ハイスクール/Apocrypha 02 若手悪魔のウェルシュ・ドラゴン   作:グレン×グレン

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そんなこんなで第二弾です!


第二話 戦闘校舎のフェニックス

 アーシア・アルジェントをどうするかは困り果てた。

 

 なにせ彼女は日本語がしゃべれない。このまま日本に置くのは難しい。

 

 どうもレイナーレはアーシアから神器を摘出して殺す気だったようだ。百鬼曰く「堕天使の技術でも殺さずに神器を摘出する事はできないそうです」だとの事だ。

 

 その為それなりの後ろ盾がいるわけだが、しかし彼女はいまだに信仰心がある。悪魔側が匿うにはちょっときつい。

 

 リアスが転生悪魔にすれば、名門貴族ともいえる元72柱のグレモリーの権威である程度黙らせられるが、敬虔な信者を転生悪魔にするのはそれはそれで事情がいるだろう。

 

 悪魔の中には信徒を堕とす事を趣味の一環として片づける者もいるが、リアスはそういう性分ではなかった。

 

 とはいえ五大宗家も色々と改革が進んでいるが、聖書の教えの敬虔な信者を迎え入れるのはまだうるさい者がいるらしい。

 

 などという事で困りながらも、しかし日常は続いていく。

 

 前回苦戦した事もあって、イッセーは悪魔になる事も視野に入れ始める。

 

 敵のテンガロンハットの少女は強敵だった。

 

 シャルロットとの連携で挑まなければ倒されていただろう。しかも、向こうは禁手に至っていなかった……つまり、伸びしろが大きい。

 

 結局取り逃がしてしまったし、次に戦えばどうなるか分かったものではない。

 

 故に、強くなる必要があるのだ。

 

 そんな中、リアス・グレモリーに夜這いをかけられた。

 

「お願い、何も言わずに抱いてちょうだい」

 

「………………うぉおおおおおおおおおお!? おっぱい!?」

 

 イッセーは完全に理性が崩壊し………かけた瞬間に顔面に拳を叩き付け、失神した。

 

 直後入ってきたシャルロットがぽかんとしたのも無理はあるまい。

 

「……何をやっているんですか?」

 

「え、その、あの、イッセーに処女を捧げようとしたら、イッセーが自分を殴って……」

 

 あまりの思わぬ展開に、シャルロットも理解をするのに時間を有した。

 

 とはいえ、最低限分かる事はある。

 

 流れでこういう事をするのはダメだと判断して、衝動的に自分を殴って正気に戻ろうとしたのだろう。

 

 それほどまでに彼の中で自分に向けた誓約は重要だという事だ。

 

 とはいえ、それにほっこりしている余裕も欠片もない。

 

「いえ、確かにあなたは悪魔ですけど、流石にそれは強引すぎでは? 淫魔と悪魔は別のものだと思うのですが?」

 

「お願いイッセーを起こすのを手伝って。ちょっと事情があって時間がないの―」

 

「―具体的には、どういった時間的余裕でしょうか?」

 

 そして、時間は切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして事態を把握する為に翌日部室に来てみれば、何やら新しい顔が出てきてしまった。

 

「昨夜はリアス様が失礼いたしました」

 

 グレモリーのメイドであり、女王の駒をもらった転生悪魔では最強とすらうたわれる、グレイフィア。

 

「……フン、人間界の風はやはり好かんが、愛しのリアスと出会う為だ」

 

 リアスの婚約者を名乗る、元72柱が一角のフェニックス家三男、ライザーフェニックス。

 

 どうも大学卒業までに恋人を作れば結婚は取り消しという約束をしていたのにも関わらず、強引に婚約が進められたので既成事実を作って強引になかった事にしたらしい。

 

 そして揉めると同時にライザーも気色ばみ、戦意を見せ―

 

「―いい加減にしてください」

 

 その首元に、シャルロットが構えたナイフが突きつけられた。

 

 思わぬ早業に全員が一瞬目を見開く中、シャルロットはライザーではなくグレイフィアに視線を向ける。

 

「お話を伺う限り、悪いのはグレモリー現当主達の側では? 筋が通りません」

 

 初めての殺人で逮捕された後に、検事達に真っ向から意見を述べた暗殺の天使。それがシャルロットである。

 

 その彼女の視線が、真っ向からライザー達を射ぬき、更なる緊張が漂い始める。

 

「先に受け入れた約束を破っておいて、何が貴族ですか。貴族を名乗るなら高貴なる立ち振る舞いをしていただきたいですね。18世紀のフランス貴族の方達ほどではありませんが、筋が通りません」

 

「人間風情が俺達72柱をあの程度の輩と同列に語るか……っ」

 

「悪魔である事も貴族の出である事もなんだというのでしょう? 貴族を貴族たらしめるのは血だけではなく行動では?」

 

 何時戦闘が開始されてもおかしくない状況に、グレイフィアが割って入るのも若干遅れるほどの緊張感が走る。

 

 そしてグレイフィアは、妥協案として、レーティングゲームでの決着をもってして解決する事を提案する。

 

 悪魔の間で行われる、眷属を率いた上級悪魔同士の競技試合。しかし、リアスとライザーとの間では眷属の数に圧倒的な差がある。

 

「……リアスさん。グレモリーを出奔してはいかがでしょうか? 此処まで来ると情けないのですが」

 

「……だったらあんた達が特別参加できるように交渉しようか? 俺もいい加減此処まで馬鹿にされると叩き潰したくなってくる」

 

 シャルロットとライザーの間で睨み合いが勃発する中、イッセーは―

 

「……ハーレム。上級悪魔は、ハーレムが、合法で、できるのか……っ」

 

 衝撃を受けていてそれどころではなかった。

 

 そして、リアスは静かに目を伏せ―

 

「……駄目よ。これは私達72柱の悪魔の問題。下僕以外の者を巻き込むわけにはいかないわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、順当にリアスは敗北する。

 

 それを特別観戦席で見る事になったイッセーは、歯噛みする。

 

 どうしても気になってリアスに尋ねた事がある。

 

 72柱の跡取りである事を誇りに思っているリアスが、何故貴族として必要性がある政略結婚をここまで嫌がるのか。

 

 そしてリアスはこう語った。

 

―どこまで行っても私はリアス・「グレモリー」として扱われる―

 

―グレモリーなのは誇りだが、同時に時折縛りにもなる―

 

―ライザーは間違いなく自分を愛してくれるが、それは「グレモリー」のリアスとしてだ―

 

――私はただのリアスとして愛してくれる人と添い遂げたい―

 

 我が儘だと、彼女も自覚している。

 

 だけど、それでも譲れないものはあるだろう。

 

 自分にとって「シャルロットが助けてくれた事が間違ってないと証明する」事が譲れないように。

 

「……ふむ、気に食わないようだね」

 

 すると、隣にいる赤毛の男性がそう尋ねてきた。

 

 本来なら、適当にごまかすぐらいはするべきなのかもしれない。

 

 だが、イッセーはあえて言った。

 

「ええ、気に食わないです」

 

 はっきりと、自分の意思を宣言する。

 

「俺はリアス部長には恩があります。なんでライザーが嫌なのも知っています。だから、こんな結末は認められません」

 

 まっすぐに視線を合わせて、その赤毛の人物にはっきりという。

 

 それを受け止めた男性は、機嫌を悪くするでもなく微笑を浮かべる。

 

「興味深い。リアスが暴走気味とはいえ迫ったのも分かるというものだ」

 

 そう言うと、男性は一枚の紙を取り出し、それをイッセーに握らせる。

 

「リアスとライザー君の結婚式の時にそれを使うといい。キミとリアスにチャンスの一つぐらいは用意しようじゃないか」

 

 ……とんでもない事を言われた。

 

 このレーティングゲームはグレモリーとフェニックスの共同で行われ、ライザーとリアスも承諾している。つまりそれ相応の権力が動いているのだ。

 

 それで決まった事に文句をつけるのなら、下手をすれば冥界の貴族の多くを敵に回す事になるだろう。

 

 それができると軽く言ってのけた彼は、一体何者なのか―

 

「あ、あなたは一体―」

 

 その言葉に、男性は茶目っ気のある笑顔を浮かべてさらりと語る。

 

「サーゼクス・ルシファー。現ルシファーを襲名している、リアス・グレモリーの兄だよ。……内戦時の敵エースと恋愛結婚した身としては、正直思うところがあったのでね」

 

 とんでもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして言われた通りに突入し、ライザーと睨み合う。

 

「……サーゼクス様! いくら魔王様といえど、ただの人間を婚約会場に入れるなど、横紙破りが過ぎますぞ!!」

 

「それは違う。彼は今代の赤龍帝にして、変則的な形で究極の羯磨を保有する存在だ。将来的には史上最強の赤龍帝になる事もあり得るだろう」

 

 サーゼクスのその言葉に、周囲の悪魔が思わず一歩を引いた。

 

 この場の貴族の中には赤龍帝の恐ろしさを身をもって知っている者も多い。ましてや、同格である神滅具を更に一つ保有しているなど前代未聞だ。

 

 下手に敵に回せば確実に消滅する。その恐怖が反論を封殺する。

 

「むろん、此方から誘った以上、彼がライザー君に勝った場合は何か報酬を与えよう。何がいいかね?」

 

「……その前に、一つよろしいでしょうか?」

 

 しかし、そこでイッセーと共に参戦したシャルロットが提案する。

 

「何かね?」

 

「……私達はこの婚約に異を唱える目的で貴方の誘いに乗りました。ですので、イッセーが勝った場合は「この婚約をなかった事にする」になります」

 

 視線で一応確認を取り、それを確信してからシャルットは更に告げる。

 

「ですが、()()()極まりないとはいえ双方が受け入れた決闘の果ての決定に物言いをつける事になるのです。貴族として()()()ではありますが、これだけ期間が開いてから物言いをつけられたのです。ライザー氏にも勝利の報酬はあってしかるべきでは?」

 

 その発言に多くの者が怪訝な表情を浮かべる。

 

 凄まじく棘のある言い方でライザーは愚かグレモリーとフェニックスの両家をこき下ろしているが、発言の結論そのものは「ライザーにもメリットを与えるべきだ」という点に尽きる。

 

 そしてその意図を正確に見抜いた者が何人かはいた。

 

「なるほど。ストレスが溜まっているのは本当ですが、しかし冷静な判断です。これで飲めば後で文句は出づらくなる」

 

「誰でも同じ要請でも利益があるのとないのとでは選ぶ気概が違う。……これでライザー・フェニックスが負けて婚約が取り消しになっても、リアスに不満が集まり難くなるわね」

 

「この状況下で勝った後の事まで考えるとは、中々の傑物ですね」

 

 ソーナ・シトリー、シーグヴァイラ・アガレス。そしてリアスの母であるヴェネラナ・グレモリーなどは、シャルロットの策に気づく。

 

 勝ってもライザーにメリットがない勝負では、ライザーは仕方なく受ける事になる。

 

 それでは負けた場合庇う者や、誰かに文句を言いたがる者も出てくるだろう。「妹の我儘を兄が仕方なく承諾した」などという陰口も出てくるかもしれない。

 

 だが、ライザーに勝利のメリットがあり自発的に受け入れれば、話は微妙に変わる。

 

 ライザーが勝った時の報酬の方が大きいのなら、欲につられてホイホイ乗ったライザーにも責任が出る。普通にこのまま勝負をするより、陰口はたたかれないだろう。

 

 それに気づいたのか、サーゼクスもふと頷き、そして賛同する。

 

「いいだろう。なら、ライザー君は何が望みかね?」

 

 そしてライザーは一瞬だがつばを飲み込み―

 

「あ、貴方の女王の水着姿を見せてくださいと言ってもいいですか!?」(ライザー)

 

「あ、ずるいです! イッセーの勝つ気が減るような願いをしないでください!!」(シャルロット)

 

「酷い! でも見たい!!」(イッセー)

 

「………それはしたくないな。だが気持ちはよく分かる」(サーゼクス)

 

「さて、シャルロットさんはともかく、そこの男性陣には何かしらの罰則が必要ですかね?」(グレイフィア)

 

「「「申し訳ありませんでした!!」」」(馬鹿三名)

 

 ……一瞬で凄まじくグダグダになったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なるほど、これは面白い。聖水と十字架を使って赤龍帝の譲渡で仕掛けるか」

 

「曹操、いくら気配遮断を運用した魔獣を僕が生産出来て、使い魔の視界を映像として映し出す魔術があるからって、冥界の結婚式を覗き見するとか悪趣味じゃない?」

 

「そのおかげでいいものが見れたよ。俺も赤龍帝の姿を見てみたかったんだ」

 

「っていうか普通の禁手にもなれたんだ。まあ、性能は低下しているみたいだけどね」

 

「それは意外だね。アサシンを取り込む分の余力を失っている分、基礎能力は上昇するかと思ったんだが」

 

「たぶん、あの亜種禁手は「取り込んだ味方の力も強化して使える」って側面があるんだろうね。やりようによっては気配遮断を強化してステルス攻撃もできるかもしれない」

 

「……それは怖いな。特に俺は弱っちいから、あれに殴られたら一発で死にそうだ」

 

「サーヴァントの気配遮断は攻撃時には下がるから、君なら大丈夫じゃない? 亜種聖杯戦争に参加した時はサーヴァントを貫いたじゃないか」

 

「いや、結構手こずったよ。少なくとも今の赤龍帝よりは上だったね」

 

「ギヨタンはあの聖杯戦争での裏技みたいなものだからね。テストでやってみたら大成功だけど敗北だよ」

 

「まあいいじゃないか。シャルバやカテレアに何回か持っていかれたけど、13回は優勝して願いを叶えたんだろ?」

 

「ああ。後々制圧する予定の場所に、地下資源とか大量に増やしたからね。何回か野望が酷過ぎてルーラーの召喚を招いたけど、なんとか最終段階に入れば資源大国を確保できそうだよ」

 

「場所まで指定したけど、俺達の勢力圏から微妙に離れているから「世界の混乱が確定」とはならなかったか。まあ、本命は俺達が確保してるけどね」

 

「預託令呪は一杯。これなら僕達英雄派は令呪七画はゲットだね。もちろん、ルーラー対策を除いてだけど」

 

「これでルーラーが確実に出てくる本命の対策は万全という事か。シャルバ達も本腰を入れてくるだろうし、実に楽しみだね」

 

「あ、赤龍帝がフェニックスを倒したね。やるぅ」

 

「そうでなくっちゃ。この聖杯戦争で唯一確実に出てくる、俺達の敵のマスターだ。俺達と戦える力がなければこっちが困るさ」

 

「出来ればいない方がいいんだけどねー」

 

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