ハイスクール/Apocrypha 02 若手悪魔のウェルシュ・ドラゴン   作:グレン×グレン

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それでは本格的に原作に突入します!!


第一話 旧校舎のディアボロス

 

 駒王学園の人目につかない手洗い場で、手をついていた。

 

 汗はだらだら流れ、目は血走り、動悸は激しい。

 

 明らかに絶不調の体調であり、客観的に言えばそこまで隠すような真似をする必要はない。

 

 発作的にこの症状が出る事はここ一週間では珍しくもなく、既に相当数の学生や教師がこの姿を見ていた。

 

 治す方法は分かっている。だが、それをするわけにはいかない。

 

 理由はどうあれ自分はマスターになったのだ。そして、彼女に誓ったのだ。

 

 シャルロット・コルデーに助けられた者として、シャルロット・コルデーが自分を助けた事が間違いじゃないと思われる人物になると。

 

 これはその為の試練だ。乗り越えなければならない壁だ。

 

 死に至る苦痛だ。地獄を思わせる苦しみだ。だが、どうせ本来なら死んでいた命なのだ。

 

 ならばこそ、死ぬ覚悟で乗り越えなければいけないだろう……!

 

「俺は、俺は乗り越える!!」

 

「いや、軽犯罪我慢する程度で心因性の胃潰瘍と片頭痛と狭心症を同時併発しないでくださいよ」

 

 ……覗き関係を辞めた程度でそこまで酷いストレス性の疾患を抱えないでほしい。

 

 一周回って「よくこれだけの煩悩を軽犯罪程度で発散できてたなぁ」と感心しながら、百鬼黄龍はイッセーに五大宗家製の薬湯を渡した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 百鬼黄龍。フルネームは百鬼勾陳黄龍。幼名は百鬼竜太。

 

 日本の異能を保有する人間において最大級の組織である、五大宗家。その中でも最も権力を持つ中核である百鬼家。その次期当主として「黄龍」を継承した少年である。

 

 今はとある事情でこの駒王学園に通っており、つい先日イッセーと殴り合いをした仲だ。

 

「あの時は驚いたぜ。「よくもあの子の神器を!!」とか言って敵意満々で校舎裏で睨まれた時はどうしたもんかと」

 

「そ、その節は本当にすいません……」

 

 ちなみに殴り合いはイッセーが追い込まれていた。

 

 しかしパス経由でシャルロットに助けを求めており、なんとかかろうじて合流。そこから本格的に戦闘になりかけて、黄龍が「何かおかしい」と気づいて話し合いの姿勢に入ったので何とかなったのである。

 

 あのままだと勘違いで五大宗家と赤龍帝の戦争が勃発するところだったと心臓に悪い思いだった。

 

「で? 聖杯戦争については何か分かったのかよ?」

 

「駄目です。現地の悪魔も敵対勢力に亡命したらしくて、情報が集まりません」

 

 その言葉に、イッセーには不安の感情が浮かぶ。

 

 何か大きな事が起きるのではないかとの、不安があった。

 

 そして、それは数日後に的中する。

 

「は、初めましてイッセーくん! 付き合って下さ―」

 

『堕天使が悪魔の縄張りで何をやっている?』

 

 彼女ができたかと思えば、暗殺も視野に入れた堕天使の工作員だった。

 

 ドライグが速攻で指摘して一触即発になったが、これまたシャルロットが介入してきた事で堕天使側も撤退する事になった。

 

「俺、シャルロットに助けられっぱなしだなぁ」

 

「いえいえ。私はあなたのサーヴァントですから」

 

 とはいえ、それにおんぶにだっこのままではいられない。

 

 そこで黄龍に相談した結果―

 

「……あなたが、例の宝石騒ぎの原因の1人なんですって? 興味深いわね」

 

 ―学園のアイドルであるリアス・グレモリーを紹介されてしまった。

 

 厳密に言えば色々間接的なのだが、その結果グレモリーの後ろ盾を得る事で何とかしてもらえばいいのではないかという発想だった。

 

 五大宗家そのものが後ろ盾になればいいのではないかと思ったが、つい最近まで保守的かつ鎖国的な風潮が強かったので黄龍としては気を遣う方向らしい。

 

 そして転生悪魔という選択を示されるが、流石にいきなりなるのは躊躇したうえに―

 

「……あら? 兵士8駒でも足りない?」

 

『なるほど。どうやら相棒は疑似的に禁手に到達しているから、今の段階ではお前の力量が足りないのだろう。……気を悪くするなよ、本来赤龍帝である俺は一対一なら魔王すら超える存在なんだからな』

 

 ドライグの言葉に、リアス達も流石に納得するほかない。

 

 シャルロットの力によって疑似的な禁手を発動可能になっている今のイッセーは、その気になれば並みの上級悪魔なら一蹴できる。事実上神滅具二つがかりなのだ。不可能になるのも仕方がないだろう。

 

 その為あくまで部員兼勧誘者となりながらも、しかし日常は変化を止めてはくれない。

 

「……あの、リアスさん。駒王町って悪魔の勢力地だそうですけど、教会を建てる許可を出していたんですか?」

 

 戸籍がないので家事手伝いに終始しているシャルロットがたまたまシスターを案内した事で、状況は大きく変化する。

 

 数年前に教会勢力は駒王町から撤退している。なのでシスターが赴任するなどという事は本来ない。

 

 それにきな臭いものを感じながら、更に状況は変化する。

 

 悪魔の契約を行なおうとした者が堕天使側の戦力によって惨殺されるという事件が起きたのだ。その際、リアス達と小競り合いにすらなったらしい。

 

 それが気になり、イッセーはその教会をこっそりと見に行くという事をしてしまう。

 

 そして、少女に出会った。

 

「? ~~~?」

 

「……うぉおおおおお!! シャルロットに興味本位で教わったフランス語で行けるか!?」

 

 気合と根性とシャルロットの教えで頑張って話を聞いてみれば、彼女がシャルロットが会ったという件のシスターだった。

 

 そしてやっぱり限界があったのでシャルロットを呼んで話を聞けば、悲しい身の上話を聞く事になる。

 

 ……悪魔を癒した事で魔女として追放された元聖女。挙句の果てに、迎え入れてくれたのは相手が悪魔と契約したのならば猟奇殺人すら行うような連中。

 

 イッセーは、彼女を救う事を決意する。

 

「リアス部長! お願いがあります!!」

 

 勢いよく頼み込むが、返事は色良くない。

 

 当然だろう。冷戦状態の敵勢力と迂闊に派手に殺し合いを繰り広げれば、戦争再開の可能性すらある。

 

 まともな物なら独断で動くような事ではない。リアスはきちんと冷静にものを見て考える事ができていたし、そのシスターとはろくに会った事もないのだ。

 

「一つ聞かせて。……何であなたは会ったばかりの子にそこまでするの?」

 

 人を助けるのに理由はいらない。だが、自分のみが危険になる状況下でそれができるものはそういない。

 

 だが、兵藤一誠という少年には十分すぎるほど理由ができていた。

 

「……俺はシャルロットと約束しました。シャルロットが俺を助けた事が間違ってない事を証明するって」

 

 そう、その決意は変わらない。

 

 その為に覗きを辞めた。死ぬほど苦しい時もあるし、時として今でも不意打ちで心因性狭心症の発作が出る。胃も頭も薬が切れると痛くなる。

 

 だがそれでも、譲れない誓いをあの時したのだ。

 

 そして、アーシアを匿う時、イッセーは約束した。

 

 聖女として祭り上げられているがゆえに友達がいなかった少女。彼女に、イッセーは約束したのだ。

 

『だったら、俺がアーシアの友達になるよ』

 

 友達が酷い目に遭うというのに、黙っているなどできるわけがない。

 

 そんな所をシャルロットに見せるなど、断じてできない。

 

「もう俺とアーシアは友達です。だから、俺は絶対に見捨てません!!」

 

 そしてそのタイミングで朗報が入る。

 

 五年前に起きたお互いのはぐれ者の暴走による事件で、五大宗家と堕天使にはパイプが出来ていた。

 

 それを経由して黄龍が堕天使側に確認を取り、今回の件は現場の暴走と確定したのだ。

 

「上の人達がうるさいから俺は手が出せませんが、神の子を見張る者(グリゴリ)は今回の件で死人が出ても報復はしないって約束してくれましたよ」

 

「あらあら。堕天使如きに許可を取られるのは癪ですが、これで遠慮はいりませんわね、部長」

 

 何やら不機嫌な様子の朱乃はドSである。

 

「……百鬼、朱乃さんって堕天使に個人的な恨みあるの?」

 

「……俺は詳しく言えませんが、姫島は堕天使幹部と因縁がある宗家でして」

 

 何やら言葉を濁されたが、しかしこれで動くのに問題は何もない。

 

 元より庇護下から離れれば最低限の言い訳はできると思っての直談判だ。協力してもらえるなら、問題は欠片もない。

 

 そして、今回の下手人であるレイナーレはイッセーとしても思うところがある。

 

 降伏するなら、話を通してくれた黄龍のメンツも考慮して殺さない程度にする事もあるだろう。だが、抵抗するなら殺す覚悟も決めなければならない。

 

「可愛い子だけど容赦はしないぜ、レイナーレ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だがしかし、状況は大きく変化する。

 

「堕天使が、壊滅している……?」

 

「お、ラッキー! クソ悪魔くん達に押し付けて俺は逃げるぜっとぉ!!」

 

 大慌てで逃げるはぐれ悪魔払いを追いかけるように、一人の少女が小銃を片手に姿を現す。

 

 テンガロンハットを被った露出度の高い格好の少女は、面白そうに眼を細めると、小銃を向ける。

 

「ヘイボーイ! キミがマスターの言ってた赤龍帝?」

 

 そして少女はグレモリー眷属を遊び半分で圧倒しながら、イッセーに狙いを定める。

 

 小銃から放たれる攻撃を籠手で迎撃するが、合間を縫うように放たれた弾丸を弾いた瞬間、心臓に激痛が走って動けなくなる。

 

 それは狭心症に似通った症状。だが、これは何かが違う。

 

 困惑するイッセーに、少女は至近距離から小銃を構える。

 

「効果あるでしょ? 指を材料にした、ガンド撃ちを参考にした魔弾なんだよ。フィンの一撃っていうんだってさ?」

 

 そして少女はそのまま続ける。

 

 グレモリーではなく、自分の言う事を聞けば命は助けるだけでなく、それ相応の生活を保障する、と。

 

「……何が目的?」

 

「シンプルだよ? 具体的に言うと、強い連中に無理やり勝負を挑んで勝ちにいくの」

 

 小猫の詰問にあっさり少女は答え、少女は銃口をイッセーに向け直す。

 

「それで? 今なら私がキミとSE〇してあげるよ? 根性あるボーイは大好物だからね?」

 

 魅力的な提案ではある。

 

 童貞は卒業したい。このままだと高確率で殺される。断れば童貞のまま死ぬ。味方になれば童貞も卒業できる。

 

 だがしかし、それでもイッセーは投降しない。

 

 心臓の激痛は酷いが、黙ってられない。

 

 マスターとはおそらくあの魔獣創造の使い手だろう。

 

 何を考えているのかは分からない。だが、少女の目的は聞いた。

 

 強い奴と戦いたいという感情も分からないが、無理やりというのならそれに従うわけにはいかない。

 

 何故なら―

 

「シャルロットとの約束を破る気はねえ! 失せろ、このクソガンマン!!」

 

「そっかー。じゃ、口封じしといた方がいいんだよねっと!!」

 

 そして銃口から荷電粒子が放たれそうになり―

 

「―させません!!」

 

 -まさにそのタイミングで、相棒が到着する。

 

 そう、ここからは赤龍帝の物語。

 

 煩悩まみれの、しかし心優しい最優の赤龍帝になる男の物語。

 

 さあ、前哨戦の幕開けだ。

 

 そして古来よりこの手の戦いの物語は―

 

「吹っ飛べ、このクソ女!!」

 

 ―逆転勝利と相場が決まっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マスター! 赤龍帝に殴られたー!」

 

「当たり前だよ。相手は神滅具で疑似的に禁手になるんだから、正攻法で勝てるわけないじゃないか。せめて至ってから挑もうよ」

 

「だってだってー! 調べてみたらハーレム作っていくのって偏差値の限界超えてるんだもん! ハイパー気に入ったんだよー!」

 

「はいはい。とにかくこれ以上やらかすとこっちが困るから、当分大人しくしてようねー」

 

「ラジャー……。で、どうするの、マスターレオナルド?」

 

「そりゃぁ、神々に喧嘩を売る準備に決まってるじゃないか」

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