やはり俺が雷門中に入学したのはまちがっていなかった。 作:シェイド
大学進学も決まり、入学してからコロナウイルスによる影響で遠隔授業をこなしておりますが……ようやく落ち着いてきたので投稿を再開したいと思っております。
イナイレの小説が一番自分のために書いているものだったもので、復帰一話目として書きました。読んでくれたり共感してくださったりするととても嬉しいです。
では、あとがきでまた。
タイトル変えました…あと変な連続更新申し訳ないです…間違いなので…。
「これで豪炎寺は、雷門中サッカー部の一員だ。みんな仲良くしようぜ」
「…豪炎寺修也だ」
染岡が"ドラゴンクラッシュ"を完成させた翌日。
豪炎寺修也が正式に入部した。
円堂が病院に向かう豪炎寺を追っかけたり、雷門さん?が橋の上で豪炎寺と話していたことから大体想定できたことだったものの、いざ実際にチームメイトとなるとなんか緊張する。
いや、存在感ありすぎでしょ……天才ストライカーと呼ばれる並外れたキック力に加え、"ファイアトルネード"という強力な必殺シュートを持つ、まさに炎の天才ストライカーと呼ばれるにふさわしい豪炎寺。
その上クールでイケメンとか……設定盛りすぎじゃない?俺もなんか異名とかほしいな。「ゾンビディフェンス!腐り目!」……ただの悪口じゃないですか。
「豪炎寺さんが俺たちと一緒に……!」
「これで怖いものなしだね」
1年生は豪炎寺の加入でテンションが上がっている。気持ちはわかるよ。だって帝国戦のイメージって円堂の"ゴッドハンド"と豪炎寺の"ファイアトルネード"だもんな。
……いや、俺も必殺技出したよね?シュートの方は何故かあれ以来打てた試しがないが、"ボッチワンツー"の方は普通にやったよね?ま、まあ自分でボッチ!って叫ぶのは辛いから実際は"ボッチワンツー"!って感じになったんだけど……あ、はい。誰も覚えてないですか、変なこと言ってごめんなさい。
でも1年、今ここでいうのは悪手だろうに。
「待てよ、そいつに何の用がある。雷門中には俺の必殺シュートがあるじゃないか」
「染岡……」
ほら見ろ、染岡が絶対に突っかかるだろうが。いやまあ染岡の「何の用がある」っていうのはサッカーがしたい、っていう気持ちだけで解決するんだが…だってその理由で入った部員だっているだろ。染岡と半田と1年4人と……そこまでいなかったわ。
「ど、どうしたんだよ染岡。雷門中のストライカーが2人になるんだぜ?こんな心強いことなんてないじゃないか」
「ストライカーは俺1人で十分だ」
「……結構つまらないことにこだわるんだな」
おおう、豪炎寺さんなかなか言うんですね……そんなこと言ったら、
「っ!つまらないことだと!?」
染岡が豪炎寺の胸倉を掴む。
……でもこれについては豪炎寺が正しくないか?
「染岡、よく考えてみろ。円堂の言うようにストライカーが2人になれば雷門中は有利になる。俺らの目標はなんだ?フットボールフロンティアで勝ち進んで優勝することだろ?勝ち上がれば相手チームの強さはどんどん上がっていく。もちろん、ディフェンスの強いチームとだって戦うはずだ。その時お前ひとりだったとする。2人がかりで抑えられたら打つ手がない。そこで豪炎寺がいることでお前と相手マークを分散することができる……今のはただの例だがお前だって分かってるはずだろ?1人より2人の方が有利だって」
「比企谷の言うとおりだと思うが」
「くそっ!」
「みんなーいる?」
俺たち(主に染岡)がもめ始めたとき、ちょうど部室をのぞく木野。その隣には正式にサッカー部マネージャーになった音無がDVDを持って訪れていた。
「これ、見てください!」
音無が持ってきたのは尾刈斗中の試合の映像だった。
なるほどな、これを見て対策を練ろうってことか。
「こんなもの、どこで?」
「えへへ~、新聞部の情報網を使ってゲットしたんです!私にかかればこれくらいお茶の子さいさいですよ!」
えっへん!といった感じで胸を張る音無。それを見て心なしか顔が熱くなる俺……うん、犯罪臭がしてくるな。現に木野が睨んでいる。い、いえ、み、見てないですよ?だから咄嗟に顔を逸らしたんですけど。男子中学生には刺激が強すぎるな。
「すっげえよマネージャー……これで尾刈斗中の対策ができるぞ!」
円堂が感心したように言う。正直円堂が対策する気があったことが俺は驚きなのだが……いや、だって「相性?むしろ覆してやるぜ!」みたいなサトシ君同様、自身を鍛え続けぶつかっていくものとばかり思っていたんだが。
「ん?なんでこいつら止まってんの……」
「多分、動けないんです。噂だと……尾刈斗中の呪いだとか!」
「「「の、呪い!?」」」
「……呪い、か」
呪いねえ…。サッカーに全然関係ない要素出てきたな。
それ言ったら必殺技もそうだからなんも言わんけど。
***
「まさか家の方向が同じだとはな」
「ああ」
尾刈斗中対策にビデオを見たり、練習して今日の練習は終わった。
いつもなら円堂と共に鉄塔広場で居残り練習をする俺だが、さすがに試合前日ということもあって今日は真っすぐ帰路についている。すると豪炎寺と家の方向が一緒であることが発覚したのだ。まあ俺は1年の途中から直接学校から家に帰ることが極端に減り、豪炎寺が転校してきたのも2年になってからだったので、知らなくても普通と言われれば普通である。
実際豪炎寺と俺とか並んでたら「何あのイケメンの横にいるやつ?」「あれじゃない?ナンパ除けとか?」「あー!ある意味そうかも!」みたいな会話をされるとか思わないこともなかったし、2人きりとかぼっちにしては辛いんだぞ!なんて思ったりしたがそんなことなかった。
まず俺ボッチではなかったし。テヘペロ?……気持ち悪いな。
「そういえば比企谷、お前、かなりサッカー動画とか見てるだろ」
「そう、だな…2年に上がってからは結構見るようになったが」
「染岡を納得させようとしたとき、サッカー初心者にしてはわかっているなと思った。染岡とともに練習していて、全国レベルのプレイを見ていたからああいうことが言えた。1年のように経験者に縋らないところからもな」
いや、あれは1年が気弱なだけでは……。
「まあ、本当にそれで通じるか分からないがな。去年準決勝まで出てたお前からしたらどうなんだ?」
「今のままなら俺も染岡も潰されて終わりだ。毎年レベルが上がってるのもあるがな」
やっぱそんな甘くないか。組み合わせにもよるんだろうが。
豪炎寺は「それより」と少し後ろからついて行っていた俺の方を振り向きつつ、
「お前、フットボールフロンティアで勝つつもりなんだな。少しばかり……いや、かなりびっくりした。お前はそういうの冷静に見るタイプだと思っていたからな」
ん?そういえば俺なんて言ったっけ……あー当たり前のようにフットボールフロンティアで優勝することが目標とか言ってるわ。
フットボールフロンティアは都道府県ごとに予選が行われる。そこまでならまだ問題ないかもしれないが、雷門中はあの無敗の帝国学園と同じ地区なのである!……よくよく考えると不可能じゃないか?前回なんて1-20で相手の降参だぞ。相手にすらなっていない。
だが……
「確かに、今の雷門は決して強いとは言えない。むしろお前抜いたら弱いにもほどがあるだろう。でもな……」
「でも?」
「円堂がいると、不思議と負ける気がしないんだよ。負ける気がしないってのも違うか……そう、無理矢理にでもなんとかなってしまう気がしてな」
円堂守は努力家で、不屈の魂を持っているのは確かだ。誰よりもサッカーを愛し、誰よりもボールを追いかけている。そんな円堂と半年と少し一緒にいれば不思議とあんなことを簡単に言ってしまえるのだ。
とはいえ少し恥ずかしくなり視線を豪炎寺から外す。豪炎寺は少し笑い、
「ああ、円堂はそんな奴な気がする。帝国戦を見ていて、同じフィールドに立ってあいつの渾身のプレイを見て、不思議と力が湧いてきた。あいつは行動でチームを引っ張っていけるキャプテンだ」
「そういや、あれだけ興味ないとか、円堂の勧誘断りまくった割に試合最初から木の陰で覗いてたもんな」
「なっ……気づいてたのか」
「ああ。円堂が顔面からやられたときなんか超驚いた顔してたもんな」
「比企谷こそその腐った目がいっそうに腐ってたぞ」
「なんだよ、何?俺の目ってそんな腐ってるの?腐ったものがなお腐るって、もうそれどんな目だよ」
「濁りが増していた」
「もういいよ、俺目のことは諦めているから……この前お前が助けた女の子になんて「お兄ちゃんの目犯罪者とかとおんなじ目だね!」って笑顔で言われたこともあるからな」
「確かに……まさしくその通りだな」
「少しくらい否定してくれよ」
「無理だ」
「即答すんなよ」
なんだかんだ、豪炎寺とも仲良くやっていけそうだ。
***
翌日。
『はい、我々は今日この日を迎えました。雷門中対尾刈斗中の練習試合。あの帝国を下した、我らが雷門中イレブンの雄姿を見ようと、多くの観客がつめかけております。雷門中イレブンは、どのような試合を見せてくれるのでしょうか!実況はわたくし、将棋部の角間圭太でお送りします』
各自ウォーミングアップをしており、円堂は雷門さんと向かい合い何かを話している。どうせ負けたら廃部忘れんじゃねえぞ!とか言ってるんだろうが。
「来たぜ、円堂」
風丸が円堂に声をかけたところで俺も校門の方を見る。
「うわぁ……」
正直不気味とかいうレベルじゃない。仮面被ってる奴にお札貼っつけてる奴、顔に包帯巻いてる奴もいる。怪しすぎるだろ。
両イレブンが整列し、監督同士が握手をする。
「尾刈斗中監督、地木流灰人です。今日はよろしくお願いしますね」
「どうぞ、よろしく」
その後、ジキル・ハイト?とかいう監督は豪炎寺の前に立つ。
「君が豪炎寺君ですか。帝国戦での君のシュート、見させてもらいましたよ。いや、まったくもって素晴らしかった。今日はお手柔らかにお願いしますね」
おい、そんなこと言ったら……
「おい、ちょっと待て!お前たちの相手は豪炎寺じゃねえ、俺たち全員だ!」
染岡が何気に良いこと言っている……ある意味1番プライド高いからな。
だが向こうにとっては何言ってんだこいつ?みたいな感じだったようで、
「はあ?これは滑稽ですね、我々は豪炎寺君と戦って練習試合を組んだのです。弱小チームである雷門中になど興味はありません」
「なにぃ!?」
「やめろ、染岡」
染岡がキレそうになったところで円堂が止める。ナイスだ円堂、そのまま放置していれば言い争いに……いや、染岡があしらわれて終わりか?
「せいぜい、豪炎寺君の足を引っ張らないようにしてくださいね」
そう言って尾刈斗中側のベンチに戻っていった。
「言ってくれるじゃねーか……」
「見せてやろうぜ染岡、お前の必殺シュート」
「ああ!」
円堂がそう言った後、それぞれのポジションに向かう。
俺はセンターバックのポジションに……行かずベンチに向かう。
「あれ?比企谷先輩出ないんすか?」
「前半はな。影野、お前まだ試合出たことないだろ。俺の代わりに入ってくれ」
「は、はい…!」
影野と代わり、何故かまだいる眼鏡野郎の隣に座る。
心なしか影野は嬉しそうだ。人数的にも試合に出られないと思ってたのかもしれないな。尚更ベンチでいい。
「いいの比企谷君?影野君は控えだったのに」
「少なくとも練習試合だ。俺たちはどちらにせよ勝つしかねえし勝つんだから、それで影野だけ試合出てないとか可哀そうだろ」
まあ、可哀そうというより不気味だし、俺より影薄いけどやる気は感じるんだ。その代わり俺は誰かに後半代わってもらおう……代わってくれるよね?
影野がポジションにつき、ついに試合が始まる。
「気合い入れていこうぜ!皆!」
「「「おう!!」」」
雷門中対尾刈斗中の試合が始まった。
***
「やらせないっす!」
「ふん」
「あれ?」
「ああ……」
開始早々、軽く雷門メンバーを交わし円堂と1対1に持ち込む尾刈斗中。
やっぱ基礎的な能力だと負けてるんだよな……壁山と影野は緊張もあるんだろうが。
「くらえ!"ファントムシュート"!」
相手の必殺シュート円堂を襲う。
割と強烈なシュートだが、"デスゾーン"より威力はない。
「"ゴッドハンド"!」
「何っ!?」
『おっと!杉村の豪快なシュートをキーパー円堂、がっちりキャッチ!!』
「ものにしたんだな!円堂!」
「へへっ、まあな!皆!落ち着いていこうぜ!」
「「は、はい!」」
栗松と宍戸が同時に返事をするが、やっぱりまだ緊張してたんだな。1年は全員緊張してたようだが、今の円堂のワンプレイでだいぶ落ち着いてきたようだ。
「よし、みんな上がれ!」
風丸、少林寺とつながり、尾刈斗中陣内へと攻め込む。
「豪炎寺さん!」
少林寺は豪炎寺にパスをしようとするも、尾刈斗中DF3人がかりのマークにパスを送ることができない。
「こっちだ!少林!」
もちろん、それだけ豪炎寺にマークが集中すれば染岡がフリーになるわけで……
「見せてやるぜ……俺の必殺シュート!"ドラゴンクラッシュ"!」
染岡が蹴り出すボールに、ドラゴンのオーラが込められゴール右隅へと迫る。
「っあ!」
尾刈斗中は染岡を無警戒にしすぎたのか、あっさりゴールを許す形となった。
『決まったー!染岡のシュート炸裂!』
「なんですって!?」
相手の監督はそんな馬鹿なといった感じでベンチから立ち上がりうろたえていた。ざまあみろ、染岡を馬鹿にしすぎだ。
「やった!」
思わずといった形で円堂が染岡とハイタッチし、半田も駆け寄る。あの、俺もいるからね?ベンチだからだよね?ハブられたりとかそんなんじゃないよね?
「やったな染岡!俺たちが先取点とったんだぜ!」
「ああ!」
『雷門中1点先制!』
「すごいシュートでしたね!」
「"ドラゴンクラッシュ"って!」
「ふふふ……やはり素晴らしい、僕のネーミングセンスは」
目金がつけたのか……確かにこれ以上ない名前だと思うが、こいつオタクだろ、感じ的にも。
もう一度ポジションにつき、尾刈斗ボールで試合が再開される。
「こいつら、大したことなさそうでやんす」
「ビビりすぎてたんだよ~俺たち」
あ、フラグだ。
「よぉし、ガンガン攻めようぜ皆!」
試合が再開されるとすぐさまプレスに行く雷門中。
思わずといった感じでパスを出した11番だったが9番のキャプテンには渡らず松野がカットする。
一度豪炎寺を見るも、またもや集中マークされているため松野から染岡へと渡る。
そのまま"ドラゴンクラッシュ"が次はゴール左隅に突き刺さり、追加点となった。
……あれ?フラグ回収がない?なにかあるかと思ってはいたんだが。
「やった、やったぜ!」
「円堂、勝てるんじゃないか、これ!」
「ああ!」
風丸、勝てるんじゃないかと言っちゃダメだろ……それ一番言っちゃいけないセリフだ。
豪炎寺も何かおかしいと感じているのか、神妙な顔つきである。あんな顔でも映えるってイケメンってせこいよな。う、うらやましくなんてないんだからね!……うん、相変わらずのキモさだな。
雷門2-0尾刈斗としたところで、さっきと同じように尾刈斗中ボールでリスタートする。
「まさか雷門に豪炎寺君以外にあんなストライカーがいたとは……予想外でしたよ」
雰囲気が変わった!?
「雷門中の皆さん、いつまでも雑魚が、調子に乗ってんじゃねえぞ!」
おい、言っていることがめちゃくちゃだぞ。皆さん呼びから唐突に雑魚になったぞ。性格変わりすぎだろこのおっさん。
「おいてめえら!雷門中に地獄を見せてやれ!」
「おい全員気をつけろ!相手は何か仕掛けてくるぞ!」
「大丈夫ですよー!心配しすぎですって!」
駄目だ、2点リードしたことで気が緩んでる。
「マレ、マレ、マレ止まれ。マレ、マレ、マレ止まれ!」
「なんだよあれ……」
「呪文か何かでやんすかね…」
呪文……止まれ……そう言えばビデオで尾刈斗中の試合を見たとき、相手チームは動いていなかった……動けなかったのか。呪いなんかじゃない、この呪文によって……?
「あ、あれ?」
「なんだこれ?」
「来るぞ!少林は9番、マックスは11番のマークにつくんだ!」
「「ああ(はい)……」」
心なしか小さい声で反応する2人。
しかし、何故かマックスが宍戸、少林が半田をマークする形になる。
「な、なにやってるんだお前ら!?」
「あ、あれ…なんで?」
「ど、どうなってるんだ……」
お互いにマークについてしまった本人たちは、何が起こったかわからない様子……多分あのめちゃくちゃなフォーメーションチェンジによるもんだと思うが……。
そのままゴール前まで攻め込む尾刈斗中。
「みんな、落ち着いて相手の動きを見るんだ!」
「無駄だ……"ゴーストロック"!!」
「あ、足が……」
「動かないっす!!?」
「これが"ゴーストロック"だ……"ファントムシュート"!」
「く、くそ……」
円堂が必死に手を伸ばすものの、足が動かないためまったく届かず、相手キャプテンのシュートがゴールに突き刺さった。
『幽谷のシュート炸裂。2-1、尾刈斗中学、1点返しました!』
「"ゴーストロック"だって……?」
あれは必殺技のようだが……いや違うな。必殺技にしては度が過ぎる。もしこれが必殺技なら少なくとも俺が漁っていたサッカー動画の必殺技集で一度くらい見るはずだ。つまり尾刈斗中学のみが使っている可能性が高い。
「どうしたんでしょうか……?」
「みんな、あの動画と同じように固まってる」
「これが呪い、ですかね」
「「「……」」」
何故か1人でキランッ!(かっこよくない)をしている目金を俺、木野、音無は白い目で見つめる。髪かきあげる必要なかっただろ。
そうしてリスタートとなるが…
「取られたら、取り返せばいい!」
豪炎寺を突き飛ばして1人、ゴールに向かってドリブルを開始する染岡。
「待て染岡!奴らは何かおかしい!まずは動きを見るんだ!」
豪炎寺が注意を呼びかけるも、染岡は止まる気配は全くない。
「くそっ……」
「また俺が突き放してやる…!」
あぁ、染岡の悪いところが出たな。独りよがりなプレイをしてしまうこと。それが染岡の1番の弱点だ。
DFを交わし、キーパーと1対1になる染岡。先ほどと同じなら決まる場面だが……。
「"ドラゴンクラッシュ"!」
「"ゆがむ空間"」
相手ゴールキーパーの必殺技により止められる。
「なんだと!?」
「なんだ……今のは…?」
「ふふふ……どんな強力なシュートも、"ゆがむ空間"の前では無力!」
キャッチしたボールを大きく蹴り出し、前線のキャプテンへと繋がる。
「まずい、みんな戻れ!」
「無駄だ!すでにお前らは、俺たちの呪いにかかっている。"ゴーストロック"!」
「くそっ、またかよ!」
もう一度先ほど見たような光景がになり、キーパーを含め全員がその場から動けなくなる。
尾刈斗中の連中は簡単にゴール前まで上がり……ゴールを決められてしまった。
これで2-2、雷門中のリードはなくなり、試合は振り出しに…いや、尾刈斗中のペースになる。追い上げてきたほうが断然勢いがあるからな。
……ちょっと立ってみるか。
「呪いだと!?そんなもん、まやかしだ!」
「どうかな?…"ゴーストロック"!」
「ぐっ!」
次は染岡が攻め始めたところで"ゴーストロック"を使われ、雷門中……
なるほどな……あとは実験次第で破れるかどうかか。
その間にもシュートを決められ2-3、逆転される。
『3点目!これで雷門中は逆転を許してしまいました!』
「どうなってんだよ……」
「やっぱり、これは呪いじゃあ…!!」
『ここで前半終了!尾刈斗中1点リードで前半を折り返します!』
最初の勢いはどこに行ったのか、とぼとぼと沈んだ表情で帰ってくる雷門イレブン。
豪炎寺は相変わらず神妙な顔つきだ。豪炎寺は気づいてそうだな。
「くそ、どうなってるんだ」
「急に足が動かなくなるなんて…」
「やっぱり呪いじゃあ…」
「みんな、何びびってるんだよ。まだ前半が終わったばかりじゃないか」
「いやー!!!怖いっす!怖いっす!俺もうこれ以上怖くて無理っす!!」
「逃げるな壁山!」
「呪いなんてあるわけないだろ!」
「だったら、なんで足が動かなくなったんすか!?」
「それは…」
「わからない…でも必ず、何か秘密があるはずだ」
円堂を中心に話し合いになる中、俺は1人輪から外れている豪炎寺の方へ向かう。
「豪炎寺、少しいいか」
「ああ、どうした」
「お前、試合中も相手の動きを見て怪しんでいたよな。何かわかったか?」
「いや……だが明らかに変だ。俺は今までサッカーをしてきてあんなこと見たことがない」
「……相手キーパー」
「!」
「どんな動きだった?俺は他の連中の動きを観察していたから、気づいたら止められていた」
「腕を回していたな。明らかに変だった」
「なるほどな……もしかしたら当たりかもしれない」
「何か分かったのか?」
「ああ。とはいえ確証はない……が、試してみる価値はある」
「…わかった。任せたぞ」
「その代わり、種明かし出来たらしっかり点を決めてくれ」
「ああ、当然だ」
***
『雷門中は影野に代わり、比企谷が入ります。さあ、後半のキックオフです!』
影野と交代し、俺は前回の帝国戦同様センターバックの位置につく。
豪炎寺からスタートとなったボールは、後ろにいた少林寺へと渡る。
「何してるんだ!?」
「なんで"ファイアトルネード"を撃ちに行かないんだよ!豪炎寺!」
染岡や円堂が豪炎寺を批難するものの、豪炎寺は相手ゴールキーパーをにらみつけたまま動かない。
大方相手の仕掛けを見破るつもりだろう。闇雲に撃ってもさっきの染岡みたいに止められては意味がないし。
「ちッ、腰抜けめ……こっちだ!なっ……」
染岡が相手ゴールに向け走り出そうとするも、相手DFが進路を塞ぎ、身動きが取れなくなる。
「染岡を抑えるつもりか!」
少林、半田へと続き、半田は無理矢理マークの厳しい染岡にスルーパスを送る、が、相手DFが早くボールをカットし、ボールはサイドラインを割った。
「半田先輩!なんで豪炎寺先輩にパスしないんですか!」
「豪炎寺さんノーマークだったのに!!」
「だ、だってあいつにボール回したってシュートしないだろう!!」
「お前ら、黙って俺にパスを出せばいいんだ!次は決めてやる!」
染岡が熱くなっているがそれはただの精神論だ。
……それだと現状は変わらない。サッカーには冷静な判断が求められる。どうやったらゴールできるか、どうしたら相手を抜けられるか、どうしたら相手のドリブルを止められるか……。
宍戸のスローインで再開となり、少林寺へと渡る。
「おい、こっちだ!」
染岡がパスを要求するが……
「豪炎寺さん!」
少林寺は豪炎寺へとパスを通す。
「染岡にボールを渡せ!少林!」
「だって、染岡さんのシュートじゃ止められてしまいます!」
「やっぱ豪炎寺さんじゃないと点は取れないでやんす!」
「なっ……あいつら……」
なんだこのぐだぐだな連携。チームが1つに纏まって無い。これじゃあ試合どころの話じゃなくなってくる。
「おい、ボールをよこせ!」
「確かめたいことがあるんだ!」
「俺がシュートを決める!!」
「染岡!!」
豪炎寺から無理にボールを奪い、1人攻めあがる染岡。
「馬鹿な連中だ」
「頼んでもないのに勝手に仲間割れを始めてくれたぜ」
ほら、相手チームに煽られてんじゃねえか。まったく……これじゃあ勝てない。勝つためには……。
「くらえ!"ドラゴン……」
染岡にシュートを撃たせないことだ。
俺は横から今にもシュートを放つ染岡にスライディングを仕掛け、ボールを掠めとる。
「なっ!」
「比企谷!!何してるんだ!!」
円堂に批難されるがこればっかりは仕方がない。だって止められるに決まってる。
「なんだあいつは?また仲間割れか?」
尾刈斗中の奴らは笑っているが……これからの動きで驚くがいい。
いやでも結構円堂に批難されるのつらいな……俺はぼ、ぼっちだから泣かんぞ!(少し泣いている)
そのままドリブルでキーパーに向かっていく。
「誰だろうと俺には通用しない!」
相手ゴールキーパーは胸の前で両腕を回し始める。
よし。
『ああっと!どうしたんだ比企谷!相手ゴールに迫ったと思いきや、後ろを向いた!?』
「「「ええ!?」」」
「……なに!?」
やはり動揺したな!!多分あの腕の動きさえ見なければいい……でもここからどうしよう?
『いや!比企谷はもう一度ゴールに向け、シュート体制に入る!』
「"ゆがむ空間"」
あ、やっぱ駄目だわ。
『ああ!?また後ろを向きました比企谷!いったい何がしたいんでしょうか!!』
「「「何やってんだ比企谷!!?」」」
俺だってどうにかしたいわ!ただこの状況からどうシュートを撃てばいいかわからないんだ!くっ、こうなったら……
「おら!」
バックパスをする要領で最大限まで威力を強くし、後ろ向きのままボールを蹴り出した。所謂バックシュートだな。
「「「何やってんだー!?」」」
雷門の仲間から一斉に批難が殺到するが……
「くっ……」
相手のゴールキーパーは意表をつかれたのか、はたまた俺の蹴り出した位置が絶妙だったせいか、ゴールラインぎりぎりでなんとかボールを止めた。
『ど、どうした尾刈斗中ゴールキーパー鉈!比企谷の意味不明なバックシュートに、なんとかといった形で反応しました!』
「……そうか!」
豪炎寺も気づいたらしい。というか俺が確認をしたような形だが。
「あのような選手まで雷門にいるなんて……だがそろそろジ・エンドにしてやるか!!お前ら!"ゴーストロック"だ!」
「おっしゃあ!!」
やべ、上がりすぎた。
急いで戻るが全然追いつかない。これで決められたりしたらもう雷門に勝ちはなくなる!
く、背に腹は変えられん……。
そして……
「"ゴーストロック"!!」
「し、しまった!!」
「くそ、動け!!」
"ゴーストロック"によって
俺が止まってないことに気づいたのか、尾刈斗中の奴が慌てたように叫ぶ。
「!?幽谷、待つんだ!!」
「もらったぞ!"ファントムシュート"!」
だがキャプテンは聞こえていないのかそのまま必殺シュートを放った。
「くっそー!」
「小町小町小町小町小町小町小町小町小町小町小町小町小町小町小町小町小町小町小町小町小町小町小町!!」
「な、なんだあいつ!!?」
「うらぁ!!」
俺は"ファントムシュート"を横からブロックし、ボールはサイドラインを割った。
「比企谷………どうしたんだ?」
おい、円堂。その表情やめろ。「ついにこいつ壊れたのか」みたいな可哀そうなものを見る目をやめろ!!だからダメージが大きそうでやりたくなかったんだよ……。
「ど、どうやって……いや、お前ら!あの20番を止めろ!残りの連中は動けない!!」
「ちっ……」
やっぱそうくるよな。俺だって監督ならそう指示するし。
だが……
「円堂!!」
「とどめだ!!」
「ゴロゴロゴロゴロ、ドッカーン!!!」
よく意味の分からない言葉を大声で叫んだ円堂。多分これで動けるはずだ。
しかし……
「"ファントムシュート"!!」
幽谷のシュートが早く放たれ、円堂は解放直後でゴッドハンドを出す時間がない。
万事休すか……。
「"熱血パンチ"!」
俺は諦めかけたとき、円堂が新必殺技を繰り出した。
……やっぱ円堂は俺なんかの想像の遥か上を行くな。ほんとに。
「見たか!俺の"熱血パンチ"!」
「ああ……じゃなくて、どうして動けたんだよ!」
「風丸さん、動けてるっすよ」
「壁山、お前もな」
「ええ!?ほ、ほんとだ……」
「わかったんだよ、なんで動きけなくなるのかが」
要はこういうことだ。
あの移り変わるフォーメーションにより視覚をぐるぐるにし、「マレ、マレ、マレ止まれ」とかいう意味不明な言葉を呟き続けることで俺たちの聴覚もごちゃごちゃにする。それによって脳が自分自身をうまく把握できなくなり、体が思うように動かなくなる仕組み、催眠術ってところか。
正直俺は外から見ていたから気づけたが、円堂が見抜いたのは純粋にすごい。いやーすごいな円堂!だからこの話は一旦終わりで早く攻めよう……
「比企谷、お前、頭大丈夫か?」
「先輩!小町って誰ですか!?」
「出たなシスコン!」
「頭おかしなシスコン!」
「うるせえ!!俺はシスコンじゃない、ただ妹が大好きなだけだ!!」
「「「それをシスコンって言うんだよ!!」」」
「ま、まあ……さっきのは忘れてくれ……」
「「「うん、無理!」」」
「うわぁぁあああ!!」
死にたい!クッソ死にたい!!あーあ、もう俺サッカー部でも居場所なくすかもしれない……。
「ひゃははは!やっと気づきやがったか!だがもう遅いぜ!」
確かにもう残り時間も少なく……1点ビハインドを負っている。
だが、
「まだ終わっちゃいない……俺たちの反撃はこれからだ!」
円堂という男は決して諦めない。
たとえ1人でも、あいつは全力で立ち向かう。
「フォワードにボールを回すんだ!」
「でもキャプテン、染岡さんのシュートじゃ!?」
「あいつを信じろ!少林!……あの監督の言う通り、俺たちはまだまだ弱小チームだ。だが、1人1人の力を合わせなきゃ強くなれない。俺たちが守り、お前たちが繋ぎ、あいつらが決める。俺たちの1点は、全員でとる1点なんだ!!」
「俺たちの……全員の……」
どうやら、ようやく染岡の目が覚めたようだな。気持ちはわからんでもないが、独りよがりではそれはサッカーではない、1人サッカーだ!……小さいころやろうとして挫折したなあ……。
「さあ、行こうぜ!皆!」
円堂の言葉が響いたのか、全員が伸び伸びと上がっていく。
「染岡さん!」
少林から染岡にわたり、驚いた表情を浮かべる染岡に、少林寺はサムズアップで返す……あいつ今ドヤったな。
「うらああああ!」
相手ディフェンダーが鬼気迫る感じでスライディングを仕掛けるも、染岡はそれを交わして豪炎寺と共に攻めあがる。
「無駄無駄!鉈がゴールを守る限り、俺たちの勝利は確実だ!!」
「ぐ……」
「奴の動きをみるな!あれも催眠術だ!」
「えっ」
「平衡感覚を失い、シュートが弱くなるぞ!」
「お前……ずっとそれを探っていたのか!」
染岡の前に二人のDFが立ちふさがる。
が、
「豪炎寺!!」
「!」
「"ドラゴン……クラッシュ"!!」
染岡は上に打ち上げる形で放った。
これは……
「"ファイアトルネード"!!」
"ドラゴンクラッシュ"と"ファイアトルネード"の合体技!
まさしく"ドラゴントルネード"、だな。
「う、うわああああああ」
キーパーの鉈ごとシュートをゴールに叩き込み、3-3の同点に追いついた。
「これを"ドラゴントルネード"と名付けましょう!」
うわあ、目金とネーミングおんなじじゃないか……色々と複雑な思いが……まあいいか。
「そんな……馬鹿な……」
相手の監督ほんとにコロコロ表情変わるな。誰得なんだよ、本当に……いやまあ面白かったんだけど……。
その後試合が再開されても雷門ペースで試合が進み、"ドラゴントルネード"がもう一度決まり4-3に、そして……
『ここで試合終了!4-3!雷門中の勝利!!』
「「「よっしゃあ!!!」」」
「やりましたね!」
「勝ったんだな、俺たち!」
「うおおお!感動っす!嬉しいっす!」
そんな喜びまくっているチームメイトたちを尻目に、俺は着替えるためにこそっと、誰にもバレないようにグラウンドを抜け出そうとして……
「比企谷先輩♪どこに行くんですか?」
「ひぃ!い、いやトイレに行こうかなーっと」
「なるほどですー、でもトイレは反対側ですよ?」
「あ、そうだった忘れてたわ、ありがとな音無」
「いえいえ~」
ダッ←俺が音無から逃げ出した音
ガシッ←俺の首根っこを音無が捕まえた音
チーン……←俺の死が確定した音。
俺はそのまま音無にズルズルと引きずられていく……ちょっとー皺になったらどうしてくれんd「あ、もし皺になったら私が洗濯してくるので」でも俺には小町に会いに早く家に帰らないt「あ、もし小町ちゃんのために帰るために逃げるんだ!とか言い出したら今日の試合で先輩が小町小町小町!って叫んでたの教えるので」俺は無力だ……。
って、いつの間に小町は音無と会ってたんだよ。なに?もしかして木野と音無と小町は繋がってるの?何それ俺もう逃げ場ないじゃん……。
「比企谷先輩が逃げようとしてました!」
「「「あー捕まってるー」」」
「いや、だってやることなくね?」
「いや、あるぞ!」
半田は俺にものすごい笑みを浮かべてきて、
「お前の奇行をいじることがな!!」
デスヨネー……。
その後俺が散々からかわれたり問い詰められたりしたのは見るまでもないだろう。
俺の相手ゴール前での奇行は豪炎寺の「俺たちにヒントを与えてくれたんだ」という素晴らしいお言葉によりなんとか触れられることはなかったが、シスコンゾンビとしばらくの間呼ばれ続けるのであった。
いや、腐り目ならまだしもゾンビみたいに気力が落ちたの君たちの追及のせいなんですけど……。
こうして俺たち雷門中と尾刈斗中の練習試合は俺たちの勝利で幕を下ろしたのだった……。
はい、というわけで尾刈斗中学との練習試合でした!
ちなみに音無から小町に伝わり大変な目にあった八幡であった。というのがこの話のオチです、多分。
あー長かった?だよねー俺もそう思う。だけどね……ぶっちゃけ尾刈斗とか打つのだるいんだよ!なんかもうこの話だけで数話分疲れた(数話分の文字数なので当たり前(笑)なのですが)ので次は少し少なくなるかもしれません。許してね?
気づけばこの作品もお気に入り登録200人ととても嬉しいことになっておりました!ありがとう!嬉しいです!また続き書こうって気持ちになります!
感想等書いてくだされば必ず返信いたしますので!(遅くなることはある)
ではでは~次の話で~!