涼宮ハルヒの螺旋 ―壊れなかった世界―   作:最上 イズモ

4 / 19
朝倉の暴走そして消失

朝の教室はまだ熱を持っていなかったが、どこか空気が重かった。

窓際の席で、朝倉涼子が不安そうに視線を泳がせている。

 

朝倉「ねえ、なんか涼宮さん、体調悪そうなの」

 

その一言で、胸の奥に警鐘が鳴る。

この世界でそれは偶然では済まない。

 

キョン(イズモ)「……そうか」

 

朝倉は小さく微笑みながら、しかしその目は妙に真剣だった。

 

朝倉「お願いね」

 

何を、とは言わない。

だが意味はわかる。

 

キョン(イズモ)「う、うん」

 

その後、ハルヒは机に突っ伏し、珍しく覇気がなかった。

 

キョン(イズモ)「大丈夫か?」

 

ハルヒ「暑い、疲れた。衣替えいつからなのよ。早く夏服にならないかしら」

 

ハルヒ「なんかさ、パーっと事件でも起きないかな」

 

その言葉が、冗談に聞こえない。

 

キョン(イズモ)「起きたら起きたで大惨事だぞ」

 

放課後。

机の中に差し込まれた白い封筒。

人気のない教室に来いという短い文。

 

キョン(イズモ)「……ついに来たか」

 

覚悟を決め、指定された教室へ向かう。

 

部室ではハルヒが珍しく早々に帰ると言い出した。

 

ハルヒ「今日は帰る」

 

キョン(イズモ)「オセロ、する?」

 

ミクル「はい」

 

だが長くは続かない。

小泉が顔を出し、意味ありげに微笑む。

 

イツキ「今日はバイトなので。早退します」

 

虚数空間だな、と察する。

 

ミクル「私、着替えるので先に帰っててください」

 

廊下に出た瞬間、世界の輪郭が歪んだ。

 

キョン(イズモ)「カエデ、戦闘モード起動」

 

カエデ「ついに来ましたね」

 

教室の扉を開けると、そこにいたのは朝倉だった。

笑顔は変わらない。

だが空気が、完全に違う。

 

朝倉「入ったら聞きたいことがあるの。涼宮さんのこと」

 

キョン(イズモ)「……何を思ってるか?」

 

朝倉「そう。人間ってね、やらなくて後悔するより、やって後悔する方がいいって言うよね」

 

朝倉「現状維持でじり貧の時、最善がわからないなら、あなたはどうする?」

 

キョン(イズモ)「自分なりの最善を考えて、行動する」

 

朝倉は静かに頷き、ナイフを取り出した。

 

朝倉「じゃあ私は、あなたを殺して、涼宮ハルヒの反応を見る」

 

刃が振るわれる。

だが俺の周囲に展開したATフィールドがそれを弾いた。

 

キョン(イズモ)「俺を殺せると思うか?」

 

キョン(イズモ)「カエデ、いいぞ」

 

銃火器が唸りを上げる。

だがすべて、不可視の壁に阻まれる。

 

朝倉「無駄よ。この空間は私の情報制御下」

 

キョン(イズモ)「なら、楽しませてもらう」

 

ロケットランチャー、レールガン、パルスキャノン。

ありとあらゆる手段が否定される。

 

キョン(イズモ)「AAT弾は?」

 

撃ち込むが、結果は同じ。

 

朝倉が机を蹴り飛ばし、間合いを詰める。

俺は拘束され、身体が動かない。

 

朝倉「最初からこうすればよかった」

 

キョン(イズモ)「……あとは任せた」

 

カエデ「はい」

 

その瞬間、空間が揺れた。

長門有希が現れる。

 

キョン(イズモ)「長門、体内通信できるか?」

 

ユキ「ええ」

 

キョン(イズモ)体内通信「俺が囮になる。バリアを壊してくれ」

 

ユキ体内通信「了解」

 

キョン(イズモ)「お前が死ねえええええ!」

 

AAT弾を乱射し、注意を引く。

その隙に、長門が高速詠唱を終える。

 

朝倉「……痛っ」

 

壁が砕けた。

 

キョン(イズモ)はデザートイーグルを構える。

 

キョン(イズモ)「チェックメイトだ」

 

引き金を引く。

次の瞬間、朝倉の姿は霧散した。

 

キョン(イズモ)「……やったか」

 

ユキ「ええ」

 

キョン(イズモ)「情報操作、頼む」

 

ユキ「了解」

 

翌日。

教師は淡々と告げた。

 

朝倉涼子は、急な家庭の事情で転校したと。

 

ハルヒ「ねえキョン、これは事件よ」

 

キョン(イズモ)「ただの転勤だろ」

 

ハルヒ「そんなわけないわ」

 

下駄箱に、また手紙。

差出人は、朝比奈ミクル。

 

部室で待っていると、時間が歪んだ。

 

未来ミクル「キョンくん……いいえ、イズモ。久しぶり」

 

キョン(イズモ)「俺がいて、時間は大丈夫か?」

 

未来ミクル「問題はあります。でもお願いがあるの」

 

未来ミクル「白雪姫作戦を実行して」

 

キョン(イズモ)「……わかった」

 

彼女は消え、すぐに長門が現れた。

 

キョン(イズモ)「昨日は助かった」

 

教室でハルヒが興奮気味に話す。

 

ハルヒ「朝倉の転校、今朝まで誰も知らなかったの」

 

ハルヒ「引っ越し先はカナダ。でも連絡先は不明」

 

ハルヒ「絶対に何かあるわ」

 

キョン(イズモ)「宇宙人にでも攫われたって言うか?」

 

ハルヒ「可能性はゼロじゃないわね」

 

ハルヒ「だから行くわ。引っ越し前の住所」

 

嵐は、まだ終わっていなかった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。