両親に自分の力を告白してから二年が経過した現在、俺は一日も休まず特訓の日々を過ごしている。
忍びが使う忍術は一つも覚えていないが、それでも精神と身体のエネルギーは大幅に増えており、今では召喚出来るモンスターや使用出来る魔法・トラップカードの類いが多くなっていた。
しかしながら、下忍に何とか対抗出来る程度のものでしかないと思うと、正直言って不安しかない。
だが、両親が口寄せの印を教えてくれたのもあり、俺が人前でクリボー達を召喚しても変じゃないようにはなったので、その辺は慎重になる必要が無くなった事は確かだ。
もっとも、だからと言って人前で召喚した事は一度として無いが。
ともあれ、そんな事情はさておき、一ヶ月前から忍者アカデミーに通う事になったのでその話をしておこう。
忍者アカデミーとは、その名前の通りに忍者になる為の基礎体力や基礎忍術を学ぶ場所で、中忍という役職の先生から沢山の技術を学ぶ学校である。
流石は中忍というだけあり、やはり全ての先生が高い身体能力や高度な忍術を身に付けていて、そのせいか教えるのが非常に上手かった。
原作を知っていてもチャクラとかチンプンカンプンな俺にも、すぐ理解出来るように噛み砕いて説明してくれる先生には頭が上がらない。
まだ忍術とかは教えて貰ってないものの、チャクラの練り方は分かった。
で、その事が嬉しかった俺は、意味も無く四六時中チャクラを練ったりしている。
そんな嬉々として学校に通う俺が新たに知り合った者達の中に、主人公であるナルトと同じく非常に大きな役割を持つ人物にも出会った。
名をうちはサスケ。写輪眼という稀有な血継限界を有するうちは一族の、悲しき復讐者となる人物だ。
まだうちは一族は滅びていないので、現在のサスケ自体は素直になれない少年と言った感じで可愛らしいが、兄のイタチによってうちは一族は滅びてしまうので、そうなった時には唯一の生き残りであるサスケは今のサスケとは大きく異なる人間へと変化するのだろう。
こんな小さな子供が経験して良いような事柄ではないし、そう考えればこそ放っておけない。
肉体は子供だが精神は大人である俺からすると、何とかして助けてあげなければならないだろうと思っている。
一族全員というのは無理だが、せめてご両親は助けてやりたい。
否、ご両親だけは絶対に助けなければならないのだ。
俺はサスケをアカデミーで見た時、そう決意した。
それは兎も角、俺は他にも様々な人物に出会っている。
奈良一族のシカマルを始めとした原作に登場する面々で、元気一杯な者達だ。
ぶっちゃけると元気一杯過ぎてしんどい事も多々あるものの、見ていて微笑ましいとは思う。
だが、そんな微笑ましい事は脇に置いておいて、驚愕したのは全員が何かしらの忍術を既に習得している事だ。
俺のようにチャクラすら練れなかったのは一握りであり、原作に登場する者達は全て何かしらの基礎忍術を一つは習得しているのには驚くどころかドン引きである。
流石はエリート一族達と言ったところなのだろうが、まだ幼い彼らが基礎忍術とは言え、確かに忍術を使える事に俺としては呆然とさせられた。
だが俺は決して焦ったりはせず、相も変わらず精神と身体エネルギーの上昇に研鑽を積んでいる。
やはり焦ってもどうしようもないし、何より自分の強みはデュエルモンスターズの力であると理解しているのだし、そして忍術の力の源であるチャクラですら、デュエルモンスターズと同じく精神と身体エネルギーの二つが大きく作用するのだから、ここは焦らず基礎を鍛えるのが近道だと判断した故である。
そんな俺が今何をしているのかと言えば、自宅で母親が作った食事を、家族とナルトやサスケを含めた面々で食べている真っ最中だ。
今日はアカデミーが休みで、だからこそサスケとナルトを自分の修行に誘った………いや、道連れにした後の昼食中という訳である。
二人共に肉体トレーニングは余裕で熟していたので、この後の座禅も楽しみだ。
朝のトレーニングは余裕で熟す姿を見て嫉妬させられたが、午後のトレーニングはどうなるかと考えると笑みが零れる。
━━精々苦しむと良い………!
まるで悪役のボスになったような心境の俺が、ニヤリとそれらしい笑みを浮かべると、両親が「ブフッ!」と吹き出した。
うちの子は変わってるなぁと思っているのがありありと察せられるが、これはもう日常のヒトコマとなっているので俺は気にしない。
因みに、現在の両親は昔とは違って普通の家族らしく仲良く出来ている。
「あのさ、あのさ! 午後はどうすんの?!」
「手裏剣術の修行しようぜ!」
最初にナルト、次いでサスケが満面の笑みで言い募ってくるが、お前達の期待には答えられないと言っておこう。
何故なら、俺はデュエルモンスターズの力があるから近接戦闘はモンスターに任せ、俺は弓を使用して遠距離からの戦闘を心掛けるつもりなので、中距離で使用するクナイや手裏剣は使うつもりが無いのである。
まぁ、嫌でも中距離戦になる時もあるだろうから、クナイや手裏剣術も覚えて損は無いとも思うけど。
「午後は座禅だよ」
「「なっ……!?」」
二人の反応を見て、再び俺はニヤリとそれらしい笑みを浮かべる。
すると再度、両親が俺の浮かべた表情を見て「ブフッ!」と吹き出すが、俺はあえてそれを無視して言葉を続ける。
「集中力が増すし、精神エネルギーが増えるからね。座禅は良い事づくめだよ」
「い、嫌だ!」
「そ、そうだ! それに、手裏剣術だって集中力が増す筈だ!」
「甘いね、砂糖に蜂蜜を混ぜたくらいに甘いよ。確かに手裏剣術でも集中力は増すだろうけど、座禅程には効果が高くない。
故に、午後は座禅に決定だよ」
「「い、嫌だ!」」
全力で拒否する二人だが、俺が優越感に浸る為の犠牲になって貰わねばならん。
だからこそ、俺はここぞという場面で、両親は別として他の人には誰にも見せていなかったデュエルモンスターズの力の一端を見せるべく、残り少なくなっていたご飯を掻き込むと立ち上がる。
そして、内心で力を込めて叫ぶ。
━━魔法カード、サラマンドラ発動!
内心で魔法カードの名を叫んだ直後、俺は口寄せの印を結んで然も口寄せしたかのように偽って巨大な剣を呼び出す。
その剣は少々の炎を纏わせながら出現し、俺の手へと姿を現した。
このサラマンドラという魔法カードは、攻撃力を700上昇させてくれる魔法カードになるのだが、この世界ではただ攻撃力を増すだけではなく、炎を操れる剣として扱える歴とした武器である。
しかも、俺だけが使用出来る特殊な剣であり、俺以外が持とうとしても決して掴む事が出来ない不思議な武器。
そんな武器が現れて、ナルトとサスケの二人は目を見開いて呆然としていた。
「座禅を何時間でも余裕を持って出来るようになれば、こんな強力な武器も使えるようになるよ」
「「スゲェ!!」」
「この剣の凄さを少し見せてあげるから、庭に行こう」
俺の提案に否はなく、二人は目をキラキラと輝かせながら素直に従い庭に出る。
そして俺はそんな二人を背にして、サラマンドラを上段に構えて一気に振り下ろす。
すると、サラマンドラが纏う炎が勢い良く一体の蛇のように素早くうねりながら前方にあった岩へと直撃し、ゴウッと盛大な音と共に火柱を上げた。
恐らく、火遁業火球の術くらいの威力はあると思うのだけど、初めてやった己の所業にちょっとビビってしまったのは秘密である。
自分が予想していたのより遥かに威力が高かったのが原因なのだが、迫力が凄まじくて少し腰が引けてしまった。
それを出来る限り押し隠し、俺は余裕そうな笑みを意識して浮かべ二人に視線を向ける。
「スゲェ……!」
「兄さんみたいだ……!」
ナルトの反応は別として、サスケの言葉には否であると言いたいが今は良しとしておこう。
さぁ、座禅を始めようではないか。
そうして始めた座禅では、二人とも十分も集中力を保てず、俺の優越感を満たしたのは満足だった。
ただ、もう一度サラマンドラを見せろと言い募る二人のせいで、俺の午後のトレーニングが出来なかったのは予想外であった。
━━午前のトレーニングは別としても、午後のトレーニングにはもう絶対呼ばねェ!
そう内心で誓う俺を、誰が責められようものか。