Armee du paradis ー軍人と戦術人形、地の果てにてー   作:ヘタレGalm

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E1-8がクリアできませぬ……とりあえずE1-3でFive-seveNちゃん掘り周回してます。


脱出

 スコーピオン視点

 

 殺到してくる銃弾を跳んで避ける。

 単身突撃は対多数戦闘において最後の手段とされているけど、あたしにとっては最良の手段だ。敵はフレンドリファイアを恐れて撃ってこないし、撃たれたとしてもあたしなら回避できる。なにより、ボルテージが上がったあたしにとって降りかかる血は最高の麻薬だ。

 密林の中のサソリほど怖いものはないって言うしね。

 

「無駄無駄ァ!」

 

 がむしゃらな機銃掃射を掻い潜り、コンバットナイフでドラグーンを斬り殺した。二体目にアンタレス(スコーピオン)を撃ち込み、こちらに旋回しようとした三体目を蹴り落とす。すかさず左手に握った血塗れのナイフで、首を切り落とした。

 

 密林という環境に動きが鈍ったドラグーンの分隊を始末した後、分屯地に向かいつつあるヴェスピド分隊の背後につく。

 

 密林というのは、数のアドバンテージをたやすく打ち破れるのだ。だから可能な限りこの中で足止めしたい。まあ密林を見事突破した敵に対してはロニーを加えた狙撃班の制圧射撃が待っているけどね。

 

「あはっ! あそぉびにきぃたぁよぉ?」

 

 ジョナスに言ったら「帰れっ」と叫ばれそうな台詞とともに、藪を飛び越える。すでに距離は20メートルを切った。こんな短距離まで近寄れるのも密林におけるゲリラ戦の利点だ。

 

 FCSオートロック、2照準射撃。よほどハイレベルのASSTか天性のセンスが無いと使えない技だけど、ずっとダブルトリガーを使いこなしてきた私にはお茶の子さいさいだね。

 トカレフ弾を電脳に撃ち込まれた敵は糸が切れたように頽れる。うーん、普段はそれでもいいんだけどもハイになっている今はかなり物足りない。

 

 あははは、こんな時はナイフに限るね。FALのククリナイフが欲しくなるよ。

 

 ダーリン、死んじゃやだよ? 

 全て終わってもまだ熱いままのあたしを慰めてくれるのはあなただけなんだから。

 

 別の場所で一個中隊相手に孤独なゲリラ戦を繰り広げているはずのジョナスに心中で呟いたあたしは、密林へと潜っていく。

 

 目を爛々とかがやかせ、新たな血を求めて。

 

 

 

 

 不意に、首筋にチリチリしたものを感じた。

 

 ────殺気! 

 

 ばっと振り向き、左手のアンタレスを向けた。視線の先の相手もこちらに銃口を向けている。

 

 その先にあったのは、知っている顔だった。

 

「あはは、冗談もほどほどにしてよSAA。気をつけないと今の私は味方ごと撃っちゃうよ?」

 

「なにいってるのさスコーピオン、それこそ冗談でしょ。ま、識別装置切ってた私も悪いけどね」

 

 突き付けていたシングルアクションアーミーを下ろし、SAAはあきれたようにつぶやいた。

 

「識別装置? はなっからオフにしてるけど」

 

「うわぁ……ところでスコーピオン、いっちょ共同戦線張らない?」

 

「まあいいけど、あたしの足は引っ張らないでよ?」

 

「そりゃもちろん」

 

 二丁持ちしたリボルバーを見せて彼女はからからと笑う。油断はできない、彼女もUMP45並には腹黒い。我らが隊長サマに絆されちゃってる45はともかくとしてコイツは完全な警戒対象だ。

 

 ま、とりあえずは目の前の屑鉄を血祭りにあげるとしましょうか! 

 

「スコーピオン、ジルバだ。踊るよー!」

 

「そーだね、とりあえず血祭りだぁ!」

 

 わらわらと湧いて出たのはリッパーとスカウトの小隊。

 要するに少しは動けるマトだね。

 

 互いに頷き、火ぶたを落とした。

 

 SAAの持つ2丁拳銃が咆哮を上げてスカウトを叩き落し、あたしのアンタレス(スコーピオン)がトカレフ弾でリッパーをハチの巣にする。

 半包囲された状況ながら、互いに射角をカバーしあうことですべての敵に対応する。

 

 言葉は、いらない。

 

 猛然と吐き出された10㎜パルスマシンガンの弾幕をあたしは上に跳び、SAAは下に滑ることで回避、2照準射撃で制圧。SAAも両手を広げて撃っていたから2照準射撃だね。やるじゃん。

 

「……っち!」

 

 空になった弾倉を取り換えようとして、あたしは舌打ちした。12個も持ち込んだ20連弾倉があと1つしか残っていない。

 

 オーケー、やってやろうじゃないか。

 

 右手で大型ナイフを引き抜いて躍り掛かる。

 リッパーの首を引き裂き、スカウトを蹴り壊して踊る。

「人とは死に関わる存在」とはよく言ったものだね、こんな死線に自ら飛び込もうっていうんだから。まあ、私は人間じゃなくて人形だけど。

 

 SAAが両手のリボルバーを撃ち尽くし、ローディングゲートを開いてリロードに入る。

 

「あたしのリロードはレボリューションだ!」

 

 おう。さいですか。

 

 一瞬判断の止まったリッパー達に、容赦なく左手のアンタレスでトカレフ弾を撃ち込んだ。

 

 

 

 

 

 むわりと血の匂いが沸き立つ血溜まりの中、あたしとSAAは対峙する。

 この辺りの敵は殺し尽くした。あたし達もそれなりに被弾したけれども、微々たるものだ。

 

「で、SAA。あなたの目論見を教えてもらえる?」

 

「やだなぁスコーピオン、あたしが鉄血を引き寄せたように聞こえるじゃん。あたしは何もしてないよ? ただ、何も伝えなかっただけで」

 

「やっぱりか」

 

 あたしは鉄血の動きに不審感を抱いていた。

 そりゃそうだ、いきなり4個連隊が動くのはいくらなんでもおかしい。

 

「ま、ここにはあたしとあなたしかいないから種明かしと行こうか。まあ、事故みたいなものなんだけどね」

 

「へぇ、つまり?」

 

「アルケミストが出てきている」

 

 その一言で、私は全てを察した。そういえば、ちょっと前に全力でボコった気がする。ついでにSAAは鉄血に追われていた。

 

「はぁ……なるほどなるほど。ブチ切れたアルケミストがこちらが逃げられないように囲んだと。そういうこと?」

 

「ついでに言うと、奴は性格から考えて自分でカタをつけたがってるね……今頃分屯基地に単身突撃してるんじゃない?」

 

「うっへぇ、殺し損ねたこと確定じゃん……仕方がない、雑魚の血であたしは我慢するか……」

 

 基地にはあたし達以外が丸々のこっている。

 ロニーとUMP45、416、M4あたりがあることを考えればアルケミストは封殺できるだろう。そして、ここから分屯基地までは8km近くもある。戻るのは少しばかり酷だね。

 

 そういえば、ディビッド達は無事なのかな? さっきから榴弾砲の支援がなくなっているけど……。

 

「ディビッド。榴弾砲はー?」

 

 あたしは歩きながら無線に吹き込んだ。

 答えが返ってくるまでには少しの時間を要した。嫌な予感が電脳をよぎる。

 

『スコーピオンか……ゲホッ……ちょうどいい、オープン無線に切り替えてくれ』

 

「はいはい?」

 

『オーケイだ。これより最後の命令を伝える』

 

 な!? 

 

 あたしの驚愕をよそに、ディビッドは話し続ける。

 

『総員、分屯基地の脱出路からグリフィンR07地区へ脱出せよ。俺とFALのことはいい、お前たちだけでも生きるんだ……』

 

 その言葉を聞いた瞬間、直感で来た道を引き返していた。

 

『どう言うことだディビッド!』

 

『────()()()()()()。今は地下の第2指揮所の前で防衛戦の真っ最中だ』

 

 無線機越しにけたたましい銃声が聞こえる。7.62mmクラスのものと、5.56mmクラスのもの、そして重なって聞こえるレーザーライフルの音。

 FALとディビッドが応戦しているんだ。

 

 

 

 

Holy shit(クソッタレ)!」

 

 

 

 

 

 15分ほどダッシュして、分屯基地まで引き返してきた。

 義体性能をフルに発揮して建物の屋根に飛び乗り、屋根伝いに脱出路を発見した建物へと向かう。

 

 SAAの予言通りアルケミストはすでに到着していた。しかも、目の前にはなぜかUMP45とUMP9がいる。どうもご高説を垂れているみたいで、しかもあのUMP45が引き金を引けないでいる。

 

 これは、()()()()()()()()()()

 

「パーティーかな? あははは、あたしも混ぜてよ!」

 

 縁を蹴って中空へ飛び出した。

 

 ハイになっているにしてはやけに冷静な頭をフル回転させて、最も効率的な強襲コースを維持。

 振り向いたアルケミストの阿呆面に、容赦なく大型ナイフを突き立てた。

 

 

 

 

 

 UMP45視点

 

 目の前でアルケミスト……の義体を屠ってのけたスコーピオンはどこか危うさを孕んだ目で「ギリギリ間に合ったね」って言っていたけれども、私にとっては手遅れだった。

 

 多分、奴の目的は時間稼ぎと私と会話すること。

 

 私はアルケミストが話している最中ずっと奴に狙いをつけていた。それなのに、引き金を引けなかったのだ。グリフィン暗部部隊の隊長だった、そして今は第2戦闘班の隊長でもあるこの私が! 

 

 貼り付けたポーカーフェイスが崩れていることを感じる。

 それほどに、奴の話がもたらした衝撃は大きかった。

 

 奴の話がリフレインする。

 

『なあ、UMP45。思い出さないか? 『ジャッジメント作戦』を。第3次大戦最後の大規模戦闘だ。その時、お前はこんな心境じゃなかったか? 自分1人だけで、敵の渦中に飛び込んで」

 

『45姉、聞いちゃダメ!』

 

『思い出せ、UMP45……否、アリシア・N・ノースバンクス二等兵!』

 

 その直後に、スコーピオンがアルケミストを強襲、ナイフで電脳を刺し貫かれたアルケミストの義体はくずおれた。おそらくメンタルはバックアップに逃げたのだろうが、ひとまずの脅威を排除できたことは確かだ。

 

 しかし、私はなぜかそれを残念だと思ってしまった。

 誰か他の人に自分のことを言われているようでむず痒かったが、その先を知りたいとも思ってしまった。

 私は、アリシア・N・ノースバンクスなんて少女は知らないのに。

 

 そう、知らないのだ。

 

 それなのに────どうしてこんなに胸が痛むんだろう。

 

 

 

 

 

 

 ため息をついて、立ち上がった。

 分屯基地で繰り広げられた防衛戦の顛末を説明しなくちゃいけないし、今にも楽園に戻ろうとしているジョナスさんとスコーピオンを説得しなくちゃいけない。

 

「……え! ……ごーねえ!」

 

 ディビッドは多分助けられない。彼も、それをわかっていたから私たちに逃げろって言ったんだろう。

 戦術的には非常に正しい判断だ。

 

「……よんごー姉! ……45姉!」

 

 それに、彼の声には死ぬつもりは一切ないようにも聞こえた。

 

「ねえってば! 45姉!」

 

「あ、ごめんナイン。どうかした?」

 

 ナインの声で正気に戻った。

 どうやら思考に没入しすぎていて感覚がシャットアウトされてしまってたらしい。私らしからぬ事態だ。

 どうして、それほど動揺していたの? 

 

「指揮官がジョナスさんとスコーピオンを説得してくれた! 鉄血が混乱しているうちに私達も逃げるよ! 早く!」

 

「う、うん……」

 




次回はディビッドサイドに戻ります。あと数話したらまた(殺伐とした)日常編に戻れると思いますので。

ちなみにR07地区とは、マフィアが支配者、軽度放射能汚染地区、ガッツリ香る末期感というロアナプラやらAC世界みたいな場所です。

ドルフロ世界とAC世界は相当似ている気がしますけど……。

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