「夏休みに合宿するわよ」
放課後の部室で、唐突にハルヒが宣言した。
椅子に座っていた全員の視線が一斉に彼女へ向く。
窓から差し込む夕方の光の中で、ハルヒはいつも通り自信満々だった。
ハルヒ「場所、どこにする?」
キョン(イズモ)は一瞬だけ思案し、静かに口を開いた。
この世界の流れも、ハルヒの退屈耐性も、ある程度は把握している。
刺激は必要だが、制御できる刺激でなければならない。
キョン(イズモ)「知り合いに自衛隊の大佐クラスの人がいる」
キョン(イズモ)「その基地を見学するってのはどうだ。夏休みになると思うけど」
ハルヒの目がわずかに輝いた。
ハルヒ「面白そうじゃない」
キョン(イズモ)「ただし条件がある」
キョン(イズモ)「俺と、案内役の赤木リツコさんの言うことは絶対に聞くこと」
キョン(イズモ)「泊まりは基地内の空き宿舎だ」
ハルヒは少し考えた後、即答した。
ハルヒ「いいわ。それで決まりね」
その翌日。
部活後の部室には、珍しくハルヒの姿がなかった。
キョン(イズモ)は周囲を確認し、朝比奈ミクルに近づく。
キョン(イズモ)「ミクル、ある時間に飛んでほしい」
ミクルは戸惑いながらも、小さく頷いた。
ミクル「上の人から指令が来てます」
ミクル「虚数空間の件、ですよね」
キョン(イズモ)「ああ」
場面は切り替わり、コンピューター研究部部長のマンション付近。
夕暮れの空気が重く、異変の予兆が漂っている。
キョン(イズモ)「これを着けて」
ミクルに手渡したのはステルス迷彩装置だった。
ミクル「はい」
キョン(イズモ)「急いでハルヒの後を追え」
ミクル「はい」
二人は姿を消し、ハルヒの後を追って室内へ侵入する。
直後、空間が歪み、虚数空間が展開された。
使徒擬きとの戦闘が終わり、赤黒い空間が静まり返る。
キョン(イズモ)「……みんな、元の空間に戻ったな」
ステルス迷彩を解除し、キョン(イズモ)は白い少年へ向き直る。
キョン(イズモ)「カヲル、今の俺は数日後の未来から来た俺だ」
キョン(イズモ)「理屈は省くが、第3東京に行きたい」
カヲルは穏やかに微笑んだ。
カヲル「いいけど、理由は?」
キョン(イズモ)「涼宮ハルヒという存在が、この世界の創造神に近い」
キョン(イズモ)「本人に自覚はないが、退屈すると世界が危うい」
キョン(イズモ)「だから、面白い世界を見せる必要がある」
カヲル「なるほど」
カヲル「だからこの世界に飛んだんだね」
キョン(イズモ)「ああ」
キョン(イズモ)「彼女たちが来るのは七月三十日だ」
キョン(イズモ)「今帰る時、一緒に時間を合わせて飛ばせないか」
カヲル「わかったよ」
瞬間、世界が切り替わる。
ゼーレから独立した組織、グリュック。
キョン(イズモ)はミクルに指示を出した。
キョン(イズモ)「司令室へ行く」
キョン(イズモ)「ミクルは綾波の所へ」
キョン(イズモ)「カヲル、頼む」
司令室。
重苦しい空気の中、碇ゲンドウが低く問う。
ゲンドウ「誰だ」
キョン(イズモ)「キョン(イズモ)だ。この姿は初めてだがな」
ゲンドウは一瞬目を細め、やがて静かに語った。
ゲンドウ「君のおかげで、使徒擬きへの対処も、老人どもの問題も楽になった」
ゲンドウ「初号機の機能も維持でき、ユイも戻った」
ゲンドウ「感謝している」
キョン(イズモ)「協力できて良かった」
ゲンドウ「用件は?」
キョン(イズモ)「異世界から見学者が来る」
キョン(イズモ)「表向きは自衛隊基地見学だ」
ゲンドウ「了解した」
数分後、宿舎で再合流する。
アスカとレイが視線を向けた。
アスカ「久しぶり」
レイ「……久しぶり」
シンジだけが困惑していた。
シンジ「あなたは……?」
キョン(イズモ)「君に憑依してインパクトを防いだ者だ」
シンジは目を見開いた。
シンジ「伝説の……最上イズモさん?」
キョン(イズモ)「大げさだ」
数日後。
夏休み。
ハルヒたちを連れ、ワープゾーン化したトンネルを抜ける。
キョン(イズモ)「ここが例の自衛隊基地だ」
キョン(イズモ)「案内は赤木リツコさん」
リツコ「箱根基地研究開発部、赤木リツコ」
リツコ「よろしく」
ハルヒは周囲を見渡し、感心したように息を吐く。
ハルヒ「広いし、近未来的ね」
リツコ「ここは研究開発が主」
リツコ「戦車類は外部施設よ」
AI開発区画、兵器開発区画を巡り、最後に巨大な存在が姿を現す。
リツコ「汎用人型決戦兵器、エヴァンゲリオン」
ハルヒ「ロボットじゃないのね」
リツコ「人造人間よ」
宿舎に到着し、一泊。
翌朝、第三東京市へ。
ハルヒ「意外とお土産屋、多いのね」
賑やかな街並みの中で、ハルヒは退屈とは無縁の笑顔を浮かべていた。