クデュックsos団支部の作戦室は、昼下がりにもかかわらず薄暗く、壁一面のモニターが淡い光を放っていた。
無数の情報が流れる空間の中央で、イズモは腕を組み、静かに画面を見つめていた。
その背後で扉が軽い音を立てて開く。
ハルヒ「ハロー」
場違いなほど明るい声に、張り詰めていた空気が一瞬だけ揺れる。
イズモは振り返らず、モニターから視線を外さない。
イズモ「情報統合思念体が、クデュックと俺に対して正式に宣戦布告してきた」
イズモ「しかも襲来は一週間後と明示している」
イズモ「襲来日まで教えるとは、完全にこちらを見下しているな」
ハルヒは肩をすくめ、挑発的に笑った。
ハルヒ「私たちにケンカ売るなんて、いい度胸じゃない」
イツキは表情を引き締め、ユキへ視線を向ける。
イツキ「ユキさん、何か知ってますか」
ユキは少し間を置き、淡々と答えた。
ユキ「ゼーレ壊滅作戦の際、情報統合思念体内部で過激派によるクーデターが発生した」
ユキ「その結果、朝倉涼子が復活し、現在は彼女が実質的な指揮官を務めている」
ハルヒの眉がわずかに動く。
ハルヒ「朝倉さん、まだここにいたんだ」
イズモは短く息を吐いた。
過去に何度も対峙した名を聞き、胸の奥に冷たい感覚が広がる。
イズモ「一応、ミサトさんのところに行こう」
――――
クデュック本部。
緊急対策室に足を踏み入れた瞬間、空気が一変した。
複数の職員が一斉に銃口を上げ、その先にはユキがいる。
イズモ「待て」
イズモ「ゼーレ壊滅作戦中、情報統合思念体は内部クーデターを受け、トップが過激派にすり替わった」
彼は懐からデータ端末を取り出し、通信記録をテーブルに投影する。
イズモ「これが証拠だ」
数秒の沈黙の後、職員たちは互いに視線を交わし、ゆっくりと銃を下ろした。
イズモ「問題は単純だ」
イズモ「過激派を倒せばいい」
イズモ「だが相手は、こちらより上位存在で、自分に有利な環境を自在に構築できる」
イズモ「通常兵器も、AAT弾も通用しない」
イズモ「ユキがシールドを破壊しない限り、戦艦にもダメージは入らない」
ミサトは腕を組み、眉間にしわを寄せる。
ミサト「ユキは、どれくらい近づけばいいの」
イズモ「理論上は大気圏内」
イズモ「第3東京市全域くらいが限界だ」
ミサト「範囲が狭すぎるわね」
ミサト「シールドの原理は?」
ユキ「プラズマによる外界遮断」
ユキ「外部環境の干渉を一切受け付けない」
イズモ「なら中枢装置を破壊すればいい」
ユキ「その通り」
ユキ「対人用シールドは小型で、体内に埋め込まれている」
ユキ「理論上はハッキングで無効化できる」
イズモ「地球のコンピューター言語で?」
ユキ「不可能ではない」
ユキ「だがMAGIを使っても十年はかかる」
イズモは一瞬だけ目を伏せ、思考を巡らせる。
イズモ「ユキの能力を増幅できれば話は変わる」
ユキ「地球にはその技術は存在しない」
イズモ「理論さえ分かれば、作れる」
ユキ「なら問題ない」
ふとイズモは周囲を見回す。
イズモ「今さらだが、司令は?」
ミサトの表情がわずかに曇る。
ミサト「あなたが来る前に、副司令と一緒にゼーレに消された」
ミサト「今は私とリツコがトップよ」
イズモ「そうか」
――――
再びsos団支部。
静まり返った部屋で、イズモは一人呟く。
イズモ「なぜ朝倉は、まだ俺を殺そうとする」
ユキは即答した。
ユキ「あなたが死ねば、ハルヒの能力が最大限に解放される」
イズモは苦笑する。
自分が抑止装置であるという事実を、改めて突きつけられた気がした。
イズモ「なら対策は決まっている」
イズモ「まず俺が能力増幅装置を作る」
イズモ「襲来後、バリアを破壊」
イズモ「そのまま戦艦に突入し、ユキの能力で朝倉を排除する」
ユキ「異議はない」
イズモ「プランBは、範囲に入った瞬間」
イズモ「ゼーレ襲来時と同じだ」
イズモ「全兵器、一斉射」
ユキ「了解」
イズモ「未来政府と各機関からの兵器提供は?」
イツキ「機関は兵器系統を保有していません」
ミクル「よくわからない大砲とか兵器を、クデュック屋上に設置するみたいです」
イズモ「たぶん、上同士で話はついている」
彼はゆっくりと拳を握る。
イズモ「勝てる」
――――
一週間後。
情報統合思念体、襲来。