放課後の校舎裏。
部活帰りの生徒がまばらに行き交う中、谷口が呆れたように声をかけてきた。
谷口「涼宮と何やってるんだよ」
キョン(イズモ)「SOS団っていう、部活未満の集まりをやらされてる」
谷口は肩をすくめる。
谷口「中学じゃねえんだからな。下手すりゃ停学だぞ」
キョン(イズモ)「その心配はない」
内心では、停学どころか世界が消し飛ぶ可能性を思い浮かべていた。
涼宮ハルヒが本気で暴走すれば、地球規模で済む保証はない。
数日後。
部室。
ハルヒは机に腰掛け、腕を組んで天井を睨んでいた。
ハルヒ「謎の転校生は押さえておきたいじゃない」
ハルヒ「新学期始まって二ヶ月も経たずに転校なんて、十分怪しいでしょ」
キョン(イズモ)「はあ」
来る。
必ず来る。
未来人も宇宙人も超能力者も。
その事実を知っているのは、この部屋で俺だけだった。
部活時間。
ハルヒが唐突に立ち上がる。
ハルヒ「コンピューターが欲しいわね」
ハルヒ「この情報化社会で一台もないなんて論外よ」
ハルヒ「調達するわ」
キョン(イズモ)「まさか隣の」
ハルヒ「そ」
数分後、コンピューター研究部の部室。
ハルヒ「パソコン一式もらいに来ました」
部長「は?」
キョン(イズモ)は部長の耳元で小声になる。
キョン(イズモ)「後で同型機とデータは必ず返します」
キョン(イズモ)「今は彼女の我儘に付き合ってください。じゃないと本当に大変なことになります」
ハルヒ「最新機種はどれ?」
部長「……これ」
ハルヒ「決まりね」
その後の配線と初期設定は俺が担当した。
コンピ研には最低限の説明と、軽い圧をかけて黙ってもらった。
キョン(イズモ)「とりあえず今日は帰ろう」
キョン(イズモ)「この団に深く関わらない方が身のためだ」
ミクルは困ったように微笑む。
ミクル「でも、時間平面上の必然ですし」
ミクル「長門さんがいるのも気になります」
キョン(イズモ)「……まあ、なるようにしかならん」
翌日。
休み時間を使って、SOS団のウェブサイト制作が始まった。
俺は意図的に作業速度を落とす。
下手に完成度を上げれば、ハルヒの期待値が跳ね上がる。
キョン(イズモ)「何か書きたいことあるか?」
ユキ「何も」
ユキは無言で一冊の本を差し出した。
キョン(イズモ)「今週中に読む」
ユキ「返さなくていい」
その日の部活。
ハルヒの姿がない。
ミクル「涼宮さんは?」
キョン(イズモ)「何か作ってる」
直後、ハルヒが勢いよく入ってきた。
ハルヒ「ミクルちゃん、これ着てビラ配りして」
キョン(イズモ)「制服でいいだろ」
ハルヒ「インパクトが大事なの」
ハルヒ「バニーガール」
キョン(イズモ)「アホか」
ミクル「見ないでください……」
案の定、教師が飛んできた。
キョン(イズモ)「停学にならなくてよかったな」
ハルヒ「まだ半分も配れてないのに」
翌日には全校の噂になっていた。
谷口「やっぱり涼宮と愉快な仲間たちだな」
キョン(イズモ)「そうらしい」
放課後。
ミクルのいない部室。
ハルヒ「一通もメール来ないんだけど」
キョン(イズモ)「当たり前だろ」
ハルヒは不機嫌そうに帰っていった。
ユキ「今日、読んで」
帰宅後、本を開くと栞に集合場所と時間が書かれていた。
慌てて準備をし、家を出る。
公園でユキが待っていた。
そのまま彼女のマンションへ向かう。
ユキの部屋。
キョン(イズモ)「話したいことがある」
ユキ「どうぞ」
キョン(イズモ)「俺はキョンじゃない」
ユキ「やはり情報爆発の原因」
俺はすべてを話した。
最上イズモという名前。
爆発事故。
異世界転移。
創造能力。
カエデの存在。
カエデ「よろしくお願いします」
ユキ「私は情報統合思念体が作ったインターフェース」
ユキ「ハルヒを観察し、報告するのが役目」
キョン(イズモ)「理解してる」
ユキ「最近、二度目の情報爆発とイレギュラー因子が発生した」
キョン(イズモ)「俺だな」
ユキ「そう」
沈黙が落ちる。
キョン(イズモ)「危険が来るなら、まず俺だろ」
ユキ「その通り」
夜も遅くなり、解散した。
家では妹に適当な嘘をついて誤魔化す。
この世界は、まだ静かだ。
だがその静けさが、嵐の前触れであることを俺は知っていた。