本日2本目なのでご注意を。
また、本作での轟家長男のオリジナル設定があります。
コミックス勢へのネタバレにはならないはずなので、ご安心を。
結果から言おう。
一合で決着が付いた。
訓練場に入った後、互いに構えてすぐにお茶子さんの開始の合図が入る。
数瞬の間、エンデヴァーの呼吸に合わせて、僕が大きく飛ぶと、視点が下がっていたためにその視界から逃れた。
視界のやや上方から回し蹴りをお見舞いすると、過たず彼の顎に掠めるように当たり、そのまま昏倒。
無抵抗に後ろに倒れるエンデヴァー。
その後頭部を掬い上げるように平手打ちをかましたお茶子さんのお陰で、地に沈まず今は空中に浮かんでいる。
「…!!」
先ほど以上に煌めく轟くんの瞳。
轟家の絶対者たる父親を伸したのが、同い年の男の子であるのが、相当以上の衝撃を与えたようだ。
「ふふん、心配いらんかったやろ?デクくんは強いんだよ!」
宙に浮くエンデヴァーの傍で腕を組み得意げに言うお茶子さん。
「デク…!強い…!それにお茶子も速かった!…すげー…!!」
目をキラキラさせて言う轟くん。
ああ…!なんで彼を見てそんなにだらしない顔してるの!!
浮気は許さないからね!
「はぁ…轟くんかわええなぁ…。なんで幼い男の子ってこんな可愛いんやろか…?」
持って帰って飾りたい…などと申しており…。
絶対に許しませんからね!!!
「な…なぁ、デク…。俺、父さんに勝ちたい…!どうやったら強くなれる…?」
「エンデヴァーが起きたら、色々お話しするよ、エンデヴァーと。そうしたら、きっとお父さんも優しくなるし、二人で一緒に強くなれるよ」
オールマイトの笑顔を元に僕の顔に再現させる。
安心させられる笑み、歯を見せて不敵に笑む。
返される笑みは今日一番の笑顔だった。
「個性無しでも、十分戦えるねー。」
「まぁ、侮られてたみたいだし一瞬だったから、何をされたのか分かってないんじゃないかな?」
鍛えた技で足刀一閃。
その技は当代最強に次ぐNo.2にも通じた。
やはり、鍛えて損はない。
僕は再度決心する。
このやり直しの世界でも刃を研ぐことを。
「ぐ…ぬ…?な、何だこれは!?」
昏倒から覚めたであろうエンデヴァーは宙に浮いて身動き出来ないことに驚いている。
「私の個性です。倒れてしまうと頭を打ち付けるところだったので」
本来叩く必要はないのに、後頭部を引っ叩いたのを言わず、助けた点のみを強調する。
全く…シレッとしてるなぁ…。
「僕の勝ちでよろしいですね?」
下から見上げながらエンデヴァーに問う。
真一文字に結んだ口からは何の音も出なかったが、その喉は唸り如実に心内を表していた。
「お話ししたいことがあるので、二人きりにさせていただけませんか?」
お茶子さんに能力を解除され、足から床に降りる彼にそう告げる。
「焦凍くん、お母さんに会わせてくれる?」
お茶子さんは彼の手を取り、部屋から出て行く。
当初の予定通り、お母さんのメンタルケアをしに行ってくれるようだ。
「二人きりになったが…話とはなんだ?」
「僕とお茶子さんについてとあなた方轟家の未来についてのお話です」
「占いなら結構。そう言ったものに用はない」
話を中断して、立ち上がり退出しようとする彼を次の一言で引き止める。
「轟燈矢さん。あなたの第一子ですね…このままでは確実にヴィランになりますよ」
僕の横を通り過ぎて、部屋を出ようとする彼の足音が止まった。
「どう言う意味かね?」
「あなたは『荼毘』と言う言葉をご存知ですか?」
「ダビ…?語感から仏教用語に聞こえるが…どう言う意味かね?」
「インドに於る四葬の一つ、水葬・火葬・土葬・風葬の四つの内の火葬に当たり、『苦菜』に毘沙門天の『毘』を当てて『荼毘』と読みます。」
「将来的に彼が名乗るヴィラン名です」
「…貴様、何を言っている…?」
「正しく、自己紹介させていただきます。緑谷出久、25歳。ヒーロー名デクと申します。未来より還って来ました」
伸ばしに伸ばした本題に足先を突っ込んだ。
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「つまりは、そのオールフォーワンとやらを倒す際にオールマイトがやられてしまうと…その手助けをしろと言うのか…」
一通り話した。
未来の話、オールマイトとの協力体制の件。
最初は半信半疑だったが、僕の電話からオールマイトにかけ、そこから一言二言エンデヴァーに対するフォローを入れてくれたので、信用していただけたようだ。
板張りの剣道場のような部屋の中央で楽に座りながら対面する僕ら。
エンデヴァーはやや濃いめの髭を撫でつけながら、考えをまとめているようだ。
「貴様の言うことを全て鵜呑みにするつもりはないが…燈矢のヤツがその荼毘と言うヴィランになって、将来焦凍の同級生を殺してしまうと言うのならば、その前にケアをする…と言うわけなのだな…今は反抗期で家にも中々帰ってこない馬鹿者だが…話の席を用意するべきか…」
「一度ヴィラン化してしまえば、まともに戻るのに時間がかかります。それは精神的にも社会的にも同様です。なる前であれば、まだどうにでも出来るはず…なので、エンデヴァー。あなたの職務としてでなく、親としての姿勢が大切です。あなたのエゴなく接すれば、いずれ必ず答えてくれるはずです。それで聞くことが無くとも、根気よく続けてください。『言われる相手が誰なのか、何をしてくれた人なのか』これは高校生の時、焦凍くんから聞いた言葉です。今まで何もしてくれなかった親の言葉を聞くはずもないことを心してくださいね…?」
分かっとるわ、と言いながら頬杖を突く。
絵面的には子供に諭される拗ねた大人の図だ。
随分と子供らしい拗ね方をするもんだな…。
轟くんは落ち着いた天然さんだったけど、その性格は母親似だったのかな…?
「奥さんのこと…どう思っているんですか?」
「そ、そりゃあ、結婚しとるんだから、大切だと思っているに決まっていよう…」
「個性目当ての個性婚ではない…そうですね?」
「当たり前だ、誰がそんなことを言った!」
未来の焦凍くんだよ、と言えれば…。
「…未来の焦凍くんですよ」
あ。
言うつもりなかったのに…口から出てしまった。
顔を顰めるエンデヴァー。
その怒りの矛先はどこに向けられようか…。
「今、奥さんは相当なストレスを溜めてるはずですよ。何せ、衝動とはいえ焦凍くんの左側憎しと煮え湯を浴びせるくらいですからね…。大事ならばもっと大切にしてください」
ぐうの音も出ないだろうと思ったが、辛うじて「ぐぬぅ…」と言う音は出たようだ。
「確かにここのところ、怒鳴り付けてばかりだ…。自重するよう省みよう…」
バツが悪く感じてか、幾分か小さくなったように感じる。
「デクよ。この話はオールマイトのほかに知るものは何人居る?」
「僕の母とお茶子さんの両親には過去に戻ってきたこと、未来への根回しをすることを伝えてあります。将来的に起こる事象についてはオールマイトとその師のグラントリノ、そしてあなたにだけお話ししています。また、荼毘やあなたの家庭内問題についてはあなたにしかお話ししていません」
「うむ、承知した。拡散する際は出来るだけ相談してもらいたい。こちらでも把握していなければ、もし漏洩した際は対処が遅れる」
「ええ、勿論です。そちらも同様にお願いします」
そう言って、差し出す右手。
今度は叩かれず、しっかりと掴まれた。
「未来で起こる問題の大元を叩くと。しかもそれがオールマイトに匹敵する大物だと…。腕がなるわ…!」
ガッシリと握られた右手に力を込めるエンデヴァー。
顔周りで火の粉がいくらか散る。
じわじわと力が強くなる。
「え、エンデヴァー…?どうしてそんなに強く…?」
「…先程は簡単に伸されてしまったからな…少し意趣返しだ。甘んじて受けろ」
ギリギリと握りが強くなる中、パリッと光が迸る。
「あっ!貴様!それがお前の個性か!!」
「ええ、先程お話ししたオールマイトから継承した個性ですよ!僕を超えれば、オールマイト超えですよ!」
「くくく、なるほど面白い!表に出ろ!」
VSエンデヴァー2回戦。
…それは部屋に飛び込んできた女性に止められた。
「他所の子に手を挙げるなんて、何をしてるんですか!?」
SLAAAAAAAP!!!
情け容赦ない強烈な平手打ちがエンデヴァーの左頬に打ち込まれる。
僕はといえば、握ったままだった右手の力が一瞬で抜けたので、おもむろに離す。
姿勢もそのままで、急にエンデヴァーが殴られた事態に心も追いつかない状態で呆然としていた。
…一体、この女性は誰なんだ…?(2度目)
下記修正しました。
×轟燈火
○轟燈矢