やはり俺が雷門中に入学したのはまちがっていなかった。   作:シェイド

18 / 19
帝国のスパイね…そんなことより音無って兄貴いたの?

 準決勝秋葉名戸学園戦を3-1で勝利した俺たち雷門中。

 地区大会決勝の相手は、現在フットボールフロンティアで40年間無敗の帝国学園だ。

 

「さあ!今日も練習だ!」

「「「おおー!!」」」

 

 破竹の勢いで勝ち進んだことにより、ようやく雷門中のメイングラウンドを使うことができるようになった俺たち。

 今更だが部活として結構人数いるのに、すぐグラウンドの練習時間割り当てされなかったのなんでなんだろうな?もうずっと河川敷で練習するもんだと思ってたレベル。

 

「サイドの風丸を止めろ!土門!」

「あいよ!」

「うわっ!」

「いいぞ土門!」

 

 キーパーが円堂1人しかいない為、片方でシュート練習、片方でミニゲーム方式の練習を行っている。

 元陸上部ということもあり、足が速くドリブルのスピードもなかなかの風丸だが、土門にスライディングされボールを奪われてしまった。

 

「やりますね土門さん!」

「ええ!」

 

 実際、うちの守備陣は豪炎寺や染岡がいる攻撃陣と比べるとだいぶ見劣りしていると思うが、土門の加入により強化されたことは間違いない。

 ディフェンス技がなくて後半から出場してる俺が言うのもなんなのだが。

 

「遅いぞ!ディフェンスはマークにつけ!」

「"ぼっちワンツー"」

「あっ!?それずるいでやんす!」

 

 俺へのマークが遅れた栗松を"ぼっちワンツー"でかわしていく。

 そこまでずるいか…?ボールの軌道は大体いつも同じだから、止められやすいと感じてるんだが。

 なんならこういうディフェンスが遅れた時や、虚をつくような形でしか今後も使用できなそうだ。帝国に勝てば、全国のあらゆる猛者と戦うことになるだろうし。

 

「よし!こい比企谷!」

「行くぞ円堂!"ノワールショット"!」

 

 渾身の力を込めた"ノワールショット"が円堂へと向かっていく。

 

「"ゴッドハンド"!」

 

 だが、円堂の"ゴッドハンド"を破るには至らず。ボールから煙が出るくらいだった。

 

「へへっ、いいシュートだったぜ!」

「さすがの比企谷のシュートも"ゴッドハンド"までは破れないか」

「ぐっ…まだまだ!」

「おう!もういっちょこい!」

 

 帝国のGK源田は中学サッカーNO.1の呼び声高い選手だ。そうだとしても円堂も同じくらい良いGKだろう。"ゴッドハンド"は帝国の"デスゾーン"ですら破れなかった技だしな。

 円堂からボールを受け取った俺は、今度はドリブルをし、タイミングをずらしながら"ノワールショット"を放った。

 

「このタイミングか!"熱血パンチ"!…どわっ!?」

 

 ゴール右下を狙ったシュートに対し、"熱血パンチ"で反応するが、"ノワールショット"の威力が勝りゴールネットを揺らした。

 俺の必殺技は通用しない相手も多く出てきそうだが、工夫次第ではこうやって点を取ったり、相手を抜き去ることもできるだろう。

 出来れば帝国戦までにディフェンス技が習得できるといいんだがな…。

 

「くっそー!!次は止めてみせるからな!」

「"ゴッドハンド"を破れるように特訓してるんだ。次こそは俺だって破ってみせるぜ」

 

 練習重ねてれば必殺技も進化できるようだし、引き続きイナビカリ修練場でもトレーニング機器の全部クリアを目指して頑張らないとな。

 一度全体の休憩時間になり、ドリンクを飲んで休んでいると、部員達が喋り始めた。

 

「にしてもほんと意外ですよ」

「どうした宍戸?」

「だって、比企谷さんってサッカー始めたの中学入ってからで、いくらキャプテンの熱意に心動いて部に入ったとしてもですよ?こんなに練習熱心なタイプには見えないですもん」

「たしかに意外っす」

 

 言いたい放題言ってやがる。まぁ、過去の俺が今の俺を見たら「なんで?」くらいは言いそうなもんだし、わかるっちゃわかるが。

 

「秋葉名戸との試合でも、比企谷の声かけのおかげで俺は得点できたからな」

「人間観察が趣味なだけありますよね!」

「ほんと!見た目暗いのにめっちゃ可愛い妹いるし」

 

 いや小町関係ないだろ!あと音無の人間観察が趣味って言うタイミングに悪意ない?それだけだと、普段から人のことばっか見てるやべーやつにならない?

 

「ドリブルとシュートの必殺技持ってるの比企谷だけだしな。シスコンだけど」

「後半から出てきて活躍できるの凄いでやんす!シスコンでやんすが」

「相手の分析とかサッカーの勉強してるのみてると尊敬しちゃうよ。シスコンだけどさ」

「お前らシスコンシスコン言い過ぎだわ!!くらえ!"ノワールショット"!」

「ぎゃー!?逃げろ!!」

 

 褒めてるのか貶してんのかどっちかわからねえよ…いやこれおちょくってきてるだけか。

 結局、この後もおちょくっては追いかけるかシュートを放つという、いつも通りと言えばいつも通りの休憩時間となったのだった。

 

 

***

 

 

 夕方になり、練習終了後。

 いつものように雷雷軒によって帰ることになった。

 

「今日は何にすっかなー」

「俺チャーハンにしようかな」

「僕チャーシューメン!」

「セレブだな!」

 

 ちなみに俺は雷雷軒の特製ラーメン一択だ。一通り食べた結果、背脂の乗ったこってり系ラーメンにたどり着いた。

 一度食べてからというもの、他のラーメンを食べてもうまいにはうまいのだが、なんだか物足りないという気持ちになってしまうのだ。恐るべし雷雷軒…。

 

「あ、わりぃ、俺先帰るわ!」

「お?おう、じゃあまた明日な!」

「じゃあな!」

 

 続々と店内に入っていく俺たちだが、一緒にいた土門だけ先に帰るようだ。

 土門も少し謎なんだよなー、携帯見ること最近増えてる気するし。

 それぞれが注文を終えた後、俺の後ろに座っていた壁山から声をかけられる。

 

「比企谷さんって最近いつもそれっすね、うまいんすか?」

「うまいぞ。もうやみつきになっちゃってな」

「なんだかんだここに一番通ってるの比企谷だよな。帰りが別でもここで会うことあるし」

「なんだかんだ練習がきつかった時とか、こうやって集団で行ける時は必ず来てるからな」

 

 なんなら、部活が休みの日でも円堂と特訓してる時や豪炎寺とイナビカリ修練場を使っている時がある為、ひどい時は週5〜6とかまである。通いすぎかよ。

 仕方ないよね、ここのラーメン、うますぎるんだよな。

 

「よくそんなお金ありますね」

「チャーシューメン頼んでる少林寺に言われたくないが…うちは両親どちらも共働きしてるからな、夜飯ないことまあまああるし、その分夕飯代もらってんだよ」

「ずるいっすよ!羨ましいっす!」

「そうか?帰っても飯がないんだ、自分で作るの結構だるいんだぞ」

「それは確かになぁ」

「納得です!」

 

 家に帰ったらご飯があるのが当たり前、みたいな家じゃないからな。その代わりマイスイートエンジェルである小町が一緒にいてくれるから、むしろ早く帰りたいまであるんだが。

 …ごめんなさい嘘つきました。サッカー楽しくなってきて、早くに帰ること減ってきてます。

 

 

***

 

 

 翌日。

 部室に忘れ物をした俺は、始業前にとっておこうと向かっていた。

 

「えーっと…お、あった」

 

 危ない危ない。今日授業で使うプリント落としたと思ったけど、やっぱり部室に落ちていた。

 みんな入ってきた順にガンガン着替えていくから、たまにカバンの中身落としたりするんだよな…何はともあれプリントも見つかったし、教室に行く…か?

 

 土門が部室に入ってきた。

    ↓

 音無がまとめたイナビカリ修練場の個人能力データを見て、1人唸っている。

    ↓

 中の紙を取り出そうとする。

    ↓

 目を閉じて歯を食いしばりながら、取り出すのをやめて元に戻す。

    ↓

 部室を出て行った。

 

「…え?」

 

 嘘だろ…いくら部室の端っこにいたとはいえ、気づかれないとかある??

 存在感も希薄になったのか…今のクラスには円堂と豪炎寺がいるにしても、そのほかのクラスメイトと話すことほぼないしな…存在感薄いのは間違いないか。

 軽く傷つきながらも、様子のおかしい土門を追って部室を出る。

 そのまま校舎に入るのかと思えば、部活動の遠征用バスがある倉庫の方へと向かって行く。

 …?なんで倉庫が開いてるんだ?近いうちにうちの運動部で大きな試合があるのは、サッカー部だけだったはずだが…。

 中に入っていく土門を見送りながら、近くの草むらに隠れてみる。

 少しした後、顧問で監督である冬海先生がバケツを持って出てきていた。

 その後土門も出てきたため、少し時間をおいてから俺も校舎へと向かって歩き出す。

 冬海先生となんか話してたのか…?それにしては、たまたま見つけたから入っていったように見えたが…。

 バケツを持ってたってことは洗車でもしてた…?いや、いつもサッカー部の練習すら見に来ず、準決勝はベンチにすらいなかったのだから、今更サッカー部のために何かをするなんてことはないはず…。

 どこか2人に違和感を感じるものの、それがなんなのかはわからないままだ。

 

 

***

 

 

 授業が終わり練習が始まった。

 グラウンドの周りを全員でランニングするところから今日はやるようだ。

 

「ファイト!」

「「「ファイト…」」」

「ファイト!」

「「「ファイト…」」」

 

 1年は少林寺以外少しずつ遅れ始めている。かれこれ5周目だもんね、きもちはわかるぞ。

 俺も1年の時から円堂と練習してなきゃ、栗松達と同じ顔して走ってたと思うわ。

 ランニングが終わって一度休憩となり、各々が座り込んだりドリンクを飲む中。

 土門だけが難しい顔をしながらグラウンドから離れていく。

 他の部員は…気づいていないようだ。木野だけが気づいたようで、音無に依頼し後をつけるらしい。

 こっそりと俺もグラウンドを離れ、土門の後をつけていく。

 体育倉庫付近で茂みに隠れながら様子を伺うと、誰かと話しているようだ。

 

「イナビカリ修練場のデータは?」

「まだ、手に入ってません」

「なら何故呼び出した?」

 

 ん?あのゴーグルとドレッドヘアーは帝国の鬼道?なんで雷門中に?

 

「鬼道さんっ、本気なんですか?!いくらなんでもやりすぎですよ!移動用のバスに細工するなんて!」

「なんだと…?」

「やっぱり…鬼道さんも知らなかったんですね…。これが帝国のやり方なんですか!?総帥は一体、なにを考えているんです!?」

「っ…」

 

 バスに細工だと?…そういうことか。冬海先生がバケツを持っていたのは、バスに細工した後だったからか。なにかしらのパーツをいじったのだろう。

 それにしてもイナビカリ修練場のデータを土門に求めてるということは、土門は帝国が送り込んできたスパイってことか。

 

「なんかもう俺、総帥のやり方についていけなくなりました!あの人は強引すぎる、そこまでして勝ちたいんですか!?」

「それ以上言うな。俺たちに総帥への不満は許されない」

「でも…!」

 

 総帥のやり方…ってことは帝国学園理事長の影山か。確か練習試合の時もでっかい車(?)の上から試合を見ていたな。

 めちゃくちゃ悪そうな見た目してると思ってたが、本当に悪いやつだったのかよ。

 そうなるとフットボールフロンティア40年間無敗記録も、なにかしら影山が手を回して達成していた可能性あるんじゃねえの?ないか?流石にそこまでの力はない…よね?

 会話を盗み聞きしながら、知ってしまった情報を整理していた時だった。

 

「お兄ちゃん!」

 

 音無が現れ、鬼道に向かってそう言った。

 ……え?お兄ちゃん…?お兄ちゃん!?鬼道と音無って兄妹…?いや苗字違うが…何か複雑な関係とか…?

 

「雷門中の偵察にでもきたの!」

「………」

 

 普段のおちゃらけた感じはなく、鋭い目つきで鬼道に話しかける音無だが、鬼道は無視して歩き出した。

 

「待って!」

「…放せ」

「あっ…」

「俺とお前は、会っちゃいけないんだよ」

 

 音無の手を振り払い、鬼道は裏門へと続く方向に歩いて行った。

 えぇ…土門と冬海先生が帝国のスパイだったことにも驚きだが…音無と鬼道って兄妹なの?マジで?

 今の反応的に本当そうだ。音無が珍しく悲しげな表情を浮かべている。…ったく、本当に兄貴だとしたら、お兄ちゃん失格の行為だぞ。

 事情がわからない上に絶対に血の繋がった兄妹かどうかもわからない。

 ただまぁ…いつも元気な奴が元気じゃないのは、調子狂うよな。

 とぼとぼと言った感じでグラウンドへと戻っていく音無。土門のことも気になるが、なんだかんだデータを帝国には渡していないようだし後回しでいいだろう。

 土門と距離が離れ、グラウンドのみんなからもあまり見えないであろう距離で声をかける。

 

「音無、大丈夫か」

「え、比企谷先輩…?もしかして見てましたか?」

「悪い、覗き見する気はなかった。土門の様子が気になって後を追いかけたんだが、まさか帝国の鬼道がいるなんて思わなくてな。つい隠れたんだよ」

「…聞いちゃってるなら、比企谷先輩にだけ教えますけど…私のお兄ちゃん、帝国学園の鬼道勇人なんです」

「…そうか」

 

 どうやら本当に兄妹だったらしい。驚きの事実すぎて、むしろあまりリアクションできないまである。

 

「全然驚かないじゃないですか。もしかしてお見通しでした?」

「そんなわけあるかよ。ただ普通に驚きすぎて声でねーだけだっての」

「驚きますよね…他のみんなには、とてもじゃないけど言えないです」

 

 土門や冬海先生の件がどう今後転ぶかは分からないが、それに加えて音無があの鬼道の実の妹だなんて知ってしまえば、次は誰が関係性を持っているのかお互いに疑心暗鬼になってしまいそうだ。

 

「だな、隠しておくのが賢明だろ」

「…私たちだけの秘密、ですね?」

 

 上目遣いでこちらを見ながら、悲しげな顔を引っ込め、いつの間にか悪戯な笑みを浮かべている音無。

 土門も聞いていただろうことは黙っておこう、うん、そうしよう、八幡優しいからね!水を差すようなことは言わないよ!




中途半端ですが一度切ります。
次回で帝国戦序盤まで行けたらいいなあ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。