涼宮ハルヒの螺旋 ―壊れなかった世界―   作:最上 イズモ

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以降の展開では、
『涼宮ハルヒの憂鬱』と
『新世紀エヴァンゲリオン』の世界観が
直接的に交差しますが、
これは原作再現やIF展開を目的としたものではありません。




虚数空間の使徒

部室。

放課後の北高旧校舎は、試験休みの影響で人の気配が薄く、窓から差し込む夕方の光だけがやけに目立っていた。

キョン(イズモ)は団用ノートパソコンの前に座り、画面を睨んでいる。

ハルヒに命じられたSOS団の公式サイト更新作業だ。

トップページに貼れと言われたロゴは、どう見ても「SOS」なのか「ZOZ」なのか判別がつかない奇妙なデザインで、センスの方向性に一抹の不安を覚えた。

試験休みで時間があるとはいえ、無駄な作業だと内心でため息をつく。

だが、アップロードした瞬間、画面が固まった。

表示が崩れ、ページ全体が読み込めなくなる。

コードは合っている。

原因不明のバグだ。

キョン(イズモ)は眉をひそめた。

この世界では、こういう小さな歪みが、妙な事件の前触れになることを知っている。

 

そこへ、部室のドアがノックされた。

ハルヒが椅子を蹴るように立ち上がる。

 

ハルヒ「入りなさい」

 

現れたのは見慣れない女子生徒だった。

黄緑色のカーディガンが印象的で、表情は不安に曇っている。

 

エミリ「失礼します……悩み相談室の件で」

 

ハルヒは即座に目を輝かせた。

 

ハルヒ「で、相談って何よ」

 

エミリは胸の前で手を握りしめ、言葉を探すように一瞬黙った。

 

エミリ「SOS団に……私の彼氏を探してほしいんです」

 

部室の空気がわずかに変わる。

キョン(イズモ)は椅子の背にもたれ、彼女の様子を注意深く観察した。

 

エミリ「何日も学校に来てなくて……連絡も取れないんです」

 

ハルヒ「電話は?」

 

エミリ「しました。でも出ません」

エミリ「家に行っても留守で……」

 

キョン(イズモ)「家族は?」

 

エミリ「彼は独り暮らしです」

エミリ「何かあったんじゃないかって……私、心配で」

 

不安と恐怖が滲んだ声だった。

演技ではない。

 

ハルヒ「彼氏、誰なの」

 

エミリは一瞬ためらい、それから答えた。

 

エミリ「コンピューター研究部の部長です」

 

キョン(イズモ)の脳裏に、先ほどのサイト表示エラーがよぎる。

偶然にしては出来すぎている。

 

ハルヒ「わかったわ。教えてくれてありがとう」

 

それ以上の質問もなく、ハルヒはあっさりとそう言った。

エミリは深く頭を下げ、部室を後にした。

 

ドアが閉まる音が、やけに重く響いた。

 

キョン(イズモ)「で、作戦は?」

 

ハルヒは即答した。

 

ハルヒ「部屋に乗り込んで、ぶん殴ってやれば解決よ」

 

キョン(イズモ)「了解」

 

その即断即決ぶりに、誰も異議を唱えなかった。

 

翌日。

コンピューター研究部部長の住むマンション前。

曇り空が圧迫感を増している。

 

キョン(イズモ)「俺が確認する」

 

インターホンを押すが反応はない。

ドアノブを回しても鍵は固く閉じている。

 

キョン(イズモ)「管理人室でお願いし――」

 

言い終わる前に、背後で微かな電子音がした。

ユキが静かに端末を操作している。

次の瞬間、ドアのロックが解除された。

 

ハルヒ「開いてたのね」

 

キョン(イズモ)は内心で訂正する。

正確には、開けられた、だ。

 

ハルヒ「さ、上がりましょ」

 

室内は静まり返っていた。

生活感はあるが、人の気配がない。

部長の姿も見当たらない。

 

ユキがごく小さな声で言った。

 

ユキ「出た方がいい」

 

キョン(イズモ)「虚数空間?」

 

ユキ「詳しくは後で」

 

ハルヒは空気を読まない調子で伸びをした。

 

ハルヒ「お腹すいた。帰りましょ」

 

キョン(イズモ)「了解」

 

その軽さが、かえって不気味だった。

 

数時間後。

集合したSOS団の前で、ミクルが不安そうに首を傾げる。

 

ミクル「どうしたんですか……?」

 

キョン(イズモ)「虚数空間が発生してる」

キョン(イズモ)「ただし、原因はハルヒじゃない」

 

その言葉に、イツキが真剣な表情になる。

 

キョン(イズモ)「ミクル、虚数空間にダイブできるか?」

 

ミクルは一瞬怯んだが、小さく頷いた。

 

世界が歪み、色と音が崩壊する。

次の瞬間、そこは虚数空間だった。

 

赤黒い空間の中心に、異様な影が立っている。

そして、その横に。

 

キョン(イズモ)「……カヲル?」

 

白いプラグスーツ姿の少年が微笑んだ。

背後には、エヴァ四号機。

 

カヲル「やあ、キョン(イズモ)君」

 

イツキ「お知り合いですか?」

 

キョン(イズモ)「前の前の世界の知り合いだ」

 

カヲルは穏やかな声で説明を始めた。

 

カヲル「君がこの世界に来た後、使徒擬きが発生した」

カヲル「コード4aaw。異世界の住人を吸収し、虚数空間に籠もっている」

 

キョン(イズモ)「……まさか」

 

ミクル「えっと……よくわからないんですけど……」

 

キョン(イズモ)「異世界の化け物が、コンピューター研究部の部長を吸収したらしい」

 

視線の先で、結晶構造を持つ異形が蠢く。

ラミエルとアルミサエルが融合したような姿だった。

 

キョン(イズモ)「あのエヴァは?」

 

カヲル「爆発したんじゃない。虚数空間に飛ばされたんだ」

 

キョン(イズモ)「使っていいか?」

 

カヲル「どうぞ」

 

戦闘が始まった。

ラミエル型の加速粒子が空間を裂く。

アルミサエル型の侵食が迫る。

 

キョン(イズモ)は即席で構築した加粒子砲を展開し、ラミエルのコアを貫いた。

空間が悲鳴を上げる。

 

キョン(イズモ)「カヲル、みんなを守ってくれ」

 

カヲル「わかったよ」

 

残るアルミサエルが四号機に取り付き、侵食を開始する。

 

キョン(イズモ)「四号機、爆発していい?」

 

カヲル「それしかないね」

 

次の瞬間、四号機は自立自爆を選択した。

虚数空間が白く染まり、敵は完全に消滅した。

 

崩れ落ちたラミエルのコアから、一人の青年が吐き出される。

コンピューター研究部部長だった。

 

キョン(イズモ)「……飲み込まれてたか」

 

青年は荒い息をつきながら、必死に現実を掴もうとしている。

 

キョン(イズモ)「もう終わった」

 

イツキが安堵の息を漏らした。

 

イツキ「さすがですね、キョン(イズモ)さん」

 

虚数空間は静かに崩壊し、世界は元の姿を取り戻していった。

 

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