【完結】アーセナルギアは思考する   作:鹿狼

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File19 ディープ・スロート

 霧に満ちた屋内を出て、泊地の外に移動する。

 外も霧に包まれていて、碌に見えない。G.Wの言ったとおり、泊地全体が濃霧に包まれているようだ。

 

 しかし見えずとも分かる。異様な空間に身を溶け込ませたスネークは、視界に頼らずに感じていた。いつもの泊地にはない、切り裂くような敵意を。それを探すために、慎重に足を進めていく。

 

 物音一つせず、波しぶきの音だけが耳にとどく。

 海岸線が近いようにも、遠いようにも感じる。霧に融けこんだ感覚(SENSE)も、霧のように曖昧だ。そこにいるのに捉えられない。まるで遺伝子のように。

 

 

 

 

―― File19 ディープ・スロート ――

 

 

 

 

 ソリトン・レーダーの立体映像を頼みに、スネークは歩く。多摩の言ったことが確かなら、侵入した敵艦はあと一隻だ。だがそれなりに広い泊地の中、たった一隻を見つけるのは骨が折れる。

 

 北方棲姫は神通と那珂が直接護衛しているので、万一直接襲われても問題はない。もしかしたらすでに、彼女たちに始末されたのか。いや、それなら無線がくる。過度な期待はやめよう、捜索に全力を尽くさなくては。

 

 敵がいるとしたら、何をするか。戦力の削減だ。なら弾薬庫が狙われるかもしれない。敵の狙いを予測し、彼女は燃料タンクや弾薬の保管された区域に向かう。

 

 神経をさらに研ぎ澄ますスネーク、しかし耳小骨を直接鳴らす無線のCALL音が、集中を妨害した。

 誰だこんな時に――が、無線の周波数は見たことのない数値だった。苛立ちはそれで消しとんだ。何故私の周波数を知っている。

 

〈気をつけろスネーク、そこにはクレイモア地雷が設置されているぞ!〉

 

 スネークの困惑を意図的に無視し、謎の人物が叫んだ。

 男とも女ともつかない、無機質な声だ。機械で調整されているに違いない。ナノマシンを介した無線に近い、加工された声だ。

 

〈近づけば燃料タンクごと誘爆する、この霧のなかで撤去するのは不可能だ。それに敵はそこにはいない〉

 

〈何だと?〉

 

〈敵の狙いは北方棲姫だけではない、急げスネーク、別動隊はもう動きはじめている〉

 

 別動隊だと? 私が交戦した二隻は囮だったのか? ならもう一つの目的とは何だ。しかしこの人物が『嘘』を言っている可能性も捨てがたい。

 

〈お前は何者だ〉

 

〈ただのファンだよ、ディープ・スロートでも何でもいい。それよりも早く、()()に追いつかれたら、逃げられないぞ!〉

 

 ディープ・スロート?

スネークの中で、更に混乱が広がる。その単語が意味することを、スネークは知っていた。それは彼女のルーツに関わる、重要な事件の登場人物だからだ。

 

 2005年3月――アラスカ沖、フォックス諸島に存在するシャドー・モセス島が、テロリストにより占拠。要求を呑まなければ核攻撃を行うと宣言した、『シャドー・モセス事件』。そこに登場したのがディープ・スロートだった。

 

 ディープ・スロートとは元々、アメリカの第三十七第大統領であるリチャード・ニクソン大統領を辞任に追い込んだウォーターゲート事件で、内部告発をおこなった人物の名前だ。その名を名乗る男は、所属部隊でこう名乗っていた。『グレイ・フォックス』と。

 

 しかし、彼はそのモセスで壮絶な死を遂げている。

 ――しかし、この世界がスネークの知る世界と別なのは確かだ。並行世界のフォックスが、たまたま同じ偽名を名乗っているのかもしれない。

 

 彼は何者なのか、その真意を問いただす前に、無線は切れた。当たり前だが、相手の周波数にかけても、返事はなかった。

 

〈お前、何か心当たりがあるんじゃないか〉

 

 不信感に溢れた顔で、スネークが呟く。

 ビッグ・シェルとアーセナルギアで行われたS3の演習は、他ならぬこのシャドー・モセス事件をモデルにしていた。だからこのフォックスの役割(Roll)を果たすキャラクターも登場している。

 今回もそれと同じく、スネークの知らないところで、ディープ・スロートを創っているのではないか。

 

〈ありえないことを言うな、それはそれで調べておく〉

 

 しかしG.Wの調べておくは、とことん信用ならない。

 

〈君は彼――彼女か? ともかくそいつの言う通りにするのだ〉

 

〈あいつを信用しろと?〉

 

〈可能性の問題だ、本当に燃料タンクにクレイモアがあったのなら。本当に別動隊がいたなら――〉

 

 選択肢は選べないらしい。

 どうにもならない状況に首を傾げながら、スネークは来た道を急いで引き返すことにした。

 

 ちなみに、『愛国者達』が創った時は、『ミスターX』という名前だった。

 ドラマ『Xファイル』で、ディープ・スロートが死んだあとに登場する後釜の名前だ。なら今回現れた密告者は、ミスターXの亡霊なのか。

 

 

 

 

 ディープ・スロートの言うことは真実だったかもしれない、と直感的にスネークは思った。燃料タンクのエリアから離れれば離れるほど、嫌な予感が増していくからだ。敵の気配はないが、心臓の音がやけに大きく感じる。

 

〈ディープ・スロートは、誰かがお前を追っているとも言っていたな〉

 

〈私を? 身分を偽装しているのにか?〉

 

〈だが警戒を怠るな〉

 

 そんなことは百も承知だ。

 内心反論したこと自体、冷静さをなくしている証拠だ。いつまでも見つからない敵と、謎の密告者に、予想以上に心を乱されている。

 

 このままでは不味いな、そう考えたスネークは立ち止まり、息を再度、深く、ゆっくりと吸い込み直す。解けつつあったスニーキング・モードを整え、冷静さを取り戻す。ステルスとは、どこまで待てるかだ。一分でも百年でも、焦ったら死ぬのだ。

 

 それが、スネークの命を救った。

 息を吸い、吐き直すまでの一瞬、間が空く。その時は、体内の音も消え去る。完全なる無音が体を覆った。

 

 だからこそ響く、たった一歩の足音が。

 

「そこか!」

 

 足音は、本当に背中合わせの所にあった。

 P90では間に合わない、憲兵の装備品として持っていた警棒を、力の限り背後へ回す。警棒はあっさり受け止められたが、その隙に距離を取れた。

 

 敵の姿は濃霧のせいで分からないが、主砲と魚雷発射管を両手に装備しているようだ、駆逐艦か、軽巡クラスの深海凄艦か。

 

 十分な距離を確保し、影に向けてP90を斉射する。深海凄艦相手に有効打は難しいが、牽制にはなる。敵は弾幕をさけるため、射線から移動した。それと同時に、手に装備した主砲が火をふく。

 

 スネークはそれを、高周波ブレードで切り裂いた。ただの人間が持っていても不自然ではない武器として、こっそり持ち込んでいた。これなら有効打を与えられる。砲弾を切られたことに相手が驚いている内に、極限まで踏み込む。

 

「死ぬがいい!」

 

「…………」

 

 心なしか、敵が一瞬笑った気がした。

 敵もまた踏み込み、スネークの真横に回り込む。一撃で切り裂くはずだったブレードの軌跡は、ただ霞を振り抜くだけに終わる。再び主砲の砲身が火を噴き、スネークを撃ち抜こうと迫る。

 

 間一髪もう一振りのブレードを取り出し、その砲弾も切り裂く。それでスネークが動きを止めた間に、深海凄艦はまた距離をとった。

 

ある程度の距離を保ちながら、主砲を淡々と撃ちこんでくる。しかしある程度といっても、砲撃が発射されてから当たるまでは、コンマ数秒もかからない。回避する暇などない、あらかじめ当たらないように動くか、ブレードで防ぐかの二つしかない。

 

 しかもその距離とは、ギリギリ高周波ブレードが届かない距離だ。だからスネークは致命打にならない、P90で攻撃するしかない。他の有効打はCQCがあるが、あれも至近距離でしか使えない。

 

〈スネーク、どうやら敵は君が近接戦しかできないことを把握しているようだ〉

 

〈そうらしい、私を追っている奴がいるのは、本当のようだ〉

 

 こんな場所でミサイルの後方支援など、言語道断だ。というかたった一隻に対し、貴重なミサイルは使いたくない。

 

 しかし――場合によっては、そんな余裕もなくなるかもしれない。致命打をさける相手と、たった一発で致命傷を負うスネークとでは、かかる重圧も比較にならない。その緊張感はある意味心地よくはあったが、キツイものはキツイのだ。

 

 今こうしている間にも、別動隊が動いているかもしれない。早く勝負をつけたいが、焦れば死ぬのは私の方だ。握りしめたP90に、汗が滲んでいく。

 

「シエルさん、伏せて!」

 

「神通か!?」

 

 しかし、戦場に轟いた声が、空気を一片させた。それは神通の声だった。

 彼女の声に従い、スネークは体を倒す。次の瞬間、軽巡洋艦クラスの砲撃が、次々と付近に降り注いだ。

 

 泊地のコンクリートが砕け、巻き上げられ、礫となってまた降り注ぐ。小さな痛みが体のあちこちで起きる。敵も不意をつかれたのか、慌てて距離をとる。しかし背後にもう、別の影が回りこんでいた。

 

「那珂ちゃんでーす! よろしくー!」

 

 と、何故か声を張り上げる那珂。あれがアイドルとかいうものらしいが、その概念を戦場へ持ち込む意図は全く分からない。

 それが『那珂』という艦娘なのだと、一人納得させた。恐らく私が自由に固執するのと、同じような理由だろう。

 

 しかし、彼女の攻撃は確かな闘志に満ちていた。

 マイクのように掲げられた雷撃が、僅かな迷いもなく振り下ろされる。本人も巻き添えになる、滅茶苦茶な攻撃だと思った。

 

 そう思った途端、彼女は軽やかに、一瞬で距離を離した。何という機動力だろうか、魚雷はそのまま、深海凄艦だけを巻き込み爆発する。霧と爆炎が混じり、奇妙な文様が空中に浮かび上がった。

 

「シエルちゃん、大丈夫だった?」

 

「ああ、だが北方棲姫の護衛はどうした?」

 

「新しい増援が来てくださったので、私たちも侵入者の迎撃に来たんです」

 

 こんな時に増援か、だったら最初から戦力を増やしておけよ、とスネークは内心文句を垂れた。

 

「しかし多摩が言うには、こいつで侵入者は最後だ」

 

「私たちの出番はないということですか」

 

「でも変なの、この霧、中々晴れないね」

 

 そうだ、また敵は全滅していない。別動隊が残っているはずだ。こうしてはいられない、スネークは再度、敵を探すために動きだそうとする。

 

「ドコヘイクノ……」

 

 その声に脚を止めたのは正解だった。

 スネークの鼻先を、砲弾が掠めた。壊れかけた機械のように首を動かす、その先には、さきほど倒した筈の深海凄艦が立っていた。

 

「そんな、アレを躱したの!?」

 

「……ナレテイルモノ」

 

 驚愕する那珂に向けて、敵の砲撃が降り注ぐ。よほど想定外だったのか回避行動をとる暇もなく、砲撃が直撃した。

 

「那珂ちゃん!?」

 

「ソウダワ……彼女ニモキテモライマショウ……」

 

 その影は、信じがたい行動に出た。

 砲撃で吹き飛んだ那珂を抱えて、一目散に逃げだしたのだ。一瞬あっけにとられた神通は、叫びながら影を追い駆ける。

 

「待ちなさい!」

 

「彼女モ……私達ニ……フフフ……」

 

聞き捨てならない言葉が、スネークを走らせた。

なにより、『神通』を一人で放ってはおけなかった。スネークも後を追い、走り出す。霧が、徐々に晴れ始めていた。

 

 

 

 

 霧の中、神通は走り続けていた。

 敵と神通の速度はだいたい同じだが、確実に引き離されている。その原因は、戦場に慣れているかどうかだ。新兵の緊張が、動きに影響している。

 

 ついに、那珂を抱えた影が、海面に降り立った。

 このままでは間もなく、那珂は攫われてしまうだろう。そうなる前に、対処する必要がある。

 

囮である奴が逃げたということは、囮の必要がなくなったから。別動隊はもう役割を終えたのだ、成功にしろ失敗にしろ。やるべきことは一本に縛られた。

 

 泊地の屋根に上ったスネークは暗視ゴーグルを装備し、スナイパー・ライフルを構える。腰を下ろし狙撃の姿勢を整えて、スコープを覗き込んだ。夜間でも敵の姿がよく見える、運よく霧も晴れ始めていた。

 

 だが、沿岸部だからだろう、風が強く吹いている。この距離でも、本来の照準からかなりずれ込むはずだ。試射をおこない、照準合わせをしなければ――正直猶予がない、狙撃されていることに気づけば、敵は一目散に逃げ出すだろう。

 

 距離が離れた分、またズレも大きくなる。一発目でズレを修正し、瞬時に確実な二発目を撃たなければならない。

 

〈狙撃において手の震えを抑えるには、集中し、息を止めることだ。僅かな震えでも着弾点では数十センチのズレを生む。特に今回は、那珂を捉える敵の急所を狙わなくてはならない。那珂を拘束する手を狙え。何センチ修正すればいいかは、私が分析する〉

 

 変な時に気を回してくれたG.W、感謝はしなかった。どうせあの謎の敵に興味があるとか、そんなところだ。しかし機械的な指示は、確かに的確だ。スネークは言われたとおりに息を吐き切り、スコープの中に意識を向ける。

 

 那珂を捕縛した敵は、まだ航行を続けている。待ち続けるのが狙撃だが、今待ってたら取り逃がす。そもそも私はスナイパーではないのだから、待つ必要などない。G.Wの分析を信じ、スネークはトリガーを引き絞る。

 

 乾いた音とともに発射されたライフル弾は、敵の髪の毛を突き抜けていった。暗視ゴーグルで見る限りは、そうだった。

 

〈網膜に写ったソリトン・レーダーの映像で、ゴーグルの照準を修正した。直した照準の中央に合わせろ〉

 

 敵が驚いているあいだに、ライフルは右手を捉えていた。間をおかずに発射された弾丸は、そいつの手に風穴を空け、血しぶきを上げさせた。激痛に耐え切れず、抱えていた那珂が海面に落ちる。

 

〈命中だ〉

 

 何が起きたか理解できていないが、チャンスだと分かった神通が那珂を回収する。彼女を取り返そうとする深海凄艦に向けて、ライフルを連射した。照準を合わせる必要はない、牽制で十分だ。

 

 しかしここまで撃ちまくれば、狙撃している場所も気づかれる。スネークが屋根から飛び降りるのと、深海凄艦の砲撃が吹き飛ばすのは、ほとんど同時だった。空中でライフルを背中に収めたスネークは、地面を転がり衝撃を逃がす。その勢いのまま、海岸線に向かって走る。

 

「シエルさん! 今の狙撃は!?」

 

「私だ、那珂は無事か」

 

「おかげさまで、でも、まだあいつがいます」

 

 ここで海に立ったら艦娘だとバレるので、埠頭の上から深海凄艦を見つめる。神通に抱えられて眠る那珂を、敵は見つめている。霧のせいで表情は伺えないが、この霧はもうすぐ晴れる。

 

「……諦メルシカ、ナサソウネ」

 

「誰が貴女なんかに、妹を渡すものですか」

 

 那珂の首筋には、攻撃の後が痛ましく残っている。入渠すれば治る傷だが、神通にとってはそういう問題ではない。しかし深海凄艦は、神通など目に入っていないかのようだ。口に手を当てて、こちらを嘲笑っている。

 

「何がおかしい?」

 

「……今ノ狙撃、気配ガ全然シナカッタワ」

 

「それはどうも」

 

()()()ヨリ、ズット……隠レルノガ上手ニナッテイルワネ」

 

「何だと?」

 

「人ヲ見捨テテマデ生キ延ビタ甲斐ハアッタミタイネ、()()()()()

 

 

 

 見捨てただと――瞬間、ひときわ強い風が吹き、霧が晴れた。

 

「な……!?」

 

 海面に立っていた深海凄艦は、完全な人型をとっていた。姫クラスの、特に強力な個体。北方棲姫が言っていた姫の一隻。そいつは黒い仮面(VEIL)を被り、夜の海に黒い長髪をなびかせている。片手はまるまる魚雷発射管と一体化し、異形の様相を見せていた。

 

「嘘……!?」

 

 だが、その姿は、確かに彼女の面影を残していたのだ。

 

「久シ振リ……今ハ『シェル・スネーク』ト名乗ッテイタワネ。ソシテ始メマシテ……私ノ後任ノ、『神通』」

 

 スネークの脳裏に、記憶が蘇る。

 青葉の艤装を守ろうとして、いやその行動をG.Wに利用されて沈んでしまった彼女が、まさか、今のアレなのか?

 

「あなたは、いったい」

 

「私ハ『軽巡棲姫』、ソシテ――ソロモン諸島ノ戦デ沈ンダ、貴女(神通)ノ前任ヨ」

 

 スネークにとっても、神通にとっても、それは間違いなく『悪夢』だった。危うく呆然となりかけた意識を立て直し、スネークはP90と高周波ブレードを構える。それに合わせ、神通も主砲を構えた。

 

「お前は、私の知る神通でいいんだな?」

 

「エエ、ソウヨ……私モコウナッテ始メテ知ッタワ、沈ンダ艦娘ガ、深海凄艦ニ変異スルッテ」

 

 なら、逆のパターンもあり得るのか。

 だとすれば艦娘と深海凄艦は、ある意味で仲間殺しを続けていることになる。提督などの上層部は、このことを知っているのだろうか。

 

「神通―! どこですかー!」

 

 スネークの耳元に、聞き覚えのある声が届く。神通とセットで聞いていた彼女の声だ。声の主――青葉がまもなくして、スネークの真横に現れた。無論知っているので、スネークを見てぎょっとしていた。

 

 だが、海上に立ち塞がる深海凄艦を見て、驚きは更なる驚きに塗り潰された。

 

「え、な、なんですかあの深海凄艦は」

 

「……懐カシイ人達、デモ、引キ際ネ……彼等ノ目的ハ達成デキタミタイダシ……」

 

「待て、逃げる気か!」

 

「マタ会エルワ……貴女達ト私達ノ狙イハ……同ジ(スピア)ナンダカラ……」

 

 激しい照明が、スネークたちの眼を潰した。視界が戻る頃には、軽巡棲姫は姿を消していた。しかしそれは余りにも大きな影を落としていったのだ。

 

「……嘘ですよね?」

 

 青葉の声に、鼻音が混じっていた。もしかしたら、スネークも。




―― 140.15 ――


〈……アーセナルギア本人だったんですね〉
〈騙していて悪かったな〉
〈いいです、正直それどころではないので〉
〈そうだな、他の連中は無事だったか?〉
〈ええ恐らくは、とりあえず北方棲姫と富村提督の無事は確認できました〉
〈他の奴等は、余り多くはないが人間のスタッフもいただろ〉
〈避難用シェルターがありましたので、そちらに隠れていたそうです。確か明石さんも同じです〉
〈そうか、直接無事を確認できればそれに越したことはないが……そうも言っていられないか〉
〈アーセナルも提督に呼ばれているのですか〉
〈そりゃそうだろ、身分訴訟に違法入国、何なら銃刀法違反もついてくる〉
〈どうするんですか〉
〈なに、いざとなれば周辺海域を火の海にして逃げるだけだ〉
〈…………〉
〈冗談だぞ?〉
〈……そうなった場合、北方海域の海の幸も燃えますね〉
〈よし行こうか、この私に逃亡の選択肢はない〉
〈……異常に食い意地がはっている、ガセネタではなかったんですか……〉
〈そのゴシップ記事書いたのあの青葉だからな、ところで北の幸はどこで食える? それにカレーも喰いたい、ぐずぐずに溶けた英国野郎のじゃあない、具がゴロゴロの日本式のカレーだ。北海道はポテトの産地としても有名だったな……フフフフフ〉
〈……これが……アーセナル……〉

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