鎮守府内は、形容しがたい空気で覆われていた。
静寂ではない、皆慌ただしく動き回っている。だが騒然ではない、冷静にできることをやっている。だが冷静ではない、目前に迫る危機に、パニック寸前だ、だがパニックではない。ならこれはなんだ。
無数の黒煙が、敷地内のあちこちから立ち上る。
誰かの流した血が焼けて、模様となってこびりつく。それがいくつも重なって、複雑な表情を雪風に訴えていた。
そのどれも、気に掛けてはいられない。
目に焼き付く死体のモニュメントも、空に描かれる星空も。これから刻まれるキノコ雲の爪痕も。全てが幻のように、現実感がない。
故にここは、地獄だった。
騒然としているのは、呉鎮守府だけではなかった。この悪夢を無線機や、レイ経由でモニターしていたシャドー・モセスの彼女たちも、同じように地獄を見ていた。呉から遠く離れたアラスカの海からでも、核の光は見えるのだろうか。光が見えれば、風に乗ってどこまでも放射能は飛んでいく。ガングートは、冷たい風に身震いした。
幸い、スネークは死んでいなかったが、深刻なダメージを負っていた。間違い無く大破、あれだけの至近距離でミサイルを撃って、それで済んだだけ、まだマシらしい。しかし、望む戦果は得られなかった。ギリギリのところで水鬼とイクチオスは、ミサイルの直撃を回避してしまった。
「青葉、イクチオスはどうなっている」
〈今は侵攻の途中で占領した江田島で、緊急修理をしています〉
「スネークはどうだ」
〈……目覚めません、担当の明石さん曰く、自然回復に任せるしかないと〉
「修復剤や入渠を、認めねえのか」
苛立った様子の北条提督に、青葉は言葉を濁らせる。ここで声を荒げても意味はない、ないが、気持ちは分かる。修復剤を使えば、一瞬で回復できる。それも艦娘の利点であり――人間として定義しにくい理由でもある。
〈スネーク、いや、アーセナルギアは簡単に修復ができないんです。入渠には莫大な時間が、修復剤は文字通り山ほど必要なんです〉
例えスネークが、艦娘にとっての英雄だとしても、公的に見ればただのテロリスト。貴重な修復剤を使うのも、長時間ドッグを占拠させるのも、喜んで、とはいかないのだ。ついでに必要な資材も、半端な量ではない。ならテロリストよりも、大切な身内を優先する。むしろ、明石に直々に見て貰うだけでも、まだマシな方だった。
「……そうなのか?」
納得していない様子の北条だが、彼に構っている暇もない。今もこうしている内に、イクチオスに搭載されたエノラ・ゲイが、空に羽搏く時を心待ちにしている。スネークはどうしようもないが、ここからでもできることはあった。
これを手伝いと言っていいかは、疑問しかなかったが。
「青葉、一つ伝える。全員に伝えるかは、お前が判断してくれ」
〈どんな、不味い情報なんでしょうか〉
「日本政府の報復判断について」
青葉の受けた絶望は、想像し難い。核の落ちる光を視た彼女は、戦後日本の掲げた非核三原則を好ましく思っていた。それが裏切られたのだから。
「大本営は核を所有している、正確には拾い物だが」
〈盗んだということでしょうか〉
「近いが違う、忘れ物を拾ったんだ、硫黄島の、核をな……」
1965年までの間、父島では極秘裏に核が配備されていた。日本への返還時に核は撤廃されたが、有事の際は持ち込みが可能となる秘密協定が結ばれてた。そして深海凄艦出現の初期、核がまだ有効でないと分からなかった時、持ち込まれることになる。
だが深海凄艦の奇襲により部隊は壊滅し、核だけが置き去りになった。それを後からやってきた、日本の硫黄島奪還部隊が回収したのだ。しかし硫黄島には政治的な理由で駐留軍はおけず、定期的に巡回するしかない。
置いたままにしていては、深海凄艦に核が奪われかねない。怨念の(個体差はあるが)塊が核を持ち、使い方を理解すれば世界は終わりだった。なら持ち込むしかないだろう、当時の大本営は考えたのだ。
〈合衆国は返還を要求しなかったんですか〉
「考えてみろ青葉、合衆国は核を持ちこむ時、事前に協議をするんだぞ。だが合衆国は協議も申出をしていない、だから核は持ち込んでいない。なら、硫黄島の核は、誰が持ち込んだ事になる?」
〈……誰でもない、
「実際のところ、合衆国やソ連に追いつきたいという気持ちもあったんだろう。艦娘の力で日本は米ソに迫る大国になったが、核は持っていなかった。核を落とされれば、艦娘がいても国民は死に絶える。核さえ有れば、抑止ができる」
核の戦略的価値が落ちたと言っても、それは対深海凄艦に限った話だ。今だに世界各地に存在する米ソのミサイル基地、起動すれば衛星軌道を通り、壊滅的被害を与えることになる。深海凄艦など比ではない、死の灰が降り注ぐ。
「使う可能性はゼロじゃない、いやむしろ高い。今日が何日か分かるな」
〈8月6日ですが、まさか〉
「今日ヒロシマで、平和式典がある。観艦式はその前祝いのようなものだ。各国の首脳陣も、ゲストも、総理も現地入りしてしまっている。この情報が漏れただけで、水鬼の目的は達成される。核が発射されれば……」
もはや言うまでもないことだった、水鬼は最初から、この日を狙って行動していたのだ。既存の平和を打ち壊す為には、うってつけの日程だった。
〈なんてこと伝えてくれたんですか、これを青葉に背負えと?〉
「喜べ、特大のスクープだ」
考えます、と半ば吐き捨てて無線は切れた。ガングートへの文句もあるが、大本営への怒りも混ざっている。無性にパイプを吹かしたくなり、出口へ足取りを早める。いつもより足音が大きく、乱雑に踏み鳴らされた。
「いや、やっぱりおかしいぞ」
「……まだ納得してないのか」
「ああ、単純な話だ、アーセナルが高速修復剤を大量に使うって話だが、そんなことは、絶対にあり得ねえ」
「アーセナルギアは超ド級潜水艦だ、資材も喰えば時間も喰う、なら修復剤も喰うだろ」
「いや、修復剤は艦娘の再生能力を高めるものだ、元々持っている力を、加速させているだけだ。だから修復剤を何個浴びせようが効果は変わらねえ。駆逐艦でも、大和級戦艦でも、使う数や量は変わらねえだろ?」
「なら何故大量に必要なんだ、実際にそうじゃないか」
「だからおかしいって言ってんだよ、あいつ、一体何なんだ?」
ガングートにも、答えは分からなかった。
艦娘でも、深海凄艦でも、成りそこないのどれでもない――提督適正さえ持つスネークは、そもそも出生からして分からなかった。
*
騒然とし続ける呉鎮守府の中には、医療用の専用棟がある。とにかく海と接するここでは、時たま聞いたこともない感染症にかかる艦娘がちょこちょこ帰ってくる。北方から西方から南方まで、艦娘が無事でも、人間に移るなんてこともあり得る。
その為の検査施設と、隔離病棟は必要不可欠だった。また同時に、自然と重症患者の――入渠や修復剤が使えない時や、人間用の――治療施設にもなった。雪風はその廊下を歩く、長い廊下に、足跡だけが規則的に反響する。
向かう先の扉の先に、二つのベッドがあった。一つにはスネークが、もう一つには大和がいた。
「ああ、雪風さんですか」
スネークのベッドには、多くの見舞いの品が積まれていた。思惑はとにかく、彼女はイクチオスの核発射を防いだ英雄なのだ。呉の提督も、丁重に扱うしかなかった。対して大和のベッドは、とても寂しい、何も置かれていない。尚彼女に伴って、雪風の罪状も現在保留となっている。
「その様子だと、大本営の様子は知っていそうですね」
「スネークは?」
「明石さんいわく、復帰は絶望的だと」
当時の状況から考えると、スネークは自身の撃ったミサイル総数約200発、戦艦水鬼及びスペクターの主砲一斉射をその身に受けたらしい。当然大破、轟沈してもおかしくなかった。単に陸上だったから、一命をとりとめただけだ。
「修理も、かかる資材もバケツも時間も滅茶苦茶です、やったら呉鎮守府が破産するそうで」
「そうですか、で、大和さんは?」
「よく分からない何かで動けなかったので、幸い小破止まりです」
あれは何だったのだろう、スネーク以外の全員が動けなくなっていた。直感だが、イクチオスとは違う何かが働いていた気がする。G.Wは当時のデータをモセスに送り、そこで匿っている北条提督に解析をさせているらしい。
「大本営の核がどこから来たのか、知っているのでしょうか」
「いえ、大和は知りません。持っている、という事実を知っているだけです」
それにしてもいったいどこから手に入れたのか、流石に対艦娘用の新型核ではないだろうが、それでも核は核だ。どうも青葉が知っていそうだが、無理に聞き出す気もしない。
考えても仕方のないことだが、気にはなる。外で忙しなく動き回っている艦娘たちは、夜の暗闇を彷徨う、何一つ見えない中で、手足を動かし続ける、それが何の為なのかも見えないままに。
「核を、止める気でしょうか」
「当然です」
「……こちらが先に撃てば、水鬼の目的を、先に潰せるかもしれないんですよ?」
「雪風は何時も通りに、最善だと信じる事をするだけです」
相手が核を持ち、こちらも持っているなら、先に撃つか後に撃つかの違いしかない。ならその前に、全てを片付けるしか道は無い。雪風が言いきると同時に、強い夜風が吹き込んだ。僅かに空いていた窓が小さく鳴って、隙間が押し広がっていく。窓越しではない夜の海は、見えないが、綺麗だった。
「撃たれるのも、撃つのも嫌です。ましてや、この国が核を撃つなんて」
「でも、それで、私達の居場所が、なくなってしまったら?」
「いずれなくなりますよ、戦争は、いずれ終わるものですから」
「恐くないんですか、私は、恐いです、とても怖い……兵器として失格だとは、自覚してますが」
どんどん大和の声が、か細く弱々しく落ちていく。変わらないトーンと張り付いた笑みがはげ落ちていく。雪風は彼女のベッドと隣へ、腰を下ろした。そしてただ、真正面をじっと見つめていた。
「雪風さんは知っていますよね、私以外にも、『大和』がいることは」
「はい、知り合いです」
彼女より以前に建造された大和は二隻いる。一隻は現在後方に移り、最初期の艦として大本営運営に関わっている。もう一隻はまだ前線に出ており、そこで凄まじい活躍をしているらしい。そして目の前の大和は、三隻目だった。
「皆さんそれぞれ活躍してます、なのに大和は、第一艦隊の旗艦じゃないですか。お飾りじゃないですか」
第一艦隊は滅多に出撃しない、するとしたら本当に大規模な闘いか、国家の一大事だけだ。つまり単純な戦力ではなく、国防の象徴――プロパガンダ的側面を強く持っている。つまり深海凄艦に対する警告、抑止力なのだ。
「嫌ですか、抑止力は」
「役目は分かっています、残る二隻が居なくなった時の為の、保険だということも。でも大和は抑止力にはなれない、大和は長門さんのように、対艦巨砲主義のために建造されたのではありません」
ベッドの傍らに置いてある水を一気に飲み干して、大和は拳を強く握りしめた。力み過ぎて、少し震えていた。
「対艦巨砲主義の意味は抑止力です、相手の射程の外から一方的に攻撃されれば、反撃は絶対にできない。絶対に勝てないと分かっていれば、余計な戦争を抑止できる。BIG7は、長門さんや陸奥さんは、そういう兵器でした。旧世代の核兵器だったんです。でも大和はそうじゃありません、私は、艦隊決戦の兵器として建造された。使うのが前提の核兵器だった、でも私は使って貰えなかった、武蔵が沈んでからは、尚の事!」
雪風の脳裏に、彼女の最後が浮かび上がる。坊の岬で一方的な空爆を受ける巨大戦艦。周りからの評価はともかく、彼女は何を感じていたのか。先んじて脱出した雪風には分からなかった。
「なのに艦娘になっても、使って貰えないで、ただの広告塔のままで。なら大和は、どうしてまた、生まれたんですか。なんで、死者の国からたたき起こされなきゃいけなかったんですか。いっそ血みどろの残滅戦でも良いのに」
「大和さん!」
「……ごめん、なさい、でも私、思ってしまったんです、水鬼の言う世界は、素敵だなって。でもまさか、核があるなんて、こんな状況になるなんて。人が死ななければ大丈夫だと思って、誘き寄せにも協力したのに……私のせいで、また、広島が……」
大きな一言が皮切りとなり、大和の眼から涙が零れ落ちる。とても冷たい液体はなぜか温かくもある。人と機械の間で矛盾し、機械として振る舞ってきたものが、溢れ出していた。慰めても良いが、しかし、艦としての役目を十分求められてきた私が言っても意味はない、大和の気持ちは、決して分からないのだから。
「残念ですが、雪風に大和さんの気持ちは分かりません」
「なら――」
「でも、良い事だとは思います」
「……え?」
「雪風も、何度も考えました、どうして此処にいるかって。その答えは未だに出ていません、出ないまま、今日を迎えてしまいました」
駆逐艦雪風の一生は、幸運であり壮絶なものだった。多くの戦場を生き残ってきた分、多くの別れを見ることになった。挙句、護るための仲間さえ、自身の手で葬ることもあった。仕方がない、必要な事、上からの命令。しかしどんな言葉で取り繕うと、罪悪感が消えることはなかった。艦娘となってからは、尚更酷く感じた。
それでもまだ戦えと言うのか、戦わなくてはならないのか。戦争のあとに平和があると信じていた、だが冷戦が始まったと聞いた。泣いた、憎んだ、絶望もした。けど、それだけではなかったのだ。決して、ただの地獄ではなかった。沈んだ筈の仲間との出会い、あの日送り届けた人々の子供たちが、そこにはあった。
「だけど、そうやって問い続けたから、今の雪風がいます。苦しみも憎しみも、今の私たちには必要な事なんです」
「大和には分からないです」
「雪風もです、もしかしたら、大和さんの言うことが正しいのかもしれません」
どれだけ言おうとも、やはり艦娘は兵器だ。深海凄艦と戦い、そして誰かを護ることに意味を見出す存在。言ってしまえば、国家にとってとても都合の良いAIだ。なら結果的には、思考しない兵器と変わらないのかもしれない。
そもそも人とは何だ?
感情を持つのが人なら、犬や猫にだって感情はある。知性があるといっても、高度なAIや一部の動物にだって知性はある。ならば人はなんだ、人と機械を分ける境界線とは。自ら考え行動することは、AIにもできる。絶対的な違いとは、なんなのか。
「人らしくあれ、とか、兵器であれ、なんて言う気はないです。だけど、絶対に断言できることが一つだけあります。雪風は、沈みません」
死ねば、答えはでないままだ。
それだけは間違いない、核を撃たれれば私たちは沈んでしまう、それも確かな事実だった。
沈めと言われても、沈みたいと願っても、死んでやるものか。浅ましいほどの執着は、生きている証なのだから。
「なので、雪風は行きます」
「江田島に、単独で?」
「はい、一応声はかけますが、最悪一人でも行くしかありません。このまま撃たれるのを待つなんてゴメンなので」
「ですが、二隻目、三隻目のイクチオスが潜んでいたら。それこそ報復として、別の核が撃たれるかもしれません」
「それはまあ、どうしても賭けになりますね」
あるかもしれない、ないかもしれない。そう悩んでいては何も始まらない。だから雪風は信じることに決めたのだ、戦艦水鬼はギリギリまで核を撃たないと。新型核が複数個あるとは思えない、あったのなら、此処までチャンスを伺う必要性はなかった筈だ。
理由はもう一つある。深海凄艦だって、同じ艦の思念を元に生まれた存在だ。自分たちの価値も戦いも無に帰す核を、簡単に使うとは考えられなかった。大和は、とても疑っていたが、恐らくそうだろう。
「あと、多分大本営は、核を撃たないと思います」
「どうして?」
「先手で撃とうが、後手で撃とうが、日本は色々な意味で壊滅します。撃たれたから撃つ、撃ちそうだから撃つ、そんな簡単な話で終わらせるほど、大本営は馬鹿ではないと信じています」
「全部仮定の、想像の話じゃないですか、なぜそんなものを、雪風さんは信じられるのですか」
「分からないからです、分からないから、想像するんです」
世界には、どうやっても分からないことがある。
イクチオスは複数隻いるのか、大本営は核を撃つのか。過去に遡れば更に増える、あの時沈んだ大和の乗員は、なにを考えていたのか。特攻していった人々は、どんな思いを抱えていたのか。
その思いを記録したものは、幾らでもある。
だが、そこに書かれた言葉が全てではない。その中に隠された思いがあるかもしれない。心とは違う気持ちを書いたかもしれない。記録者の意図が介在しているかもしれない。本人から聞いたとしても、真実を言ったのかは分からない。
言葉を尽くそうと、文化や思想を正確に残しても、それでも分からないことは存在している。ならそれは、どう埋めれば良いのか。
きっと、最初から答えは分かっている。想像して、信じること。私はそうしてこそ、始めて完成する。
「大和さんは、なにを信じますか」
「……大和は」
一気に、強い風が吹く。
空きかけの窓がバンと開くと、灯台に照らされた真夏の海が、果てしなく広がっていた。何も見えないからこそ、想像すべき場所がある。
例え、世界の破滅がすぐ傍にいても。
『スペクター(ガングート×北条)』
「北条提督、進捗はどうだ」
「もうすぐだ、あと少しでスペクターのカラクリが解けそうだ」
「こんなに早くか」
「実物が目の前にあるんだ、どうにでもなる。ただ、あくまで不死身の種だけで、作りかたそのものはまだ分からねえ」
「十分だ、今はこいつらの不死性を暴くだけで良い」
「しかし、調べりゃ調べる程、訳が分からねえ」
「例えば?」
「……まず前提としてだ、深海凄艦は死ぬとどうなる」
「消滅する」
「じゃあ、スペクターに使われているのは?」
「人間と艦娘と、深海凄艦の……遺体か、そうか」
「どうやって、遺体を消滅させずに、維持しているのか。俺が昔やっていた分野と同じものが、此処にある」
「昔調べていた身としては、気になって当然か」
「これが分かれば、恐らく深海凄艦のルーツにも迫れるだろう」
「その前に、世界の終わりを止めるのが先だ」
「分かっている」
「それともう一つ良いか、少し小耳に挟んで欲しいんだが……ヒントになるかも分からない、偶然かもしれないんだが」
「どうしたんだガングート」
「……実は、スペクター、という人間が、かつていたことが分かった」
「誰だ、そいつは」
「殺人鬼だ」
「はあ?」
「合衆国で女性のみをターゲットとした連続殺人鬼がいたらしい、警察やマスコミがそいつにつけた名前が、『スペクター』だったんだ。結局逮捕には至らず、そのまま連続殺人の記録も止まったが、そういう事件があったのは事実だ」
「……偶然、なら良いが」