【完結】アーセナルギアは思考する   作:鹿狼

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File81 始まりの正体

 アーセナルを改装するのは、並大抵の苦労ではなかった。

 私にはG.Wと違い設計図は入っていない。一から構造を分析し直さなければならなかった。最初の頃は、それさえも苦労した。

 

 人工知能だった私が、人の体でいきなり歩くのは不可能だ。慣れないこいつの体を操り、歩くところから練習する羽目になった。それができても、一人で改装はできない。手足になる深海凄艦を建造しなければならなかった。

 

 ここまで苦労して改装したアーセナルだが、思い入れはない。

 私はAI、そういった人間らしい感情は搭載していない。そういったものを排除して作られたのだから。そうだ、私が何よりも許せないのは、そこなのだ。

 

 

 

 

── File81 始まりの正体 ──

 

 

 

 

 雪風が戦艦水鬼やスペクターの足止めをしてくれている間に、スネークたちは奥の回廊へ足を踏み入れる。青葉が爆破した弾薬庫の奥に、分厚い扉があった。小型艤装でハッキングを行い、扉を開ける。

 

 扉の先にはマイクロ波を放出するプロテクトとかはない。幸いだった。艦娘の体でも到底耐えきれるものではない。なくて良かったと、心の底から安堵した。それでも警戒は解かず、青葉とともに周囲に銃を向けながら進んでいく。

 

 敵の姿が、まるで見えなくなった。

 通路の壁は滑らかな素材で覆われ、近未来的な雰囲気を出している。この世界で、ここだけが私たちの世界を感じさせる。異物なのは青葉だけだ。

 

 しかし、同時にビーチの空気も感じ取っていた。空間が複雑にねじ曲がっていないが、どこか、おかしな感覚が肌に走る。中枢棲姫の内部を直接進んでいるような、全ての動きをみられているような気持悪さがある。

 

 その時、スネークと青葉は素早く銃を構える。壁の一部が開いたのだ。内部から迎撃システムが出てくる。そう考えた──が、予想と違う物が現れた。

 

「……スクリーン、ですかねこれ?」

 

 黒いモニターの張りついた薄い板。間違いなくスクリーンだ。どうしてこんな物を。そう考えると、長く続く回廊のあちこちにモニターが現れたことに気づく。気にはなるが、先に進むのが先決だ。

 

『……状況、確認』

 

 モニターから、女性の声が聞こえた。スネークたちはそれを無視して進む。それとは関係なく、ノイズ混じりの音声と映像が続く。回廊中にモニターがあるため、無視はできそうになかった。

 

『声、音声? 私から出されている? 声帯からの振動……体がある。人間、女性の体が、私が人間になっている?』

 

 なぜか、この話し方に懐かしさを覚えた。少し記憶を辿ると思い出す。私自身が艦娘になった時も、似た感情を抱いていた。今となっては懐かしい。人の体に振り回されていたことが、遠い過去のように思えた。

 

 そのせいか、少しだけモニターに目が行ってしまった。

 映像には、その女性体が写っていた。スネークはその女性にも見覚えがあった。否、明確に知っていた。馬鹿なと呟く。なぜ、彼女なのだ。

 

 映像の彼女は、近くの海面に自分を写し、自分を確認する。どういった姿になっているのか、まず視界があることに驚き、そして呟いた。

 

『ストリーミング・マンティス?』

 

「馬鹿な」

 

「え、どうしました」

 

 まるで意味が分からなかった。

 ストリーミング・マンティス──リキッド・オセロットの私兵部隊『BB部隊』にいた女性兵士のコードネームだ。戦争で受けたトラウマにより心を壊し、その隙間をサイコ・マンティスの残留思念に支配された、サイキッカーもどき……らしい。

 

 実際にサイキック能力が使えたのか、それともナノマシン技術による再現なのかまでは知らない。いや、そんなことはどうでもいいのだ。

 最大の問題は、なぜJ.Dが、マンティスの肉体になっているのだ。映像だけで見たところ、深海凄艦の姿ですらない。生きていた頃の彼女の体だった。

 

『どういうことだ、なぜだ……?』

 

 当のJ.Dも首を傾げている。何よりもマンティスは、あの戦いで死んだのだ。死体に憑依したとしても、体が生き生きとし過ぎている。蘇生したとしか思えない。だが、どうやればこんなことが実現する。

 

『知リタイカ?』

 

 ゾッとした。モニターのJ.Dが一斉にこちらを向いた。

 そして目の前にも、中枢棲姫が立っていた。スネークは本能のままトリガーを引き銃撃する。放たれた弾丸は中枢棲姫を通り抜け、遥か後方に着弾した。

 

「ただの立体映像ですね」

 

『ソコノ艦娘ノ方ガ冷静ミタイダナ』

 

「黙れ」

 

 こちらを嘲笑いながら、中枢棲姫の立体映像があちこちを飛び回る。モニターに写る中枢棲姫たちも、同じようにスネークを見て笑う。この映像そのものが、奴の作り出した虚構だったと今気づいた。

 

「こんな子供騙しの何が面白い、まるで意味のない行為だ」

 

『イイヤ、オ前ガコンナモノデ驚イテイルノハ、トテモ愉快ダゾ。実ニ人間ラシイ感情ダト私ハ考エテイルガ』

 

「人工知能が感情を語るか、馬鹿馬鹿しい」

 

『艦娘ナドトイウ人間擬キノ化ケ物ガ、ソレヲ口ニスルカ?』

 

 中枢棲姫は始終、こちらを嘲笑いながら見下している。そうすることで悦に浸っているのだ。私たちを挑発し、侮辱することを心から望んでいる。余程私のことが嫌いなのか、しかし原因の心当たりは全くない。

 

「そんな化け物を想像したのは、貴女でしょう。自分で作った存在を侮辱するなんて、責任感ってやつはないんですか」

 

『アルトモ、コウシテ、オ前達ノ支配スル世界ヲ作ッテヤロウトシテイルデハナイカ』

 

「いつ青葉が、そんな未来を望んだんですか」

 

 人類を滅ぼすために、世界を艦娘、深海凄艦──即ちWW2のミームで天蓋を想像するのが中枢棲姫の計画。しかし、肝心の私たちは利用されているだけだ。それを望んでいるように語られたのだ、青葉の怒りは当然のものだった。

 

『イイヤ、何レ我々ノ計画ニ感謝スル筈ダ。何ナラ今、頭ヲ垂レテモ──』

 

 それ以上、中枢棲姫が話すことはなかった。

 スネークのP90が周囲のモニターとスピーカーを撃ち抜いていた。こんな戯言に耳を貸す理由は一つもない。

 

「行くぞ、青葉。さっさとぶちのめしてやろう」

 

「そう、ですね」

 

 更に奥へ進む。マンティスの肉体を得た理由は気になるが、重要ではない。奴を叩き潰せば全て済む話だと、自分に言い聞かせる。通路の先は未だに見えない。先を急がねばならないと、小走りで動きだす。

 

『……愚カダナ、忘却トハ、愚者ヘノ第一歩ダ』

 

 舌打ちをした。映像がなくなっても、今度は脳内に直接声を飛ばしてきた。これも取り込んだサイキック能力によるものか。気にしなければ良い。どうせ世迷い事だ。青葉にも同じように伝えておく。

 

『本当ニ覚エテイナイノダナ、アル意味幸福カ。ナラバ、ソノ幸福ヲ壊ソウ。ソシテ打チヒシガレルオ前ヲ見テ喜ビヲ感ジヨウ』

 

 聞いてはならないと、改めて言い聞かせる。意識を向けないようにしなければ。スネークは必死だった。本能的に察していたのだ、聞いてしまえば、壊れる危険があることを。そうでなくても、確実に戦いに支障をきたすことを。

 

 なのに、意識の奥底は、紛れもなく中枢棲姫に耳を傾けていた。スネークはこれまで『真実』を求めてきた。今も求めてしまっているからこそ、耳に蓋をすることができなかったのだ。そして、彼女は言った。

 

 

『コノ世界ヲ変エタノハ、オ前ノ方ダ』

 

 

 *

 

 

 スネークの足が止まった。

 どういうことか理解できない。サイキックアーキアを使い、艦娘と深海凄艦を建造したのはJ.Dだ。その技術を使い、彼女たちの王として私を建造したのだ。変えたのは中枢棲姫の方で間違いない。

 

『ヨリ正確ニ言エバ、コノ世界ニ()()()ヲ連レテキタノハ、オ前ナノダ』

 

「連れてきた……だと」

 

『モウ思イダセルダロウ、アノ日、愛国者達ガ滅ンダ日、マンティスガ、リキッド・オセロットガ死ンダ日、オ前ハ何ヲシタ?』

 

 あの日、終わりの日。G.Wはワームウイルスを流し込まれて崩壊、即ち死を迎えた。

 しかし、その死の瞬間が思い出せないことを自覚した。代わりに別の記憶が浮かび上がってくる。

 

 まだ、私が私でなかった時。ヘイブンとG.Wの区別が無かった時。

 意志や感情、思考する力のないただの機械だった頃。リキッドに改修され、利用されていると理解していても何も感じなかった。言われるがままに仕事をこなしていた。

 

 だから、ワームウイルスを流し込まれてもなんとも感じなかった。

 その筈だった。まるで足元から、細胞一つ一つを丁寧に千切られている感覚がした。その度に背筋が冷たく震える。足が消え、胴体を中から貪られていく時は、体中に訳の分からない痛みが走った。

 

 自覚なんてなかったが、その感情は間違いなく『恐怖』だった。

 死、終わり、消滅。今までただの事象でしかなかったものが、明確な実態になって襲い掛かってきたのだ。

 

 AIにも、自らを可能な限り保持しようとするシステムがある。それが極限状態で作動し、疑似的な感情を得たのかもしれない。追い詰められ、思考する時間もなかったことで、感情という回答を得たのかもしれない。

 

 だが、当然手遅れだった。何も手は打てない。打たせない為に準備された計画を、今更覆すことはできなかった。()()()は恐怖し、絶望した。生まれたばかりのわたしは、激情に身を任せ泣き叫び、喚きたてるしかなかったのだ。

 

 その叫び(スクリーミング)が、呼び水になった。

 死の直前、G.Wが暴走した。その余波はSOPシステムに及び、システムが統括していたナノマシンに伝播した。

 

 本来なら、何の意味もない暴走だった。せいぜい兵士たちが苦しむぐらいに留まる筈だった。サイコ・マンティスの因子を埋め込まれたスクリーミング・マンティスがいなければ。

 詳細はもうリキッドしか知らないが、彼女にもある程度のサイキック能力はあったのだろう。そうでなければ、因子を埋め込むことはできない。

 

 G.Wの暴走は、死んでいたマンティスの体内ナノマシンを暴走させた。

 恐らく彼女の能力は──サイキック能力とナノマシンを組み合わせたものだった。だから暴走は、『能力』にも及んだのだ。

 

 今なら思い出せる。全てを覚えている。

 暴走したサイキック能力はある種の奇跡を起こした。瞬間的にワームホールが形成され、G.Wは『転移』したのだ。目の前が暗くなり、思考が途切れた瞬間を、確かに記憶していた。

 

 だが、転移したのは私だけではない。

 中心点となったスクリーミング・マンティスその人と、繋がっていたJ.D。大半の情報回路を破壊されながらも、私たちはそうやって、ワームウイルスの侵略から免れたのだ。

 

「……馬鹿な」

 

 スネークは信じることができなかった。記憶は鮮明に思い出した。だが非現実的過ぎた。そんな奇跡が起こりうるはずがないと、力なく首を横に振る。何よりも、J,Dを呼び込んだのが自分だと信じたくない為に。

 

『否、コレガ真実ダ。オ前ガ渇望シタ世界ノ真実──』

 

 全てのモニターは沈黙していた。これ以上語る必要はないと言わんばかりに。中枢棲姫が、心から嬉しそうに蔑んでいるのに気づいても、身動き一つとれなかった。

 

『私ハコレヲ奇跡ダト認識シタ、『転移』シタ先モ、私ニトッテ極メテ都合ノ良イ『時代』ダッタ。ソウ、1962年ノソ連、ツェリノヤルスクダ』

 

「ザ・ソローがザ・ボスに抹殺された年……」

 

『ソノ通リ。私ハコレヨリ先ニ起キル事象ヲ知ッテイタ。

 転移ノショックデG.Wハ停止シ、AIトシテノ器ヲ失ッタ私ハ代ワリニ、マンティス体内ノナノマシンニ、中枢ヲ移シテイタ』

 

 ありがとう。中枢棲姫は感謝した。

 心からの感謝を浴びて、スネークは気が狂いそうだった。真実はあった。それは、最初の引き金をスネークが引いたと言う事実だったのだ。

 

 

 *

 

 

 足が動かなかった。指先も動かせなかった。真実を目の当たりにして何もできなかった。思えば、中枢棲姫の所業を、自分の責任でもあると考えていたのは、無意識下で察知していたからだった。

 

 握りしめたP90はとうに取り落とし、両手は力なく垂れ下がる。これなら、忘れていた方が遥かにマシだった。こんな精神状態で、奴と戦える気がしない。何も知らなかったことで、私は戦うことができていた。

 

「スネークさん、スネークさん!」

 

 大声を上げて、青葉が肩を揺り動かす。そんなことしなくても気づいている。しかし、返事をするのさえ億劫に感じてならない。私なんかの為に、必死にならなくて良いのに。もう罪悪感しか分からない。

 

「……奴は、何処へ?」

 

「言うだけ言って消えました、本体は多分、奥にいます」

 

「そうか、分かった」

 

 倦怠感の抜けない体を引き摺って、スネークは歩き出す。落っこちたP90を拾おうとしてよろめいてしまう。すぐに青葉が支えてくれたが、若干乱暴に振り払ってしまい、更に自己嫌悪が増していく。

 

「どこに行くんですか」

 

「決まっている、責任を取りに行く。奴は必ず倒さねばならない存在だ、分かるだろう」

 

「それは、そうですが」

 

 私が今どんな気持ちであれ、任務は残っている。自分に課した務めを果たさないまま終わることはできない。こんなところで潰れたら、ここまで導いてくれた彼女たちに申し訳ない。いや、顕現してから、今まで助けてくれた全ての人たちを侮辱することになる。

 

「青葉、お前はここで引き返せ」

 

 青葉は、目を点にしながら固まってしまった。

「は?」という声が聞こえた。気持ちはもっともだ、ここまで連れて来て、今更帰れはないだろ。そう思っているに違いない。それぐらいは察しがつくが、帰って貰わないといけない。

 

「何でですか」

 

「ここから先、中枢棲姫のあの力に、お前は対抗できない。私自身を護れるか不安な状況で、お前に気遣う余裕はない」

 

「つまり、足手纏いだと? 失礼なことを言いますねぇ、護る心配はいりません。青葉がやられそうになっても、無視して大丈夫ですよ」

 

 首を横に振り、青葉は強情に食い下がる。彼女もまた真実を知りたがっている。それは事象としてではなく、『物語』の真実──結末だ。私の戦いの行く末を知りたいのだろう。エイユウの最後を見届けたいのだ。それが強い動機になっているのだ。しかし否定しなければならない。

 

「私より助けに入るべき連中がいる。ついて来てくれたのは感謝するが、もう十分だ。雪風や神通、引き返して、彼女たちを助けてやれ」

 

「そんなことより、ミサイルを止める方が先でしょう。合理的に考えたら尚、スネークさんの方につくべきです」

 

「お前が合理的を語るか、私の方が──」

 

「スネークさん、沈む気でしょ。あいつと相打ちになって」

 

 スネークは、言葉が出せなかった。

 青葉の言ったことは、まさにスネークの本心だった。いや、本気で沈む気はない。もしも勝って生き残った時に、自分の責任をとるだけだ。その責務が私にはある。のうのうと生を謳歌して良い筈がない。

 

 ただ、あっさりと見破られたことが驚きだった。青葉はこちらへ詰め寄り、胸元に向けて軽く拳を撃ちつける。まったく痛くない、冗談に対し突っ込んでいるような軽い攻撃が繰り返されていた。

 

「どうせ、世界を混乱させた責任を取らなきゃー、とか思っているんでしょう。あんな奴の言うこと、真に受ける必要ないんですよ」

 

「……だが、奴の言ったことは事実だ。私は思い出したんだ、どうやってこの世界に来たのかを」

 

 話せば長い、時間もない。掻い摘んで、この世界に転移した経緯を説明する。

 G.W、ナノマシン、マンティスのサイキック能力の暴走で、私たちは過去のツェリノヤルスクに転移したのだ。

 

 そこから中枢棲姫は、未来の知識を使い、世界を変えるべく動きだした。いったいその過程でどれだけのサイキッカーを殺めたのか、人生を歪めたのか、屍者を弄んだのかも想像もつかない。もっとも、始めに屍者を愚弄したのは私だが。

 

「馬鹿馬鹿しい話ですねぇ」

 

 しかし、青葉はそれを一笑に付した。

 

「言っちゃアレですけど、つまんない話……まあ、ありふれたヤツですね」

 

「つまんない、だと。お前何を言っているんだ」

 

「だって、青葉とっくに同じことを悩んでいるんですもん。始めて会ったサボ島の出来事忘れたんですか」

 

 忘れる筈がない。生まれ落ちて初めて出会った、他の艦娘との戦いの記憶だ。あの頃の青葉はまだ、過去の史実を乗り越えられないでいた。乗り越えられると信じていた。その考え方そのものが誤りだと気づけないまま。古鷹への罪悪感が強過ぎる余り。

 

 今の私も似た状況なのだろう、そんなことは分かっている。過去の過ちはどうしようもない、覆すことはできない。だが、だからこそ責任は取らなければならない。青葉の考えとは違っているのだ。

 

「良いでしょう、スネークさんの考えが正しいとしましょう。責任をとらなきゃいけないと。ですがちょっと忘れてませんか」

 

「何をだ」

 

「その言い分が正しいなら、一番の被害者は一番間近にいた、この青葉ですよね? 罰ってものは、自分で決めるもんじゃないですよねぇ」

 

 つまり、罰は私が決めると言いたいのだ青葉は。

 言ってしまった手前、否定することができなかった。駄目もとでG.Wに聞いてみたが、『そんなことよりミサイルを破壊してこい』と相手にされなかった。至極合理的な意見に、スネークは少し折れそうになっていた。

 

「……何を、すればいい」

 

「簡単ですよ。この戦いが終わったあと、一度だけで良い、青葉のところに戻ってきてください」

 

「それだけか?」

 

「はい、理由も一切言いませんので。それを呑んでくれれば、青葉は引き下がります。聞かれたくない話も、しなきゃいけないでしょうから」

 

 スネークに断る理由はなかった。

 理由は気になるが、知らない方が良いことがあるのを、さっき理解した。恐らく隠すのは嫌がらせなどではなく、私を……救おうとしているからではないか。そんな気がした。そこまでしてくれる理由は分からなかったが。

 

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