やはり俺が雷門中に入学したのはまちがっていなかった。   作:シェイド

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前編と言ってますが、全然試合描写ないです。


帝国との決勝戦・前編

 音無の実の兄が鬼道と発覚した翌日。

 珍しく練習を見にきていた冬海先生が気味の悪い笑みを浮かべていたところへ、雷門夏美が、決勝戦へ向かう際に使用する、バスの試運転をお願いするところからはじまり。

 運転することができなかった冬海先生が、雷門サッカー部を決勝戦に出られなくしようとした帝国のスパイなことが暴露され、雷門の手により教師の職すら解雇に。

 置き土産のごとく土門も同じ帝国のスパイであることを伝え、土門はみんなの視線に耐えきれず走り去ってしまったが、追いかけて行った円堂、木野の活躍と、バスへの細工を雷門へ報告したという帝国を裏切り、俺たちの味方をするような動きにみんなもスパイ活動を許す流れになり。

 そして…

 

「フットボールフロンティアの規約書によると、監督不在のチームは出場を認めないとあります」

「「「えぇ!?」」」

 

 冬海先生を解雇した為に、俺たちは決勝へ出られなくなってしまったのだった。

 え、いやどーすんのこれ。雷門さん責任とってくださいよ。責任とってって言うとなんかエロいね。…また木野に睨まれている。なぜ俺の思考が読まれているんだ?

 

「お前、知ってたのかよ!?」

「し、知ってたわよ!だからあなた達はすぐに監督を探しなさい!これは理事長の言葉と思ってもらって結構です!」

「「「えぇ…そんな…」」」

 

 ノープランかよ。でもそうだよね、バスに細工されてるなんて書いてある手紙もらったら、とにかくそっち確かめたくなるよね、わかります。

 雷門と土門のおかげで未然に事故を防げたわけだからな。てか冬海先生、別で移動する気で細工したんだろうか?運転してください!とか言われた時どうするつもりだったんだろうね。

 部室に集まっている俺たちで新しい監督候補を思い浮かべていくが、どれもパッとしない人選だ。体育教師や担任の先生なんて案も出ているが、サッカーに精通していない人だと帝国に勝つことは尚更難しくなってしまう。

 サッカーを知っている人でかつ監督をできる人じゃなければならないからな…難しいところである。

 全員で悩んでいたところ、ふと豪炎寺が顔を上げた。

 

「円堂、雷雷軒の親父は、お前のおじいさんのことを知っていた。ということは…?」

「…そうか!」

 

 

***

 

 

「「「監督になってください!!」」」

 

 そのままの足で、全員で雷雷軒へときた俺たち。

 常連の刑事さんがカウンターの隅にいる中、堂々と店主にお願いをしている円堂達。

 俺?カウンターの奥側に立ってるぞ。ラーメン食べたくなってきたな…。

 

「「「お願いします!!!」」」

「…仕事の邪魔だ」

「すみません…俺のじいちゃんのこと、知ってるんですよね!?秘伝書のことも知ってた!だったら、サッカーも詳しいんじゃないですか!?」

 

 円堂のじいちゃんのことを知ってる=サッカーに詳しいは式として成立してなさそうだけどな。ただ、円堂のじいちゃんが伝説のサッカー監督であったのは本当みたいだし、今探せる人選としてはベストだろう。

 むしろこれ以上の人探せないレベル。

 

「あるいは、円堂のおじいさんとサッカーをやってたんじゃないですか」

「……」

 

 土門の指摘に無言を貫いている店主。しかし俺からは眉のあたりが反応したのが見えてしまった。

 

「それほんとか!?」

「勘だよ。秘伝書のことを知ってたんだ、もしかしたら伝説のイナズマイレブンだったんじゃないのかなって」

「…あの時俺が言ったことを忘れたのか?イナズマイレブンは災いをもたらすと言ったろう。恐ろしいことになるだけだ…」

 

 俺の知らないところで以前何かあったらしい。秘伝書を手にしたのが野生中との試合前だったから、その時くらいだろうか?

 イナズマイレブンは災いをもたらすねぇ…40年前のフットボールフロンティア決勝戦、雷門中は試合会場に向かう途中、バスが交通事故を起こし欠場…。

 イナズマイレブンが悪いのか?これ?バスに細工したやつと、確認不足ってやつじゃないのか…?

 それに、ここまできて諦める円堂じゃないだろ。

 

「でも!俺たちここまできたのに!全国に行けるんだよ!」

 

 円堂たちの真剣な眼差しと、店主の目がぶつかりあう。

 静寂を破ったのは店主だった。

 

「あのな…注文しないならとっとと出て行け!」

 

 至極真っ当なことだった。当たり前だ、店に押しかけて常連で顔見知りとはいえ他に客がいるのにこうやって話しているわけだからな。

 

「注文すりゃあいいんだろ!ラーメン一丁!」

「あ、俺特製ラーメンお願いします」

「はいよ、ラーメンと特製ね」

 

 みんなの視線が痛い気がするが、そんなこと知らない。注文してから話の続きができるなら、頼んでから話せばいい。

 

「あっ…」

 

 カウンターに座った円堂だったが、ユニフォームであることを忘れていたのか、お金を持ってきていないようで。

 

「財布、部室だった…」

「…ん?大丈夫!ちゃんと部室鍵かけてきたから!」

「そういう問題じゃなくて…」

 

 青ざめた円堂の視線を受け止めた木野は、笑顔でそう返答した。

 いや多分聞きたかったのはお金持ってる?だったと思うぞ。木野ってたまに天然というか、ボケに回る時あるよな…。

 

「注文、取り消し…」

「出ていけ!」

 

 無一文で注文した挙句に取り消しと、なかなかに迷惑行為をしてしまった円堂たちは、店主の手により店からつまみ出されてしまった。

 …風丸と豪炎寺は入り口付近に立ってたから普通に出て行った。そういうとこなんとなくイケメン達と俺たちの差って感じがするよな…。

 

 店の扉を閉めた後、俺の方を一瞥してくる。

 

「お前はお金持ってきてるんだろうな?」

「ありますよ」

「ならいい、少し待て」

 

 円堂のことだ。まだまだ諦めないだろうが、俺以外が締め出された今、俺にできることをするのみ。…べ、別にラーメン食べたかったわけじゃないんだからね!新監督の為なんだからね!

 …ラーメン食べたくなったのが残った理由のほとんどだなんて言えない…。

 店内に3人となった中、鬼瓦刑事が口を開いた。

 

「…イナズマイレブンか。いいチームだったよなぁ」

「……」

「あのキャプテンの坊やが、"ゴッドハンド"を使えるぞ」

「…!」

 

 "ゴッドハンド"という言葉を聞いて、明らかに反応が大きくなる店主。

 これで知らないは無理があるよな…。

 

「本当ですよ、円堂は"ゴッドハンド"と"熱血パンチ"使えますから」

「…俺には関係ない話だな」

「あーちなみにですけど、イナビカリ修練場でも特訓させてもらってます。あれほんとボロボロになりますよね」

「…知らんな」

 

 耳といい眉といい動かしすぎだろ…鬼瓦さん笑い堪えてるぞ。

 これくらい反応するなら、本気で嫌ってわけでもないんだろう。ただ、過去の出来事から快諾するようなイメージも湧かないな…。

 これは円堂にしか動かせないだろう。大人しく帰りますか。

 俺は特製ラーメンをしっかりスープまで完飲した後、雷雷軒を後にするのだった。

 

 

***

 

 

 今日の練習場所は河川敷だった為、食後の軽い運動をかねて軽く小走りをしながら向かう。

 ラーメン食べたからちょっとお腹重たいわ…今日は軽めに済ませたいところである。

 河川敷に着くと、何故か帝国の鬼道が鉄橋から雷門の練習を見ていた。

 あ、円堂が気づいて鬼道に話しかけに行ってる。

 

「冬海のこと、そして土門にスパイをさせていたことを、改めて謝罪したい」

 

 円堂と向き合った鬼道の口から出た言葉は、本心のようだった。

 

「いーよいーよ。そのことならもう終わったことだ」

「え…」

「土門さ、あいつサッカー上手いよな!いい奴だしさ!」

「ふっ…羨ましいよ、お前達が」

「えっ?」

 

 こういうところが円堂のいいところというか、凄いところだよな。敵だろうが味方だろうが、誰に対しても分け隔てなく話して関わることができる。

 その前向きさに、その陽気さに、俺も心を動かされた1人だから。

 

「…帝国が全国の頂点に立ち続けていられたのは、総帥の策略があったからだ。俺たちはこれまで汚いやり方で勝利を掴んできただけだったんだ。俺たちの実力じゃない…」

「そんなことない!」

「影山の策略で、お前達みたいに試合に出られなくなったり、不利になったりしてきたんだろう。豪炎寺が去年決勝戦に出られなかったように、俺たちが得てきた勝利は影山の手によって作られた、偽りの勝利だったんだ。俺たちが思ってるほど、強くはなかったんだよ」

「そんなことないって!」

「お前に何がわかる!?」

「わかるよ!!俺、帝国との試合でいーっぱいシュートをこの身で食らったんだぞ!帝国の強さ、俺の身体が知ってるぜ!」

 

 バンッ!と自らの身体を叩きながら、鬼道へ笑顔を向ける円堂。

 鬼道は何を思っているんだろうな。俺にはそれはわかるわけないが、少なくともたった今、円堂に少しずつ心を動かされているのは間違いなさそう。

 

「お前達との試合、楽しめそうだな」

「ああ!前の俺たちとは違うところを見せてやる!なんなら、俺たちと一緒に練習しようぜ!」

「!?俺とお前達は敵同士、更には決勝戦を控えてるんだぞ」

「そんなの関係ないよ。一緒に練習した方が、お互いもっとうまくなれるだろうし…今日は仲間ってことでいいんじゃない?」

 

 やはり円堂というべきか、ぶっ飛んだ提案をするもんだ。

 たしかに鬼道と練習することで、俺たちにとってはめちゃくちゃいい機会になるだろう。実際、天才ゲームメーカーと全国に名を轟かせている鬼道のプレーは、俺にとっても今後プレーの幅を広げることに繋がりそうだしな。

 

「決勝戦の前だ、今はやめておこう。機会があればいつかやってみたいものだがな」

「きっとだぞ!約束だ!」

「ふっ、おかしな奴だ」

 

 …ところでそろそろ通ってもいいかな。なんとなく出て行きにくくて、河川敷が見えないあたりの道途中で突っ立ってるまんまなんだが…。

 

「ところで、監督は見つかりそうなのか?不戦勝はごめんだ」

「アテはある!決勝戦には間に合わせるさ!」

「そうか…お前達との試合、楽しみにしている」

「おう!またな!」

 

 鬼道は鉄橋に止めていた車に乗り、そのまま去っていった。

 ふぅ、ようやく河川敷に行けそうだぜ。っと、円堂が気づいて近づいてきた。

 

「あ、比企谷!今の聞いてたのか?」

「すまんな、別に盗み聞きしたかったわけじゃないんだ」

「わかってるって!鬼道と練習する時、比企谷もどうだ?」

「もちろんやる」

「ほんとか!」

 

 試合を重ねるごとに、対戦相手が強くなっていくたびに試合強度が増していって、俺たちもパワーアップできているんだ。

 もっとうまくなってフットボールフロンティアで優勝する為に、できることはやりたい。

 円堂を見ると、それはまあいい笑顔でこちらをみてきていた。

 

「比企谷をサッカー部に誘ってほんと良かったよ!!サッカー好きになってくれてありがとう!」

「……お礼を言うのは俺の方だっての」

「え?」

「なんでもねーよ、練習しようぜ」

「ああ!(本当は聞こえてたんだけど…良かったぜ!)」

 

 

***

 

 

 結局、監督問題は円堂がどうにかしてしまったらしい。雷雷軒の響木さんを部室に連れてきたのが帝国との試合の2日前。

 最悪誰か教師に頼もうと思っていたが、円堂の熱い気持ちが響木さんを動かしたんだろうな。

 監督のことを完全に円堂に任せきりにしていた俺だが、試合ができないかもしれない、不戦敗かもしれないと弱気になっていたチームメイトを差し置いて1人黙々と練習を積み重ねていた結果、ディフェンス技の修得がなんとか間に合った。

 いやもうギリだった。正直無理な気もしていたが、なんとかこのタイミングで習得できて良かったぜ。

 これで帝国戦の準備は万端だ。

 

「比企谷」

「おう、どうした豪炎寺」

 

 帝国学園へ向かう電車の中、隣に座る豪炎寺に声をかけられる。

 

「帝国戦、おそらく後半勝負になる。いつも以上に頼りにしてるからな」

「そうか…豪炎寺が3点とってハットトリックしてくれてもいいんだからな」

「源田相手に、まずは1点取れるかどうかだろう。流石に舐めすぎじゃないか?」

「うちには豪炎寺と染岡のダブルエースがいるんだ。ハットトリックは無理でも、点を取ってくれるだろ?」

「言ってくれるな、お前も1点とれよ」

「狙いにいけたらいくが、無理ならいかない」

 

 なんだかんだサッカー部の面子だと、豪炎寺と一緒になることが多いんだよな。豪炎寺自身が近づきにくいオーラを出しているのもあるが、やはり転校生ってのと1年も多いチームってこともあってか、気軽に話す感じではない。

 俺?一応クラス一緒だから話す時は多いし、なんならコミュ力的に他の部員とガンガン話すってことは少ないからな…自分で言ってて悲しくなってきた。やめよう。

 

「いよいよ地区大会決勝だ!あの帝国とまた戦えるんだ!特訓の成果、見せてやろうぜ!!」

「「「おおー!!!」」」

 

 豪炎寺と雑談していると、ボックス席の上に立って全員に声をかけている円堂が目の前にいた。

 …この車両俺たちしか乗ってないからいいけど、ちょっと座席の上に立つのはどうかなと八幡思うよ。あ、座った。

 

「雷雷軒のおやじさん!…じゃなかった、響木監督!」

 

 また間違えてる。今回は円堂だが、染岡や半田、宍戸に少林寺あたりはまだおやじさん!って呼ぶところを見かける。

 俺は逆に店に食べにいく時に響木さん呼びに変わっただけだから、特に困ることにはなっていない。

 

「俺からはたった一つ。全てを出し切るんだ!後悔しない為に!」

「「「はいっ!!!」」」

 

 

***

 

 

 会場となる帝国学園に着いたのだが…。

 

「なんだよこの大きさ…」

「まるで要塞だ」

 

 全く中学校には見えない黒を基調とした大きな建物が、どうやら帝国学園らしい。

 中等部、高等部とあるんだろうな。だからと言ってサッカーフィールドの規模が半端なものではない。

 今更だけど、弱小で8人しか最初いなかった俺たちが、こんなとこで試合するようになるなんて…1年生の時に小町を含めて河川敷でボールを蹴っていた頃の俺に対して、将来こうなるぞと伝えても信じてくれないだろうな…。

 

「こんなところでやれるんだ…燃えてきたぜ!!」

 

 円堂はどこまで行ってもサッカーバカだ。帝国に全くビビっちゃいない。

 ビビってるのは壁山だけか。それいつものことですね…。

 

 

***

 

 

 移動する間、響木さんが影山の策略を警戒して全然進めなかったり、雷門中が使用していい更衣室から鬼道が出てくるようなことがあったものの、帝国に大して疑心暗鬼になる部員が出るくらいで、特に変わりなくユニフォームへと着替えていく。いや問題あるじゃねーか、大丈夫か…?

 俺がつけるのは20番のユニフォーム。当初2番をもらうことになっていたが、プリントミスで20になり、別にこだわりがなかったのでそのまま20番をつけている。

 

「今から決勝、それも無敗の帝国相手に…」

 

 今更だが勝てるのか…いや、違うな。勝てるのかじゃなくて勝つんだ。

 試合前のトイレを済ませた後男子トイレを出ると、先に出ていっていた円堂が更衣室ではない方へと歩いていっていた。

 何かあるのか?もしくは部屋間違いの可能性もあるか。

 円堂を呼び戻すべく追いかける。曲がり角に円堂の姿が見えるが…その奥にもう1人いることに気づき、足を止めて会話に耳を澄ませる。

 

「君に話がある。鬼道のことだ」

「鬼道…」

「雷門中サッカー部のマネージャー、音無春奈が鬼道の実の妹だというのは知っているかね?」

「え!?音無が鬼道の…?」

 

 おい、まさかの影山本人かよ。鬼道のことも当然知っている…というより、鬼道は元々鬼道ではなかった…?

 それから語られた話によれば、鬼道が6歳、音無が5歳の時に別々の家に引き取られており、今鬼道は鬼道家に音無を迎え、一緒に暮らす為にサッカーをやっているようだ。フットボールフロンティアに3年連続優勝っていう鬼畜な条件らしいが、これまで実績的にも帝国にいれば容易かったのだろう…今までは。

 音無を迎える為にも、鬼道は負けられない。その話を聞いた円堂は見るからに葛藤しているようだった。

 俺たちはただサッカーが好きで、前々から出たかったフットボールフロンティアに出れてるし、ここまで勝ち上がってこれた。もし仮に負けたとしても、来年頑張ればいい。

 しかし、鬼道は一度でも負ければ音無と暮らせなくなる、と。この試合直前に言ってくるところがいやらしいな。しかもGKの円堂なってところがな…。どうしたもんかね。

 

 

***

 

 

 あの後、響木さんが俺を見つけ、円堂を見つけたことで影山は去っていった。

 円堂は俺がいたことにも驚くことなく、暗い表情を浮かべている。円堂に合わせ、影山からは何も聞いていない、激励の言葉をもらったと嘘をついた。

 試合会場であるグラウンドでウォーミングアップを開始するが、相変わらず円堂の表情は冴えない。染岡のシュートを止めることもなく、見るからに集中できていない。

 音無も帝国に来てからというもの、表情が優れない。問題だらけだ。

 

「どれもこれも、影山のせいなんだよな…」

 

 "ぼっちワンツー"、"ノワールショット"のみ練習しながら独り言を呟いてしまう。

 鬼道と影山の関係がどんなものなのかは分からないが、少なくとも現状の悪は影山だ。

 顔を洗いに行った円堂、同じ時間にウォーミングアップをしている帝国サイドにいるはずの鬼道の姿が見えなかったことも気になり、一度グラウンドを離れてみる。

 案の定、すぐに見つかったが、円堂は木野と一緒にいて、通路の奥を覗いているようだった。奥には…鬼道と音無?

 

「アップもせず、こんなところで何をしていたのって聞いてるの!」

「…お前には関係ない」

「あなたは!あなたは、鬼道家に行ってから変わってしまった。私たちがそれぞれ引き取られてから、あなたは私に連絡しなかった!」

「……」

「悪いことを考えているから?それとも、私が邪魔だから!?」

「っ!」

「私が邪魔なんでしょう!?だから連絡もくれなくて…あなたはもうあの頃の優しかったお兄ちゃんじゃない!他人よ!!」

 

 そう言って音無は走り去っていった。鬼道は音無からの言葉に思うところがあったみたいだが、引き続き移動を再開。

 円堂達には気づかれないようにグラウンドへと戻りながら、音無を捜索…あ、いた。

 

「なにしてんだよ、ほんと。今頃お兄ちゃん泣いてるぞ」

「先輩?なんで…」

「悪い、ちょっと聞いちまってな」

「そうですか…」

 

 顔を俯かせながら、その場を動こうとしない音無。

 俺には彼女の気持ちは分からない。断片的に小さい時は鬼道と仲良しの兄妹だったんだろうとか、別々の家に引き取られてからお互いに苦労があったのだろうとか、そんな程度なものしか分かっていない。

 ただ、もし俺が小町と同じような状況に置かれていたとしたら、鬼道と同じく妹を引き取る方法を模索したはずだ。

 …鬼道のようなら正々堂々な手だけじゃなく、色んな卑怯なことも考えたかもしれないが。

 鬼道が音無に引き取る話を伝えない、連絡をしないのは何かしらの決意のもとだろう。俺がここで水を差すのは間違ってる。

 

「私、もうどうしていいかわからなくて…」

「…なぁ、音無。これは俺からの依頼ってことで、一つ頼まれて欲しいんだが」

「…はい?」

「いつも通りにとは言わない、鬼道のこともあって集中できないのもわかってる。だけどいつものやかましまでは行かなくとも、雷門中マネージャーの音無春奈として、今日の試合支えてほしいんだ。俺たちは必ず帝国に勝つ。その為に、音無の力も必要なんだ」

「比企谷先輩…ん?やかまし?」

「普段音無じゃなくてやかましなお前が、決勝の時に落ち込んでたら本当に音無じゃないか。そんなの音無じゃないだろ?」

「…ふーん、そんなふうに私のこと思ってたんですね」

 

 …あれ?おかしいな、落ち込んでいたはずの音無の顔に怒りマークが浮かんできている気がする。

 

「…いいですよ、先輩がその気ならこっちだって!」

「え、なに?」

「もしもし小町ちゃん、いま大丈夫?あ、もう会場来てるんだ。ご両親と一緒になんだね。あ、そうそう今日の試合先輩が絶対ゴール決めて雷門を勝たせてやる!って言ってたから期待して見ててね!もしゴール決めなかったら罰ゲームしてやりましょ!罰ゲームの中身は後日相談ってことで!うん、わかった、またね〜」

 

 …え?

 

「ってことで先輩、今日の試合頑張ってくださいね〜?」

 

 そこにいたのは、さっきまで落ち込んでいた音無ではなく。

 いつもの半分からかい混じりの音無だった。

 小町とどれだけ仲良くなってるんだよとか、罰ゲームってなに?とか、プレッシャーのかかること言いやがって、等々言いたいことは山程あったが、ひとまずいつもの音無に戻ったようで何よりだ。

 

 

***

 

 

 ウォーミングアップ中に宍戸が壁山にちょっかいをかけたことから、壁山が真上にボールを蹴り上げてしまい、天井からボルトが落ちてくるというハプニングはあったものの、気づけば試合直前に。

 試合中ボルト落ちてこないよね?大丈夫だよね?

 すでに観客達が、俺たちのいるグラウンドを囲むように超満員といった具合で入っている。

 

『雷門!帝国!両チームの入場です!』

 

 両チームともに整列し、審判団についていく形でグラウンドへと歩みを進めていく。

 握手を交わし、グラウンドへと散っていくスタメンメンバー。

 俺は相変わらずのベンチスタートである。

 今日は土門が先発、影野がベンチスタートだ。

 

『フットボールフロンティア、地区大会決勝!雷門中対帝国学園の一戦が今、スタートです!!』

 

 ホイッスルが吹かれ、試合が始まった瞬間。

 天井から鉄骨が雷門中目掛けて降り注いだ。

 ……は?

 

『あーっと!?どういうことだ!?突然、雷門中側の天井から、鉄骨が降り注いできた!?大事故発生!!!』

 

 大事故、とかじゃねぇだろ…。

 思わず立ち上がり走り出そうとするが、響木監督に止められた。

 確かに今から向かってどうこうなるもんじゃないだろ、けどあれはもう…!

 

『酷い…鉄骨が突き刺さりグラウンドには穴が…これでは雷門イレブンも…え…なんと!雷門イレブンは無事です!!誰1人怪我もしていないよう!!』

 

 煙が晴れた後にあったのは、無事だった雷門のみんなの姿。

 突然の出来事に走り出そうとして込めていた力を抜き、深呼吸…。え?無事!?正直見たくない凄惨な絵を想像していただけに、驚きの方が勝ってしまう。

 …豪炎寺と染岡のポジションがやけに低い。事前にわかっていた…?

 雷門と帝国の選手達の中で、顔が驚きに染まってないのは鬼道のみ。

 まじかよ、影山はここまでするのか…という気持ちとそれに気づいて対策を伝えてくれたであろう鬼道に冷や汗が噴き出る。

 

『試合は一時中断となります!!』

 

 当たり前だわ。いくらなんでも鉄骨が突き刺さったフィールドでサッカーする気にはならねえよ。…円堂ならもしかしてあり得る?

 選手たちはロッカールームへ帰陣。鬼道と円堂、響木監督は影山を問いただしにいったみたいだ。

 なんでサッカーの決勝戦戦おうとするだけでこんなこと起きるんだ…。

 




切り方は下手。いつものこと。
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