笑顔が似合う君に。After Story 1   作:颯月 凛珠。

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皆さんこんにちは。最近小説家になろう様や、アルファポリス様で活動している颯月 凛珠。と申します。
過去、ハーメルン様で『笑顔が似合う君に。』というBanG Dream!原作の二次創作を書かせていただいておりました。
そのヒロインである『今井リサ』が本日誕生日だったということで、この作品のAfter Storyを書いてしまった所存です。

どうぞ、お楽しみください。

あっ。小説家になろう様で連載中の『ネト充トッププレイヤーは、異世界でLv1から色々育むそうです。』もどうぞよろしくお願いします。(宣伝)


合格発表

 俺こと三神拓海は今、生きてきた十八年という月日の中でTOP3に入るくらい緊張していた。

 

「ねぇ拓海。いつまでもそんなダラダラとカフェオレ飲んでないで早く支度して欲しいんだけど」

「も、もうちょっと……」

 

 そう言いながら、まだ湯気の立つマグカップにフーっと息を吹きかける。そんな俺の弱々しい返事に、向かいに座る夏美が呆れたようにため息をついた。彼女の隣の席には使い古された高校の鞄と、それに立て掛けるようにリボンで装飾された円柱状の黒筒が置かれている。

 

「もうさ、合否なんか決まっちゃってるんだから、そんな悶々と時間を過ごすより、早く行って結果を知った方が楽になると思うよ?」

「そうは言ってもな。……っていうかなんで夏美はそんなに楽観的なんだよ」

 

 まだホットを飲むくらいには肌寒さを感じる日々は続いているが、季節的にはもうすぐ春に差しかかろうとしていた。短かった高校生活の最後の式典も先程無事に終わり、俺と夏美は感慨に耽けるのももどかしく、その足で今後の命運を分ける、国立大学の合格発表へと向かおうとしていた。

 ちなみにこの場にいない山本洸に関しては、既に有名私大への進学が決まっているため、共に過した友人達との別れを惜しむべく母校に残っている。

 

「だって、私が落ちるわけないもん」

「本当、お前のその自信を分けて欲しい」

 

 彼女は机に頬杖を突いて、「早く高校に報告して家帰ってゲームしたい」と早口に独り言を宣っていた。……だったら一人で行けば良いじゃないかという言葉が、喉元まで出かかったのだが、なんだかんだ彼女も一人で行くのは怖いんじゃないかという結論に至って、その言葉をカフェオレと共に飲み込んだ。こんなことを言って不機嫌にでもなられたら、もし受かっていても喜びを分かち合えないからな。

 マグカップを置いて一言。

 

「でも確かに、お前を見てたら気持ち楽になったかも」

「私の存在で落ち着かないでくれません?」

「さて、行くか」

「無視するな! さっきまで駄々こねてたやつはどこのどいつだ!」

 

 店員さんに「ご馳走様でした」と声をかけ、心地の良いベルの音と共に外に出る。しかし外気と店内との寒暖差は凄まじく、今すぐにでも店内に戻りたいとコートを羽織っている俺ですら思ってしまった。

 

「うわっ、ムリムリムリ! さむいさむい!!」

 

 コートすら羽織っていない、制服のみの彼女なら尚更なことだろう。ちょっとやそっとの事じゃ取り乱さない彼女が、イマドキの女の子らしい喋り方とともに、俺のコートの袖口を掴んで身震いをしていた。

 

「制服だけで来るからだぞ」

「うっ……そりゃそうだけど、やっぱ高校生のラストくらい制服だけで登校したいじゃん!」

 

 そう言われて、今日の登校時を思い出して納得した。確かに俺の記憶の中の女子生徒は皆、コートなど制服が隠れるような防寒着は一切身につけておらず、みな制服一つで──マフラーや手袋を着用していた生徒はいたが──最後の登校をしていた。どうやら女子達は寒さ対策よりも制服での思い出を優先するらしい。

 しかし、となると。俺は少しだけ不安になって辺りを見渡した。男の方は防寒バッチリで平然と歩いているのに対して、女の子の方は寒さで震えているこの光景。傍から見ると果たして俺はどんな男として映るだろうか。大学受験のために小説文を沢山読んだ俺にとって、答えを導き出すのは簡単だ。

 そう思うや否や、俺はコートを脱ぐと彼女の頭の上からバサッと掛ける。

 

「ほら、これでも着てろ。少しは温かくなると思うぞ」

 

 最初こそ、彼女は驚いたように目を見開いて俺の顔を見上げていたが、次第に顔を赤らめてだして、

 

「……ん、ありがとう、拓海」

 

 と呟いた。渡したのは俺なのだが、予想に反して素直に受け取られて少しだけ驚いてしまう。いつもなら「いやー、リサに悪いからなぁ」だったり、「後でリサに教えちゃおー!」だったりとからかいを織りまぜて来るはずなのに。

 

「なんか調子が狂うな……」

 

 俺が後ろ頭を掻きつつそう言うと、彼女が俺のコートに顔をうずめつつ言う。

 

「しょ、しょうがないでしょ。……ちょっと意識しちゃったんだから」

「ん? 意識するって、何を?」

 

 彼女の言葉を不思議に思い、俺が問うと先程よりもさらに顔を赤くした彼女が突如として俺の腕を引っ張てきた。

 

「な、何でもない! ほら、ただでさえ予定より大幅に遅れてるんだからさっさと歩く!」

「あ、おい! ……まったく。これから大学生になるっていうのに、ガキかよ、あいつは……」

 

 少しずつ遠くなっていく彼女の背中をため息交じりに見つめたあと。俺は空を見上げた。

 見上げた空は生憎の曇天で、俺たちのこれからの人生を祝福するにはどこか少しだけ寂しいような感じがした。

 

 

 

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 

 

 

「拓海と夏美は今頃合格発表かぁ」

 

 部屋の窓辺で、曇り空を見上げながらアタシはフッと息を吐いた。換気のために窓を開けているからか、吐く息は少しだけ白かった。

 

 あんなに頑張っていた拓海が落ちるわけがないと思ってはいるけれど、万が一残念な結果だった場合、アタシはなんて声を掛けたら良いのだろうか。

 

「えぇ、そうね。でも拓海たちなら大丈夫よ」

「おぉ~友希那、自信満々だねぇ……」

 

 アタシの不安を感じ取ったのか、友希那は外の寒さに負けない暖かな笑みを頬に称えつつそう言った。彼女の手にはスマートフォンが握られている。

 

「だって二人とも、合格してたもの」

「えっ」

 

 驚くアタシに、「ほら」と言いながら画面を見せてくる友希那。表示されている数字の羅列には、確かに二人から聞いていた数字が映っている。

 

「友希那って、こんなこと出来たっけ……?」

 

 失礼だとは思ったけれど、言葉に漏らさずにはいられなかった。だってあの音楽以外全てダメダメな友希那だよ? その友希那が、スマホを使いこなしてあまつさえ他人の合格発表を見てるんだよ? 

 アタシの疑問に、友希那は溜息をついて答えた。

 

「……酷い言い様ね。私だって他のことに興味を拡げたくなったのよ。少しだけだけれど燐子にネットのいろはを教えてもらったから」

「な、なるほど〜……」

 

 確かに最近練習が終わったら、燐子に話し掛けに行くことが多かったような気がする。どうやらその時にスマホの使い方を教わっていたらしい。

 

「それで、試しにちゃんと使ってみたくなってしまって……。悪いとは思ったのだけれど、お先に拓海と夏美さんが受けた大学の合格発表を覗かせてもらったわ。二人から受験番号を教えてもらっていたから」

 

 ちゃんと使えていたことが嬉しいのか、フフンっとどこか自慢げな友希那。確かにアタシも友希那の成長は嬉しいよ? 嬉しいケド……。

 

「できれば合格の報せは拓海本人から聞きたかったなぁ……」

「あっ……」

 

 アタシの言葉に嬉し顔から一転、申し訳なさそうに頭を垂れる友希那。

 

「ゴ、ゴメン! 別に友希那を責めてるワケじゃなくて……! ただ、どう反応しようか迷っちゃっただけで……」

「ごめんなさい。私の配慮が足らなかったわ……」

 

 部屋に、沈黙と同時に冷たい風が流れた。その風を受けて、思わずアタシは音もなく立ち上がってから窓の取っ手に手を掛けた。

 

「さ、寒いよね。そろそろ窓、閉めよっか」

「そ、そうね」

 

 友希那の了承を経て窓を閉める。次いでアタシは、ベッドまで移動して、枕元に置いてあった空調のリモコンを取って、スイッチをピッと押した——その直後。

 ピロンッ! と軽快な音と共に、傍らのスマホが画面を開いて通知を知らせた。

 アタシはリモコンを置いてスマホを手に取った。拓海の誕生日に設定したパスワードを入力した後に、五件の通知を知らせる連絡ツールを開いた。

 

「……拓海から、かしら?」

「うん、そうみたい」

 

 いつの間にか近づいてきていた友希那に聞かれて、アタシは頷いた。開いた画面の一番上には拓海の名前がある。いつもならこの通知が来た時点で、直ぐに個人チャットを開いているんだけど……。

 

「……? 開かないの?」

 

 それを知っている友希那が、アタシの隣で不思議そうに首を傾げた。

 

「……ちょっと、ね」

 

 アタシは、結果を知っているからこその不安感を胸に抱いていた。今すぐにでも、おめでとう、頑張ったね。と声を掛けてあげたい。

 でも、これから先のことを考えると、そんな他人事のように言っても良いのだろうか、と思ってしまうのだ。

 

 ——大学が始まったら、なかなか会えなくなってしまうから。

 

 彼の大学は都内。だけど、アタシの通う予定の大学は隣の県。紗夜と同じ大学だ。つまり、物理的に距離ができてしまう。

 その事を考えると、アタシの内に秘めておきたいワガママが外に出てしまいそうな気がする。冬の冷たい風に乗った、素っ気ない言葉が。

 

 ギュッとスマホを握り締める。少しは成長したと思っていた自分が馬鹿らしい。こんなことを考えてる時点で、アタシが成長していないことなんて明白なのに。

 

「そういうものなのね」

 

 何も言わないアタシに、友希那は小さくそう呟いた後に、アタシの手に自分の手を被せた。

 

「でも、今はちゃんと祝ってあげないとダメだわ。拓海は頑張って、自分の夢を叶えたんだから。リサ。それをあなたが否定してはダメよ」

 

 友希那の手が、更に強くアタシの手を握った。少しビックリして顔を上げると、目の前には真剣な眼差しをした友希那が居た。こんなに真剣な友希那は、ライブ以外で初めて見る。

 友希那は「それに——」と言葉を紡いだ。

 

「——拓海が頑張れたのは、あなたのお陰でもあるのよ。Roseliaが……私があなたに支えられていた様に、拓海もあなたに支えられていたの。その支えが突然無くなるなんて、それこそコケてしまうわ」

 

 独特な言葉選びに、アタシは笑みをこぼしてしまった。

 

「友希那、成長したね……」

「ちょっとリサ? 今は私の話ではなくて——」

 

 友希那の言葉を最後まで聞かずに、アタシは彼女を抱き締めた。

 

「っ! リサ!?」

 

 狼狽える友希那に、アタシは言った。

 

「友希那、ありがとう。いつものアタシの傍に居てくれて。アタシを支えてくれて」

 

 そう言うと、宙を彷徨っていた友希那の手が、アタシの腰に回された。

 

「……えぇ。これからも、よろしくね」

 

 友希那の言葉が、身体が、心が。どれも暖かくて、アタシは先程の笑みに加えて涙を零してしまった。

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 いつまでそうしていただろう。体感的には10秒にも満たないような時間だったが、どちらともなく身体を離すと、お互い目を合わせずにその場に正座してしまった。

 

「な、なんか恥ずかしいね……」

「そ、そうね」

 

 暖房と相まって、少しだけ汗の滲んだ額を拭う。そしてまた、沈黙が訪れた。しかし、先程の沈黙よりかは部屋も心も温かい。

 

「取り敢えず、拓海に返信したらどうかしら? 多分待ってると思うわ」

「そ、そうだね」

 

 友希那の指摘で、アタシは電源を入れっぱなしのスマホに目を移し、個チャを開いた。

 そこには——

 

「うわー、すっごい笑顔」

 

 ——自分の受験番号を指差しながら、笑顔で写る拓海と夏美の写真と共に、合格したぜ!! という簡素な言葉が綴られていた。

 アタシは一度、友希那を見た。顎に手を当ててスマホを弄っていた彼女は、アタシの視線に気づくと、少しだけ口角を上げて笑顔で頷いた。

 アタシはそれに頷き返し、メッセージを送るべくキーボードを開いた。

 

『おめでとう! 拓海、頑張ってたもんね! アタシもすっごく嬉しい! 今度会う時に、なんか持ってくね!』

 

 すぐに既読がついた。多分、アタシとの個人チャットを開いたままだったのだろう。

 

『ありがとな。ほんと、何度挫折しかけた事か……』

『アハハ……。受験期結構やつれた顔してたもんね。アタシ、結構心配してたんだよ?』

『ご心配、ご迷惑をおかけしました』

『いえいえ。とにかく、無事受かっててよかったよ』

 

 いつも以上に早い会話を嬉しく思うアタシがいた。最近は拓海が最後の追い込みをしているということで、あまり連絡を取っていなかったから。

 

「リサがそうやってちゃんと笑ってるところ、久しぶりに見たわ。やっぱり拓海効果って凄いわね」

「拓海効果って……。っていうかアタシ、普段から結構笑ってたと思うんだけど?」

 

 アタシは苦笑いでそう返した。実際、さっきも笑ってたし。

 しかし、どうやら友希那から見たアタシの様子は違ったようで。

 

「確かに、普段から笑ってはいたけれど……。いつものリサの温かい笑いじゃなくて、どこか上の空って感じだったわよ。それこそ、紗夜達が心配するくらいに」

「えっ……最近のアタシってそんな感じだったの?」

 

 そう聞き返すと、友希那は「えぇ」と頷きながら続けた。

 

「だからそういう意味でも、拓海が受かってて私も嬉しかったわ。Roseliaに影響が出ないから」

 

 そう締めて、彼女は砂糖たっぷりのカフェオレを啜った。

 

「そう言って? 実は素直に喜べないだけじゃないの~?」

 

 散々からかわれたお返しにと、アタシはニヤニヤしながらそうけしかけた。

 

「そ、そんなことないわ。第一──」

 

 少しだけ焦ったように言う友希那の言葉を、通知を知らせるピコンッ! という軽快な音が遮った。先程から返信が止まっていた拓海からだ。

 

「……早く返信してしまいなさい」

「でも、友希那、何か言いかけて……」

「拓海が待ってるわよ」

 

 もう何も言う気はないらしく、友希那は語気を強めてそう言うと、アタシから距離を取って新譜の調整に入ってしまった。どうやら彼女は、こういうやり取りに関しても成長してしまったらしい。そろそろ彼女のお世話も卒業かもしれない。

 そう考えると少しだけ寂しくなってしまい、目元に来るものがあったので、慌ててスマホに視線を移した。今は、とにかく拓海の合格を祝わなければ。

 

『ところでさ』

『なに、どうしたの?』

 

 そこまでで止まっていた文の続きが気になって、続きを急かす。既読はついているのだが、中々返信は来ない。

 

 そこから待つこと二分弱。何度目かの通知を知らせる音が鳴り響き、アタシはスマホの画面へと飛びついた。

 そこに書かれていたのは──。

 

『全部終わったし、ちゃんと面と向かって伝えたいことがあるからさ。今週末、どっかに遊びに行かないか?』

 

 ──恐らく高校生最後になるであろう、デートのお誘いだった。

 

 

 

 




読了お疲れさまでした。
久しぶりに書くバンドリSSに戸惑っている私がいます。
そもそも、この物語がどうやって終わったのか、皆さん覚えていらっしゃるのでしょうか?
私は忘れました()
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