「ん……あれ?エレナ?」
窓から入り込む陽射しの眩しさで私は目を覚ました。しかし、いつも横で寝ているエレナの姿が何故か無かった。
「あれ……今って……嘘でしょ!?11:30!?」
大寝坊だった。今日は朝から彩葉の所に行く予定だったのに。でもなんでエレナは起こしてくれなかったのだろうか……
パジャマのままリビングへ行くと、ラップに包まれた朝ごはんと置き手紙が置いてあった。
『彩葉の所に行ってくるね。お昼には戻ると思うから』
やっぱり1人で行ったみたいだった。昨日の件もあったしエレナなりに気をつかったのかな。確かに今日どんな顔をして彩葉に会えば分からなかったのは事実だ。
「とりあえずせっかく朝ごはん作ってくれたみたいだし食べちゃおうかな」
朝ごはんは、目玉焼きとベーコンとピザトーストだった。レンジでチンをして目玉焼きを食べたが、黄身が少し固く温かいうちに起きて食べたかったなと思った。
ご飯を食べ終わって後片付けをしていると玄関の扉が開いた音がした。エレナが帰ってきたみたいだった。
「ただいま」
いつもと変わらない表情でエレナは私の前に姿を現した。いったい彩葉と何を話していたのだろうか。
「おかえりなさい。別に起こしてくれても良かったんじゃないの?」
そう言うとエレナは少しバツの悪そうな顔をした。やっぱり起こさなかったのはわざとだったんだろう。
「そうね。ごめんなさい。ちょっとあの子と2人で話したかったのよ」
「まぁそうだと思ったけどさ……それで何か収穫はあったの?」
「そうね。あったと言えばあったわ」
そう言うとエレナは、病院での出来事を教えてくれた。まさかエレナが元気づけられるなんてね。知らない間に彩葉も随分成長したみたいでなんだか嬉しかった。
「なるほどね。分かった。明日退院でしょ?私もそれまでにちゃんと彩葉への返事考えておくね。でもさ、なんか嬉しいよね。ここに始めてきた時の彩葉よりなんか成長してる気がしてさ」
「ふふ、そうね。初めはあんなに大人しい子だったのに今ではちゃんと自分の意思で行動して母親の頭を引っ張たけるぐらいだもん。退院したら仕返ししなきゃね」
エレナは笑いながら話していた。きっとエレナ自身も彩葉の成長が嬉しいんだろう。
その日は、彩葉の話で1日盛り上がってしまった。彩葉と最初に会った日の事。初めてお母さんって言ってくれたこと。今では私達に欠かせない存在になっていた。いよいよ明日。彩葉が帰ってくる日だ。親として、彩葉の思われ人としてちゃんと迎えてあげなきゃだね。
次回、第一章最終回です。この物語も前作同様長丁場になる予定です。