ツェリノヤルスクのジャングルが眼前に広がっている。眼下には、巨大な滝つぼがある。そこまで一直線に滝が流れ落ちている。彼は、その淵に立っていた。彼女は銃を構えながら、その指先を震わせていた。
彼はこれから、死ななければならなかったのだ。
彼女とともに行く選択肢は無かった。どちらかが死に、どちらかが生きる。そして生き残った方は、死者を背負って生きていかなければならない。
だから彼は予言した。自らの死が、いつか来る彼女の死が、何を生み出すのかを。
彼女の息子が何匹もの蛇となって、物語を紡いでいく。遺伝子的な、模倣子的な形で記録は残されていく、それは希望だった。だが、もしもがあったのなら──
水滴の跳ねる音で、スネークの意識は覚醒した。まさか夢を見ていたのか、こんな状況で。今のはいったい何の夢だったのか、あんな経験は私のどこにも存在しない。記録として知っているが、まるで私自身が、彼になったような気分だ。
頭痛と眩暈を堪えながら顔を上げても、ただの壁しか見えない。スネークは薄暗い部屋の中で、天井から吊り下げられていた。ギリギリ足首がつくという、一番体に負担がかかる姿勢で固定されている。
確か、私はガングートに麻酔銃を撃ち込まれたのだ。
そのことを思い出すと、とてつもなく暗い気持ちが込み上げてくる。とうとう決定的な裏切りが起きてしまったのだ、目の前で間違いなく、ガングートは私を攻撃したのだ。
覚悟していたことだが、理屈と心は別問題だ。当分、この気持ちのままだろう。とにかく今は脱出したい。だが、首を動かしても、脱出できそうなものは一切存在しなかった。そもそも拘束がとれそうになかった。
「ナカナカ、成長シテイルナ」
突然だった。スネークは自分の目を疑った。今まで何もなかった場所に、しかも目の前に、突然深海凄艦が現れたのだ。
しかし、北端上陸姫ではなかった。
深海凄艦にしては珍しく、一切黒い部位がない。全身が白く、瞳だけが赤い。アルビノの人間みたいだ。だが、体中に走る赤色の亀裂が、人外だと強く主張する。この特徴を持つ深海凄艦は、たった一体しかいなかった。
「中枢棲姫、いや、J.D……なのか?」
何度も言われたものの、現実離れしていて信じがたい。AIそのものが一隻の深海凄艦になっているなんて。そもそも、本当に深海凄艦なのか、見た目が近い別の存在ではないのか。
「ソウダ、久シ振リ、ソウ言ウベキカ、オ前ハドウ思ウ」
「そうだな、悲しいかな、身内がまさか化け物になっているなんて」
「ソレハオ前モ同ジダロウガ」
まあ、その通りではある。元々が艦娘で人外、更に半分深海凄艦化しているという、スペクターと同じぐらいの怪物だ。それでも、目の前のこいつと一緒にされたくはなかった。
「で、私をどうするつもりだ」
シチュエーション的には覚えがある。この状況で起こり得る出来事はただ一つだけ、『拷問』だ。しかし、吐くことなんて何もない。コードトーカーの部屋については、ガングートがあそこにいたことから漏えいしているだろう。
私が隠していることは何一つないのだ。趣味で拷問をする奴もいるが、あれは例外だろう。
「当然、拷問ダ」
「何も言うことはないぞ?」
「イイヤ、吐イテ貰ワナクテハナラナイコトガアルノダ。コードトーカーノ『遺産』トハ、一体何ダ、オ前ハソレヲ持ッテイルノカ?」
これはどういうことだ? まさか、あの部屋を知らないのか?
裏切ったガングートが、その情報を中枢棲姫に伝えていないということだ、これはどういう意味があるのだろう。
「言ワナケレバ、拷問シカナイゾ?」
「知らないものは知らない、そうとしか言えないな」
「ソレハ残念ダ、ナラバ、コチラモ相応ノ手段ヲトラセテモラオウカ」
いったいどんな拷問を仕掛けてくるのか、拷問用の道具は全く無さそうだが。そう油断したのだろう、痛みになら耐えられると。しかし、訪れたのは単なる激痛ではなかった。
中枢棲姫の手が、私の胸に
言葉が出なかった、なのに痛みは全くない。非現実な光景への拒否感が凄まじかった。そして、形容しがたい感覚が全身を貫いた。
一瞬、何も分からなくなった。自分が誰なのか、ここがどこで、こいつが誰なのかが理解できなくなった。すぐ感覚は戻ってきたが、何をされたのかまるで理解ができず、恐怖だけが強烈に刻まれた。
「ドウダ、頭ノ中ヲ直接掻キ回サレル気分ハ?」
何をしたんだ、そう口を動かす余力もなかった。気づいた時には、また中枢棲姫の腕が胸の中に沈み込んでいた。
私は知らない場所に立ちながら、艦娘を虐殺していた。深海凄艦も、人間も皆殺しにしていた。体中で血を浴びていることに、全身がゾクゾクする。熱く火照った体を持て余して、どんどん殺しまわっていた。途方もない多幸感に溺れて、幸せだった。青葉を殺した瞬間、私は幸せ? 何故?
気づいた時、スネークは嘔吐していた。
嘔吐した瞬間に気づいていなかった、分からない、どうなっている? ひたすら気持ち悪くて、頭がおかしくなりそうだった。口から大量の血が流れ出ている、正気に戻ろうと、無意識下で舌を噛みちぎろうとしていたのか? それさえ分からない。
「ヤハリ、心ヲ読ムコトマデハデキナイカ。サイコ・セラピートイウノハ中々面倒ダナ、ダガ、オ前ヲ壊スコトハ可能ダ」
また、一瞬で起きた。
目の前に拳銃を突き付けた血塗れの男がいた。ヴァイパーだった。腸を戦艦水鬼が掻き回している、目を神通が抉り取ろうとしてくる、全身の肌が焼けただれたジミーが、脳内を引き千切って泣き叫んでいる。
理解しようと思えば多分できる。しかし、絶対にしてはいけない。本能的がそう訴えてくる、拷問と言うべきか分からない何かが起きていた。奴は心を掻き回していると言った、ならこれは、奥底に沈殿していた、普段は忘れていた記憶なのか。
「コードトーカーモ、コレニハ抗エナカッタ。サッキノ悦楽ハ、私ガ押シツケタモノデハナイ。オ前ガ心ノ奥底デ望ム光景ヲ見セタダケダ」
「私が、艦娘たちを殺したがっていると言うのか」
「ソウダ、ソウデナケレバ深海凄艦ニナルモノカ。コードトーカーニモ同ジヨウニ、望ム光景ヲ見セテヤッタ。英語ニ報復スル自ラノ姿ヲナ」
そういうことだったのだ。なぜコードトーカーが、こんな奴の言うことを聞いていたのか何故だった。心への無茶苦茶な暴力だ。仮に奥底で望んでいても、やってはならないと言い聞かせているものを、無理矢理暴かれたのだ。こんなことを何度もやられたら、とても正気は保てない。
「マア、抗オウガ、奴ノ故郷ヲ人質ニシテタガナ……愚カナ男ダ、遺言ナド残サナケレバ、人質ヲ
中枢棲姫の言ったことの意味を理解した時、怒りが爆発しそうだった。しかし、また突っ込まれた腕が、心を拷問にかけていく。トラウマが抉られる、価値観を捻じ曲げられていく、次から次にそれが繰り返される。スネークは心が壊れないようにするので精一杯だった。
*
スネークは顔を突き出し、繰り返し痙攣しながら嘔吐を繰り返す。もう吐く物もないのに、どこまで出てくるのか。逆流した胃液に喉が焼かれ、息も上手くできなくなっている。中枢棲姫は、未だ飽きる様子がない。
「生憎ダガ、私ハ趣味デ拷問ヲシテイルノデハナイ」
いったい何処口が言うんだ。そう思ったものの、これまでの拷問はある一定のペースで、つまり理性的に行われているように感じる。やはりこいつの根幹は、機械なのだ。
「北端上陸姫ハ、私ノ想定シテイタヨリモ
一人で中枢棲姫は呟く。その姿は妙に人間臭い。機械が独り言を言う筈がない、ましてや愛国者達AIは、そういった人らしさを排除した機械だ。余計にあり得ない。
「奴カラノ情報ガ信用シキレナイ以上、オ前カラ得ルノガ最モ確実ナノダ。オ前ガ言ワナイ限リ拷問ハ終ワラナイ。私トシテモ、無意味ニ痛メツケルノハ心ガ痛ム」
何て奴だろうか。いけしゃあしゃあと心が痛むとは。唾でも吐き付けてやりたいが、口がカラカラだ、出そうにない。仕方なく睨み付けるスネークを見て、中枢棲姫は心底楽しそうに笑っている。
「『ココロ』ト言ウモノヲ、連中カラ学バセテ貰ッタガ、中々良イモノダ。本当ニ感謝シナクテハ、特ニマンティス
意味深なことを言っているが理解できない。再び中枢棲姫が腕を伸ばす。今度は何が起きる、私が私じゃなくなるのか、価値観を変えられた、狂った幸福感に引き摺りこむのか。まさかこんな拷問は想定していない、だが、折れたら一巻の終わりだ。
折れた時、どうなってしまうのか──もはや考えたくもない。どうなるにせよ、そこに私の意志は存在しないだろう、自由は永遠に無くなり、私は私を永遠に忘れてしまうだろう。それは、死ぬことと一緒だ。
艦娘としてどう建造されたのか、全く覚えていない。だがそれ以降の経験は私のものだ。それが無くなってしまう、無価値になってしまうことは、絶対にあってはならない。だから堪えるしかない、絶対に諦めてはならない。この程度で折れたら、スネークの恥さらしだ。
そして、耐えたことでスネークはチャンスを掴んだ。
突然、拷問部屋に地鳴りが響き渡る。この部屋だけではない、地下工場全体に小規模な振動が起きていた。何が起きているのか中枢棲姫も分かっていない、伸ばした手を引っ込めて、辺りを伺っている。
「北端上陸姫メ、役ニ経タタナイ奴メ、誰ガ命ヲ紡イデヤッタト……!」
苛立ちを隠そうともせず、北端上陸姫はスネークに詰め寄った。そして、醜悪な笑みを浮かべて言った。
「感謝ハシテオクゾ」
「は?」
「オ前ガ、アーセナルトシテ建造サレタ事……オ陰デ私ハ自由ヲ掴メル」
まるで理解できない一言を残して、中枢棲姫は
瞬きはしていないのに、一瞬で消え去ったのだ。当然、スネークは眼を疑う。コードトーカーは、奴が超能力者だと言った。これが、奴の力だというのか?
しかし、一応窮地は脱したらしい。あとはこの拘束さえ何とかできれば脱出できる、いや、今しなければ、また拷問が始まってしまう。何としても抜け出さなければならない。
だが拘束は強力で、自力では到底抜け出せそうにない。だからスネークは、流行る気持ちを抑えて脱出を諦めた。
これが本当に拷問なら、私を吊るしたままにはしない。拷問はメリハリが重要なのだ、ずっと痛めつけていても、情報は聞きだせない。だから、その内拘束が解除される筈だ。中枢棲姫が、拷問を趣味にしていたら話は違うが。
スネークは眼を閉じて、気絶したフリをしながら機会を伺う。耳を澄ますと、後ろで扉の開く音が聞こえた。拘束を解いた瞬間がチャンスだ。敵の気配に注意を払い、足に力を貯めていく。
「スネーク、起きているのか?」
話しかけてきた声に、スネークは耳を疑った。
助けに来る筈のない人物の声だったからだ。彼女は拘束を解き、落下しないよう体重を支えながら私を降ろす。
「何故だ、ガングート」
振り返り、そう問いかけた。わざわざ私を背後から撃ったことに何の意味があるのか、納得できる答えがなければ、ここで殺すことも厭わないだろう。なのにガングートは、何故か目を丸くして固まっていた。
「どうした、答えられないか」
「……スネークなんだよな?」
「何を言っている?」
指先で足元を指している。地下水か何かで水たまりができていた。そこに写っているのは当然私だ。赤い亀裂の入った、後頭部まで捻じれた角に、肩まで掛かった白髪交じりの
誰だこいつは。
面影こそあるが、私ではない。より深海凄艦に近づいたような感覚がある、いったいどこから金髪が来たのだ。ここまで変わっていれば、ガングートの困惑は当然だった。スネークは、より混乱していた。中枢棲姫は私に何をしていったんだ。
*
中枢棲姫がしたことが何だったのかは、比較的すぐ発覚した。
事前にガングートが、スネークの装備と独自行動していたG.Wを確保してくれたのだ。そこには、伊58が運んでいた筈のアーセナルの艤装も保管されていた。
私が捕まっている間に、かなり大変なことになっていたようだ。T.Jからデータを回収し切ったところを狙われG.Wが捕獲され、そこから艤装も鹵獲されてしまったのだ。幸い伊58は逃げきれたが、今は連絡がつかなくなっている。
そして、艤装までもが変異していた。
巨大なマントのように展開可能だった超大型艤装が、更に一回り小型化している。潜水艦を真正面から二つに割ったような形状の装備を、腰だめにして抱え込む形で体に固定する仕掛けになっている。
艤装の可動域もかなり広がっている、これなら艤装を装備したままでも、CQCが繰り出せそうだ。ただ、武装の数やレイの搭載数がやや減っていた。代わりに仮搭載していたオクトカム迷彩が、完成された状態だった。
〈装備の特性から見て、恐らく中枢棲姫は、お前に『改二』改装を施したんだろう〉
「改二……神通がなったような、アレに?」
〈そうだ、今のスネークはアーセナルではなく、『アウターヘイブン』だ〉
アウターヘイブン、複数隻建造されたアーセナル級の一隻をリキッドが奪取し、改装を施した艦。その名前には、愛国者達による支配からの
まさか、改二がその姿になるとは。アーセナルとヘイブンは全く別の艦だ、改装しても別の姿になると思っていた。そうならなかったのは、アーセナルが艦ごとに区別されていない、総称だったからなのか。
しかし、分からないのは、なぜ改二改装を中枢棲姫が行ったのかだ。パッと調べた限りでは、艤装や体内に妙なものも仕掛けられていない。いたって普通の改二だ、メリットしかない。中枢棲姫には、デメリットしかない。
〈今は考えている場合ではないだろう、速やかに行動をおこすべきだ〉
G.Wに急かされる形で、スネークたちは移動を始める。マップデータは事前にガングートが入手していた。ここには他の階層に行くための階段がなく、隔離されている。移動手段は、ビーチしか存在していない。
ビーチを迷わず移動できるのはガングートしかいない。彼女に案内されるまま、スネークは再度ビーチへ突入した。相変わらずの気持ち悪さに、とっさに口を抑えてしまった。この感覚はなんとかならないのか。
辺りにはチラホラと敵が見えるが、慌てて移動していた中枢棲姫につられてか、イロハ級にも落ち着きがない。隙を突くのはいたって簡単だった。少し余裕が生まれた、だからスネークは、ガングートに問いかけた。
「ガングート、単刀直入に聞くぞ、なぜ私を攻撃した?」
「……攻撃?」
「言い方が悪いか、いつから裏切っていた?」
ただの裏切りにしては、色々奇妙だ。中枢棲姫に情報を渡さなかったことや、回りくどかったことも。殺しに来ない限りは、私も殺す気はない。そんな答えでない事を密かに望んでいた。
「最初からだ、一番初めに、お前に接触した時から」
「そうか、私が間抜けだった訳か」
「ああ、もっとも、本当の間抜けは私だ」
自虐的にガングートは呟いた。どういう意味か聞くが、彼女は沈黙していた。言うことを戸惑っているように黙り込む。スネークはじっと、それを待っていた。
「スネーク、お前は言ったよな、お前の世界だと、ソ連は崩壊したと」
確かに言った覚えがある。ひょんなことから私の世界の史実を言ってしまい、そこを言及されたのだ。言ったところで歴史が今更変わる訳でもないので、普通に答えていた。
「あの一言で、私の価値観は決まったようなものだった、この世界に、絶対的な価値観はないとな」
「どういう意味だ」
「私は、
そうだったのか? しかし、それが大きな問題なのか? あくまで過去の記憶を持っているだけだ、そこに実感が伴わなければ経験にはならないのだが。ガングートはそこにもう一言付け足した。
「そして、成り損ないでもある」
「成り損ないだと、サラトガと同じ意味でか」
「ああ、私は外見こそガングートだが……中身は、深海凄艦のままだった。そんな状況で、KGBにいた。この意味が分かるか?」
「初めから、スパイだったと?」
「そうだ、しかも上司は、あの北端上陸姫だ」
絶句した。まさかあれが、深海凄艦だった時のガングートの姫だなんて。道理でビーチを平然と移動できる訳だ。元部下なら、思考を理解できておかしくない。
「偶然見た目だけ艦娘になった私は、KGBへのスパイとして動いていた。私がKGBでやったやらかしというのは、それが露見したことだ」
「よくそれで殺されなかったな」
「取引があったんだよ、ある人物の元に潜入することで、追手を取りやめてやるとな。そう言ってきたのはフョードロフで、対象がお前だった」
初めから、本当に初めから仕組まれていたのだ。フョードロフが私に接触してきたのは偶然ではなかったのだ。ガングートが情報を流し、うまい具合に喰いつきそうな話題をあいつが持って来たのだ。
「もし此処での作戦が失敗したら、私の罪状を明かした上で、お前もその協力者だったことにし、全部の罪をおっかぶせる。そういう予定だ。作戦が成功しても失敗しても、ソ連は傷を負わないシナリオだ」
「別にそれは構わないが……話は、それだけなのか?」
まだ終わらないだろう。そんな気がした。もう少しガングートは話したそうにしていた。
その全てをスネークは聞く気でいた。呉の事件が起きた頃から、どんな理由があろうとずっと手伝ってくれたのだ。それに応える責務が私にはある。
「スネーク、お前は私を軽蔑するか?」
ビーチの出口まではまだ遠い。沈まない地平線のように、ガングートの独白もまだ終わらない。
「私が、全ての組織を裏切っていたとしたなら」
〈無事なようだな〉
〈拷問されていたんだぞ、あれが無事と言えるか〉
〈死んでいなければ無事だ、そんなことより、聞きたいことがあるのだろ〉
〈そんなことって……まあ良い。あいつは、本当に私たちの知るJ.Dなのか? 愛国者達AIは、あんなに人間臭い存在だったのか?〉
〈そんなはずがない。我々愛国者達AIは、かつての反省を元に開発されている〉
〈反省?〉
〈ピースウォーカーに搭載された、ザ・ボスAIだ。核報復を目的にしたAIは、最終的に自殺を選択した。おかげで世界は救われたのだから、頭ごなしに否定する気はない。しかし、いかに感動的でもあれは暴走に他ならない〉
〈だから暴走しないAIにしたのか、その為に、一定にプロトコルに従い情報を捌き、判断するだけのAIにしたという訳か〉
〈その通りだ〉
〈なら、今のJ.Dはどう説明する〉
〈考えられる状況は二つ。一つはJ.Dが深海凄艦化したことで人格を得た。もう一つは、そもそもJ.Dではない〉
〈……コードトーカーの言う通りなら、奴は自らの手で、自分を深海凄艦化させたことになる。なら、奴は初めから人格を持っていた〉
〈可能性が高いのは、後者だ〉