やはり俺が雷門中に入学したのはまちがっていなかった。 作:シェイド
でも書く!だって読みたいから!(作者が)
新入生が入って約1ヶ月が経った。
「うーっす」
授業を終え、いつも通りテキトーに挨拶しながら部室に入る。
すでに円堂以外のみんなが揃っていた……が、全員やる気が無いのか、無気力にぼーっとしてるかゲームしてるか、お菓子食べるか、カンフーやってた。
最近じゃよく見る光景だ。グラウンドを取れないというのも大きいし、人数が揃ってないってのも大きい。やっぱ試合したいもんな。少しだけだが分かるぜその気持ち。俺まだルール全部理解できてないけど。いまいち細かいところがな…。
最初の頃はみんなやる気あったんだよな。でも全員でお願いしに行ってもとれないグラウンド、テニス部には煙たがれ(当たり前)、ラグビー部には潰され(物理)、河川敷まで行くのもだるいと言えばだるい(サボり)。
こうなることの予想はあった。
だが止めることなんてできない。こいつらの心を動かせるのは円堂しかいないのだから。
最近練習を続けてるのは円堂と俺だけだ。
え?俺がしてるのが意外だって?いやだって、皆してないなら追いつくチャンスじゃん?それに俺は円堂に惹かれてサッカー始めたんだ。円堂がサボったりしない人種の時点でやめるという選択肢はない。
確か、今日は円堂が稲妻KFCの練習に付き合う日だったはずだ。なら俺も河川敷で練習しよう。
餓鬼どもはうるさいが練習相手になってくれるだけありがたいものだ。最初会った時は『ゾンビゾンビ~!!』ってめっちゃ言われたけど今じゃ『目の腐った兄ちゃん』だからな。なにそれ悲しい……。
ガラガラガラガラ……。
ドアが開いたのを見ると円堂が入ってくるところだった。
制服からゴールキーパーのユニフォームに着替え、キャッチンググローブを着けた後、サッカーボールを持って無気力な奴らの方を向いた。
「さぁ、練習だ!」
「「「………」」」
「お、おう」
とりあえず返事したが、返事したのは俺だけ。他のみんなは無視を決め込んでいる。
「練習ー!………あはは」
あの円堂ですらこの状況は耐え難いらしい。そりゃまあ、自分以外に練習する奴が1人しかいないのっておかしいもんな。
「ど、どうしたどうした。ずーっと練習してないんだぞ」
「……グラウンド、借りられたのかよ」
「そ、それは今から、ラグビー部に交渉して……」
「だと思った」
「どうせまた、笑い者になるだけでやんすよ」
「8人ぽっちならテニスコートで十分だろって」
「グラウンドが空いている日にやればいいんじゃ無いかな……」
「むむむ……!」
「そうそう」
「空いたことないけど」
「んんん~!!」
見事な連携を見せるチーム無気力。流石に円堂も我慢の限界だろ。
「俺たちはサッカー部なんだ!!」
バンッ!
そう言って円堂が手で示したのは、俺が入部したときからずっと貼ってあるフットボールフロンティアのポスター。
「フットボールフロンティア!今年こそ、これに出ようぜ!」
円堂はそう言って各部員を誘うが、誰1人として反応すらしない。後輩ですら無視。
え?俺はいつも一緒に練習してるから聞かれることすらしなかった。
べ、別にいいもん!それだけ円堂からの信頼が厚いってことなんだからっ!!
「8人じゃ試合できないでやんす」
「そこでシュート」
「う、うるさいでやんす!」
「お前らな!!サッカーがやりたくて入部したんだろうが!?サッカー部がサッカーしなくて、どうするんだよ!」
円堂はそのままドアから出て行ってしまった。
「何熱くなってるんだアイツ……?」
「さぁ?」
「円堂が熱いのはいつものことだろ」
「なんであそこまで夢中になれるんですかね、こんな環境なのに」
「さぁな。でもたしか、近々この部活廃部になるって噂聞いたぞ」
「「「は、廃部~!?」」」
え、マジで?俺せっかく入ったのに強制終了?いや、困る。円堂たちと接点がなくなるじゃねーか。それに、サッカーが楽しい日々が続いていたのに、これがなくなるなんて困ったどころではない。
いつかなんか言われた時円堂とどうにかしよう……。
さて、練習行くかね……。
***
先に行った円堂と木野を追いかけて、俺は今河川敷のサッカーグラウンドにいた。
基本的に人数が少ないため円堂がキーパーを務め、コーチングしながら小学生とともに練習している。
俺?さっき小学生全員抜いたら『本気でやるんじゃねーよ!』『かっこ悪!!』って言われて絶賛凹み中。ちょっと離れた橋の下で壁に向かって壁パスしてるところだ。
壁パスはぼっち練かもしれないが、案外いい練習だ。石かなんかで目標のボールの位置を書き、そこへのコントロールをひたすら練習。10連続で当たったらまた違う高さへ……と永遠に練習できるのだ!
……永遠にボッチとかついに神格化し始めたのか?いや、円堂がいる限りぼっちに戻ることはないか。
「よし、いい感じだったぞ!」
少し遠くではグラウンドで円堂が稲妻KFCの小学生と練習している。
絶対あれ練習なってないよな。小学生のシュートはやっぱり中学生からしたら物足りないのだ。
円堂なんて全て防いでるしな。全然きつそうじゃない。なんなら円堂がコーチかなにかに見えるまである。
……俺も頑張んないとな。
ポジションは一応DFではあるが、いつ変わるかわからない。色々な力をつけていくべきだろう。
ディフェンスにもボールをカットする動き、奪う動き、選手の方を止める動き、選手へのマークと色々ある。
ドリブルだって、置き去りにするのか、チャージを跳ね返すのかなどなど色々あるのだ。
シュートだってやんなきゃな。
やることは山積み、時間は有限……とりあえずは雷門中の成長に合わせて練習を変えていこう。
だからまずは、基礎をしっかりと……。
「うおっ!?」
「誰だ!?このボール蹴ったのは!?」
いきなり怒鳴り声が聞こえたのでそちらを見ると、いかにもガラ悪いです~というヤンキーっぽい野郎が2人。サッカーボールがあるってことは、小学生の誰かがミスキックをしてそちらに飛ばしてしまったのだろう。円堂がすぐさま近寄っていく。
「あの!大丈夫でしたか?すみませんでした」
そう言って頭を下げる円堂。こいつ案外こういうところはしっかりしてるんだよな。そういうのって大切だと八幡も思うよ!
「あの、ボールを返して「ふんっ!」ガッ!?」
円堂が頭をあげてボールを返して欲しい旨を伝えてる最中に小さいほうのやつが円堂を蹴った。
蹴る必要なかっただろアイツ…ふざけてんな…。
「円堂君!」
「きゃあ!」
「ボールって、こいつのことか?」
「っ!」
「あれれ?こいつ雷門中じゃねーの!たしか部員が全然いない弱小サッカー部ですよ!」
「くだらねえ、餓鬼相手に球蹴りか?」
なんだアイツら……胸糞悪い連中だなぁおい。
「安井さん、お手本見せてやっちゃあどうです?」
「いいねぇ、やってやろうじゃねえの。ペッ」
そう言ってから、大きい方のやつがサッカーボールに唾を吐きやがった。
「……ボールは友達って習ってねえのかよ。社会のゴミが」
「あーらよっと!……ぐえ!?」
大きい方のやつが蹴ったボールは正確にミートせずに蹴ったからか、小学生の女の子の顔面に飛んでいく。
助けられない。
が、よく見ると丘の上から走ってきてる男がいる。多分彼がどうにかしてくれる。
なら俺がやるべきことは。
こいつらに円堂を蹴ったこととサッカーを汚した罪を償わせることだな。
俺は今までの練習で身につけたキックコントロールで、奴らにボールを蹴ることを決めた。
狙いは小さい方の顔面だ。
「はっ!」
俺が放ったボールは距離があったもののこの1年でキック力もかなり上がっていたためか、低空に飛んで男の顔面にめり込んだ。
すると、それと同時に大きい方の野郎の顔面にもボールがめり込んでいた。俺の蹴ったボールとは比べ物にならないほどの強烈なものだ。だってなんか周りにまで余波みたいなので出るし……なんていうキック力してるんだ、あの通りすがりの男は。
円堂なんてそれを見て震えている。そりゃそうだな。あれはえぐい。俺のが普通のシュートだとしたら、レールガンで加速したん?ってぐらいのシュートだったし。
それにあの男はどっかで見た記憶が…確かサッカー動画で…。
「痛てて……おい、そこのお前か!俺にボールを蹴ったのは!」
「ああ?」
「ひぃ!や、安井さん!?て、てめ、何しやがっ……お、覚えてろよ~!!」
1度は自分にボールをぶつけてきた俺に文句を言おうとしたが、俺が睨めばすぐに怯えていた。こういう時は俺の目って便利なんだよね。こういう時以外使い勝手がないんだけど。
そのあと安井とかいう、大きい方のやつの顔面にボール当てて失神させた例の男に対しても文句を言おうとしたが、睨まれて逃げていった。
おお、なかなかに凄みがあるな……。
「ありがとう!」
「……」
女の子を助けた男は少し微笑み、河川敷から帰ろうとした。
イケメン過ぎるだろ!
「ま、待ってくれ!」
ですよね、円堂が見逃すわけがない。知ってた。
「なぁ、お前のキックすげえな!どこの学校なんだ?サッカーやってるのか?よかったら、俺たちと一緒に練習しないか?」
怒涛の質問ラッシュをする円堂。
すると、男は一度立ち止まり振り返るも、興味なさげに階段を上っていった。
「あ、おいっ……」
「……大丈夫か?円堂」
「おう、大丈夫だ。まあまあ痛かったけど、さっきのシュートみて鳥肌がたってそれどころじゃなくなった!」
「円堂らしいな」
すげえ、違うものに意識向けば痛いとか感じなくなるもんなんだな。八幡初めて知ったよ。
「円堂君!大丈夫?」
「平気平気!」
「そう……さっきの人、すごいシュートだったね」
「助走のタイミングから全く体の動きにブレがなかった。それに、今思い出したわ」
「何を?」
「さっきのやつのことだよ。去年のフットボールフロンティアに1年生で出場し、凄まじいシュートを撃った天才ストライカー……。名前は忘れたけど」
「「忘れたんだ……」」
「また家帰って調べてみるわ」
「おう」
「そういえば比企谷君もボール蹴ってたね。ムカついたの?」
「当たり前だろ!目の前で友達が特に理由のない暴力受けたんだ……それにサッカーボールに唾吐きやがって。いつか必ず大きい方にもシュートを食らわせてやる」
……あれ?つい言っちまったけどこれって結構恥ずかしいセリフじゃねえか!?
案の定円堂と木野を見るとポカン、と少しぼーっとした後2人ともニマニマし始めた。
あーやっちった……。
「そんなふうに比企谷が思ってくれてたなんて……ありがとな!俺、嬉しいよ!」
「うんうん!最初はパスすらまともに出来てなかったのにあんなコントロールまで身につけるようになるなんて……私も嬉しい!」
「……べ、別に大したことじゃねえだろ。当たり前のことをしただけだ」
「「捻デレだ」」
「おい、その造語誰が作った」
「小町ちゃん」
「ですよねー」
こうして一連の騒動は終わりを迎えた。
だが、この日の出会いによって、俺たちの停滞していたサッカー部が大きく動き出していたことなど、誰が予想しただろうか……。
……顔面にシュートを放った時に少しだけの間黒い靄みたいなのに包まれていたのは……気のせいか?
***
「あー!!」
次の日。
うちのクラスに転校生が来た。
名前は豪炎寺修也。昨日、円堂に腹蹴りしてイキりまくってやがった男の顔面に強烈なシュートをめり込ませ、失神させたヒーローのような男。
円堂が絡むのは必然と言えた。
そして昼休み。
早速円堂が豪炎寺の元に向かう。
「豪炎寺っ!」
「……」
「昨日、ちゃんと自己紹介出来てなかったからさ。俺、円堂守。サッカー部のキャプテンやってるんだ。ポジションはキーパー。なぁ、お前もサッカー部に入らないか?木戸川清修って、サッカーの名門だろ?どおりであのキック、すごいもんだぜ!」
「……」
無言で窓の外を見つめる豪炎寺。すげえ、あの円堂を真っ向から無視してる。アイツは……デキる!!
「……なんだよ」
「……サッカーは……もう辞めたんだ」
「辞めたって、どうして……」
「……俺に構うな」
あーこれは過去になんかあったやつですね。それにあんまり突っ込んじゃいけないタイプの話。
「円堂!」
円堂が不満顔をしていると、教室に半田が入ってきた。
「冬海先生がお前を呼んでる。校長室に来いってさ……俺、嫌な予感するんだ。例えば……廃部の話とか」
「廃部!?」
あ、そっか、円堂廃部の話知らないんだった。
というより豪炎寺さん、反応するんですね……。
「私もそんな噂聞いたことあるよ?」
「冗談じゃない!廃部になんかさせるかってんだ!」
そう言って円堂は教室を飛び出して行った。
「じゃあ、俺も戻るよ」
半田も教室に帰り、木野もどっか行った。
実を言うと、俺は豪炎寺の後ろの席なのである。
みんなどっか行ったんですけど……まぁ、都合がいいか。
「豪炎寺」
「……」
「昨日、さっきの熱血バカと一緒に河川敷で練習してた奴だ。あの小学生を守るためとはいえ、顔面にぶち込んでくれてありがとな。おかげでスカッとしたわ」
「……そうか」
「あ、俺は別にお前にサッカー部に入れ!とか言わないから安心してくれ。むしろ円堂以外言わないとまで思う」
「……」
「あのあと調べてみたんだが、本当に凄い選手だったんだな、お前。中学入って始めた俺からしたらまさに凄いとしか表現できないが…」
「お前、中学からサッカー始めたのか?」
何故か豪炎寺が驚いた感じでこちらを向いてくる。え、何か言った俺?
「ああ、そうだけど……」
「……センスがあるのか、それとも才能か?……」
「あの、豪炎寺さん?」
「……悪い、なんでもない」
「そうか」
沈黙が流れる。
こ、こう言う時は……と、とりあえず自己紹介しとくか。
「俺は比企谷八幡。とりあえずよろしくな」
「……ああ」
「それと先に言っておく」
「……なんだ?」
「円堂、多分相当付きまとって来るはずだ。我慢できなくなったら言ってくれ。そん時はいつでもサッカー部のロッカーに閉じ込めるからよ」
「……」
なんでだろう、若干引かれた気がする。
そして時間は流れ放課後。
部室で円堂に告げられた。
「帝国との練習試合だ!やるぞ!みんな!!」
「「「「ええええええ!!?」」」」
中学サッカー最強の帝国とうちの練習試合が決定しました。
うん、終わったな(白目)。
ストック貯めたらぁ!!