私の居場所を求めて   作:足でされたい

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沖縄旅行(中編)

「彩葉私から手離しちゃダメだからね!浅くても潮の満ち干きで海に引っ張られたら戻ってこれなくなっちゃうよ」

 

いつにもまして真剣な表情で楓お母さんは私に話しかけた。それにしても綺麗な海。水が透けて海水の中に入っている私の足が透けて見えるほどだった。

 

「大丈夫だよ楓お母さん。私こう見えても泳ぎは上手いんだよ?施設の中で小学六年生の子にも負けなかったんだから」

 

「プールと海はぜんっぜん違うから甘く見ちゃダメ!分かった?」

 

「はーい」

 

「随分厳しいのね。私が見てるから平気よ」

 

「何かあってからじゃ遅いんだから。キャッ!?もーやったなぁ!」

 

厳しい雰囲気を壊すようにエレナお母さんが楓お母さんに水をビシャビシャとかけていた。正直ちょっと気にし過ぎだよ。って思っていたから助かった。

 

「ほら彩葉も!」

 

「冷た!やったなぁ!」

 

エレナお母さんから容赦なく海水をかけられて顔がびしょびしょに濡れてしまった。それにしても皆楽しそう。天音お姉さんとさゆりお姉さんは砂浜に座りながら楽しく話しているみたいだった。楓お母さんとエレナお母さんは水をかけあっては笑っていた。

 

「ねぇ楓お母さん。少し浮き輪外して泳いでもいい?沖の方には行かないからさ」

 

「ダメだよ。今でも足ついてないでしょ?」

 

「楓お母さんに見て欲しいの!私がちゃんと泳げるよって」

 

「んー……」

 

「別にいいじゃない少し泳ぐぐらい。私が彩葉に並走するから大丈夫よ。それに貴方泳げないから彩葉に嫉妬してるでしょ?」

 

「はぁ?そんなんじゃないよ。ホントに何かあったら困るからだよ。まぁエレナが見てくれるっていうなら大丈夫かな」

 

「って言うことよ。よいしょっと。楓、浮き輪持ってて。ほら彩葉私に掴まってて。もう足ついてないんだから」

 

「うん。大丈夫だよ」

 

そんなに怖いものなのかな?別に泳げるんだから大丈夫だと思うけど。妙に過保護な2人のお母さんに私は少し驚いていた。私は、エレナお母さんに壊れ物を持つかのように丁寧に抱かれていた。

 

「それじゃ離すわよ。危ないと思ったらすぐ私に抱きつくこと?いいわね?」

 

「分かってるよ」

 

そう言うと拘束されていた体は解放され、私は自由に泳ぎ始めた。

 

「気持ちいい!凄いよ!潜ったら水の中綺麗だからエレナお母さんの足だってしっかり見えたんだから!」

 

私は、沖縄の綺麗な海に感動していた。本で読んだ知識では大抵の海は濁っていて目を開けてもほとんど何も見えないと聞いていたからだ。

 

「ふふ。そんなにはしゃがないの。ホントに泳ぎ上手なのね彩葉。楓なんてほとんど泳げないのに」

 

「そーなんだ。あ、楓お母さん手を振ってるよエレナお母さん」

 

少し離れたところで心配そうに見守っていた楓お母さんが私達に手を振っていた。私達はそれに気が付くと手を振り返した。

 

「楓だけ1人で可哀想だから一緒に迎えに行きましょうか。浮き輪があればあの子も大丈夫だと思うし」

 

「うん!」

 

私とエレナお母さんは、砂浜近くで待っていた楓お母さんを迎えに行って再び沖近くまで泳ぎに行った。

 

「ホントに上手なんだね彩葉。どこで泳ぎ覚えたの?」

 

「ずっと1人だったから本を読んでるだけだったけど泳ぎ方とかは勉強してたんだ。それで家で1人でお風呂入った時とかに練習してたら泳げるようになったんだ」

 

「そっかぁ。凄いね彩葉」

 

そう言いながら楓お母さんは私の頭を撫でてくれた。

 

「えへへ。エレナお母さんあそこの岩場まで競走しようよ!別にエレナお母さんが横にいたら競走してもいいよね楓お母さん?」

 

「いいよ。ただエレナお母さんの言うことは絶対聞くこと!いい?」

 

「うん!」

 

今思い返せば、私は人より少し泳ぎが上手かった事に浮かれていた。ちゃんとこの時の楓お母さんの言うことを守っていればあんな事には……

 

「それじゃよーいドンでスタートね。エレナもいい?」

 

「もちろんよ。彩葉なんかに負けるわけないしね。ちゃんと並走して見ててあげるわ」

 

「子供扱いしないでよね。たまにはエレナお母さんに勝つところも楓お母さんに見てて欲しいもん」

 

私とエレナお母さんは、横に並んで楓お母さんの合図を待った。

 

「それじゃいくよー!よーい…ドン!」

 

私は、助走を付けるために横でのんびり私の後ろを付けようとしていたエレナお母さんの足を使って壁キックの容量で綺麗なスタートを決めた。

 

「あら……ちょっとおいたがすぎるんじゃないかしら彩葉?」

 

絶好のスタートを切ったにも関わらず数秒もすればエレナお母さんが余裕の笑みで私を見ていた。

 

「まだ半分だもん!」

 

私は負けじと必死に足を動かした。少しでも早く!少しでも先へ!無我夢中になっていてゴール近くの大きな岩に気が付かなかった。

 

「っ!彩葉!前!危ない!!!っ!?何であの子こんなに早いのよ!私だって全力で泳いでるのに!彩葉待って!!!前見なさい!!!」

 

エレナお母さんが必死に叫んでいた事など全く聞こえなかった。自分の頭の中ではゴールの岩場まではまだ距離があると思っていたのだ。

 

次の瞬間だった……

 

ゴン!!!

 

「っ!?」

 

「いろはぁ!!!」

 

私が最後に見たのは必死に泳いでこちらに向かってくるエレナお母さんだった。

 




始めての彩葉のやらかし。次の話は大切な回なので少し時間を頂くかもです。

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