幕間みたいなもの
相変わらず行き当たりばったりで書きたいことを書いています それと書きたいことの為の軌道修正ですね
「ヒーロー名かぁ・・・」
「ヒーロー科じゃないのにな」
ヒーロー科の職場体験の時期。俺達は普通科の為参加は出来ない。それでも指名してくれたヒーロー事務所があったため、考えておいてもいいんじゃないかという話があった。
「無難に英語とかでいいのか?」
「自分の特徴が伝わる名前ならなんでもいいんじゃないか?」
「見た目とかか?」
「お前は化け物だからモンスターとかどうだ?」
「そんな敵みたいな名前は嫌だな。あと俺は化け物じゃないな」
体育祭でのあの光景を見た後でも、人使は変わらず接してくれている。でも化け物はやめよう?あの日以降俺見て怯える人増えてるからね?
「あれを出した時のお前は間違いなく化け物だったぞ」
「それを堂々と言えるとか尊敬しちゃうわぁ」
「冗談だからな」
「人使はヒーロー名どうするんだ?」
「まだ決めてない。いざ自分を伝えるってなると難しくてな」
「だよなぁ。洗脳は英語だとブレインウォッシュだったっけ?」
「ああ。あとはマリオネットとかも俺をイメージしやすいかなって思う」
「操り人形、だっけか。ピッタリじゃないか?」
「ただマリオネットって『操られる側』なんだよな。そこだけ引っ掛かってる」
「俺に操られてることにしときゃいいんじゃね?」
「洗脳もなしに人を操るとか化け物以外の何物でもないぞ」
「人使にとっての化け物なら別にいいかなって」
「そりゃどーも」
「それで、麗日達はどこの事務所にしたんだ?」
職場体験前の昼休み、久しぶりに食堂で麗日達3人と会った。
「私はガンヘッドの事務所!」
「ゴリゴリの武闘派だな!緑谷は?」
「僕は、グラントリノって人のところ。公式の活動記録がないから、どんな人かは分からないんだけど」
「確かに聞いたことない名前だな。てか、分からないってことは向こうからの指名か?」
「えっ?うん、そうだよ?」
緑谷指名来たのか。
「すまん、勝手に指名0だと思ってた」
「俺もだ。負けた俺が言うのも何だけど、派手に体ぶっ壊してたからな」
「うん・・・実際、体育祭直後は0だったよ。でも、後からその人が、僕を指名してくれたんだ」
「なんか、特別な事情とかありそうだな」
「うぇっ!?い、いや・・・その・・・」
うわぁすげぇ分かりやすい。あからさまになんか隠してるわぁ。
「っはは。別に詮索する気はねえよ。で、飯田は?」
「俺はマニュアルヒーロー事務所だ。本当は兄の事務所に行くつもりだったが、例の件でな。別の事務所を選んだ」
例の件。飯田の兄インゲニウムがヒーロー殺しと呼ばれている敵に襲われた事件だ。
生きてはいるが、瀕死の重傷を負い今も入院している。
「そうか。ところでそのマニュアルって人の事務所は保須市か?」
「む、そうだが。どうして分かったんだ?」
「それは言えねえな。ただ、飲み込まれるなよ。俺が言えるのはそれだけだ」
「む、そうか」
言葉の真の意味が伝わったかは分からないが、飯田は返事をくれた。緑谷は考え込み、麗日はきょとんとしている。
(何事もなければそれが一番いいんだけどな)
ただそういう心配事は得てして悪い方向に転ぶ事が多い。俺は雄英高校の生徒がヒーロー殺しの襲撃に遭ったというニュースを聞き、その生徒が入院しているであろう病院に来ていた。
(あの位置情報は、つまりそういうことだったってことだな)
俺は緑谷の連絡先を知っている。その緑谷から事件当日に送られてきた位置情報と、それが保須市だった事実。それらが、俺に結論を導き出させた。
(ヒーロー殺しが生きてるんだから、大丈夫だとは思うが・・・)
「畑中くん!?面会は原則禁止だったはずじゃあ・・!!」
「担任の先生の代わりって事で押し通した」
「・・・お前そういえば相澤先生に目ぇ掛けられてたな」
事前に相澤先生には話はしてある。時間の無駄だと一蹴されると思っていたが、返ってきた言葉は「好きにしろ」だった。ついでに「もしダメそうなら俺に連絡しろ」とも言ってくれた。
俺は、甘やかされている。
「目を掛けられてるのは否定しない。それで、飯田は大丈夫だったのか?」
「両腕の傷が特に酷」「そっちじゃねえ」
「復讐、しようとしてたんだろ」
「・・・今は大丈夫だ。友に、クラスメイトに、救けられたからな」
飯田の目には、新たな決意がみなぎっている。
(俺の言葉も、少しは届いたかな)
今はって言ったのは、1度復讐の心に飲み込まれかけたからだろう。それでも飯田は立ち直った。救けられたのは、危険からだけじゃなく心もだろうな。
「ところで、緑谷と轟はなんで保須にいたんだ?」
「僕は、渋谷行きの新幹線の途中で敵に襲われて、そこがたまたま保須市だったんだ」
「俺は親父の判断で保須に出張してた」
「なるほど。それで緑谷が飯田を見つけて救けに入って、後から轟が合流した感じか」
3人が驚きの表情を浮かべた。最初に口を開いたのは轟だった。
「なんで分かったんだ?」
「復讐はヒーローがいたら出来ないから飯田は1人で動くだろ?で、緑谷の位置情報のみの送信で、応援が欲しいけど電話とかをする余裕がない状況ってのがわかる」
驚きはまだ収まらない。むしろ感嘆してるまである。
「轟に関しては怪我を見たからだ。プロヒーロー、ましてNo.2の事務所のヒーローと一緒に駆け付けたんなら、そこまでボロボロにはなってないはずだからな」
「・・・お前探偵か何かか?」
ブフッ!
「いや、轟。さすがに真顔は卑怯だろ」
「・・・?探偵じゃないのか?」
やめろぉ!必死に耐えてんだから追い討ちかけんなぁ!
見てみろ!飯田と緑谷も笑ってんじゃねーか!!
「なんで笑ってるんだ?」
「気にすんな。原因はお前だけどな」
「そうか?なんか、悪い」
「さて。和んだとこ申し訳ないけど、真面目な話だ。この事って他言無用だよな?」
「ああ」
「わかった。んじゃ、また学校でな」
「というわけで、飯田は大丈夫そうでした」
次の日の放課後訓練の前、俺は相澤先生と人使に話した。
「俺はなんで聞かされてるんですか?」
「こいつがいずれお前に話すと思ったからだ。同じことを2回も話すのは合理的じゃない」
他言無用とは言われたが、面会に先生の名前を出した以上話さないわけにはいかない。ここなら他人に聞かれることもないだろう。人使に関しては俺に巻き込まれただけだ。
「信頼されている証ですね!」
「別方向でな」
「とりあえずその話は終わりだ。あとはいつも通り、訓練を始めるぞ」
「「はい!」」
訓練の日々が続き、期末試験が迫ってきたある日、相澤先生が爆弾を持ってきた。
「今度の期末試験、お前らには筆記とは別に、ヒーロー科編入試験を行ってもらう」
「「分かりました」」
俺達は、淡々と返事をした。
「・・・もっと喜ぶかと思ったんだがな」
「「通過点ですから」」
返事が重なる。目標は立派なヒーローになることであり、ヒーロー科への編入はその為の前提条件だと思っている。
「随分と頼もしくなったじゃないか」
「まあ色々とあったんで」
「あとは先生の指導のお陰ですよ」
「だといいがな」
そうして、俺は個性の形状変化の訓練を、人使は相澤先生が扱う操縛布の修練を行った。
迎えたヒーロー科編入試験。内容は入試の実技試験と同じ、仮想敵の撃破だった。
「ヒーローにとって戦闘力は必然。今回の試験では、お前らがどれだけ戦えるようになったかを見る」
「0ポイントは出ますか?」
「獲得ポイントに連動して出る。あのデカブツにどう対処するかも評価の対象だ」
なるほどな。ヒーローである以上理不尽とも戦わなきゃいけないときもあるってことか。
「それじゃ、始めるぞ。位置につけ」
試験が始まった。
予め轟に協力してもらって872エネルギーがあった為、俺の作戦はひどくシンプルだった。1ポイントは10の、2は12、3は15の出力で倒せることが分かり、エネルギーを投げ続けた。
そして、入試の時の巨大ロボが現れた。
(残りエネルギーは542。なら150くらいにするか)
見てとれる歪みを発生させているエネルギーの塊を、ロボの中心辺りに投げつけると、ロボはあろうことか爆散した。
(150でこれかよ!!)
「そこまで!!」
ロボ撃退と同時に、俺の実技試験が終了した。
俺は疑問を抱きつつ、相澤先生の元へ向かう。
「あの、10分経ちましたか?」
「今回の試験はあれを倒した時点で終了だ。かかった時間は6分22秒。ギリギリだが合格だな」
「ってことは、制限時間10分っていうのは強制終了のタイミングだったってことですか」
「お前の個性なら7分あればやれるだろうからな。10分と言ったのは、あの巨大ロボへの反応を見たかったからだ」
「俺が、戦うことを選択するかどうかですか?」
「そうだ」
入試の時、俺は動けなかった。命の保身に走ったからだ。
「入試の時にはなかった力。それを手に入れた今のお前にあのロボがどう映るか。結果、お前はあれを倒せる相手と認識した。そうだな?」
「はい。加減は失敗した気がしますけど、倒せると認識していました」
「それでいい。お前が強くなればなるほど、お前の命が危険に晒される可能性は減っていく。つまり、トラウマに振り回される可能性も減るということだ。エネルギーも、使い切らないように調整していたな?」
「そうですね。なるべく最低限の力で倒すようにしました。エネルギーがなくなったら無力になるので」
「自分の弱点もちゃんと分かっている。なら、後はヒーローとしての知識と経験を積むだけだ」
「正式にはまだ先だが言わせてもらう。ようこそ、雄英高校ヒーロー科へ!」
その後、人使も無事試験に合格し、俺達は晴れて、2学期からヒーロー科へ編入することになった。
「だからっていきなり林間合宿ってどういうことだよ・・・」
「遅れてるんだからしょうがないだろ」
俺達2人が合格した直後、相澤先生からヒーロー科の林間合宿への参加が発表された。この3ヶ月強で付いた差を少しでも埋める為らしい。
今日は日曜日。俺達は合宿に向けて足りないものを揃えるため、ショッピングモールに来ていた。
「とりあえずバッグからでいいか?」
「ああ」
林間合宿は1週間。俺達はまず、荷物を入れるバッグを買うことを決めた。
「あの2人どっかで見た気がする」
「A組の生徒じゃないか?」
バッグを買い店の外に向かう途中、見たことのある女子2人組がいた。
「でも名前わかんねえ」
「下手に話しかけて怪しまれるのも困る」
「そうだな」
そう決めて目を切る直前、2人に近寄る2人組のチャラ男が見えてしまった。
「間違っても知り合いじゃなさそうだな」
「ナンパ目的か」
「頼んだぞ人使」
「やれやれ」
俺達はチャラ男に歩み寄る。そして、人使が後ろから声をかける。
「おい」
「あ?」
男共が振り向いて止まる。洗脳完了だ。
「店の外まで歩いていけ」
言われるがままに男共が去っていった。
「余計なお世話だったか?」
「えっと・・・畑中と、心操だっけ?」
「どうされたんですか?」
「絡まれてるように見えた」
「あっ、うん・・・ありがとう」
よし。とりあえず怪しまれることはなかったぞ。
「とりあえず名前知らないから教えてくれるか?」
「ナンパみたいになってるぞ大河」
「あら、貴殿方もナンパしにいらしたんですか?」
「違うよヤオモモ。ウチは耳郎響香。んで、この子が」
「八百万百と申します。お二人とも、よろしくお願い致しますわ」
「「よろしく」」
八百万は良家の令嬢感が半端じゃないな。反対に耳郎はサバサバした感じがする。
「2人はなんでここに?」
「「林間合宿用の買い物」」
「ハモった!てか今林間合宿って言った!?」
「お二方も参加されるのですか?」
(あれ?もしかして内緒にしてたパターンか?)
「相澤先生からそう言われた」
「何も聞いてないのか?」
「2人のことに関しては何も」
「聞いておりませんわ」
「てことは当日に言うつもりだったのか。自己紹介とかもあるとはいえ、本当に合理性の塊だな」
「話すのは構わないけど買い物はいいのか?」
「「「あ」」」
人使の一言で当初の目的を思い出した俺達は、ようやく買い物の続きを始めた。
その後、洋服店で服を買い、次の行き先の話になった。
「さて、俺達は後は特にないけど、そっちは?」
「私は特には。耳郎さんは如何ですか?」
「ウチは、えっと、その・・・し、下着を、ちょっと・・・」
ああ可愛い。なぜ羞恥を孕む女子はこんなにも可愛いのか。っと、人使に止められる前に抑えないとな。
「なんでそんなに恥ずかしそうなんだ?」
「大河。デリカシーは捨てたのか?」
「美味しいのかそれ?」
「畑中さん。さすがにそれはあんまりですわ・・・」
「・・・あー、うん。あんたはそういう奴なのね」
「外で待ってる分には問題ないだろ?」
「いやなくはないけど・・・うん、それでいいよ」
話が決まり、女性用のランジェリーショップへと向かうことになった。
・・・ああ言ったはいいものの、さすがに少し気まずいものがある。店に出入りする人達の目が痛い。
「そういやなんでさっきあんな言い方したんだ?」
「気を遣わせたくなかったからだ。俺から見た耳郎の性格だと、そういうの気にしそうだったからな」
「下着見たい変態じゃなかったのか」
「無理矢理見たいとは思わない」
「見たいのは否定しないのか」
「大事なのはシチュエーションだからな」
「隠さなくなったなお前」
「開き直ったからな」
ブスッ。
「いてっ」
「あれ、もしかして効いてない?」
「個性使ったのか?心臓の鼓動みたいな音は聞こえる」
どうやら耳郎が耳たぶのイヤホンジャックを俺に挿したらしい。
「音は聞こえてるんだ。結構大音量流した筈なんだけど」
「大きくした分は吸収したみたいだな」
「なるほどね・・・ってそうじゃなくて!さっきの見たいって言ってたのは何?」
「ああ、無理矢理見たいとは思わないって話か?」
「・・・是が非でも見たいとかじゃなくて?」
「無理矢理だと罪悪感のほうが勝るからな」
「・・・あの、畑中さんは、その・・・女性の、し、下着姿を、拝見したい、ということでしょうか・・・?」
ああ、お嬢様。御無礼をお許しください。
「誠に申し訳御座いませんでした」
「畑中さん!?突然如何なされたのですか!?」
「貴女様の穢れ無き心に影を落としてしまった事、謹んで御詫び申し上げます」
「要約すると、八百万にそんなことを言わせた自分が恥ずかしくてしょうがないってことだな」
「・・・ウチとの扱いが随分違う気がするんだけど」
「八百万がここまでピュアだとは思わなかった」
「それはウチも思った」
「いえ、その・・・そういった方には、思えなかったもので・・・」
「大河はわりとそういうとこあるぞ」
人使ぃぃぃ。救けなくてもいいから追い討ちはやめてくれぇぇぇ。
「ただ、自分本意じゃなくて相手主体で考える。だから実害はないはずだ」
びどじぃぃぃ!ありがどぉぉぉぉ!
「でもまぁ悪いのはこいつだから殴っていいよ」
あっやっべちょっとふざけただけなのにバレた。
「待て、正直に話して殴られるってどういうことだ」
「お前が一瞬でもふざけたのが悪い」
「許してくださいなんでもしますから」
「なんでもか?じゃあ殴られてくれ」
「理不尽かな?」
「正当な主張だろ」
「逃げ場がねぇ!」
「・・・あんたらの仲がやたら良いのは分かった。まぁウチも悪い奴じゃないとは思ってたしいいよ。ただ」
「そういったことを、女性の目の前で仰るのは、あまりよろしくないと思います」
「また言われたな」
「・・・善処します」
なんとか事なきを得た・・・のか?
一先ず距離は縮まったと思う。「最低」と一蹴されてもおかしくないはずだから。いや、もしかしたらジャック挿されたのがそういう意味かもしれないが。
その後、駆け付けた警察から敵の目撃情報があったと聞き、事情聴取を受けた後安全が確認されて解散となった。俺がショッピングでやや特殊な女性観を晒している間に、緑谷が敵連合のリーダーに絡まれていたのは、また別の話だ。
女子との絡みを書かざるを得ない(使命感)
「とりあえずバッグ」って台詞が浮かんで、アニメ見て誰がどこに行くか確認して、あっこれは絡ませざるを得ないなと
次は林間合宿 大河達をどっちのバスに乗せようか・・・