緑谷夫妻のやり直し   作:伊乃

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海外ではジョーカーでなく、クイーンを一枚残すとか…。
それでold maid(年寄りのお手伝いさん)だとか…。


さっき知った(すっとぼけ)


今回は邂逅編。
次回を待て!(苦渋の決断)


17.Old maid(ババ抜き)

僕らがやって来たのは、No.2ヒーローエンデヴァー、轟 炎司氏のお宅だ。

 

そして、僕らの同期の家でもある。

 

ニコニコ微笑みながら挨拶をし、持たされた、と言って用意していた葛餅の菓子折りを渡す。

 

そのまま、何かを聞かれる前に上げてもらい、中庭に面した和室へと通された。

 

「今焦凍を呼んでくるからねー?」

 

小さな子が二人きりで来ていることに疑問に思わなかったのか、舌足らずな話し方をする冬美さん。

 

潜入作戦の第一段階は成功だ。

 

「デクくん。エンデヴァーと戦うって本気なの?」

 

ざっくり言うけど、まさにその通り。

実際僕には、それ以外に解決法が見つからなかった。

 

「うん。エンデヴァーが家にいるだろう情報は押さえてあるから問題はないはず…それで、轟くんのお母さんと轟くんのケアをお願いしたいんだけど、本当に大丈夫?」

 

「それは任して!リカバリーガール監修のカウンセリングセミナーの首席だよ?まだ実害が出てなければ、十分にケアできるよ!」

 

両手を握り、腰溜めに構えているお茶子さん。

ヤル気モードの時、良くやる構え。

 

それを見て僕は…

 

 

「はあああ…かわいいいいい…」

 

 

口から本音がまろび出ていた。

 

それを聞いてお茶子さんはキョトンとした目になり、首をそのまま落とすように傾げた。

 

いちいち仕草が可愛いな、本当に…。

 

 

「焦凍連れて来たよー!」

 

くだらないやり取りをしているうちに冬美さんが戻ってきた。

 

襖を開け、中に入ってくる轟くん。

ミニマムサイズだが、整った容姿は知ったままだった。

 

「お前らだr「こんにちは!お茶子と遊ぼ!」」

 

誰何する轟くんに被せるように声を上げるお茶子さん。

今は冬美さんに疑われるのはよろしくないので、良い判断だ。

 

轟くんの両手を取り、笑顔を見せている。

…少しムッとしたが、顔には出さないよう努める。

 

「デクくん、何して遊ぼっか!」

 

「僕トランプ持って来たよ!これで遊ぼう!」

 

咄嗟にお茶子さんのテンションに合わせ、僕はそう答えた。

少し気恥ずかしいが、子供同士だから問題ない…そう自分に言い聞かせるも顔が熱いや。

 

「待て…お前ら…「簡単なババ抜きが良いかな?一緒にやろ?」」

 

会話の主導権を握らせない…こちらの都合を押し付ける形だ。

相手に悪印象を与えかねないので、本来悪手だが、子供の図々しさならそれほど問題じゃない。

 

「待てって…それに俺…ババ抜き?のルール…知らない」

 

所在無さげに指先を弄り出す轟くん。

そんな姿を見て、込み上げるものがあるが、それを押さえ付けてお茶子さんとアイコンタクト。

 

 

「「教えるから、一緒にやろ!」」

 

出来る限りの笑顔、目線を合わせ、安心感を与える。

幼い轟くんは俯くのをやめ、僕らに視線を合わせてくれた。

 

「ね?」

 

駄目押しにお茶子さんが畳み掛ける。

轟くんの顔に朱が射すのを僕は見た。

 

お茶子さんは上げないぞ…!

 

「お姉ちゃん、学校の宿題があるから行くね!それじゃあごゆっくりどうぞー」

 

しばらく様子を見ていた冬美さんが笑みを浮かべたまま襖を閉じて何処かへ行った。

 

しばらくは待ちだ。

トランプ遊戯に興じよう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「やった…!揃った!」

 

そう言って最後の一枚を場に捨てた轟くん。

 

僕とお茶子さんはまだまだ手札が残っているのにだ。

 

「焦凍くん、物覚えはっやいね…まだ3回目なのにもう負けちゃった…」

 

いくら接待の手加減したゲームであっても、子供相手にコテンパンにされる見た目幼児、中身大人の僕ら…なんと情けない文面だ…。

 

「トランプ…!楽しい…!」

 

最初の警戒は何処へやら。

すっかり心を許してくれているようだ。

 

キラキラさせた笑顔でこちらを見る轟くん。

その笑顔に釣られて僕らも笑んだ。

 

 

…そんな折、少し気温が上がった気がした。

遠くでドスドスと誰かが歩く音が響いている。

音が近づくに連れ、気温も僅かながら上昇しているようだ。

 

 

 

……とぉぉ!

 

しょ…とぉ!…焦凍!!

 

 

「焦凍!ここか!」

 

バンッと派手な音を立てて襖を開け放つ大柄な男が一人。

 

オフのためか、その顔を覆う炎は無かった。

が、見まごうことはない。

エンデヴァー。

オールマイトに次ぐプロヒーローだ。

 

オールマイトに対し、怨念に近い執念を抱えており、その影響が将来的に轟くんに悪影響を齎す…。

 

それに…。

 

「こんにちは、エンデヴァー。お邪魔しています」

 

精一杯の笑顔を浮かべ、挨拶する僕。

 

「どちら様かね?悪いが、焦凍は忙しい。お引き取り願おうか」

 

誰何から一息に帰れとまで。

随分と拗らせているものだ。

 

「いえ、焦凍くんにも用はありましたが、僕らはあなたに用があって訪ねさせていただきました。」

 

手に持っていたまだ揃っていない手札を捨て札の山に投げる。

そうしてから僕はゆっくりと立ち上がり、大男を見上げる。

 

「初めまして、緑谷出久です。デクとお呼びください、エンデヴァー」

 

握手を求めるように手を差し伸べる僕。

 

その手は瞬時に叩かれた。

 

「お引き取り願おう、と言ったはずだ。ウチの焦凍は忙しい。友達と遊んでいる暇などないのだ」

 

叩かれたせいか、轟くんの扱いに対してのせいか。

どちらかは分からないが、いずれかのせいで僕の脳裏が赤く燃えたのが分かった。

 

「それはオールマイトを超えるヒーローにするため…ですか?」

 

知っている情報。

誰であろう、轟くんから昔に聞かされた話だ。

交渉術としては下策だが、本題にメスを入れるには最適解だったと言えるだろう。

 

「ほう。それは焦凍から聞いたのかね?」

 

「いいえ、僕の推測です。あなたがオールマイトに敵わないならば、自分の子供に超えさせようと言う言わば都合の押し付け、ですよね?」

 

核心を抉る決定打を乗っけから打ち込む。

苛立ちからか歯軋りが鳴り、コメカミに青筋が立つのが見えた。

 

「何が言いたい、小僧…?」

 

「はっきり申し上げます。あなたのやり方は間違っています。焦凍くんに望まない訓練を課すのはただの虐待、それ以外の家族には見向きもせず、奥さんや焦凍くんにキツく当たるのはあなたのエゴです。そんなやり方ではその内、ご家族からヴィランが出てしまいます…よっと!?」

 

言葉を紡いでいる間に僕の顔面目掛けて掬い上げるような拳が飛んできた。

拳から視線を離さず、スウェーの要領でやり過ごす。

 

空振った拳はすぐに引き戻され、再装填。

怒りに身を任せて振り回す素人と違い、堂に入った構えは、超常黎明期以前に風靡したプロボクサーを彷彿とさせる。

 

「…君はヒーロー志望かい?」

 

「ええ、オールマイトに憧れて自らを鍛え上げました…簡単には倒されませんよ?」

 

「随分な自信だな…良かろう。焦凍の前に貴様から揉んでやる」

 

付いて来いと踵を返し、廊下へと出て行ったエンデヴァー。

 

その後を追おうとするとシャツの裾を誰かに握られる。

振り向いて見れば、涙を湛えた轟くんの姿があった。

 

「で、デク…父さんはすごく強いんだ。だ、だから戦うなんて…無茶だよ…!」

 

先ほどまでの笑顔は何処へかいってしまった様子。

震える右手で僕の裾を握るため、震えが体表面を撫で、少しむず痒い。

 

更に彼のコントロールを逸した冷気が周囲を覆い、熱された気温が急激に冷え込んできた。

 

寒さに負けず、震えを抑えながら轟くんの肩に手をやる。

 

「大丈夫、僕は負けないよ!お茶子さんと一緒に見てて」

 

ニッと歯を見せる笑い方を敢えてする。

そうすることによってか、彼の手からスルリと僕の服が抜ける。

 

「お茶子さん、彼のお母さんは後だ。まずはあの頑固頭を小突いてくるよ」

 

「ちょーっと、私もあの言い方には私もおこだから…私にもやらせて欲しいなー…なんて。ダメ?」

 

満面の笑みに青筋を浮かべる彼女の表情は、アンバランスながらその性根を正しく表す。

 

僕はその笑みに笑みで返し、平手一発なら、と応じた。

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