異世界からの融合改変
クリスマスパーティーの余韻が残る夜、団員たちは解散し、涼宮ハルヒは上機嫌のまま帰宅した。
街は静まり返り、冬の冷気が肺の奥まで染み込んでくる。
キョン(イズモ)は人気のない路地で足を止め、腕の端末を起動した。
キョン(イズモ)「あの時間に行こう」
朝比奈ミクルは少し不安そうに、それでも迷いなく頷く。
ミクル「はい」
次の瞬間、視界が歪み、世界の色が一段暗くなる。
時間座標が跳躍し、周囲の音が遠のいた。
ここは、彼自身が最も避けたい瞬間の直前だと理解している。
キョン(イズモ)「……自分を撃つのは、何度やっても慣れないな」
ステルスを起動すると、彼の姿は背景に溶け込む。
サプレッサー付きのスナイパーライフルを構え、狙いを定める先には、過去の自分がいる。
引き金を引く瞬間、わずかな躊躇が胸を掠めたが、それを理性で押し潰した。
乾いた音と共に弾丸が放たれ、必要な情報改変が完了する。
世界の因果が静かに書き換わり、破綻は起きない。
イツキ「さすがキョン(イズモ)さんです」
キョン(イズモ)「……帰ろうか」
再び時間を戻すと、夜の街は何事もなかったかのように存在していた。
数日後。
部活帰りの夕暮れ、校門を出た瞬間、空気が変わった。
白い少年が、当然のようにそこに立っている。
キョン(イズモ)「どした」
カヲル「君の世界と、僕たちの世界が融合するみたいだ」
キョン(イズモ)「いつだ」
カヲル「一か月後」
背筋が冷える。
これまで幾度も世界を渡ってきたが、融合は最悪の部類だ。
キョン(イズモ)「止めるのは無理か」
カヲル「無理だね」
キョン(イズモ)「……世界改変覚悟で、ハルヒに言うしかないか」
その日のうちに、涼宮ハルヒを除くSOS団の緊急会議が開かれた。
部室の空気は張り詰め、誰もが事態の重さを理解している。
キョン(イズモ)「詳しい対策はクデュックで詰めることになるだろうけど、俺たちはハルヒ対策だ」
イツキ「実際に起きたら、世界改変を覚悟した上で話すべきでしょうね」
キョン(イズモ)「機関と未来政府、情報統合思念体には情報共有を頼む。可能なら協力要請もだ」
ユキ「了解」
ミクル「わかりました」
イツキ「承知しました」
そして一か月後の朝。
街の景色は一見変わらない。
だが、違和感は至る所にあった。
キョン(イズモ)「……入口の構造と、あの地下。第3新東京市と融合してるな」
学校に着くと、クラス編成にも異変がある。
キョン(イズモ)「十組が増えてる?」
ホームルームで担任が説明する。
担任「今日から廃校になった学校の一クラスが移ってきた。十組だ。仲良くしろよ」
キョン(イズモ)は内心で確信する。
エヴァの候補生クラスだ。
四時間目が終わると同時に、端末が震えた。
表示された番号は、本来繋がるはずのないものだった。
キョン(イズモ)「……ミサトさん?」
ミサト「もしもし。使徒擬きとエヴァが来たわ。すぐ来て」
キョン(イズモ)「了解しました」
廊下でハルヒに腕を掴まれる。
ハルヒ「どこ行くのよ」
その瞬間、校内放送が鳴り響いた。
放送「非常事態宣言が発令されました。至急Aブロック避難シェルターへ避難してください」
ハルヒ「そんな場所知らないわよ」
外を見ると、道路に明確な誘導矢印が浮かび上がっている。
キョン(イズモ)「俺は、例の施設に行く」
ハルヒ「まさか……」
キョン(イズモ)「そうだ。俺はあのロボットのパイロットOBだ。非常事態で要請された」
ハルヒは一瞬だけ黙り、すぐに笑った。
ハルヒ「行ってらっしゃい」
ジェットパックで空へ上がる瞬間、視線を感じる。
しまった、見られた。
後で説明するしかない。
司令室では、緊迫した空気が支配していた。
ミサト「パイロットはもう出てるわ」
キョン(イズモ)「なら、今後の話だな」
ミサト「そうよ」
キョン(イズモ)「涼宮ハルヒのことは?」
ミサト「聞いてる。でも非常事態すぎる。使える手は全部使うわ」
キョン(イズモ)「全員の能力、開示した方がいいな」
ミサト「それしかない」
キョン(イズモ)「そっちで無理が出たら言ってくれ。ユキと俺で対処する」
ミサト「わかったわ」
戦闘が終わり、街に一時の静けさが戻る。
ハルヒ「避難中に、こないだ見たロボットと変な巨大生物が戦って、さらにロボット同士でも戦ってたわ。映画みたいだった」
ハルヒは続けて、鋭い視線を向ける。
ハルヒ「それに、あんたにそっくりな人がジェットパックで飛んでた」
キョン(イズモ)「俺だ」
ハルヒ「……え?」
キョン(イズモ)「俺は、生物以外なら何でも作れる」
キョン(イズモ)「ユキは宇宙人製のAIだ。ミクルは未来人。イツキは超能力者だが、能力は限定条件付きだ」
キョン(イズモ)「今すぐ証拠を出せるのは、ユキと俺だけだが……全員本物だ」
ハルヒは言葉を失い、それでも目だけは輝いていた。
キョン(イズモ)「そしてお前は、世界そのものを書き換える力を持ってる」
キョン(イズモ)「この世界を維持してほしい。そのために、俺たちはクデュックSOS団支部として、あの施設を借りる」
キョン(イズモ)「この力は特別だ。誰でも持ってるなんて、絶対に思うな」
ハルヒ「……わかったわ」
キョン(イズモ)「これ以上、世界が壊れたら困るからな」
ハルヒ「世界改変って何よ」
キョン(イズモ)「今は気にするな。ただ、自分の力には気をつけてくれ」