【完結】アーセナルギアは思考する   作:鹿狼

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File6 白鯨

 古鷹どころか、加古まで生きていた事実に青葉は喜びを隠せなかった。それは自分のせいで沈んだ罪悪感からの、払拭も多分に混じっている。それでも喜びは喜びだ、生きていることに勝る幸福はない。

 

 ただ、この幸福をもたらしたのが得体の知れない機械なのが、若干不満だった。運命を覆すのは、自分でなければ意味がない気がしたからだ。ふと過った考えを、青葉は首を振って否定する。何を我儘なことを。

 

 それを踏まえてなお不条理に感じるアーセナルの凄まじさに、青葉は改めて感嘆する。あっけなく運命をひっくり返す彼女は、何処から来たのだろうか。分からない過去を夢想する青葉は、夢見る乙女のようでもあった。そうだ、英雄とはまさしく夢の存在だ。噂通り実在する夢、それがアーセナルだ。

 

 

 

 

―― File6 白鯨 ――

 

 

 

 古鷹と加古は確かに生きていたが、状況が良くなったわけではなかった。特に潜水艦の攻撃を――私が見逃したせいで――受けてしまった加古の傷は酷い。艤装どころか肉体にまで及んでいる。

 

「加古は大丈夫なんですか」

 

「ごめんなさい、正直かなり危険な状況。すぐに入渠させないと」

 

 止血は済ませたのだろうが、顔色は相当悪い。深海凄艦のように真っ白だ。事体は一刻を争う。しかし入渠設備は泊地や鎮守府にしかない。

 

〈入渠とは何だ? 何かの隠語か?〉

 

 再び無線機が勝手に動いた。今度はG.Wではなくアーセナル本人だ。彼女なら何とかしてくれるのでないか。青葉は都合が良いと分かっていながらも、彼女に縋る。

 

「助けて下さいアーセナル、このままじゃ加古が死んじゃう」

 

〈少し待て、妖精が何か言っている〉

 

 引っ繰り返りそうな声が出ているのに、アーセナルは冷静そのものだった。流石に今回は、冷淡としか思えなかった。緊迫しているからこそ焦ってはいけないが、どうしても不満が起きてしまう。

 

 いや、待て、妖精と話している?

 

〈入渠ドッグに艦娘を浸ければ、傷を修復できるんだな?〉

 

「はい、そうです」

 

〈なら私の制圧した基地に来い、ここは元々ソロモン諸島の攻略用に建設された基地だ。艦娘の運用も前提に入れていたから、ドッグがある〉

 

「本当ですか!?」

 

〈レイの誘導に従え、そう遠くはない〉

 

 考えている余裕はない。青葉は脇目も振らずに、レイの背後につく。

 

「青葉、誰と無線してたの?」

 

 助かる見込みができて少し安心したのだ。青葉はまるで自分の自慢をするように笑った。

 

「レイテの英雄ですよ」

 

 古鷹の驚く顔を見た青葉は更に笑う。自分の書いた新聞で誰かが笑ってくれた時と、同じような感情が芽生えていた。

 

 

 

 

 レイの誘導に従い、基地だった場所に上陸した青葉たち。彼女を出迎えたのは、基地らしき何かだった。建物は片端から壊され、コンクリートでできた地面には無数の焦げ目と窪みがある。

 

 基地の内部は、更に多くのレイが巡回していた。頭部らしき部分に妖精がいる。やはりこの超兵器はアーセナルの兵装だ。基地を制圧したと言った時は眉唾ものだったが、こんな兵器が無数にあれば、基地の制圧など簡単だろう。

 

「来たか青葉」

 

「アーセナル! ドッグは何処ですか、お願いします、加古を助けて下さい」

 

「こっちだ、焦るな」

 

 涙を必死にこらえている古鷹を連れて、アーセナルが歩き出す。少し速足になっている気がしたのは、気のせいではない。早歩きで向かった先、ボロボロになった工廠の地下に、入渠施設があった。

 

「ドッグは一つだけですか」

 

「連中、撤退時にできるだけ施設を破壊していった。さすがに全部は阻止しきれなかったが、一つ残っただけでも良いと思え」

 

 アーセナルが何か、聞き取れない言葉を話す。ワラワラと現れた妖精が加古を運んでいき、流れるようにドッグへと詰め込む。修復終了までのタイマーが作動したことで、青葉たちは漸く『助かった』と実感した。

 

「本当に、本当にありがとうございます」

 

「お前が古鷹で、今ドッグに入れたのが加古だな? 青葉からいくつか聞いたかもしれないが、私はアーセナルギアだ」

 

「ええ、あのレイテの英雄ですよね」

 

 そう言った瞬間、アーセナルが怪訝そうな顔をして顔を顰めた。冷たい空気が一転して不機嫌になる。しかし青葉は、そのことに全く気付いていなかった。

 

「レイテ……まさか、一ヶ月前の戦闘のことか?」

 

「やっぱり本人じゃないですか! 知らないかもしれませんが、アーセナルさんは今とても有名なんですよ」

 

 レイテ沖を舞台にし、そして今回の第三次SN作戦の切っ掛けになった大勝利。捷号作戦成功の中で流れる、最も有力な噂の存在があった。

 

 敵機動部隊主力を小沢艦隊が壊滅させたと大本営は言うが、実は違う。本当はある一隻の艦娘が、敵を根絶やしにした――と言う噂だ。

 

 敵のいなくなった海域に現れた小沢艦隊が見たのは、海中へと消えていく一隻の巨大な影。あとに残された深海凄艦の残骸には、ミサイル攻撃の跡としか思えない損傷が無数に発見されたらしい。

 

 勿論ミサイルを装備している艦娘なんて、今までいないと思っていた。この証言も、何処から出てきたか分からない。デマの可能性だってある。

 しかしネットに籠るような――無論、新聞を趣味とする私も例外ではない――艦娘は、この噂にこぞって飛び付いた。いつしか名前の代わりに彼女は、『レイテの英雄』と呼ばれるようになった。

 

 現実的にはあり得ないからこそ、夢中になる。この英雄譚は、物語であり創作物なのだ。ネットの海では既に、名前も分からない英雄が、レイテを生き抜く物語が生まれている。かくいう青葉も、それらを記事にして纏めてみたりもした。だから他の艦娘より、レイテの英雄に関しては詳しいと自認している。

 

「でもまさか、会えるとは思ってもみませんでした」

 

「最悪だ」

 

 長々と説明したことへの感想を、青葉は一瞬理解できなかった。

 

「一瞬見られたせいでそんなことになっていたとは……」

 

「本当に知らなかったんですか?」

 

「興味がないからな、噂など」

 

 ネットで物事を調べる際には、検索エンジンが用いられる。それは今まで入力してきた履歴から、興味のありそうなコンテンツを掲示してくれる。逆に言えば、興味のない物事は表示されないのだ。だからアーセナルにとって、この英雄談は存在しないも同然だったのだろう。信じられなかったが。

 

「それよりも衣笠、改めて聞くが提案はどうする?」

 

「勿論守るわ、ここまでしてもらっていたら申し訳ないもの。まあ、呑んでくれればだけど」

 

「呑むさ、二隻でも十分なところが、『五隻』に増えたんだからな。一回言ったが、手足が多いに越したことはない」

 

「待ってください、五隻? 誰ですか」

 

「――まさか、青葉?」

 

 聞き覚えのある声に、青葉は振り向いた。

信じられない光景があった、古鷹たちが生きていた時よりも、更に衝撃を受けた。

彼女が沈んだシチュエーションから、絶対に沈んだと信じ込んでいたからだ。

 

「神通さん……!?」

 

「そうでしたか、貴女たちもアーセナルに助けて頂いたのですね」

 

 彼女は、連合艦隊が崩壊した時、僚艦を逃がそうと一人しんがりを務めた艦娘、川内型に二番艦の神通に他ならなかった。

 もういい加減限界だった、青葉は衝動的に抱き着きたくなった。

 だが、全身が酷い傷に覆われているのを見て、躊躇した。

 

「どうしたんですか、その傷は」

 

 砲撃戦や雷撃戦で受けた傷には視えなかった。嫌な予感が過る。

 

「見た目ほど大した傷ではありません、大丈夫ですよ」

 

 あっさりと嘘をつく神通、その嘘が彼女なりの優しさなのは分かる。しかし脂汗を流しながらでは、痛ましいだけだった。

 

「修復剤はあったのか?」

 

「はい、一つだけですが」

 

「ならこれは加古に使わせて貰う」

 

 神通は無言でこくりと頷く。この基地は艦娘が使う前提だったから、修復剤も残っていた。しかしドッグ同様撤退時に破壊され、一つしか残らなかった。だが、それを探しに行かせるのに、ボロボロの彼女を歩かせるか?

 

 青葉は不満を抱く。確かに顔色が悪いのは加古の方だ、優先順位としては間違っていない。危険な傷ではないが、軽い傷でもないだろう。

 だが、そんな無茶をする彼女だからこそ、あそこでしんがりを務めたのだ。お蔭で私たちは今此処にいる。釈然としないが、文句など言える筈も無い。

 

「……ここは、てかあんたは?」

 

「この人が助けてくれたんです、それに初対面の人にあんたはないでしょ」

 

「そりゃ悪いな、あたしは加古だ。それであんた――じゃない、貴方は?」

 

 修復剤の効果により、ドッグから瞬時に出てきた加古がチラチラと辺りを見渡す。その後当然、アーセナルギア――もといレイテの英雄の実在に驚いたのは、言うまでもなかった。ともあれ全員助かった、史実に近い流れを辿りながらも生き残った。それを実現してくれたアーセナルに沸いたのは、底のない感謝の気持ちだった。

 

 

 

 

 加古が出たことで空いたドッグに詰め込まれたのは、青葉――ではなく青葉の艤装だった。

 神通や加古と違い、ダメージを受けていたのは艤装だけだったからだ。

 

青葉としては神通を真っ先に入渠させたかったのだが、次の修復剤が見つかるかも分からない今、時間がかかる入渠は避けたいとアーセナルは言う。

 

「それじゃあ、空母棲姫を沈めるのが目的ってことかい?」

 

「ああ、私は奴を殺したい。奴が死ねば統率は崩壊し、お前たちは助かる。すでに衣笠と約束している、今さらノーとは言わせない」

 

「難儀な状況になっちゃったねえ」

 

 現状を説明された加古が溜め息をついた。冷静に考える程、酷い状況だ。無数の潜水艦による包囲網と、ヘンダーソン飛行場による空からの監視。対する戦力は重巡四隻と軽巡一隻。アーセナルがいなかったら自殺を選んでもおかしくない。

 

 そのアーセナルだって、ミサイルは有限だ。深海凄艦はとにかく数が多い。肝心の空母棲姫に届かせる残弾がなければ意味がない。彼女の強さに縋り続けていては、道は開けない。

 しかし、古鷹の意外な一言が、状況を照らし出した。

 

「いや、大丈夫かも」

 

「どういうことですか?」

 

「私たちは救援を求めて、無線を飛ばし続けてたの。加古も危なかったし。でもお蔭で、ショートランド泊地と少しだけ通信ができた。今艦隊を再編成してる最中、もうすぐ救援も兼ねて、出撃できるって言ってた」

 

「本当ですか!?」

 

「だとしたら、姫攻略も相当楽になるが……裏を取らせてみるか」

 

 連合艦隊が来てくれれば希望が見える、姫打倒は夢ではない。

 ショートランド泊地の提督と連絡が取れれば、リンクの再接続もできたが、それは仕方がない。

 

 少しだけ不安なのは、連合艦隊がアーセナルと出会った時、どんな反応をするかだ。多分良い反応はしない気がした、きっと逃げ出す。これでお別れと思うと、少し寂しい。

 

「……冗談ですよね」

 

 何故そんな言葉が神通の口から出たのか分からない。

 神通の顔を見た青葉は戦慄した。

 痛みによる脂汗が、異常に増えていた。汚れで黒ずんだ顔が一瞬、デス・マスクに見えたのだ。

 

「連合艦隊は、何時出撃するのですか。聞けましたか」

 

 迫ってこそ来ないが、圧が凄まじい。

 

「あ、後二日後だって。あれから数時間経ってるから、もう少し短くなるけど」

 

「たったの、二日……ですか。不味いですね、時間がありません」

 

「どうしたの神通さん、何が不味いの」

 

「このままでは、私たちも、連合艦隊も……それどころかショートランド泊地まで壊滅してしまいます」

 

 青葉には、夢としか思えなかった。良い夢に見せかけて、最後にとんでもないことが起きる悪夢だ。だからオチがついた後、直ぐに目覚めるさ。しかしこれが夢なら、現実では全員沈んでいることになる。

 

「拷問から逃げた時もそんなことを言っていたな」

 

「このソロモン諸島は、単なる深海凄艦の拠点ではありません。新型の深海凄艦が開発されているんです」

 

「新型?」

 

「『白鯨』、空母棲姫はそう呼んでいました」

 

 白鯨という有名な小説があることを、青葉は思い出す。まず間違いなく本来の名前ではなく、コードネームだ。しかしイ級だのタ級だの、深海凄艦同士でも淡白な記号で呼び合う彼女たちにしては、凝った名前をつけている。名前そのものに、何らかの意味が込められているのではと、青葉は勘ぐる。

 

「空母棲姫はそれを、深海凄艦がこの戦争に勝利するための、最終兵器だと言っていました」

 

「何よそれ、どんな兵器なの」

 

「私も詳しくは、ただ空母や戦艦といった、大型艦を簡単に葬れる兵器だと」

 

「空母もか?」

 

 艦娘と深海凄艦の戦いは、WW2の近代海戦と違う部分が多くある。

 サイズの差を利用した隠密戦や陸上戦、普通の艦より必要な人数が少ない点。しかしそれでも、莫大な射程を持つ戦艦や空母が重宝されているのは変わらない。

 それが簡単に葬られてしまったら、この戦争のパワーバランスは崩壊する。

 

「はい、整備はこの基地でやっていたようです。もう移送されてしまったみたいですが」

 

「資材の多さに対して、警備が少なかったのはそういう理由か」

 

「深海凄艦からしたら、この基地は用済みなのでしょうね」

 

 撤退時に徹底して破壊していったのは、白鯨の証拠を残さない意味もあったのだろう。逆に言えば、基地一つを捨て駒にしてでも護りたい兵器だ。自然と信憑性が上がっていく。

 

「基地一つを犠牲にしてまで、ですか」

 

「ええ、深海凄艦は白鯨の存在が漏れないよう必死でした。だから……私を拷問して、他に生き残りが、つまり目撃者がいないか探そうとしていたんです」

 

 神通が若干言い淀んだ。先程大したことはないと言った傷が、拷問だと自白してしまったからだ。薄々察してはいたが、事実だと理解すると、胸が締め付けられる。青葉はそれから逃れようと、話を無理やり進める。

 

「でも、どうしてそれが、泊地まで壊滅することに」

 

「白鯨は正確に言えば、どんな状況でも大型艦を破壊できる兵器だそうです。例え太平洋の真ん中でも、鎮守府の目の前でも」

 

「無茶苦茶な性能じゃないですか」

 

「……そんな兵器、実在するの? あたしはちょっと信じられない」

 

 加古の疑問は、全員の総意でもあった。強過ぎる、言い換えれば都合が良すぎる。神通は信頼できるが、どうにも納得できない。

 

「残念ながら本当のようです、私も信じ切れてはいませんが、真実だと裏付ける計画が進んでいます」

 

 神通の顔が、更に蒼ざめた。

 

「信じられない性能ですよね、深海凄艦も同じことを感じているようです。だから彼女たちは、白鯨の性能を立証するための、『実地試験』を計画しています。それはもう下準備は澄んでいて、白鯨の整備待ちになっています」

 

「敵陣地で、性能を発揮。おい、まさか実地試験の場所は」

 

「ショートランド泊地です」

 

 みるみる内に、青葉の顔を神通と同じ色になっていく。今まで冷静さを保っていたアーセナルでさえ、ごくりと唾を呑んでいた。

 

「先程古鷹が教えてくれた、私たちを助けるための連合艦隊が、白鯨の演習相手です。バックアップの深海凄艦も、もう泊地近海に潜んでいます。決行のタイミングは、連合艦隊が出撃した瞬間を狙ってきます」

 

「つまり、つまりあれですか。青葉たちを助けようと連合艦隊が出撃した時こそが、青葉たちの最後なんですか?」

 

「増援の見込みも、帰る場所も無くなります。白鯨の整備は、あと一日で終わります」

 

〈第六戦隊と神通、アーセナル、聞こえているな。今この基地内のデータサルベージが終わった。神通の言っていたことは、全て事実のようだ〉

 

「白鯨も計画も事実か」

 

 青葉を的確に導いてくれたG.W、更にアーセナルが同意する。第六戦隊の精神に追い打ちがかけられた。誰も話そうとしない、「どうしよう」とか「どうすれば」とかもない。全員今の状況を呑み込むのが精一杯だった。

 

 だが、アーセナルと神通は全く違っていた。顔を青くしながらも、更に会話を――作戦を組み上げ始めたのだ

 

「白鯨の実在、性能は事実だろう。だからこそ私はこれがチャンスだと思う」

 

「やはりそう思いますか」

 

「失敗できないのは敵も同じだ。ここで白鯨をどうにかできれば、一気に空母棲姫の喉元まで喰らい付けるかもしれない」

 

「あと一日で白鯨を探し、破壊しなければいけません。連合艦隊が来れなくなったのは辛いですが、やるしかありません」

 

 やるしかない、神通の一言が耳に残る。青葉たちに向かって言った訳でも無いのに、絶対に届く明瞭な声に聞こえた。

この状況で尚前を向く神通の危うささえ秘めた勇気が、言葉を通して伝染する。やるしかない、やるしかない。自分に言い聞かせると、不思議と勇気が湧いてくる。

 

「やるしかない、だよね、青葉」

 

「やりましょう、古鷹、皆さん。ついて来てくれますか?」

 

 第六戦隊の旗艦ゆえに、そんな上から目線の言い方になってしまった。申し訳なくて顔を隠す青葉を、加古も衣笠も気にしない。

 

「神通姉さんを、一人で行かせやしないわ」

 

「真っ先に沈むのも、残されるのも御免さ」

 

 あの危うさから、神通を救い出さなければいけない。運命を覆すには、そう、やるしかないのだ。第六戦隊の中で、そんな意識が芽生え一つになる。一つの思いを共有できることに、青葉は更に勇気づけられた。

 

〈…………〉

 

 そんな青葉たちを、興味深く観察する存在に気づかないで。




140.12

〈おお、本当に繋がりました!〉
〈体内無線と通常の無線が繋がるとはな〉
〈体内無線?〉
〈そうだ、体内のナノマシンが咽喉(スロート)マイクの役目を果たし、声を出さなくても会話ができる。同じくナノマシンが耳小骨を揺らし、音声が聞こえる。今回の場合、お前たちの無線機に音声データになる電波を、ナノマシンが発信して会話を可能にしている〉
〈ナノマシン?〉
〈微生物サイズの極めて小さい機械類……そんな当たり前のことも知らないのか?〉
〈……一体何世紀先の世界から来たんですか〉
〈今と同じ2009年には、同様の技術は普及していたが。陸軍兵士システムセンター(SSCEN)ではすでに開発され、実戦投入が可能な段階だった〉
〈同じ2009年なのに、なんでこんな差が〉
〈深海凄艦のせいで文明まで停滞しているのだろう、代わりにオカルトな技術が発展した。艦娘、グレムリン、艤装に入渠。今だに信じられん〉
〈この世界の常識に関しては青葉の方が詳しそうですね、何か気になったら聞いて下さい〉
〈了解した〉

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