多分続いてもゆっくり更新です。
いつもと変わらぬ1日を終え、俺はこれまたいつもと変わらず普通に眠りについた。
そしていつもと同じように、明晰夢を見る。
とは言っても、夢の中で全てを自分のコントロール下に置こうとすると流石に脳が覚醒状態になって目が覚めるので、必要最低限にコントロールするだけで他には何もしない。
しかしながら、結構そこそこにコントロール出来るので、俺は夢を見るのが好きだったりする。
ともあれ、そうやって明晰夢を楽しもうと思っていた俺だったのだが、今日はいつもとは違う夢らしい事に気付き、呆然と白く広い空間にポツンと佇む石像を怪訝な表情で見つめる。
━━この夢は何なのだろうか?
初めて見る夢に俺は少々の戸惑いを抱きつつ、少しの躊躇いを胸に石像に恐る恐る触れる。
するとその途端、石像から淡い光が発生。
それに驚いて大きく跳び退くと、目の前の石像に注視した。
しかし石像は光っただけで、大してそこから変化する事はない。
━━変な夢だな。
初めて見る夢に少しのワクワク感があったのは石像に触れるまで………いや、石像に触れてから光始めたところまでだった。
今はただ光る石像を眺めているだけで、とてもつまらない。拍子抜けである。
しかしそう思ったのも束の間で、上半身が裸の男性を模した石像が震え始め、震える度に言葉を喋り始めた。
「お前の望みを言え。……どんな望みも叶えてやろう」
光る石像が震えながら言う言葉に、俺は咄嗟に身構えていたがニヤリと微笑み構えを解く。
変な夢だが、これはこれでまた面白い趣向だと思えたからの笑みである。
初めて見る夢であるが、もう既にパターンは想像出来た。
要は望みを言ってしまえば、その望みに関係する夢が見れるのだろうと判断出来る。
恐らく、深層心理の俺が俺自身へと望む夢を見せてくれるという事なのだろう。
━━ならば何が良いだろうか? どんな望みを言えば、自分の見たい夢を見せてくれるのだろうか?
顎に手を当てて少し思考の海に沈み、最適解を出そうと考える。
そして思い付いたのは、遊☆戯☆王の夢を見たいという答えだった。
子供の頃にデュエルモンスターズが流行って、それに漏れる事も無く俺もやっていたカードゲーム。
モンスターカードを出せば、機械がカードを読み取って3D映像でモンスターを再現し、トラップカードや魔法カードを駆使して対戦相手とあの手この手の戦術を楽しむ。
そんなデュエルモンスターズの夢を見れたならば、きっと楽しい夢のひとときとなるのは間違いないだろう。
そして何より、「トラップカード発動!」とか「魔法カード発動!」とか言いたいし、3D映像のモンスターを見たい。
そう一度でも思ったなら他には何も思い浮かばず、俺は石像に向かって満面の笑みで叫んでいた。
「デュエルモンスターズのカードを自由自在に駆使して闘いたい!」
俺が叫んで数秒後、光る石像はまるで俺の意図を反芻するかのように震えながら二度、三度と俺の望みを繰り返し、最後に「良かろう。お前の望みを叶えてしんぜよう」と呟く。
そして再び石像が震えながら、尚も言葉を紡ぐ。
「しかし、デュエルモンスターズのカードは新旧数多く存在し、全てのカードは余りに多過ぎる。そして、同一のカードでも内容が大きく変じている物が存在する事を認識した。
それ故、お前の望みを叶える為に規模を限定させて貰おう」
何やら含みのある言だが、言っている事は確かにその通りだ。
俺だってデュエルモンスターズのカードがどれだけの種類が存在するのか知らない程だし、効果も同一のカードであっても新旧で大きく異なる物も存在しているのを認知している。
そして、俺が知っているのは融合が活躍する学園編くらいまでなので、どのみち使えるカードの規模を限定されたとしても困りはしない。
と言うか、深層心理の俺が俺の知らない情報を知っている訳が無いので、その辻褄合わせに石像が話を合わせているのだろう。
そう判断した俺は、光る石像に頷く事で了承した旨を伝える。
すると石像は、「お前の望みを魂へと刻む。激痛を伴うが我慢せよ」と何やら聞き逃せない言葉を投げ掛けた。
しかしこれはあくまでも夢であり、現実のように恐怖する事はあっても痛みなどは感じる筈も無い。
故に俺は、余裕の笑みでもって再び頷く事で了承した旨を示した。
その直後、俺は動転直下の混乱へと陥る。
何故なら、夢なのに強烈な激痛が体を支配したからだ。
しかもその激痛は、少しずつ心臓へと集中し始め、そればかりか集中する事で痛みの度合いが増しているのか、気が狂いそうな痛烈な痛みへと変化。
呼吸する事すら忘れてしまう程の激痛に、俺は思わず痛みが何故夢の中で発生するのかという疑問すら考えられず、ただただ蹲り、ただただ必死に身を縮め、ただただ痛みが過ぎ去るのを歯を食いしばって耐えるだけだった。
そうして、頭の先から足の先までを冷や汗と脂汗でグッショリと濡らした俺は、漸く過ぎ去った激痛に安堵しつつ激しく酸素を求めて荒い呼吸を繰り返す。
━━痛い! 夢なのに痛い!
明晰夢を見る俺でも初めての現象に、これは本当に夢なのかと疑問を抱かずにはいられなかった。
今まで一万回を越える夢を見てきたが、一度足りとて夢で痛みを感じた事は無い。
故に俺が断言出来るのは、決して夢では痛みを感じないという事。
なのに、それなのに今俺は痛みを感じていた。
それもこれまでの人生で感じた事の無い激痛であり、気が狂うと思わせられた程の痛み。
━━これは夢じゃない! 現実だ!
この夢が現実であると認識した瞬間、俺は未だに目前に佇んでいるであろう石像を思い出し、ブルリと体を震わせる。
勿論その震えの原因は、恐怖故の震えだ。
俺は真っ白い床へと向けていた顔を恐る恐る上げ、変わらず光っている石像へと視線を向ける。
すると石像が再び震えながら、俺へと言葉を投げ掛け始めた。
「我はお前の望みを叶え、お前は望む力を得た。これからお前が歩む人生では、その力がお前の進む道の補助をしてくれるだろう。
道は険しくお前の望む結果となるかはお前しだい。しかしながら、これから行く世界固有の力を得つつお前の魂へと刻んだ力を合わせれば、きっとお前の望む結果へと繋がる筈。
努々忘れるな。お前の力は絶対では無く、しかし望む結果へと繋がるかはお前しだいの努力だという事を」
俺へと壮絶な痛みを与えた石像を恐る恐る見つめていると、石像はそう告げてどんどん激しく輝き始める。
そして混乱する俺を置き去りに、光によって既に目を開けていられなくなった俺へと更なる言葉を投げ掛けてきた。
「世界を真に楽しめるかは、ただの人間であるお前では甚だ疑問だが………それもお前の努力しだいでは、きっと腹の底から笑える結果へと繋がるだろうと信じておる。
力の限り努力し、望む結果を手にして精一杯世界を楽しめ。そして再びこの場所へと辿り着いたならば、更なる世界へとお前を導こう。
暫しの別れだ。………行くが良い」
網膜を焼くような白い光によって瞼を閉じた俺に、謎の石像がそう呟くと俺の意識が暗転。
そして数瞬の後に意識が回復した俺が目にしたのは、まるで幼児のものへと変化した小さな手の平と、畳を踏み締めるこれまた小さな足へと変化した自分の体だった。
2話までは思い付いて書いてるので、次話までは更新します。
その後は分かりません笑