Sweet Daily   作:キズカナ

4 / 6
キミの良いところ

 

 

「ん~!チョココロネおいひい~!」

 

 ある日のお昼、りみは花咲川女子学園の中庭でPoppin'Partyのメンバーたちとお昼ご飯を食べていた。

 

「あはは。りみりんはホント美味しそうにチョココロネ食べるよね。」

「ふぁってさあはぁちゃんひのちょほほろねおいひいんだもん!」

「うん、何言ってるかわからないから1度飲み込んで喋ろっか?」

 

 そう言いながら沙綾はりみにペットボトルの水を手渡した。それを受け取ったりみは口に入っていたチョココロネを飲みこみ、水で流し込んだ。

 

「ごめんね沙綾ちゃん…。」

「ううん。いつも美味しそうに食べてくれてるからね。私も嬉しくなっちゃった。」

 

 りみと沙綾がほのぼのとした会話をしている中、香澄とたえに翻弄された有咲は二人の元にやって来た。

 

「あ…有咲ちゃん…?」

「えっと……有咲も水…飲む?」

「ああ…悪い…。」

 

 水を受け取った有咲は木影に移動して、木にもたれながら水を体に流し込んだ。

 

「ふう…。生き返った…。」

「お疲れ。」

「全く…。あいつら容赦無さすぎるだろ…。」

「まあ香澄とおたえは元気有り余ってるからね…。」

 

 苦笑いをしている沙綾に対して「笑い事じゃねえよ…」と有咲は愚痴をこぼした。

 

「でも有咲ちゃんって凄いよね。」

「は…はあ?突然どうした?」

 

 突然のりみの一斉に有咲は驚きの声をあげる。

 

「ううん、いつも皆のことちゃんと見てるから…かな?」

「……どうした?何か変なもの食ったか?」

「ち…違うよ!?」

 

 りみはあたふたしながら弁解し、有咲が首を傾げながらその様子を見ていると…。

 

「有咲~!やっぱり今度のライブで空飛んでみようよ!」

「はあ!?だから無理だっての!大体そんなもの飛ぶような道具も私たち持ってないだろ!」

「え~!」

「方法ならあるよ。」

「………ぜってーろくなことじゃねえとは思うが言ってみろ。」

「ジェットパックを買えばいいんだよ。」

「それだ!」

「却下。」

「「ええ~。」」

 

 と、たえの案は有咲によって意図も容易く拒否されてしまった。

 

「お前らな……そんなもの買う金がうちらにあると思ってんのか…?」

「そんなぁ~。」

「名案だと思ったんだけどな…。」

「ハイハイ、そこまでそこまで。」

 

 しょげている香澄とたえ、ため息をついている有咲の間に沙綾が割って入った。

 

「とりあえずその件はもうちょっと実現出来そうな範囲で考えよっか。ライブ重ねたらそのうち思い付くかも知れないし。」

「いや、そういうものなのかよ…。」

「まあまあ、次のライブはいつも通り私たちらしいライブをやりながら色々考えてみようよ。ね?」

 

 その一言に香澄とたえは頷き、有咲も「仕方ねーな…。」と呟いた。

 

「(やっぱり香澄ちゃんもおたえちゃんも沙綾ちゃんも有咲ちゃんも…皆凄いなぁ…。)」

 

 4人を見ながらりみは考えていた。

 

 皆はそれぞれ自分らしさがあり、人知れず誰かを笑顔にしている。そんな中で自分はどうだろうか。

 

 香澄のように皆を引っ張れるような勢いはない。

 たえのように何か強いこだわりがある…とは言い切れない。

 沙綾のように皆を支えられるような心強さがあるとも言えない。

 有咲のように香澄やたえのノリを裁き切れるような対応力も十分にない。

 

 そう思っていたりみは今のままで良いのだろうか…と。

 

「(……私には…何があるんだろう…。)」

 

 思わず俯いて考え込む。しかし…そんな短時間で答えが出るはずもなく…

 

「……りん、りみ…ん」

 

「りみりん!」

 

 香澄の大きな声によって意識が戻ったような感覚に陥ったりみは「ふぇぇ!?」と誰かのような声を出してしまった。

 

「えっと……どうしたの香澄ちゃん…。」

「それはこっちの台詞だよ~。さっきからりみりんのこと呼んでたのに全然返事してくれないんだもん。」

「えっと…ごめんね…。」

「………なありみ、調子でも悪いのか?」

「えっ?」

 

 有咲の問いにりみは首を傾げた。

 

「いや…さっきからなんからしくないというか…ちょっと変な感じがしてな。」

「……そんなに変だった?」

「…まあな。」

 

 りみは有咲にそう言われて再び肩を落とした。まさかそんなにわかりやすく表に出ていたなんて…と再び考えると自分がみっともなく感じてしまったからだ。

 

「まあ…何か悩みがあるなら地からになれる範囲なら聞くぞ?」

「ありがとう有咲ちゃん。でも……今は大丈夫かな?」

「……そうか?」

 

 そんな話をしていると休憩時間終了のチャイムが鳴った。

 

「そろそろ戻ろっか。」

「だな。早くしないと授業遅刻するしな。」

 

 そうして彼女たちはそれぞれ荷物を持ち、教室に戻った。

 

「(私って何があるんだろう…。)」

 

 そう思いながらりみは4人の後を追いながら教室に戻って行った。

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

「はあ…。」

 

 それからというものりみの思考は先程のことで頭がいっぱいになってそのせいか授業も上の空のところがあり、有咲たちにもまた心配をかけてしまい悄気ていた。

 

「(私ってホントダメダメだなぁ…)」

 

 先ほどやまぶきベーカリーで購入したチョココロネが入った袋を握りしめながら再びため息をついた。そんな感じでトボトボ帰っていると彼女の家の前まで到着していた。玄関の扉の元まで来た彼女は今までの悩みを振り払うかのように大きく首をふるとドアノブを握り、扉をあける。

 

「ただいまぁ…」

 

 そう呟き靴を脱ごうとしたとき…

 

「おお、お帰り。今日は早かった……ん?」

 

 1人の青年が出迎えに……というが玄関前を通りかかった。

 さて、ここで賢明な読書の方々なら違和感を感じていることだろう。りみの家族に青年などいない。そう、つまりどういうことかというと…

 

 

「……りみ?君の家は隣のはずだが…」

「え?」

 

 そう、彼女は考え事をしているあまり自分の家と葛三の家を間違えてしまったのだ。その事を知ったりみは顔を真っ赤にしたまま硬直してしまった。

 

「え…えっと………すみませんでした!」

「えっ?いや…別に気にしなくてもいいが…もしかして何か用だったか?」

「ち…違うよ…。」

「……何かあったのか?」

「えっと…それは…」

 

 葛三の返答に戸惑うりみ。そんな彼女を見ていた葛三は…

 

「まあ…せっかく来たんだ。お茶でも飲んでいってくれ。ちょうど今お湯を沸かしたところだ。」

 

 そういってそのまま奥に戻って行った。対するりみはそのまま帰るわけにもいかず、葛三の言う通り彼の家にお邪魔することにした。

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

「ほら、淹れたてだ。」

「あ…ありがとう…。」

 

 葛三から暖かい緑茶を渡されたりみはそれを受けとると少しだけ息を吹き掛けて冷まし、飲みやすく鳴ったところでお茶を喉に流し込んだ。すると外の気温で冷えた体を内部から暖めてくれるような感覚を感じることができた。

 

「……なんだか元気無さそうだけど大丈夫か?」

 

 そう言われてりみは「あっ…」と先程のことを思い出した。

 

「別に詮索をするつもりはないが……何か悩みがあるなら出来る限りのことは力になるぞ?」

 

 暖かいお茶を飲んだことで少し心にゆとりが出来たりみは少し悩んだ後、何かを決めたように口を開いた。

 

「あのさ……私って何があるんだろう…。」

「ん?」

「その…私って皆みたいに…凄いところとか無いんじゃないかって…」

「成る程。」

「皆とは君のバンドメンバーのことか?」

「うん…香澄ちゃんは皆を引っ張ってくれてるし…おたえちゃんみたいに音楽に凄く詳しい訳じゃないし…沙綾ちゃんみたいに皆を纏められる訳じゃないし…有咲ちゃんみたいに頭が良いわけでも無いし…そう考えると私にあるものってなんなのかなって…」

 

 彼女の話を聞いていた葛三は腕を組んだまま少し考えていた。

 

「ほら…私ってこんな感じだし…いつも皆の足を引っ張ってばっかりで…」

「ふむ……少し返答に困るなこれは。」

「そ…そうだよね…。」

 

 あはは…と小さく笑いを溢すとりみは少しだけ落ち込んでしまった。

 

「しかし君はよく皆のことをわかっているんだな。」

「えっ?」

 

 葛三の思いがけない言葉にりみは首を傾げた。

 

「さっき他の人たちについて言っていただろう。あの人はこういうところが凄いということを。」

「う…うん。」

「そうやって周りの人の良いところをちゃんと見るということは皆が皆出来るわけではない。特に付き合いが長くなるとわかっていてもそういったことを忘れてしまいがちだからな。」

「そうなの?」

「ああ、そういうことが出来るというのは誇っても良いところだ。それにそのバンドでベースの担当は君だけなんだろう?他の皆では出来ないことを君はやっている。それだけでも十分凄いと自分は思うがな。」

 

 彼の言葉でりみは少しだけ心が軽くなったような気がした。

 もしかしたらこれは特に秀でたものでもなく、ポピパの皆も出来ることかもしれない。それでも今は彼の言葉がとても嬉しかったのだ。

 

「まあ、自分には楽器は出来ないし「葛三くん」ん?」

 

 長々と話していた葛三の言葉を遮りりみはこう言った。

 

「私には…葛三くんも凄いと思うよ?」

 

 そう言われて葛三は少し沈黙をしていた。

 

「そうか。」

「うん。葛三くんのお陰てなんか元気になれた気がするよ。」

「それなら良かった。」

 

 そう話していると今度は玄関から呼び鈴がなる。葛三が席をたち、玄関の扉を開けるとそこにはりみの姉、牛込ゆりがいた。

 

「あ、やっぱり葛三くんのところにいたんだね。帰り遅いからちょっと心配しちゃったよ。」

「あ…ごめんね、お姉ちゃん…。」

「ううん、やっぱりりみもりみなんだな~って思ってちょっと嬉しいかもって感じかな?」

「えっ?」

「いや~多分りみって葛三「お…お姉ちゃん?」あ、ごめんごめん。」

 

 少し慌てながらゆりの発言を止めるりみ。一方のゆりは少しだけ舌を見せながら謝っていた。

 

「あ、そうだ!今日のご飯お母さんが多く作りすぎちゃってさ~。葛三くんも食べる?」

「よろしいのですか?せっかくの家族団らんの場を…」

「いいよいいよ。葛三くんなら全然大歓迎!今日はおじさんもおばさんもいないって聞いちゃってさ。それにご飯も作りすぎちゃって腐りやすくなってるからね…。」

「わかりました。それではお邪魔させていただきます。」

 

 「それじゃ待ってるね~。」と言って去っていったゆり。そしてりみもゆりについて行って家に戻った。

 

「(やっぱり葛三くんは葛三くんだよね。)」

 

 再び会う彼のことを考えながら見上げた満月はいつもより綺麗に光っているように感じた。

 

 




りみりんの良いところ、皆に届け(願望)

良ければ評価や感想よろしくお願いします!

twitter
@kanata_kizuna
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。