やはり俺が雷門中に入学したのはまちがっていなかった。   作:シェイド

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あけましておめでとう。


参加校最弱のチーム…え、メイド喫茶?

 豪炎寺が怪我で準決勝に出られないと決まった俺たち雷門中。

 

「…すまん」

「気にすんなって!準決勝は俺たちに任せとけ!」

 

 円堂の言葉に一つ頷いた豪炎寺は、タクシーに乗って病院へと向かっていった。

 豪炎寺を乗せたタクシーが見えなくなったところで、円堂が話し出す。

 

「準決勝は豪炎寺抜きか…」

「あんな凄い技、編み出したのにな」

「"イナズマ1号"、だろ」

「イナズマ1号?」

 

 あの自陣ゴール前から撃ったとんでもないシュート技か。びっくりしたよあれ。相手の必殺技に合わせて、円堂と豪炎寺の息のあったツインシュート。

 …おかげで俺の必殺技ちょっと霞んじゃったけどね。八幡少し悲しい…。

 

「じいちゃんの秘伝書に乗ってたんだ。GKとFWの連携シュート。じいちゃんも同じこと考えてたんだよ…やっぱすげえぜ!じいちゃんは!」

 

 いや、いくら同じ血が流れてるとしても、秘伝書見てない時に同じような発想できる円堂も凄いと思うよ?俺全然考えつかなかったし。

 

「豪炎寺がいれば、準決勝でも使えたのになぁ」

 

 半田が弱音を吐いている。気持ちは分からないでもないが、隣の染岡さんが凄い顔してるから、あんまり刺激させない方がいいぞ!

 

「お前らなら大丈夫だろ」

「土門…」

「いざとなったら俺が出るしさ、それに比企谷だって後半から出場するんだ」

「そうだな、俺たちで頑張らなくっちゃな!よし、早速練習だ!」

「「「おおー!!」」」

 

 円堂の掛け声で俺と土門、マネージャーを除いた皆が部室へと走っていく。

 豪炎寺が出れないとなれば、必然的にシュート技を持つ染岡と俺に試合の得点はかかってくるだろう。もっと練度をあげないとな。

 

「あ、比企谷先輩」

 

 俺も円堂たちの後を追おうとすると、音無から声をかけられる。

 

「"イナズマ1号"も凄かったですけど、先輩の"ノワールショット"も凄かったですよ!小町ちゃんには共有済みです!」

「…お、おう、そうか」

「反応悪いですね~、さっき一人でちょっと落ち込んだくせに」

「おま、なんで分かんの?怖いんだけど」

「マネージャーですから!」

 

 まーた薄い胸を張ってドヤ顔してますよこの子。あ、木野さんそんなに睨まないで!?

 

 

***

 

 

 翌日。

 俺たちは部室に集まり、フットボールフロンティア地区予選のトーナメント表を見つめていた。

 

「地区予選準々決勝の、尾刈斗中対秋葉名戸学園戦。この試合に勝った方が、私たちの準決勝の相手になるわ」

「尾刈斗中って!」

 

 思い出される、見た目ほんとにサッカーする気あるのかこいつら…って連中な。

 ただ、必殺技もあってFW全員が"ファントムシュート"を撃ってくる上、催眠術使ってくるからな、手強い相手だ。

 

「なんでも、猛特訓の末にかなりパワーアップしたみたいよ」

「あいつらが更に強くか…」

 

 いくら帝国を退けたからって、弱小サッカー部に負けるとは思ってなかっただろうからな。

 俺たちもあれから強くなっていると思うが、強くなった尾刈斗中と戦えばどうなるか…弱気になってちゃダメだな、まだ対戦も決まってないんだし。

 

「で?相手の秋葉名戸学園ってのは、どんなチームなの?」

「学力優秀だけど、少々マニアックな生徒が集まった学校。フットボールフロンティアに出場しているチームの中で、最弱の呼び声が高いチーム…な、なにこれ!?」

 

 雷門が木野に質問し、それに音無から渡されたであろうメモ帳を読んでいく木野だが…何か変なことでも書いてあったのか?

 

「どうした?」

「尾刈斗中との試合前にもメイド喫茶に入り浸っていた…ですって!」

 

 どうでもいい情報じゃねえか。てか音無の情報取集能力どうなってんだよ、どこからリサーチしてるの?情報収集する時に探偵雇ってないなら、もう音無が探偵業始めていいんじゃない?

 

「メイド喫茶ですと!?」

「…なに?」

 

 メイド喫茶に反応したのはメガネ。なに、メガネも通ってたり?

 

「こりゃ、準決勝の相手は尾刈斗中で決まりでやんすね!」

「メイド喫茶には負けないでしょ」

「でも、今回は豪炎寺がいないんだ。前みたいには…」

 

 全員が準決勝の相手が尾刈斗中だと信じてやまない中。

 

「大変です!大変です~!!」

 

 部室の扉を勢いよく開けた音無が、焦った表情を浮かべていた。

 

「どうした!」

「さっきネットに準々決勝の結果がアップされたんですけど…1-0で秋葉名戸学園が、尾刈斗中に勝利しました!」

「なんだって!?」

「あの尾刈斗中が負けた!?」

 

 え、最弱の呼び声高いって話じゃないの?

 

「これは行ってみるしかないようですね…メイド喫茶に」

「「「はぁ?」」」

「あの尾刈斗中を下して勝ち上がってきた秋葉名戸学園の強さの秘密が、僕にはその訳が、メイド喫茶にあると見ました!行きましょう円堂君!」

 

 メガネが急に立ち上がり、円堂に力説しているが…それただメイド喫茶に行きたいだけじゃないのか?

 

「え、いやぁ…」

「僕たちは秋葉名戸学園のことをなにも知りません。これは、これは試合を有利に進めるための情報収集なのですよ!」

「なるほど…」

 

 え、嘘だよね円堂君?君行く気なの?

 

「よし!行ってみようぜ!!」

「マジかよ!?」

 

 え、みんなで行くの…?染岡と栗松と壁山が顔赤くしてんぞ!やめとけって!

 俺?当然ちょっと赤くなってる自覚はあるよ?顔隠すようにそっぽ向いてるけど…あ、音無と目が合った。

 

「比企谷先輩は行かなくてもいいですよね?もし行ってメイドさん相手にそんなキモい顔してたら、小町ちゃん今よりもっと幻滅しますよ?」

「キモい顔とかいうなよ心にグサっとくるわ。あと今よりもっとって、既に幻滅されてるの?俺?」

「あっ…」

「いやその反応が一番傷つくんだって。ガチ感出るだろ…え?ほんとに?」

 

 嘘でしょ小町ちゃん…嘘だと言って!?

 

 

***

 

 

 結局俺とマネージャー達以外はメイド喫茶へと向かっていき、1人残された俺は河川敷で練習していた。ぼっち練である。

 "ぼっちワンツー"、"ノワールショット"を習得している俺だが、まだ基礎固めの段階である。サッカーの戦術の本とか読んだけれど、実際に試合で再現する難しさを体感する日々だ。

 相手の動き、味方の動きを把握しながらポジショニングするだけでもしんどいのだ。ひとまず体力は後半から出してもらえる分、全力で30分走ってもなんとか持つのだが…ずーっとこのままってわけにもいかない。

 ひとまずはディフェンス技を習得できたら一番いいんだがな…。

 

 しばらく1人で自主練と称し、グラウンド周りの走り込みからシュート練習、ドリブル練習としていたところで、メイド喫茶から帰ってきたであろうみんなが姿を現した。

 全員で練習再開となったのだが…

 

「おい!やる気あんのかお前ら!」

「すいません!」

「パスミスだぞ今のー!」

「ごめんっす!」

 

 パスミスするわ、シュートはゴールに飛んでいかないわ、全体的に緩い空気が蔓延している。

 メイドに骨抜きにされたのか…?の割には、染岡はいつも通り気合い入ってんだよな。

 ディフェンスの練習にもならないほどに簡単にボールが奪えてしまうため、一時ゴール裏に集まっている円堂達の方へと向かう。

 

「はぁーだめだ、みんな気が緩んじまってる」

「仕方ないよ、あんな連中が準決勝の相手なんだ」

「あんな連中?」

「あ、比企谷ー。聞いてくれよ…」

 

 そこで聞いた、メイド喫茶に入り浸っていた秋葉名戸学園の選手達の姿。

 オタク集団であり、見るからにサッカーをするようには見えなかったと。

 

「油断は禁物ですよ。仮にも準決勝まで勝ち上がってきた相手です」

「って言ってもさぁ」

「全然強そうに見えなかったぞ」

 

 松野と半田が言うように、チームのほとんどは準決勝を楽に戦えると思っているようだ。

 …どんな連中だったのかはわからないが、仮にもあの尾刈斗中を倒しているチームだろ?負けたらそこで終わりのフットボールフロンティアだし、気が緩んでいる場合ではないと思うが…。

 

 

***

 

 

 準決勝当日。

 試合会場は秋葉名戸学園で、決まりとしてマネージャーはメイドの格好をしないといけないのだとか。

 あ、雷門が木野と音無に挟まれてめちゃくちゃにされてる。可哀想に…。

 

「これが準決勝の相手か…」

「あぁ…」

 

 その光景を見ながら困り顔の豪炎寺と円堂。怪我でもちゃんとベンチに座るのすげえな豪炎寺。俺なら絶対自宅待機してると思う。

 豪炎寺のポジションが空いている為、どこでもこなせる土門をFWとして出場させようとした円堂だったが、相手に触発されたのかメガネが試合に出ると言い張り、そのままFWとしての出場に。

 これでベンチには俺と土門、豪炎寺が座っていることになる。

 相手チームをみてみるが…うん、そうだね、みんな色んなタイプのオタクって感じの見た目してるな。ここまでわかりやすいとなにが好きなのかまで把握できそうで怖い。

 …ってか雷門さん、最初あれだけサッカー部を廃部にしようとしてたのに、ちゃんと勝利できるようにスタメン組もうとするなんて、なんだかんだサッカー部のマネージャーが板についてきたのね。少し前からは考えられない光景だわ。

 そんなこともありつつ、試合が開始されたのだが…

 

『まもなく、前半が終了しようとしていますが、いまだに0-0のまま!秋葉名戸学園、ボールをキープするものの、全く攻めようとしません!』

 

 試合は0-0の膠着状態。その上自陣でボールを回しており、ほとんど雷門ボールになることがなく、奪うこともできていない。

 シュート本数すらどちらも0本である。

 

『あっとここで前半終了の笛!試合は0-0のまま後半へと向かいます!』

 

 …そういえば尾刈斗中との試合も、後半に1点を入れて1-0での勝利だったし、前半は0点だったな…。

 

「全く攻めてこないなんて、僕にも予想外でしたよ」

「お前、あいつらのサッカーがわかったんじゃなかったのか?」

 

 ハーフタイムに入り、ベンチでみんなが給水する中、試合が始まる前にやる気に満ちていたメガネがそう呟くと、染岡が呆れた表情をみせる。

 そりゃそうだろ、だってメガネだぞ。帝国戦の戦略的撤退忘れたか?やる気があっても発言までは信じられなかったわ。

 

「比企谷、後半どうする?」

「前半全然疲れてないだろうし、このままでいいだろ。とりあえず後半最初、全員警戒はしとけよ」

「警戒?」

「ああ。いくら変なチームだからって尾刈斗中を倒してここに来てるんだ。その時のスコアは1-0、それでいて後半に1点を入れている。前半を見るに相手も全然動いてないし、体力は残っていると見るべきだ」

「大丈夫でしょ、だってあいつらハーフタイムに全員がゲームしてるんだよ?」

「尾刈斗中も油断しただけでやんすよ」

 

 たしかに全員がゲームしてるし、サッカーチームとは思えない光景だが…ちょっと油断しすぎじゃないか?

 交代枠を使うことなく、全員がポジションにつく。

 

『さぁ、後半のキックオフです!』

 

 秋葉名戸ボールからスタートするが…全員の動きが前半とはまるで違う。全員で攻め上がってきている。

 細かくパスを繋ぎながら、少しずつ雷門ゴールへと前進している。

 

「ヒーローは、誰にも止めることはできん!変身!"フェイクボール"!」

「なにが変身だよ…って、あれ!?」

 

『おおっと!これは松野にアクシデント!フィールドに入り込んだスイカとボールを間違ってしまった!』

 

 そんなことあるかよ!って思ったけど、相手の監督ずっとスイカ食べてるしな…いやないだろ。あれ必殺技なの?

 松野を抜いた4番無敵が、ゴール前にクロスをあげる。

 壁山の上を通ったボールに対し、走り込んでいる9番芸夢と10番漫画。

 

「おりゃぁぁぁぁ!"ド根性バット"!」

「なにっ…うわぁ!?」

 

 おいそんなんありかよ、人をバット代わりにしてヘディングシュートって。漫画をバットにした芸夢のシュート(?)が円堂を襲った。

 しかもゴール右隅と狙いもよく、円堂の反応も遅れ届かなかった。

 

『決まった〜!?後半立ち上がりの雷門中の隙をついた、秋葉名戸学園の先制ゴール!』

 

 これって…尾刈斗中もやられたのか?それならこの後に相手が取る行動としては…あれ、まずくね?

 案の定というべきか。試合再開後、秋葉名戸は全員が自陣ゴール前に戻り、守備を固めている。

 染岡が1人で切れ込み、"ドラゴンクラッシュ"を放つが、相手の"五里霧中"で目眩しされたゴールネットを揺らすことはできず。砂埃がおさまった後、ゴール裏にボールが落ちていた。

 

『染岡のシュート!しかし惜しくもゴールを外れました!』

 

 …なんで相手のキーパー倒れて息切れしてんの?もしあいつが止めてたら、こっちのコーナーキックじゃねえの?

 その後も次々にシュートを放つが、誰が打ってもゴールを捉えることができず。

 毎回相手キーパーが倒れて息切れをしている…まさかな?

 

『さぁ、後半も残り時間が少なくなってきました!』

 

 何度やってもゴールとはならず、シュート全てがゴール裏に外れていく。

 

「このまま逃げ切るぞ!」

「定刻〜、秋葉名戸学園の勝利〜、勝利〜」

「くっ…!」

 

 相手が勝ちに近づくたびに、焦ってシュートを放ち、"五里霧中"後にゴール裏へと外してしまう俺たち。

 俺の横に座る豪炎寺が、歯を食いしばりながら怪我をしている左足を見つめている。

 

「なにをやっているの!時間がないわよ!」

 

 雷門の焦った表情、心配そうな木野と音無を見ながらフィールドをみる。

 準決勝敗退が脳裏に過ぎるが…なにもしないよりはやってみたほうがいいだろうな。

 俺はスローインを投げるため、近くに来た半田に声かけをしに行く。

 

「半田」

「どうした比企谷。交代したところでゴールに向かってシュートしても入らないんだ。いくらお前の必殺技でも…」

「"五里霧中"を相手が使った時、真ん中じゃなくて少し右側を狙ってシュートを打ってみてくれ」

「はぁ?!それじゃあ尚更外れちゃうだろ!?」

「いいから一回やってみてくれ。どうせ真ん中打っても外れるんだろ?頼む」

「…わかった、やってみるよ」

 

 これは俺の仮説だが、いくらあの"五里霧中"でゴールが見えないからといって、ここまでシュートを外すのは通常あり得ない。

 だが、一度ゴールをずらして、戻しているとしたら…?

 

『ここで半田がドリブルで攻め上がっていく!』

 

「よし、こっちだ半田!」

「悪い染岡!ちょっと俺に撃たせてくれ!」

「ちょ!おい!どうした!?」

 

 普段、自分からシュートを撃ちにいかない半田が、自らシュートを選択したことに味方の染岡が一番びっくりしてるな…そりゃそうか、半田がシュートを撃った試合、これまでないしな。

 

「誰がシュートをしても同じこと!"五里霧中"!」

 

 相変わらずの砂埃が巻き上がる中、半田がシュート体勢に。

 真ん中ではなく、そのシュートは右側へ逸れて飛んで行った。

 

「おい!どこ蹴ってんだ!?」

「比企谷にこうしろって言われたんだよ!俺のせいじゃないから!」

 

 なんで撃った後に俺の名前出すんだよ。ほら、染岡がこっち睨んできてるじゃねーか!

 でもおそらく、俺の推測が正しければ…

 

『ん…?ご、ゴール!!雷門中!これまで幾度となくシュートを撃ちながらもゴールに嫌われていましたが、ここにきて、同点ゴールを奪いました!!』

 

「は?」

「え?入った?」

「「「ええええ!?」」」

 

 半田のゴールで同点に追いついたのだった。

 決めた半田自身が一番驚いていたが、起死回生の1点だったこともあり、チームメイトに揉みくちゃにされている半田。

 交代しなくても、こういう形で助言するってのもありか…いややっぱ試合出てーわ。

 

 

***

 

 

 試合はあの後、メガネが"五里霧中"の秘密を暴き、"ゴールずらし"を攻略。

 染岡の"ドラゴンクラッシュ"に合わせたメガネの"メガネクラッシュ"により、2点目。

 メガネは負傷退場となったが、その勇姿を見た秋葉名戸学園の選手達は、これまでの卑怯かつルール違反なサッカーをやめ、正々堂々と戦うと誓っていた。

 残り時間わずかながらも、染岡がダメ押しの3点目を奪って試合終了。

 3-1で勝利した雷門は、帝国が待つ決勝へと駒を進めたのだった。




ここだけ本当に書きにくかったです。
まだゲーム版の点数操作してたってやつの方が書きやすかったかもしれねえ。
漫画版の影山の息がかかってるやつは、下劣さが高いので使いませんでした。
一番クリーンなのは結局アニメ。
時点でゲーム…?いや漫画も同じくらいか。
次回もサクサク進めていきたい。
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