天音様とさゆりさん、それにエレナお母さんがテーブルに着くと私と楓お母さんは、キッチンへ行ってお客様に出す紅茶をいれていた。
「わざわざ手伝ってくれてありがとね彩葉。先にテーブルで座っててもよかったんだよ?」
「1人で運ぶの大変でしょうし手伝いますよ。これは天音様とさゆりさんに渡せばいいですか?」
「ありがと。1つずつでいいからね。熱いから気を付けて運んでね」
「分かりました」
私は楓お母さんがいれた紅茶を、最初は天音様へと持って行った。
「お待たせしました」
「お手伝い出来るなんて偉いね。ありがとう彩葉ちゃん」
天音様は、ティーカップを受け取ると私の頭を撫でて褒めてくれた。
「このぐらいなら誰でも出来ますよ」
とは返答したものの、綺麗な人から頭を撫でられて内心とても嬉しかった。その後さゆりさんに紅茶を出した時も同じように頭を撫でられてとても嬉しかった。
さゆりさんに紅茶を出すと楓お母さんからもう座ってていいよと言われたので、私は椅子に座って楓お母さんを待った。
「お待たせー。彩葉はミルクティーで良かった?」
「はい。ありがとうございます」
テーブルに座っている5人全員分の紅茶をいれ終わり、ようやく楓お母さんも一息つけるみたいだった。
「ありがと楓。それで天音は急に何のようなの?」
エレナお母さんは、正面に座っている天音様に言葉を投げていた。いっつも天音様は急だって言ってたけど今回は、私を見に来るって話じゃなかったんだっけ。
「え?あーそーだった。ごめん大事な事言いに来たんだった忘れてたよ」
天音様は、いれられたばかりの紅茶を飲みながらエレナお母さんに言葉を返していた。
「やっぱり貴方のことだからただ彩葉に会いに来たわけじゃないと思ってたわ。それで何なの話って」
「いやぁさ、私達も最近結婚式あげたじゃん?それで2人で新婚旅行って言うのもあれだし月村家と合同でどうかなって思って。エレナ達新婚旅行行ってないんでしょ?」
「え!?新婚旅行って天音様とさゆりさんも同性婚されてたんですか!?」
私は、天音様の発言にびっくりして反射的に声を上げてしまった。
「あれ、エレナ言ってなかったの?」
「別に言う必要もないでしょ。それに彩葉はそういう事気にしないもの。むしろ彩葉もこっ!?ちょっと何よ彩葉今話してるじゃない」
「馬鹿なんですか!?いやごめんなさい馬鹿でしたね。ちょっと来てください!」
私は、エレナお母さんの腕を掴むと強引に私の部屋へと連れて行った。天音様は、何かに気付いた様子で振り返ってみると笑いながら手を振っていた。まさかあのやりとりで気付かれたなんて事はないよね……
「何よもう。せっかく皆で集まってるのに。もしかしてトイレ?1人で行けないの?」
「はぁ……やっぱりバカ。よくそんなんでお嬢様やってたよねエレナお母さん」
「好きでなったわけじゃないわよ。それで本題は?」
「あの話の流れで私も同性愛者ってバラそうとしたよね。しかも私が好きになる相手ってちょっと考えたらお母さんしかいないってわかるでしょ。今後ホントにやめてよね」
「あー……確かに彩葉ぼっちだったものね。大丈夫よ。そこら辺は楓鈍いから気付きはしないって」
「でも天音様には気付かれたかもよ。そこにいますよね?気配でバレバレですよ」
私は、自室に入った時に扉の向こうにずっと気配を感じていた。最初は考えすぎかと思ったが、耳をすませて意識を扉の方へと集中したらカサカサと音が聞こえたのだ。
「ホント5歳には思えないぐらいの洞察力だね。ホントは20超えてるでしょ彩葉ちゃん。後天音お姉さんでいいよ」
観念したのか天音様は、扉を開けて私の部屋に入ってきた。
「ピチピチの5歳児ですよ。それで全部聞いちゃったんですよね」
「ごめんねー。エレナが口滑らせて彩葉ちゃんの反応があからさまだと思ったから施設で同性の子好きになったのかなぁ思ったら楓ちゃんだったんだね彩葉ちゃんの好きな人。それでエレナには前から相談してたって感じかな?」
「はい。出来れば話をこれ以上広げて欲しくはないのですが……」
「大丈夫だよ!こう見えても口は堅い方だから!」
ぐーさいんをつくって私の前に天音様は突き出してきたがホントだろうか……
「全く……私からもお願いするわ。タダでさえややこしいんだからこれ以上ややこしくしたら太平洋に沈めるからね」
「あんたが言うと冗談に聞こえないからやめて。まぁホントに言わないから大丈夫だよ。後、彩葉ちゃんってもしかしてエレナにはタメ口で喋れるの?」
「ホントにお願いしますね。はい。エレナお母さんには普通にお母さんとも呼べますし普通に話せます。楓お母さんの前だとちょっと緊張する事が多くて敬語で話したりお姉さんって呼んでます。それにお母さんって呼ぶと叶わない恋って言うのが尚更感じてしまうので……」
最後の方は小声で話した。叶わない恋……か。自分でもそれは分かってるんだけどね。
「そんな暗い顔してちゃ可愛い顔が台無しだよ彩葉ちゃん」
「え?天音様?」
突然天音様が私を抱きしめながら話した。
「子供の時なんて自分の好きにやるのが1番だよ。だからそんな暗い顔しちゃダメ!分かった?エレナもどうせ彩葉の好きにやりなさいとかカッコつけたこと言ったんでしょ?もっと前向きにやらなくちゃだよ!ってなんでぶつのよエレナ!」
「なんかムカついたからよ。彩葉戻りましょ。あんま待たせると怪しまれるでしょ」
「あ、うん。天音お姉さん」
「んー?」
「ありがとうございます。もっと前向きにやって行きますね」
私は笑顔で天音様に返事を返した。
「どういたしまして」
私達は、仲良く3人でリビングへと戻った。楓お母さんに3人で何してたの?と聞かれたがエレナお母さんが適当な口実を作って上手く逃げてくれたのでバレずに済んだ。
「さて、話を戻すわよ。天音はいいとしてさゆりちゃんもいいの?一生に一度あるかない事のイベントに私達3人がお邪魔しちゃって?」
どうやら話は、2人の新婚旅行に同行するか否かの話に戻ったらしい。確かに新婚旅行って行ったら普通は2人で行くものだしどうなんだろうか。
「私としてもエレナさん達に来て欲しいかなって思ってます。私と天音が結婚まで辿り着けたものエレナさんと楓のおかげと言っても過言では無いですし、大勢の方が楽しいと思うんです。彩葉ちゃんも初めての旅行って意味で記念になると思いますし」
「なるほどね。それじゃ遠慮なくお邪魔しましようかしらね。楓は?」
「天音様とさゆりが良いって言うなら喜んでだよ。もちろん彩葉も一緒に行くからね?」
「さゆりお姉さんが言ってた通り旅行なんて行ったことが無かったので楽しみです」
「なら決まりだね!場所とスケジュールは私とさゆりで決めちゃうけどいいかな?」
「貴方達の新婚旅行なんだから当たり前でしょ。スケジュールはなんとか合わせるわ」
「サンキュ。それじゃ話す事も話したし私達は帰ろっかな」
「え?夜ご飯食べて行かれないんですか?」
「うん。それに彩葉ちゃんにも悪いしね。ね!彩葉ちゃん!」
私の方を見て天音お姉さんは、ニヤニヤと笑っていた。
この人もか……エレナお母さんと親友って言うのも頷けるよ。
「そうですね。そうやってからかって来るお姉さんとは夜ご飯一緒に食べたくないかもです」
「ふふ、言われてるわよ天音」
「ふええんごめんてばぁ!」
私は、天音お姉さんの謝罪を無視して少し冷たくなったミルクティーを口に含んだ。
結局この後仲良く5人で夕食を食べて天音お姉さんとさゆりお姉さんは帰って行った。
その後、2人の寝室にて
楓「なんだか天音様ともすぐ打ち解けられたみたいで安心したよ」
エレナ「まぁ色々あったのよ。見かけによらず彩葉って結構言う時は言う子だって分かったわ。昔の私にそっくりよ」
楓「これ以上悪化したら全力で性格強制するからね。嫌だよ彩葉が洗濯したての洋服にわざと紅茶零して洗えてないじゃないの!とか言うようになったら」
エレナ「そんな事言う人なんているわけないじゃない」
楓「エレナの事だけど?」
エレナ「記憶にないわ」
楓「あ、そういう事言うんだ。なら今夜はお預けね。おやすみなさいエレナお嬢様」
エレナ「あー許して!ごめんってばぁ!」
隣室の彩葉はというと……
彩葉「静かにしてよ……」
深夜に騒ぐ両親にうんざりしていた。