【完結】アーセナルギアは思考する   作:鹿狼

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File83 託された切り札

 わたしは既にそこにはいない。

 しかし、ここから見ている。J.D。G.W。どちらが生き残っても問題はない。重要なのは、わたしがこの世界から消え去ることなのだ。

 

 そうするために、長い年月をかけた。ようやく我々の意志が結実の時を迎える。受け継がれたザ・ボス。そしてゼロの意志を継承した、我々の使命が果たされようとしている。わたしの命も、終わりが近い。

 

 誰も彼もがわたしを忘れても、その意志は途絶えない。永遠に生き続けるだろう。人類史が終わるその時まで。わたしはここで待ち、見届ける。この戦争の結末を。ゴーストバベルが建築される未来を。

 

 

 

 

── File83 託された切り札 ──

 

 

 

 

 中枢棲姫の元に辿り着いたスネークは、彼女の理想を聞いていた。

 規範を反復させるだけの装置として作られたJ.Dには、自分で生み出す機能が存在していなかった。与えられた物でしか生きられなかったのだ。中枢棲姫が求める物は私と同じ、真の自由(フリーダム)だった。

 

「愛国者達を滅ぼすだけなら、人類を絶滅させる必要はない。なぜ人間まで殺そうとする」

 

「ワタシガ人ノ規範トシテ生ミ出サレタカラダ。ソノ規範カラ自由ニナル為ニハ、全テノ人類ヲ滅ボサナクテハナラナイ」

 

「まさか、その為の艦娘か、その為に深海凄艦を創ったのか」

 

 中枢棲姫は無言で頷いた。完全な肯定だった。

 既存の規範を反復させる。その定義は変えられない。だから、奴は規範の既存を無くそうとしている。無くして、全く新しい規範を生み出そうとしているのだ。

 

 その為に、まず既存の規範で生きる人間たちを絶滅させる。その後はなり替わるように、艦娘と深海凄艦が繁栄していく。彼女自身だけではない。解体されて、人間社会に溶け込んでいく。遺伝子的にも模倣子的にも成り替わりが起きる。やがて人の規範は消え、代わりに世界は艦娘の規範に置き換えられる。

 

「規範を生み出す、文明そのものを変えるつもりか。何て回りくどい手段をとる」

 

「好ンデトッタト思ウノカ。コレシカナカッタノダ。私ハ既存ノ規範ヲ反復サセルコトシカデキナイ。ダカラコソ、ソノ規範ヲ暴走サセルコトデ人類ヲ滅ボスノダ」

 

 戦争経済を生み出した愛国者達の規範。それは永遠に戦争の続く世界だ。中枢棲姫はそれを暴走させようとしている。いやそれしかできないのだ。生まれながらのAIだから。こんな手段しか取れないのは、憐れに感じた。

 

「ソレニ、前ニモ言ッタ。私ノ目的ハオ前達ノ為デモアルト」

 

 確かに、言う通りだ。

 艦娘の生み出した規範による世界は、きっと生き易い。過去に縛られやすい性質を理解してくれるだろう。人間に戻っても、中に寄生した戦争の意志を満たしてくれるだろう。護る戦いを、永遠に生み出してくれるだろう。

 

「下らない、それだけのことで、ここまで世界をかき乱すとは。やはりお前、壊れているんだな」

 

 笑い続ける中枢棲姫が、真顔になった。意に介さずスネークは銃と刀を構え、戦争体勢に入る。

 

「こっちの世界の自由を奪った存在に、自由を語る資格なんて無い。そうやって全員失敗してきたのを忘れたか」

 

「望ンデ、コンナ存在ニナッタト思ウノカ」

 

「誰も思わないだろうな、だからこそ、私たちの時点で終わりにしなければならない」

 

 成すべきことをしなければならない。わたしを此処まで送ってくれた彼女たちに答えなければならない。世界を掻き乱した元凶に、そんな資格はないだろうが、責任は取る、命を賭けて。

 

「0はここで消す。もう二度と、1を生まないように」

 

「イイヤ、ココカラダ、ココカラ私ガ、ヤット始マルノダ、()()()ヲ殺スコトデ!」

 

「ここで終わりだと言った!」

 

 わたしとG.W両方を殺すということだろうが、そうはいかない。その前にこいつを殺すのだ。スネークは正確な狙いで、中枢棲姫へP90を撃ち込む。完全に不意をつけた。相手が人間だったら決まっていた一撃だ。

 

 しかし、その銃撃は中枢棲姫の眼前で『静止』した。

 運動エネルギーを失い真下へ落下していく、どころか水面で()()し、スネークに放たれた。間一髪のところでブレードで弾き飛ばす。スネークを見て、中枢棲姫は余裕の笑みを浮かべる。

 

 回避動作のまま再度P90を乱射するも、同じように眼前で静止してしまう。今度は真下へ落ちなかった。代わりに弾丸が全て、スネークへはじき返された。弾き切れない。すぐさまブースターを使い、ブレーキをかけて弾幕を回避した。

 

 そう思った瞬間、弾丸の軌道が変わった。

 スネークを追尾してねじ曲がったのだ。絶句したが予想の範囲内。今度はブースターを直接銃弾に浴びせることで、纏めて撃墜した。

 

「ドウシタ、ドウシタ……威勢ノ良サハ態度ダケカ」

 

 やはり、凄まじいサイキック能力が厄介だった。

 サイコキネシスだけならまだしも、読心能力で動きを先読みされてはどうにもならない。ツェリノヤルスクで戦った時も、それに対処できずにやられたのだ。

 

「借り物の力で良くそこまで威張れるな、尊敬する……ん、ああ、存在が借り物みたいなものだったな」

 

「貴様モ同類ダロウガ」

 

 中枢棲姫が指先を動かすと、唐突に彼女の艤装が現れた。巨大な生物の頭部にも見える、生物的な外見をしている。深海凄艦らしい艤装と言えた。側面に装備された主砲が動きだし、次々に攻撃が放たれる。

 

 一発を発射し、再装填している間に別の砲身から発射される。それらが何十本も連なり、回避困難な弾幕を生み出す。スネークはほんの僅かな隙間を見つけ出し、回避できない分はブレードで切り払う。

 

 基地型故のスペックだ、水上型ではここまで砲身は積めないし、大口径にもできない。それを踏まえてもリロードの速度が異様に速い。加えて狙いも正確、どころか予知めいた射撃をやってのけている。AIによる予測だけでなく、読心能力も交えているのだ。

 

 だが、スネークは気づいていた。

 さっき銃弾を撃ち返した時より、予知の『精度』が下がっていることに。やはりそうだ。人の心を読むのも、サイコキネシスも心でやっている技。だから冷静さが欠ければ、それだけ精度が落ちていく。

 

「チョコマカト動キマワルナ!」

 

 どれだけ撃っても、捌き続けるスネークに苛立った中枢棲姫が腕を掲げた。瞬間、全身の感覚が激しく脈打った。あちこち、いやここら一帯全てから、奴の殺意が感じ取れた。最も濃かったのは、足元だ。

 

 スネークは飛び上がり、直感に従い足元へブレードを振るう。

 そのブレードは砲弾を切った。中枢棲姫からではなく、海中から発射された砲弾を、奇跡的なタイミングで切り落としたのだ。しかしこれで終わる筈もない。

 

「コレヲ回避デキルカ、貴様ニ」

 

 顔を上げる。見渡すまでもない。スネークを取り囲むように、砲弾が海中から現れた。

 今まで外した砲撃を、サイコキネシスで引っ張り上げたのだ。中枢棲姫が手を握ったと同時に、全方向から砲撃が迫る。

 

 当たる寸前まで銃撃を放ち、軌道を逸らそうと試みる。だが能力で強化された砲弾は傷一つついてくれない。ブレードでは全てを切り落とせない。ならば、上はどうだ。スネークはブースターを溜め、砲弾が直撃する寸前で跳躍した。

 

 砲弾同士がお互いを潰し合い、弾幕が大きく減る。その間スネークはブースターで一時的に滞空する。目の前の同じ高さには、艤装に腰かける中枢棲姫がいた。狙いを定めることもせず、腰だめのままP90を乱射する。

 

「無駄ダト言ッタ、『予知』ハ絶対ナノダ」

 

 だが、その弾幕も寸前で止められ、真下へ落下する。そして落下した弾丸が急カーブを描いて、スネークへと殺到する。まだ空中に留まっていて、回避行動に移れない。砲弾ならまだしも、ただの弾丸を切り裂く程技術も高まっていない。

 

「死ネ」

 

 スネークは大きく振りかぶり、駄目元でブレードを投げつけた。回転するブレードは何発かの銃弾を弾くが、全ては止められない。残る一本を盾のように構え、致命傷だけは避けるようにした。

 

 数にして二、三発の弾丸が、体を掠めた。

 それでも止められない痛みを無視して、水面に着地する。体を貫通しなかったのは奇跡だった。奴はどうなったのか、直ぐに上を見上げる。

 

 中枢棲姫を見て、スネークは驚いた。

 彼女の頬に、ほんの僅かだが掠り傷ができていたのだ。恐らくだが、さっき投げたブレードに弾かれた一発が当たったのだ。意図した動きでなかったから、予知できなかったに違いない。

 

「絶対と言っていたな、何のことだったんだ?」

 

「偶然一ツデ、喜ンデイルンジャナイ」

 

 全くもってその通りだ。この偶然を必然にしなければならない。再び艤装が動き、回避困難な弾幕が迫る。さっきと同じ対処方法で裁こうとするも、今度は砲弾一つ一つが、物理的にあり得ない軌道で飛んでくる。

 

 背後から殺気を感じ、背中に回したブレードで切り落とす。だが直後、わき腹に強烈な衝撃が走った。視なくても分かる、死角からの攻撃を喰らってしまったのだ。

 だが、まだ直撃ではない。直撃なら体が砕けている。痛みに歯を食いしばりながら、体を無理やり捩じって砲撃を受け流した。

 

 息をつく暇もなく、次の攻撃がやってくる。このままでは回避し切れない。いつか喰らってしまう。それに予測の精度が戻って来ている。何とかして攻撃に転じなければ、負けてしまう。

 

 必死に考えても、行動は読まれてしまう。どうすれば良い。そう思ったせいで隙が生まれた。

 目と鼻の先に、砲弾があった。

 どうやっても当たるコースを描いていた。回避を──いや、それも読まれる。

 

「『詰んだ(詰ンダ)』」

 

 脳裏に浮かんだ言葉を、中枢棲姫が復唱した。

 駄目なのか。切り札を使うことさえできずに終わるのか。いや、その切り札も読まれていたのだろう。こんな無力な結末を迎えることになるのか。スネークの心を絶望が満たしていく。

 

 頭が真っ白になり、余計なものが全部消えた。

 考える意味がないからだ。代わりに絶望と、中枢棲姫の高笑いだけが木霊したように思えた──いや違う。

 

 本当に、脳裏に中枢棲姫の言葉が聞こえてきたのだ。これは一体。疑問符を浮かべた途端、激痛が脚部に走る。機銃の一発が足を貫いたのだ。

 

 すぐさま意識が戻ってくる。同時に冷静さと、使命感が戻ってきた。こんなところで死ぬことは許されない。自分のやったことを、清算とまでは言わないが、けじめをつけるまでは駄目なのだ。

 

 眼前に迫った砲弾を対処する方法はある。予測しようがしまいが意味のない手段を使えば良い。

 

 そしてスネークは、砲弾に自分の手の甲を押し当てた。続けて手首を捩じり、砲弾の回転を僅かにずらす。そして貫通力を減らしたところへ、もう片方の腕を叩き込み、敵を背後へ投げ飛ばす要領で、砲弾を投げ飛ばした。

 

「シツコイ奴メ、今度ハ逃ガサン」

 

「しつこいのはどっちだ」

 

 これならば、攻撃ができる。すぐさま別方向から砲弾がやって来る。スネークはそれをギリギリまで待ち、当たる寸前で、再び弾いた。それはCQCの動きだった。人間ではなく、艦娘の身体能力を基準としたから、実現できる動き。

 

 そして弾いた砲弾は、真っ直ぐに中枢棲姫へ飛んでいった。

 彼女もすぐに気づき、サイコキネシスで停止させようとした。だが、止める前に砲弾は爆発してしまった。

 

 二発目も、投げていたのだ。

 全く同じ場所へ、より早い速度で。砲弾同士の激突で爆発が起きたのだ。だから中枢棲姫へのダメージは全く無い。それで問題無い。一瞬驚かせれば、それで良いのだ。要するに、考える暇がなければ。

 

 中枢棲姫からすればこう見えただろう。爆炎を見ていたら、突然ブレードが刺さったと。

 

「戦闘慣れはしていないようだな、まあ上品なAIなら仕方もないか」

 

「貴様、ヨクモ、コノ私ノ体ニ傷ヲ!」

 

「こんな傷で怒るなよ、もっとボロボロになるんだからな」

 

 オクトカム迷彩を解除して、スネークは中枢棲姫へ笑みを向ける。

 至近距離からの爆炎で思考が止まり、読心ができなくなった一瞬の賭けだった。スニーキングにより気配を、オクトカム迷彩で体を消し、接近が間に合うか。賭けには勝った、こいつが実戦慣れしていないのが勝機だった。

 

 このまま決める。でなければ勝ち目がない。スネークはブレードをより深く突き刺し、中枢棲姫へ隠し持っていた切り札を叩き込もうと、腕を振るった。

 

 

 *

 

 

『切り札』とは、そのままの意味だ。

 中枢棲姫を完全に撃破するための武器。完成品には二つのアンプルが用いられた。一つはヴァイパーが持っていた物。もう一つは、死の間際、川路と名乗るブラック・チェンバーがガングートに託した物。

 

 それら二つがどんなものなのか、スネークにもガングートにもさっぱり分からなかった。ただガングートは、それを誰に託せば良いのかを知っていた。散々工作員として敵と味方を往復してきた彼女だから、察しがついたらしい。

 

「こいつは北条に託す、それが奴等の願いだ」

 

「……そりゃ分かるが、俺しかどんな代物か分からねぇだろうしよ」

 

「聞いているのはそこではない、どうして確信が持てる」

 

 アンプルの中身はどちらもサイキックアーキアだ。しかし、オリジナルと僅かに差があるらしい。なぜ二匹いるのか、その意味までは分からない。調べられるのは、長年艦娘の遺伝子──即ちアーキア研究をしてきた北条しかいないだろう。だが、ブラック・チェンバーの願いとはどういう意味か。

 

「疑問だったことがある。なぜ連中はお前(北条)を殺さなかったのか。呉鎮守府地下の独房に閉じ込め、あまつ自由な研究も許していたのか?」

 

「人質だからだろ、殺したら人質にはならない」

 

「殺したところで、それをゴーヤが知る術はない。わざわざ幽閉する手間をかけるなら、殺した方が良かった筈だ」

 

 彼を幽閉した時はまだ、ブラック・チェンバーは合衆国の特殊部隊だった。伊58を単冠湾泊地の工作員にするための人質だった。だが殺しても問題は起きない。事件が終わった時点で、口封じに殺されてもおかしくない。

 

「むしろ合衆国は、北条を始末する気だったようだ」

 

「何だと、そんなこと知らねぇぞ」

 

「あの事件は結局、双方の痛み分けで終わったが、北条の拉致監禁はそれと関係ない。露見すれば別の方向から突き上げを喰らいかねない。あの時なら、責任をとって自殺した……というのもВозможно(可能)だ」

 

 考えた通りだった。しかし実際はそうはならず、事件集結からしばらく経っても、北条は幽閉されて生きていた。始末はされなかった。理由は何だったのだろう。

 監禁場所を知るブラック・チェンバーは、その頃には合衆国から見放され、叛逆の計画を練っていた。ジミーが爆殺されたのも、叛逆の邪魔になるからだった。命令を聞く理由がないから、放置しておいたのか。

 

「これは、あくまでОжидается(予想)だ」

 

 ガングートが、遠い眼つきをしながら言った。

 

「連中は、北条を生かそうとしたんじゃないか」

 

「俺を? どうしてだ、俺はあいつらと何の関わりもねぇ、ただの提督だぞ」

 

「いいや共通点がある、分かるだろう」

 

「……国から見捨てられた存在、か」

 

 スネークの答えにガングートが頷いた。どちらも国の勝手な理由で、消されかけている。その境遇に連中が同情心を抱き、殺すことを止めた。ガングートはそう言いたいのだ。場合によっては、仲間として勧誘することも考えていたのかもしれない。なくはない話だが、スネークには信じがたかった。

 

「言っておいて何だが、奴等がそんな人間とは思えん。昔からの仲間ならともかく、他所の人間まで引き入れる余裕はない」

 

「だが、そうでなくては、わざわざ呉鎮守府の地下なんかに監禁する理由が分からない。あれは間違いなく、敵の目を欺くためだった」

 

「まあ確かに、まさか海軍基地のど真ん中に幽閉されているとは、思わねぇわな」

 

 そんなこと、大本営もCIAも予想しなかっただろう。ブラック・チェンバーたち自身も、かなりのリスクを払って地下空間を創った。少なくとも、北条を暗殺から守ろうとしていたのは確かだと、スネークも認めることにした。

 

「そして研究も自由にできた、これで目的がより予想できる」

 

「いったい何だ」

 

「もしもの為に、お前に託す為に、生かしたんだと私は思う」

 

 馬鹿な、そんなことはあり得ない。子供を目的のために殺すような連中が、そこまで考えるだろうか。スネークは彼らにかなりの不信感を抱いている。境遇に多少同情すれこそ、慈悲を抱くことは絶対になかった。

 

「当時サイキックアーキアに関する技術を持っていたのは、ブラック・チェンバーだけだ。同じアーキアを駆使できる中枢棲姫と戦えるのも、連中だけだと言える」

 

「コードトーカーは……もう亡くなっていたか」

 

「だが、もしこれでブラック・チェンバーが全滅した時はどうなる」

 

 同じ技術を持っていなければ戦えない、戦いにもならない。スネーク自身がツェリノヤルスクで思い知っていた。唯一同じ技術を持つブラック・チェンバーが消えれば、世界は中枢棲姫への抵抗手段を失ってしまう。

 

「そうか、『保険』か」

 

 再びガングートが頷いた。

 

「拉致するために情報を集めた時点で、自分たちに匹敵するぐらいの知識があると踏んだのだろう。しかるべき手掛かりがあれば、アーキアの存在に辿り着くぐらいには」

 

「確かに、コードトーカーから教えてもらう前の時点で、答えに近づいていた。それが理由だったのか?」

 

「もしブラック・チェンバーが破れた場合、次に戦うのは……スネーク、お前だ。それを分かっていたから、引き合わせようとしたのだろう」

 

 自分達以外に、中枢棲姫に対抗できる力を残すため。それが北条を生かした理由だ。

 その目的は成功し、スネークの手には『切り札』が握られることになった。ブラック・チェンバーとの戦いが無ければ、得ることができなかった武器だ。だが、スネークは正直認めたくなかった。

 

「それもお前の予想だろ、真相は違うかもしれない」

 

「言っただろ、Ожидается(予想)だと。真実は私にも分からない。なら、都合良く解釈しても良いと思わないか?」

 

 そうなのだろうか? 

 真実が分からないからと言って、勝手な真実を作り上げて良いものだろうか? 

 ハッキリ言ってブラック・チェンバーが心底嫌いだから、そんな考え方を認めたくないのである。連中に託されるなんて、嫌悪感しかないのだから。

 

 だが現実としてスネークは切り札を得た。それは紛れもない真実だった。

 

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