今日も今日とて己に課した修行を行った俺は、布団にくるまって横になっている。
平日は学校があるので、起きてすぐに肉体トレーニングを一通り行えば学校へと通い、学校が終われば家で弓やクナイ・手裏剣の投擲術を修練し座禅をするという毎日。
休日の午前はナルトとサスケを含めて肉体トレーニングを行い、午後は一人孤独に座禅と弓やクナイ・手裏剣の投擲術を訓練。
そんな毎日を過ごす俺の日常は、驚く程に充実した気分をもたらしてくれている。
だが、勿論、それだけをしながら毎日を過ごしている訳ではない。
デュエルモンスターズの力を十全に使う為のトレーニングも当然行っているのだ。
夜、俺は布団の中へと潜り込むと、クリボーを召喚して里内を散策させている。
これは召喚したモンスターの目や耳を通して、自分の目で耳で見聞きするのと同じ効果も持つので、モンスターを意図的に操作してまるでゲームでもするかのような要領で訓練しているのだ。
里の地理を把握するのにも良いし、勿論モンスターを操作する訓練にもなるし、何よりもうちは一族の動向をチェックするのに非常に役立つのである。
そうした毎日を送っていると、必然的に色々な事を見聞きするに至り、後数ヶ月………いや、後数週間の内にイタチによる凶行が行われるだろうと悟った。
何故なら、うちはシスイが殺されたのだ。
この出来事がイタチの凶行を決定付けた事であり、最早イタチとしては動かざるを得なかった事を明確にした事柄であるのは誰もが知るところ。
それ故に俺は、ここ数日はクリボーを二体召喚し、他にはクリボーと同じく効果を持つモンスターである人食い虫を二体とハネクリボーを一体召喚してうちは一族のテリトリーをパトロールさせている。
俺が意図的に操れるのは聖徳太子でもないので一体のみなのだが、モンスターにはモンスターの自我が存在するので、別に俺が召喚してる間は四六時中コントロールしていなければならない訳でもないので、最初に簡単な命令を出しておけば問題にはならない。
故に、最初にモンスターを召喚した時点で、俺はモンスター達に適切な命令を出してパトロールさせているので、もしも今イタチが凶行に走ったとしても適切な行動をモンスターは選択してくれる。
そんなこんなで、俺は召喚していた内の一体であるクリボーを操りながら、トコトコと人目に付かないように注意しつつ夜闇の中を移動していた。
今日は何も起きないのかもしれない、とそう思う程には静かな夜。
しかし、何気無く夜空を眺めた俺の目に映った物を見て、その瞬間身を強張らせた。
何故なら、夜空にデカデカと満月が浮かんでいたからだ。
それを見て、俺は原作をはっきりと思い出したのである。
イタチが凶行に走った夜、その夜には満月が浮かんでいたのが描写されていた筈。
それを思い出したからこそ、俺は思わず身を強張らせたのだ。
━━今日があのイタチによる殺戮の日かもしれない!
一度そう思ってしまえばそれ以外には考えられず、俺はクリボーを操って早足でサスケの家へと向かう。
イタチが今まさに暴れているのかもしれないと考えつつも、まるでどこか現実感が無く、しかし不自然な程に俺の心臓は早く脈打つ。
そうやって数分が経ってうちは一族のテリトリーへと辿り着いた瞬間、何処からか金属同士のぶつかる甲高い音が響いているのに気付き、そして辺り一帯に漂う鉄錆びの匂いを感じ、俺は確信した。
やはり今日なのだ。今日という満月が浮かぶ夜闇の中、うちは一族はサスケを残して全滅するのだ。
━━クソッ、他のモンスター達はもう適切な行動へと移しているのか?!
自分が操るクリボー以外の他のモンスターを思いつつ、俺は俺で急いでクリボーを操作しながらサスケの家へと精一杯の速度で向かう。
最弱モンスターとして有名なクリボーであるが、一般人のステータスより三倍程はステータスが高いので、そこそこの速度で地面を駆けつつひた走る。
その途中で幾人かの忍び装束を着た者達が死んでいるのを横目にし、やはり既にイタチは動いているのだと確信した。
━━オビトも居るのか? 特殊効果でやり過ごそうと考えているが、オビトとイタチという二人の化け物を一度に相手にしたとしたら、流石に特殊効果があっても通用するとは思えない……!
クリボーやハネクリボー、そして人食い虫の特殊効果は、優秀ではあっても初見の者ぐらいにしか通用しないだろう。
それに相手は化け物もかくやと連想させる者達となるのだから、そう思うと余計不安が募る。
しかし、俺が召喚出来るモンスターの中で唯一今回のシチュエーションで生存率が高いと考えたモンスターなので、俺には他にどうしようもないのも事実。
かなりの不安に苛まれつつも精一杯の速度で走る
この声は一度聞いている。間違いなくサスケの母親。
その事に気付き、意を決して中へと入ろうとした瞬間、召喚して独自に動くよう指示していたモンスター達が近くまで来ているのを
心強いと、心底そう思える俺は再度意を決してサスケの家へと侵入。
足音などこの際無視して、ドタドタと盛大に響かせながら廊下を進み、道場のようになっている一室へと入った。
すると片腕を失ったサスケの父親が、自身の妻を守るかのように大きな背に隠し、残った手にクナイを握り締めている姿が俺の目に映った。
「………口寄せの獣か? 誰の差し金だ?」
クリボーという見た事も無いだろう不思議な生物を目にした者達は、呆然としている。
しかしイタチだけは冷静で、思案するかのような表情で独り言た。
「クリクリ〜」
これは別に俺が喋った訳ではなく、クリボーが自主的に喋ったのだが、恐らくその意味は自己紹介でもしているのだろうと察せられる。
クリボーって召喚していて気付いたけど、シチュエーションとか考えないような感じでちょっと天然っぽいんだよ。
まぁ、それは兎も角として、俺に出来る事はやらせて貰う。
大人の男として、子供が悲しみに暮れる姿を見たくはないのでね。
「クリクリ〜!」
またこの場のシチュエーションには不釣り合いな愛らしい声が響くが、クリボーの声や容姿とは異なってクリボーを操る俺が取った行動は凶悪そのもの。
イタチ目掛けて、床を蹴り跳び上がったクリボーが容赦無く鋭い爪を使用して回転切りを放った。
しかし勿論、上忍の中でも暗部に入る程の実力者であり、その暗部の中でも飛び抜けて強者であるイタチには通用する筈も無い。
簡単に横へとステップする事で避けられ、
これはクナイを投擲してきた者の力量によるが、時速200キロを越えるスピードで投擲されれば攻撃力300守備力200のクリボーでは避ける間も存在しない。
故に殺られた、とそう思った俺だったのだが、サスケの父親であるフガクによって、イタチが投擲したクナイが同じくフガクの手に持つクナイによって打ち落とされた。
それを認識してホッと胸を撫で下ろす俺だったが、その瞬間もイタチは行動していたらしく、いつの間にかフガクの妻であるミコトの傍に立って新たなクナイを振り下ろそうとしているのが俺の目に映った。
━━ヤバい!?
あまりの動きの速さにとても此方は対抗出来るものではなく、俺は呆然とスローになった光景を眺めるしかなかった。
しかしそれは俺だけであり、フガクはイタチ並みに動けるようで素早い動きでもってイタチに蹴りを放ちミコトを救出。
次いで何やらフガクが呟いた瞬間、フガクとフガクに蹴られて吹き飛んでいたイタチの両者が、先程までの動きが嘘のようにピタリと動きを止める。
俺はそれを不思議に思い、何気無くフガクへと視線を向けてその不可思議な現状の理由を察した。
何故なら、フガクの目が………写輪眼が通常の形状とは違うものへと変化していたからだ。
━━あれは、万華鏡写輪眼?!