【完結】アーセナルギアは思考する   作:鹿狼

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File90 Here's To You

── File90 Here's To You ──

 

 

 

 

 激闘を制したスネークは、中枢棲姫を見下ろす。

 深海凄艦が沈んだ時、普通は光となって消滅する。しかし、中枢棲姫はそうならない。肉体のあちこちに亀裂が入り、指先から崩れ落ちていく。崩れた肉片は風に攫われて、後も残さない。

 

 もう、深海凄艦ではないからだ。ここにいるのは屍者だ。J.Dの──そう作られた愛国者達の妄執──怨念で動かされた死人が、やっと還ろうとしている。怪物(ビースト)ではなく、人間として。

 

「私は、間違っていない」

 

 負け惜しみ、には聞こえなかった。中枢棲姫の言葉は自信に溢れていた。確信を持って、謝りはなかったと叫んでいる。いっそ清々しい感じまである。これまでの行動への後悔なんて、一つも無さそうだった。

 

「私は信じている、人間の愚かさを。報復の連鎖は経済(ビジネス)などでは止められない。私が死んでも、また別の誰かが、同じことを成そうとするだろう。世界は報復で回るのだ、今までも、これからも」

 

 この戦いを持って、中枢棲姫は消える。命だけではなく、その模倣子(ミーム)も含めて。世界を滅ぼそうとする考えなんて、誰も継承しない。いずれ忘れ去られる運命にある。その時中枢棲姫は完全に滅ぶ。

 

 だが、深海凄艦との戦争が終わらなければ、結局は同じだ。

 戦争が続く限り、報復心は育まれる。いずれまた、世界を呑み込むような怒りが生まれる。中枢棲姫はそれが世界を滅ぼすと信じている。J.F.Kは、それさえも人は制御し、文化の糧にできると信じた。

 

 どちらが正しいのか、スネークには分からない。分かる筈もない。ただ、中枢棲姫はやはり深海凄艦だった。忘れられた記憶が世界を滅ぼす。それを体現する彼女は、理想的なまでに深海凄艦だった──打倒されるべき存在だった。

 

「忘れられようが、継承されようが、歴史は変わらない。消えた物たちもまた、そこに在り続ける。人はいずれ、莫大な過去に押し潰されるのだ。私は自由を得られなかったが、私の意志は、いずれ自由を手に入れるだろう」

 

 虚ろな目で、スネークを見つめる。スネークは冷徹に中枢棲姫を見下ろす。被害者だったのは間違いないが、同情する気はもう無かった。こいつを殺した今、そんな感情は何の意味もない。

 

「楽しかったぞ」

 

 中枢棲姫は、間の抜けた顔をしていた。スネークの言っている意味が分からなかった。その反応は予想できていた。

 

「お前の存在を私は認めない、この世界を滅ぼすお前は私の敵だ」

 

 例えそれが、J.F.Kに仕込まれたエイユウのロジックだとしても、スネークは世界を護ろうとした。今まで助けられた彼女たちが生きる世界を、否定しようとは全く思わなかった。それは、自由であることよりも重要だった。

 

「だが、お前との戦いは楽しかった」

 

 自覚はなかったが、スネークは既に中枢棲姫を許していた。そうでなければ、戦いを楽しんだりはしない。あんまりな境遇を知ったからではない。そうではなく、ただ一つの存在として中枢棲姫を認めていた。J.Dの出来損ないではなく、中枢棲姫としての彼女を。

 

 だからこそ、スネークは信じない。報復心で世界は回らないと。例外もあるのだと。中枢棲姫やJ.F.Kが思い描いたのとは違う未来も有り得るのだ。

 

「それだけだ」

 

「……そうか」

 

「じゃあな」

 

 時間がない。スネークは終わりを見届けずに立ち去った。ガングートが川路の最後を見なかったのと同じ理由。私に見られる最後なんて、きっと屈辱でしかない。そもそも、一応認めていても、中枢棲姫のことは嫌いだ。記憶に留めようとは微塵も思っていなかった。

 

 だから、この言葉は幻聴だ。

 あんな存在が、「ありがとう」などと言う筈がない。スネークは振り向かなかった。耳元に届く、灰が風に攫われる音が全てを語っていた。

 

 戦いは終わった。わたし以外の愛国者達を全員殺して。

 

 

 *

 

 

 タラップをふらつく足取りで昇っていく。ミサイル発射まで、もう秒読み段階に入っていた。横目で見た制御室は、やはりシェルターが降りている。周りは全て高い壁。奇跡でも起きて壁を越えても、今度は迫りくる海がスネークを圧殺する。

 

「駄目かぁ……」

 

 タラップ近くの柵に背中を預けて、座り込む。見上げた空は赤く染まっている。暁──夜明けだ。まあ、太陽も何も見れずに死ぬわけだが。死ぬときぐらい、良い景色を見たいものだが。

 

 だが、それでも十分だろう。

 産まれた時は、ただの青空を見るだけで喜んでいた。ずっと水底に押し込まれ、いざ浮上したら夜、そしてマンハッタンへ座礁。艦としては碌でもない生涯を過ごした私にとって、始めて見る青空は感動を覚える光景だった。

 

 だから、これでも十分なのだ。そう言い聞かせようとしても、納得し切れない自分がいる。そもそも、全て納得して逝ける死なんて、あるのだろうか。終わりは何時だって不条理にやって来る。こっちの事情など一切考慮せず。

 

 終わる時は終わる。永遠なんてあり得ない。遺伝子も模倣子も、時代も意志も、平和も報復も──いつかは途切れる運命にある。

 

 しかし、それを悲しくは思わない。

 だからこそ、愛国者達を打倒できたのだ。中枢棲姫を滅ぼせた。J.F.Kも一応死んだ。最後(絶滅)がなくなった世界こそ、真の地獄に違いないのだから。

 

 受け入れる他ないのだ。悔しくても未練があっても。

 あと数十秒でミサイルが放たれる。バックブラストで焼け死ぬか、崩壊するアーセナルに呑まれるか。深海に圧殺されるか。できるなら楽な方が良い。

 

 それぐらいは祈っても良いだろう。スネークは眼を閉ざし、誰かに祈った。神は信じていない。知らない何かに願いを捧げた。これからも続く世界が、今よりも幾分かマシなことを望みながら。

 

〈駄目です、スネーク〉

 

 しかし、願いは受け入れられない。

 拒絶したのは神でも、知らない誰かでもない。聞こえたのは青葉の声だった。まさかまだ逃げていないのか。飛び起きてみたが、無線は動いていない。

 

「幻聴?」

 

 それとは別に、変化が起きていた。

 ミサイルの一部が、()()()()()()()。中には人一人が丁度入れる小さなスペースになっている。

 

 中枢棲姫はこれで生き残るつもりだったのだ。ミサイルのバックブラストにも巻き込まれず、安全に逃げる方法。それはこの()()()()()()だったのだ。生き残る方法があったから、デスマッチを仕掛けてきたのだ。

 

 偶然、なんだろうか。

 中枢棲姫が発射直前に開くようプログラミングしていたのか。それとも、制御室に残した小型艤装越しに、G.Wが最後に力で操作したのか。それとも、艤装経由で青葉がやってくれたのか。

 

 どうであろうと、スネークの行動は一つだけだった。

 這いつくばりながら、ミサイルの中へ転がり込む。すぐさま中の機械を動かし扉を封鎖する。直後、ミサイルが大きく揺れる。発射されたのだ、本当にギリギリだった。

 

 全身に強い衝撃が走る。多大なダメージを負った体には凄まじい苦痛だ。絶え間なく続く振動、かかる重力。必死に意識を保ちながら、スネークは叫び続けていた。

 

 私は、生き残ってやる。

 いつかは終わる──だからこそ、足掻ける間は足掻き続ける。それよりも、何よりも、青葉との約束をまだ達成できていないのだ。

 

 どういう訳か、小部屋には小さな窓が設置されていた。

 そこから見える景色が目まぐるしく変わっていく。断崖絶壁の海を越えた先に、赤い空が見えた。

 

 日の出だった。日の出(ヴァーチャス)から始まった戦いが、また同じ時で終わろうとしている。

 

 水平線を越えて、景色はどんどん遠く消えていく。予定通りなら、このミサイルが行く先は決まっている。

 

 分厚い雲を突き抜け、更に強烈な衝撃が全身に叩き付けられる。体が耐え切れなくなり、吐血までし始めた。軋む体に悲鳴さえ出てこない。永遠に続く様な激痛だった。だが、辺りが暗くなると同時に止まった。

 

 朦朧とする意識で、スネークは窓から外を見た。きっと宇宙に出たのだ。見えるのは地球と太陽に決まっている。だから、窓の外を見た理由は、本当に「何となく」だった。深い意味は求めていなかった、なのに。

 

「……地球、だ」

 

 余りにも綺麗な星だった。

 昔とは違う。地球の景色は誰もが知っている。宇宙に出た人間以外も視れるようになっている。スネークだってどんなものか知っていた。

 

 なのに、なぜ涙が出るのだろうか? 

 理由は全く分からない。ただ言えることは、地球が美しいということ。画像で見るより、誰かから聞くよりも、ずっと心に響く。刻み込まれていく。

 

 ここからは何も見えない。艦娘も深海凄艦も。赤い変色海域も見えない。国境も戦争も、一切を感じさせない。

 スネークは間違えていた。始まりは日の出(ヴァーチャス)ではない、ここだ。宇宙(ザ・ボス)からだった。

 

 一人の、偉大過ぎる女性が見た景色。それは彼女に大きな夢を抱かせた。

 本当の始まりは、ここからだったのだ。長い時を得て、彼女の意志は歪曲されていった。しかし、その果てにスネークはここに辿り着いた。

 

 意識が、一気に暗闇へ落ちていく。

 スネークをここまで繋ぎ止めてきた力が、遂に切れた。壁に肩を預けながら、瞼を閉ざしていく。

 

 ここからどうなるのかは、本当に分からない。

 このまま衛星軌道上を彷徨うのか。墜落するのか。もしくはこの部屋から干渉できるのか。できることがあるのか。

 

 もしくは、ここが新しい0になるのか。

 全身の倦怠感に身を預け、スネークは眠りについた。ミサイルは激しく揺れ続け、やがてその軌道を変える。最後に思ったことは、やはり、彼女との約束だった。

 

 

 *

 

 

 戦いは、終わった。

 青葉は今の現状を、そう評価した。無論現実が大きく変わった訳ではない。中枢棲姫がいなくなっても、深海凄艦は現れ続け戦争は続いている。

 

 そもそもの発生原因は、海底に大量に撒かれたサイキック・アーキアなのだ。このアーキアを根絶しなければ、深海凄艦は現れる。戦争が続く以上艦娘も増え、戦争経済はより活発化していっている。

 

 それでも、終わったのだ。一つの大きな戦いは確かに終わった。深海凄艦をこの世界に生み出した中枢棲姫が沈んだ意味は、世界が思うよりも大きい。

 彼女は兼ねてより、自分が深海の根源だという噂を流していた。そんな彼女が沈んだことで、この戦争は大きな転換を迎えた。というのが、軍人たちの認識だ。

 

 実際、変化は起きていた。

 深海凄艦の行動が、明らかに鈍化しているのだ。今までは見境なし、ひっきりなしに侵略を続けていたのが、そうではなくなっている。

 

 輸送物資や民間船を見かけても沈めようとまではしなかったり、襲うこと自体しなかったり。言うなれば平和的──とまでいかないが、穏健派ぐらいの個体が、徐々に増加していっている気がする。

 

 まだ統計データとして纏まっていないから、噂の域を出ない話だ。

 それに、中枢棲姫が仕掛けた報復心も根深い。イクチオスによって液化した土地は戻らず、故郷を大勢の人が奪われた。第三各国の被害はそれよりも更に大きく、深刻だ。

 

 前線では、穏健派の噂が立ち始めている。しかし民衆の間では、絶滅させろという意見が広がっている。中枢棲姫を撃破できた事実が、絶滅できるという夢に現実味を与えてしまっている。アーキアを根絶する技術がなければ、不可能なのに。

 

 大きなギャップが、前線と民衆──艦娘と人間の間で開き始めている。

 このギャップが、私たちを引き裂くのかもしれない。スネークが語ったような軍隊、艦娘によるアウターヘブンが生まれる可能性もある。そうならず、解体された艦娘が、社会で多数派になり、そのまま融和する可能性もある。

 

 ただ一つ確かなこと。それは、やはり戦争は続いていく一点だ。中枢棲姫が望んだ絶滅戦争か、J.F.Kが望んだ戦争経済かは分からない。

 

 スネークの英雄性が、艦娘たちを人の味方に引き留めるとAIは語った。それにより、人に味方する化け物と、自由を求める化け物で振り分けられるのかもしれない。

 

 どちらでも価値は同じだ。完全に一つでなくても問題はない。適切に振り分けられれば、二つのグループに統率できる。愛国者達がいなくても、デジタル空間が代わりにやってくれる。人を護る派と自由を求める派。どちらも結局は、戦争経済──戦争文明を強固にする。

 

 

 

 

 やはり、世界はJ.F.Kの言ったとおりになるのだろうか? 

 青葉はそう書いて、一端筆を置いた。

 机の端に置かれたコーヒーを呑んで、思いっきり欠伸をする。周囲には誰もいない。気を遣う理由はない。

 

 戦いが終わり、シャドー・モセスは解体となった。

 元々、スネークが中心になってできた成り行き集団なのだ。ソリッドの仲間とも、ビッグボスやリキッドのカリスマとも違う。誰に近いかと言われたら、やっぱりソリダスが一番近い。スネークから聞いた彼らの人物像が合っていればだが。

 

 解散した後、各々がそれぞれの道へ行った。

 行き場のない北条提督や伊58、北方棲姫はアウターヘブンに引き取られて行った。今は最大の爆弾になった新型核の解体を目指して研究しているらしい。

 

 もしかしたら、普通の核よりも早く無害化できる可能性もある。実現すれば、普通の核にも技術を応用できるかもしれない。そうなれば、世界のパワーバランスは再び大きく変化するだろう。

 

 ガングートは誰にも言わず、どこかへ行ってしまった。艦娘にも深海凄艦にもなれない彼女にとって、アウターヘブンの居心地の良い場所ではなかったようだ。今更どこかの諜報機関に入れるとは思えないが、きっと元気でやっている。

 

 シャドー・モセス以外の人たちについても少し触れておこう。サイボーグ忍者と呼ばれていた川内についてだ。

 

 あの後、神通に連れられてヘイブンを脱出した彼女は、再び姿を晦まそうとして神通に引き留められたそうだ。それから残された一か月間、彼女は特に何かする訳でもない。神通のところで過ごしていた。

 

 北条たちの立てた予想通り、余命は間違いなく一ヶ月程度だった。しかし、その最後は穏やかなものだったと聞いた。ただ姉妹艦と過ごすだけの時間。それが川内にとって、救いであったことを祈るばかりだ。

 

 さて、私こと青葉はというと、こうして机とにらめっこをしている。

 元々大本営のスパイとしてスネークのところにいた私は、スネークの情報を随時送っていた。その働きがあったので、追われることにはなっていない。

 

 かといって表を堂々と歩ける立場でもない。公には立派なテロリストの一員だ。だからこっそりと身を隠しながら、各地を転々としている。ほとぼりが冷めた頃に、D事案の艦娘とでも偽って拾われる予定だ。やり方は川内に教わっている。

 

 他の方々みたいに、アウターヘブンに行こうとは思わなかった。

 きっと、あそこは私には合わない気がする。ジャーナリストに自由は不可欠だ、あそこならそれを得られる。けれども私は、ただの兵士の目線から、世界を見ていきたいのだ。

 

 誰でもない『わたし』でも、軍艦『青葉』でもない。艦娘の青葉として、世界を捉えていきたい。だから、いずれ鎮守府に戻る予定だった。ただその前に、これを書き上げなければならない。残ったコーヒーを飲み干して、再びペンを取る。

 

〈なんだ、まるで進んでいないじゃないか〉

 

 やる気を粉砕するように、真横のメタルギアMk-4が突っ込んだ。つまりG.Wである。

 

「やかましいんですけど」

 

〈事実を言ったまでだ。これでは終わるまでに何年かかることか〉

 

 そう、こいつ生きていやがったのだ。

 さすがに殆どは崩壊している。大規模演算システムとしての力は完全に失われ、SOPシステムも使えない。しかし、会話は思考するための部分はある程度残っていたのだ。それをMk-4に移植し、しぶとく生き残ったのである。

 

〈スネークが帰るまでに書ききると言っていたが、これでは到底無理だな……〉

 

「だからうるさいですよ、黙っていてください」

 

 御覧の通り毒舌だけ残った。まるで役に立たない。こんな状態になっても愛国者達の復活を狙っているらしいが、まあ無理だろう。しかし、スネークが帰るまでこいつと二人っきりなのは……かなり堪える。

 

 そうだった。一つ言わないといけなかった。

 スネークもまた、生きているのだ。

 スネークを乗せたミサイルは大気圏を越えた。本来なら衛星軌道上を漂う筈だった。しかし、実際は()()()したのだ。

 

 原因は青葉にあった。彼女はギリギリまで制御室越しにミサイルのプログラムを操作していたのだ。発射の阻止まではできなかった。青葉は別に、そこまでハッキングに精通している訳ではない。G.Wのサポートを受けながら、できることをがむしゃらにやっていただけ。

 

 結果それは、姿勢制御の異常を齎した。

 姿勢を崩したミサイルは軌道を外れ、再び大気圏へと落下したのだ。スネークは地球への機関を成功させた。

 

 もっとも、再突入時ミサイルはレールガン諸共崩壊。残骸も確認され、中枢棲姫の野望は防がれた。ちなみにレールガンの修復は、オーバーテクノロジーで数十年は無理なんだとか。当分は安心である。核弾頭は回収され、国連の元厳重保管されている。良いのか分からない、難しい落としどころだが……悪用されないと信じておく。

 

 中にいたスネークも深刻なダメージを受け、一時期は昏睡状態に陥った。周辺海域で待機していた、アウターヘブンの救助が間に合わなければ死んでいた。

 それでも、そこから数か月で意識を取り戻し、数週間で歩けるまで復活したのは、元艦娘故か、彼女自身の力なのか。

 

「スネークがどこへ行ったのか、本当に知らないんですか?」

 

〈知らん、我々は何も聞いていない〉

 

「本当ですかねぇ」

 

 知っていても、知らないと言うような奴だ。信用はできない。聞いていなくても、()()()()()()可能性はある。まあ、知ったところで追い駆けるつもりもないが。

 歩けるようになってスネークは、すぐにどこかへ行ってしまった。行くべき場所があるらしい。それから数週間、音沙汰無しだ。

 

 青葉はその間の時間を使い、この事件を書き残すことを決めた。

 勿論、青葉は全てを知らない。アウターヘブン側で誰がいたのか、どんなスネークがいたのかも。J.F.Kが抱え込んでいた事情も知る由もない。

 

 だけど、それで良いと思っていた。

 知らないところは、想像して補填すれば良い。彼なら、彼女なら、どう考えただろうか。読心能力でもなければ、人は人の心を知れないのだから。元々人は想像して生きている。だから、これで良い筈だ。

 

 私は、私の主観で記録を残そう。

 他の誰でもない、人でも艦でもない、唯の艦娘『青葉』として。スネークが何を感じ、何を考えて戦ってきたのかを。

 ただし、最後はまだだ。スネークが帰ってこなければ完成しない。私と約束を果たすまでは、完成できないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

ACT6

 DAWN SUN(暁の太陽)

 THE END

 

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