとな」

 

 「どーも」

 

 短い言葉でも気持ちが伝わる。これが友情パワーだ!!

 

 「優しくするのやめていいか?」

 

 「ナチュラルに心を読むな」

 

 「顔に書いてあった」

 

 言葉がなくても伝わることもある。おちゃらけモードに入ったのを即気付かれた。

 冗談で終わる日常。俺達には、それが一番似合ってると思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「これが、今回判明したあいつの個性です」

 

 「これは僕も予想してなかった。世界が広がった気がするよ!」

 

 「あいつの世界も広がったでしょうね。能動的な攻撃方法の獲得。体育祭が楽しみです」

 

 「僕も大概だが、君も随分と彼を買っているようだね。それと、彼の親友であるあの子も」

 

 「見込みがあるからですよ。見込みなしと判断すればすぐにでも切り捨てます」

 

 「昨年1クラス全員を除籍処分した男の期待か。彼らには少し荷が重いかな?」

 

 「大丈夫でしょう。あいつらは既にヒーローの心を持っている。あとは経験と実力だけです。プルスウルトラですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 (目に見えないとは言ったけど、他人から見た場合なんだよな)

 

 徐に手からエネルギーを出す。俺の目には薄紫色の球体が見えていた。

 

 (形は変えられる。想像力を鍛えれば複雑な形も出来るはずだ)

 

 今のところは球体、円柱、四角柱しか作れないが。

 

 (あとは、エネルギーの補給先の確保か・・・)

 

 1番の課題だ。エネルギーは飛ばすとなくなるので、いずれは補給しなきゃならなくなる。

 

 (考えてもしょうがない。明日辺り相澤先生に聞いてみるか)

 

 

 





 つよい(小並感)
 元々大河を覆っていたエネルギーが不可視だったせいで、放出したエネルギーも不可視になりました
 ちなみに大河にも見えません 大河が見ているのはイメージから来る幻覚です 体育祭あたりでそういう描写が出来ればと思います

 次は特訓の予定です

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