緑谷夫妻のやり直し   作:伊乃

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少し間が空きました。
すみません。

今回は見た目子供同士の絡みですが、実情は大人同士ですので、ほんのりR指定ものを匂わせます。

暴走回です。

お嫌いな方はここまででおやめください。




11. Naked relationship(裸の付き合い)【暴走回】

あれから、数時間後。

麗日家の皆さんと夕飯を食べ、1番にお風呂に入る権利をいただいた。

 

一通り身体を洗い、少し高い縁をよじ登りお湯の中に身を投じる。

移動続きで多少凝り固まってる身体をほぐしながら、肩まで浸かる。

座高が小さいため、足を伸ばして座ると頭まで湯船にカブる羽目になるとは…。

小さい頃はこんなだったかな、と思い返すも遠い記憶なので思い出しようもない。

 

 

「はー…。思ったよりもすんなりことが進んでくれてよかった…。最悪、説明に説明を重ねるか、説得の粘り勝ちを狙うかの二択かと思ってたし…。」

 

手の椀の中を覗き、自分の目と視線を合わせる。

そのまま、顔に叩けつけ暗く曇った考えを押し流す。

 

「お茶子さんと母さんたちには感謝だな…すごくゾッとしたけど…」

 

女性に多数決を挑むのは出来るだけ避けるべきだと、心の掟に一条付け加えることにした。

もしも、紙や情報媒体に残して漏洩でもしてみろ…余計怖い目が待っているに決まってる…。

自分の想像に掻き立てられて、温かな湯船の中にいるのに身を震わせた。

 

そろそろ次も支えているし、上がろうかとした時。

第六感、虫の知らせ、妖怪センサー…なんでもいい。

それらのいずれかが反応したような気がした…。

そのため立ち上がる途中で動作が止まったまま、ものすごい勢いで開いた扉に目が向いたまま…僕は固まった。

 

「デクくーん!一緒に入ろー!!」

 

そこには産まれたままの姿のお茶子さん。

突撃してくるそれを見た瞬間、僕はこの後の展開を128通りほど刹那のうちに脳内を巡らせて…僕の意識は遠のき掛けた。

そのまま手放すところだった意識がつなぎとめられたのは、次の言葉によってだ。

 

「お茶子ぉ!?父ちゃんがダメでなぜ出久くんは良いんだぁ!?」

 

「父ちゃん。さっきも言ったけど、私中身はオトナの人妻なんよ?旦那と一緒に風呂入ったってええやん!」

 

「大人なら恥じらいや常識、分別を持てぇい!?」

 

「そこはほら、幼い幼馴染同士が一緒にお風呂入る…みたいな流れに出来るやん、今まさに子供やし」

 

あー…いけない。

こうなったら止まらない。

何が何でも自分の望みを通す、いつも何も言わずに我慢するお茶子さんのバーサーカーモード…。

初めてこうなった時は、帰りたくないってなって寮則破る羽目になったんだったな…。

 

「あー…すいません、お義父さん…。今日だけお願いします…。明日からはきっと大丈夫なんで…」

 

僕が恐縮しきりに願い出るのを見てお義父さんは何かを納得したようだ。

 

「む…そ、そうか。なら、君からもちゃんと言うように頼む…。お茶子、今日だけだからな?」

 

「えー、今日からだよー!」

 

荒ぶる駄々っ子、お茶子さん。

ぐっ…駄々のこね方からして可愛い…。

 

「何か事故が起きてからじゃ遅いからな、男女別れて入るべきだ」

 

「何か事故って私たちまだ子供出来ないよ?」

 

「「お茶子!?」さん!?」

 

「て言うか、ちっちゃいデクくんほんま可愛いな…昼あった時、天使かと思ったもん…手ェ小ちゃいな…肌もプニプニ、筋肉全然ないなー!あのバッキバキの身体どこいったん!髪もまだ柔らかいなー、典型的なお子様ヘアーやん。未来の私にキューティクル分けて欲しいくらいやわ…」ブツブツ

 

なんだか、お偉いさんに会う時のボディチェックを受けている気分になってきたが、それ以外の高揚もまた感じている。

 

「お?デクくんのデクくんもこの頃はこんなんやったんねー?夜は猛々しいモンスターやったのにー」

 

その言葉を最後に僕は逆上せ上がり記憶を飛ばした。

飛ぶ寸前にお義父さんがお茶子さんを怒鳴りつけているのが、聞こえた気がした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

次に気を取り戻した時は、縁側。

目を開けた瞬間、中庭が目に入る。

 

「あ、デクくん起きた?」

 

上から掛かる声はお茶子さん。

どのくらいの時間か分からないが、膝枕をしてくれたみたい。

団扇で緩く風を送って、熱を冷ましてくれていたみたいだ。

 

「あー、逆上せたのか…迷惑かけてごめんね。」

 

「んーん、私こそ…調子に乗り過ぎてた…ごめんなさい。」

 

二人で謝り合う。

許しの言葉はあえて口にしなかった。

お互い喋り出さない数十秒。

僕はこの間は嫌いじゃない。

 

停滞した空気に穴を開けたのはお茶子さんだった。

 

「昔ね、父ちゃんも母ちゃんも優しいし、私も怒られるようなことってしてなかったから、殴られるほど怒られるようなことって無かったんだけど…父ちゃんに初めて頭ブン殴られたわ…ほぼ手加減なしだったみたいで、今おっきなタンコブが居るんよ」

 

中庭に向けたままだった顔をお茶子さんに向けてみると、苦笑を浮かべるその頭にはオレンジ色の氷嚢とタンコブ、頭の鏡餅が出来上がっていた。

 

「まぁ、仕方ないよ…最後にマトモにイチャイチャ出来たのって作戦決行の…三ヶ月前だっけ?」

 

「もう四ヶ月前だよ、デクくん。結婚記念日に祝えないから、サプライズで前祝いしてくれたんじゃない」

 

お互いに多忙が続き、家庭内でも仕事上でもすれ違いが長く続き、どうにか互いに時間を取ろうとして、ようやく愛を睦み合うことが許された。

その分で溜まっていたフラストレーションが、今日爆発してしまった、と言うわけだ。

 

「いやぁ、溜まっていたとはいえ、今更ながら何の恥じらいも無く、裸見せるわ、あちこち触るわ…今になってなにやってんだ…って思っとるよ…」

 

後頭部に手を回すお茶子さん。

彼女が照れた時のクセだ。

後ろ髪をかき回す内に氷嚢に触れてしまい、タンコブの表面を軽く削った。

 

「アイタタタ…今夜寝れるかな…。」

 

氷嚢を押さえ付け、落ちないよう確認する。

結構な痛みがあるようで、眦が潤み始める。

その溜まった潤みが瞬きとともに決壊して一滴頬を伝った。

それを見て僕は腹筋の力のみを使って体を跳ね上げ、その雫を舌で掬い取る。

その瞬間、呆けたお茶子さん。

次の瞬間は視線だけが交錯した。

 

「不満が溜まってたのはなにもお茶子さんだけじゃないんだから、そこのところは忘れないでね?」

 

お茶子さん顔が下から順に赤くなる。

それが天辺に到達した時、頭の氷嚢が漫画的にピョンと跳ねた。

 

「…あかん、キュンときた」

 

…キュンと来たなら、抑えるのは左胸じゃないかな…?

何でお腹押さえてんのかな…?

 

「…ウチの嫁さんは意外とエロ可愛いなぁ…」

 

「エロ可愛いって何なん!?」

 

怒ったフリで声を上げても、キスには応じてくれた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「それじゃ母さん、お休みー」

 

客間に戻り、寝支度をしていた母さんに声を掛けて布団に潜り込んだ。

 

声をかけた時、後ろを向いていた母さんを枕から見るとこちらを見てキョトンとしていた。

 

「出久、アンタお茶子ちゃんと一緒に寝ないの?」

 

「え」

 

とりあえず、そういった諸々はお義父さんとも相談して決めよう…そうじゃないとあちこちから針のむしろにされてしまう…お義父さんによって…。

 

「うん、一応今日のところは」

 

「美茶(ミサ)さんは、お風呂も布団も一緒でいいって言ってたんだけどねぇ?」

 

…なんでもお見通しかな、女の勘。

恐れ入る。

 

「まぁ、実際結婚してたって言うんだし、本人同士に好きにさせるべきってのが、母親ズの認識だから。照仁(テルヒト)さんは断固反対みたいだけど、アレは娘を持つ父親が罹る特有の病だから気にしなくていいって。ウチのおじいちゃんと一緒。」

 

あー…母さんラブのおじいちゃんか…。

確か寿命で10歳の時に亡くなったけど、この頃はまだ生きてるのか…。

 

「タイミング見て会いに行こう」

 

きっと会ったらめちゃくちゃ可愛がってくれるんだろう…記憶の中の彼がそうしてくれていた。




オリジナル設定を止むを得ず入れました。
麗日 父 照仁
母 美茶
をインコに呼ばせるのに名前が必要になった次第です。

また、出久のおじいちゃんは娘バカだったと言う…今後使うか分からん設定…。


なお、なんと無く気になって見てみたところ週間ランキング3位、月間ランキング21位にランクインしていて危うく失禁しかけたので、どうにかみなさんにお礼参りしたいと存じます(黒笑)←


次回より、過去ヒーロー邂逅編をやる予定です。
よろしくお願いします。

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